転生先生テリま   作:物書き初心者

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陥落作戦 後日談

 先の作戦により連合に激震が走った。グレート=ブリッジ要塞が陥落した事もだが、何よりもたった一人で300から成る護衛艦隊を壊滅した人物がヘラスに居る事に皆、震撼した。

 

 しかもこの人物、今噂のブラックロッジを名乗ったのだ。

 

 其の噂とは、

曰く、大規模な慈善事業を取り仕切っている。

曰く、死の商人である。

曰く、旧世界の主だった企業が参加している。

曰く、厄介事請負業、何でも屋の組織である。

などなど、根も葉もない噂だがヘラス、連合、アリアドネーにいつの間にか蔓延していた。

 

 更にこの人物、アレイ・クロウの作戦時の写真をヘラスの大手出版社がいつの間にか入手しており、現在第三皇女の護衛として雇われた、ブラックロッジ所属の傭兵であると写真付きで雑誌に載ったのだ。しかも作戦が決行された夕方に出版された。まさに作為的である。

 

 予断であるが、何時の間にやら会員制のファンクラブが出来ており、会長用の会員番号00番を何処かの本の精霊が持っていて、旧世界のログハウスに雑誌と共に特別プレミアム会員の会員番号01番が送られた事はもはや予定調和だろう。

 

 

 

 

「ほんとにアレイの名が世界に響き渡ったのう。それにしても艦隊壊滅はやり過ぎじゃと思うのじゃ」

 

 テオは雑誌を読みながら呆れたように言って来た。そう言われてもあれでもかなり手加減したのだ。下手をすると要塞ごと蒸発なんて事になったかも知れない。

 

「一応手加減はしたから、問題ないだろう」

 

 俺は特殊な椅子に座りながら、何時も道理魔導書を読んでいた。

 

「あれのどこら辺が手加減なのじゃ!!それと、先ほどから気になっていたがアレイは何に座っとるんじゃ?」

 

 雑誌からガバッと此方に視線を向けて吠えた後、テオは俺が座っている物を注視して来た。俺はテオが見易い様に本を閉じ立ち上がって質問の答えを返した。

 

「ちゃんと他の兵に仕事を残しただろう。それで、何に見える?」

 

「其れは手加減とは言わんのじゃぁぁ!!」

 

 テオはそう吠えた後、「う~む、スライムのクッションかの?」と答えてくれた。

 

 俺はテオを手招きして呼んだ。テオは雑誌を置いて首を傾げながら俺の横まで来た。まあ傍から見たらゼラチン状の物体Xにしか見えんだろう。

 

「こいつは俺が最近飼いだした珍獣でジョゴスと言う。名前はラヴだ。基本俺は椅子代わりとして使っているが中々の働き者で肉体労働はお手の物だな。あと紳士だ」

 

「これが生き物じゃとぉ!」

 

 テオが目を丸くしていると、ラヴが動き出しテオがビクついて俺の服を掴んだ。仕方なしと思う。目・口と思しき感覚器官が縦一列に一個ずつあるスライムの親玉みたいなのが動き出したらソリャ怖いよな。

  

「てけり・り」

 

 そうラヴが言いながら、テオに触手を伸ばして来た。テオはそれを見た後俺を見て来たので挨拶だと教えてやった。すると、テオは恐々手を伸ばした。

 

「わわ妾は、テオなのじゃぁ。よよよろしくなのじゃ」

 

「てけり・り」

 

 少々腰は引けていたがちゃんと挨拶をしていた。ちなみにラヴは紳士らしくシェイクハンドをしていた。其の後打ち解けたのか、テオとラヴは戯れていた。

 

 

 テオはラヴに乗っかり弄り倒し、ラヴはされるに任せてじっとしている。

 

「のう、アレイ如何すれば戦争は終わるんじゃろうなぁ」

 

 ふと湧いた疑問を子供が親に聞くようにテオが俺に訊いて来る。

 

「テオはこの戦争を止めたいのか」

 

「当たり前なのじゃ!!戦争さえなければもっとこの国は住みやすうなる。なのに父上は戦争を止め様とせんのじゃ・・・・」

 

 テオは真剣な表情で語っていたが、徐々に沈んで行った。

 

 皇帝の考えは分からないがヘラスからの停戦は難しいだろう。可能なら平等な条件での停戦、連合からの停戦じゃないと国民が納得しないだろう。

 

「現状では、帝国、連合、双方どちらかからの停戦は無いだろう。なら第三者を立てて仲介をしてもらい平等な条件の下、双方停戦するのが現実的は案だろう」

 

 おぉ~とテオは感嘆の声を上げてキラキラした目で此方を見てくる。俺としてはそれだけじゃこの戦争が終わらないのが分かっているからかなり心に来る物がある。あの組織を如何にかしない限れ止まらないだろう。

 

 テオが頭の中でああでもないこうでもないと考えながらポツリと呟いた。

 

「第三者か、アリアドネー辺りが良さそうじゃのう」

 

「其れと今のテオみたいな考えの人間を探して相互協力をするのも良いだろう」

 

 其れを聞いてテオはなるほどと頷いた。

 

「テオ、俺は皇帝に話があるから今日は戻る。ラヴは俺の代わりに護衛として置いて行く。ラヴ食料の為にも頑張れ」

 

「うむ、おつかれなのじゃ!父上によろしくのぅ」「てけり・り」

 

 元気良くテオは挨拶して、ラヴはキリリと答えてくれた。ちなみにラヴの餌は、産地直送の南極に棲む某泳ぐ鳥である。

 

 

 

 

 俺は皇帝に頼みがあって執務室まで足を運んだ。ノックをしたら返事があったので俺は部屋に入る。

 

「失礼するぞ、少々頼みが出来た」

 

「おお、アレイ殿。頼みとは何にかな」

 

 書類仕事の手を止めて此方を優先してくれる。

 

「まず確認なのだが、グレート=ブリッジ要塞が攻められた場合、俺は時間稼ぎをして兵達を逃がすで良いな」

 

「うむ、其のかたちで依頼しようと思っておった。やはり、攻められた場合落ちてしまうか」

 

 俺は頷きながら思案顔の皇帝に持ってる情報の一部を開示した。

 

「間違いなく落ちるだろうな。此方に入った情報だと紅き翼が呼び戻されたらしい。更に俺が落したのと然程変わらない数の戦艦が何処からか補充されたようだ」

 

「やはり裏で何かが動いているのだな。皇帝の身でありなが何も出来んとは歯痒いばかりだ」

 

 皇帝は苦虫をダース単位で噛んでいるかの様な顔をしていた。

 

 現状で何かしたら帝国が空中分解してしまうかも知れない。今、判明している黒い貴族と軍人の情報を渡して現状維持して貰うのが最良だろう。テオも和平の為に動くらしい。

 

「まず、帝国内の裏切り者の情報を渡すので上手く使って国の現状維持をして欲しい。其れと、テオが第三者の仲介で和平を成そうと動き出そうとしている、其れを陰から支援して欲しい。最後にグレート=ブリッジ撤退戦時の指揮権譲渡の委任状を誰にも知られずに作って欲しい。これが今回の頼みだ」

 

 皇帝は俺が渡した資料を見てワナワナと震えていたが何とか平静を取り戻し俺を確りみて言った。

 

「委細分かった。総て遣って退けよう。それにしても、あのじゃじゃ馬娘がそんな事をしようとするとは、アレイ殿、アヤツを頼みます」

 

 皇帝は父親の顔で嬉しそうにしていた。俺はそれに返事をし、自身の部屋に戻った。

 

 

 

 

 俺は部屋に戻り恒例のエセルとの情報交換を行う。

 

「エセル何か新しい情報はあるか」

 

 俺はベットに座り、膝の上に頭を乗せるエセルに聞いてみた。

 

「イエス、マスター。紅き翼が新たに2名増えました。

一人は、<フィリウス・ゼクト>魔法使い、子供の姿ながら齢数百歳の熟練した魔法使いです。現在ナギ・スプリングフィールドの師でもあります。なお、生体自動人形(オートマタ)の可能性が高いです。

もう一人は、<ジャック・ラカン>傭兵、30年間戦闘に身を置き続けたベテランの傭兵です。気と体術を得意としています。

戦力的には大国の軍を凌駕しています」

 

 普通ならこれだけの戦力があれば戦争は終わってる筈なんだがな。俺は良くできましたと言う風に頭を撫でてやる。エセルは嬉しそうに目を細めた。

 

「ふむ、次の奪還作戦に出て来ると思うか?」

 

「間違いなく出てくると思われます。此方に紅き翼を撃破できるのはマスターだけです。不愉快ですが向こうもマスターを止められるのは紅き翼だけだと考えているでしょう」

 

 向こうは今回、紅き翼に戦力としてではなく俺の押さえとして参戦させる気か、ならば戦艦の数が凄い事になってそうだな。

 

「エセル、投入される戦艦の数はどうなっている」

 

「連合の歴史上類を見ない大艦隊だそうです。超弩級戦艦5隻から成る艦隊で500隻はくだらないとか、無理やり持ち出してきた為、後ろにいた組織の事も少し分かりました」

 

 褒めてと言わんばかりにこちらをエセルが見て来る。俺は更に優しく撫で先を促す。

 

「あの組織ですが、武器商人やマフィアなどの裏組織を隠れ蓑に使っているみたいです。組織の名は、『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』と呼ばれているそうです」

 

 完全なる世界ね、なんか理想主義者が付けそうな名前だな。まあいい、次は撤退戦、あの要塞は此方にとっては唯の金食い虫、足枷に近い物なのでとっと返したいが、ただで返してやる気は無い。

 

「そう言えばエセル。アスナは見つかったか?」

 

 あれから次いでで良いから探すようには言っていたが如何なったのやら。

 

「すみません、マスター。オスティアには居ると思われますが詳しい場所までは特定できていません」

 

「そうか。引き続き捜索してくれ」

 

 片手間とはいえ、エセルが見付けられないなんてどこかに封印でもされたか、次の戦闘が終わってから時間が出来たら探しにでも行ってくるか。

 

 


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