虚の穴は何故閉じない?   作:エア_

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エア「第三刃かと思った貴方! 残念ですが第九刃なんですよ!」

ティア「食い殺せ、ティブロン」


エア「あんぎゃあっ!?」

以上、つまらない会話枠でした。


第九話~九刃

「ぬぉおおおおおおおおおお!! 急げグリムジョー! 捕まれば殺されるぞぉおおおおおおお!!」

 

「それくらいわかってらぁああああああ!! ぎゃあああああああああ!! 水が! 水が殺しにきやがる!!」

 

虚園の宮から出て数キロの砂漠地帯、青髪が特徴的な青年と白パーカーを羽織った黒髪の青年が全力疾走していた。勿論グリムジョーと守である。彼らは今後ろから迫りくる虚園にあるはずのない水が暴力を身に纏って襲ってきたのだ。

 

「くっそぉお! アーロニーロの旦那に頼まれて同人誌用のパンツを秘密裏に入手かっこ盗みかっことじをするんじゃなかったぜ!」

 

「態々かっことじまで言わなくていいんだよ守! それよりも来るぞ!」

 

グリムジョーの叫びと共に、後方から水の塊が押し寄せてくる。人間である守ではジャンプして回避などと言う高等テクニックはない。このままでは確実に溺れる。

 

「グリムジョー! ヘルプだ!」

 

「守、惜しい奴を無くした」

 

「少しは考える素振りぐらい見せろよこのムッツリジョー!」

 

「あ、てめっ! 俺が最近の悩みの種の一つを口にするんじゃねぇ!」

 

二人が言い合いになっても、迫りくる水は待ってくれる訳もなく今にも降り注ぎそうである。ちなみに今更だがノイトラは既に捕まっており、今監禁されている。多分袋叩きにあっているだろう。可哀想に。

 

後ろから淡々と水の塊を放っているのは皆さんご存知の十刃紅一点の褐色美女のティア・ハリベルである。とても美しい笑みをし、不気味に笑いながら頬を赤く染め、自分によったような表情をしていた。簡単に言えば我妻フェイスをしていたと言うことである。

 

「どうした守。何故私から逃げるんだ?」

 

「絶賛ディブロン解放して水流打ちかましてる人から逃げるのは至極当然ですよ裁判長!! あと何でそんな小さく呟いてるのに俺の耳にはっきりと聞こえてくるんですかぁああ!!」

 

後ろに向かって大声で返事をする守。しかしその間も水の塊は量を増していき、何とか左右に避けているが苦しくなってゆく。グリムジョーは破面であることからか、まだ息は続いている。だが守は残念ながら人間なため、少しきつそうだ。

 

だが、何故破面と同程度のスピードで駆けているというのに少しきつそうなだけで終わっているのは・・・・・・これは人外確定でいいんじゃなかろうか。

 

「って、大玉が来た! グリムジョー!」

 

「分ってらぁ! 虚閃結界!」

 

守の言葉に完全に息を合わせたグリムジョー。彼は虚閃を両手から斜めに吹き飛ばし、中央でぶつける。そうすると虚閃同士が行き先を阻害し、水流の弾道先に飛んで行く。簡易的な封鎖結界を作り上げる。というか、何故名前を呼んだだけで対応できるのか質問したい。

 

「・・・・・・仲がいいな。お前達」

 

「何か知らんが逆鱗に触れたァ――――ッ!?!?」

 

「やばいやばいやばい! こいつ何の事線に触れたか理解してねぇ!?」

 

ティアの攻撃量が増える。その場しのぎではなった結界をことごとく消滅させていく水流に驚きを隠せない二人。このままでは本当に危険が危ない←誤字に非ず。

 

「っち、グリムジョー! 跳ぶぞ!」

 

「おまっ、飛べるのかよ!?」

 

飛ぶ(・・)んじゃない! 跳ぶ(・・)んだよ! 捕まれ! このままアーロニーロの旦那のとこまで一気に行く!」

 

そういって守はグリムジョーに手を伸ばす。何も疑問に思う事無く彼はその手を取った。するとザエルアポロ作の時空跳躍機ですかさずその場から跳躍して行方を眩ました。

 

「しまった。取り上げておくべきだったか」

 

一人残されたティアは驚いた様子で辺りを見渡した。何処まで跳んだのか分らないが、この虚園内の何処かだろうと言うのはわかっていた。

 

「とりあえず一度戻るか。あいつらの事だ。もしかすれば虚園の宮に跳んだやも知れん」

 

叫びが聞こえなかったのは水流が虚閃と触れて爆発を起こしていた為騒音となって障害されたからである。

 

ティアは呆然と暫く立ち尽くしたが、クルリとその場に背を向け、虚園の宮へと向かった。

 

「・・・・・・守の臭いがする」

 

あ、この人残念臭がする。

 

 

 

 

「何で最初からそうしなかったんだよ!」

 

「水流も一緒に持っていけってか!? 冗談じゃねぇ!」

 

時空跳躍機によって何とか逃げ出せた二人は、件のアーロニーロがいる第九の宮へと無事に到着していた。体中汗だくになりながら生還した二人の顔はどこか達観しているような、それでいて己を誇りに思ったようなそんな顔をしていた。でもしたことは下着ドロ、ド屑である。

 

第九の宮の中枢にある一つの部屋。仕事場と書いてある表札がその目印だった。チャイムを鳴らし、二度ノックをする。そして二人は部屋の中へと入っていった。

 

「おーい、アーロニーロの旦那ァー」

 

「ばっか、守! 声が入るだろ!」

 

部屋に入って第一声に反応する声がした。その声はとても澄んでいて、聞けば爽やかな青年の声であるのがわかる。二人もその声がアーロニーロの物だと言うのを理解していたのか警戒する事無く奥へと進んで行った。

 

「いやぁ、ごめんごめん。暗くって一応確認の為に」

 

「もういいよ。歌取り終わったし。あとは知り合いにMIXして貰うだけだから」

 

「うんごめん。そんな専門用語言われても流石にわからない」

 

「同じく」

 

二人が首をかしげるのを見て、アーロニーロはため息を一つ吐いた。ちなみに今の容姿を伝えておこう。今の彼の姿は仮の姿で、その昔に吸収した虚から得たデータからランダムで選ばれた人の姿。その人間の名前は志波海燕である。

 

「全く君達・・・・・・今は情報こそが世界を握る時代だと言うのに。何て残念な奴らだ」

 

「おい、誰がネット音痴だって? グリムジョーと一緒にするなよ」

 

「さり気なく馬鹿にするあたり流石だぜこの野郎」

 

目的のものをアーロニーロに渡すとメンチを切り出す二人。相変わらずだなと思いながらも、アーロニーロは受け取ったものをガン見しながら机にある漫画家が使いそうな紙だとかペンとかを使い、何かを描いていた。左手で文鎮代わりにし、右手で丁寧に書いているその姿はまさに漫画家。

 

「そういや、いつも思ったんだけどよぉアーロニーロ。お前は何描いてんだ?」

 

「あぁグリムジョー。僕はこれを生業としていてね。とりあえずは今連載の漫画と言っておこう」

 

「そういやジャ○プで連載してるんだっけ? 確かDye って奴だっけ?」

 

「あぁ、ちょうど魔獣森編を描いていてな。光栄に思えよ? まだ週刊誌ではアルカ救出編までしか掲載されてないからな」

 

そう言いながらアーロニーロはその作品を二人に見せる。

~Dyeとは~

主人公の護国 白之(ごこく しろゆき)は小さい頃から魔力の源である魔力元素と言うものが見えてしまう事を除けば普通の高校生。ある時、魔怪獣と呼ばれる魔力元素を食らう化け物を退治する為に現れた魔法精界からやってきた女性の魔法使い【魔倒】である芽吹 アルカ(めぶき あるか)と出会う。最初はそんな非現実的なことを信じなかった白之だったが、魔力元素求めて現れた魔怪獣に出会った為信じることになる。その魔怪獣に家族を襲われてしまい、呆然とする彼だったが家族を助ける為に深手を負ったアルカの代わり、その魔法を操る力を彼女から受け取り撃退する。しかし彼女から魔法を操る力を予想以上に受け取った所為で彼女が魔法使いとしてまともに機能出来なくなってしまい、彼女が回復するまでの間、魔倒代役として活躍する話。今の週刊誌で載っている方ではそのアルカが規則を破ったとかで魔法精界で処刑されそうになっている。新たに加わった仲間達と共にアルカを救出ために魔法精界へと乗り込む所である。累計1億冊売れている世界で名高い漫画の一つであった。

 

そして今彼らが渡されたのはアルカ救出編の次の話である《魔怪人編》であった。

 

「ん~何々? 本来なら魔怪獣しかしないはずなのにそれから進化した魔怪人が突如現れ困惑する白之。裏で手を引いていたのは魔法精界の上級仕官である彩色 憎元(さいしき ぞうげん)による怪異変だった。特別な力を持つ仲間である彦星 辰己(ひこぼし たつみ)を攫われた白之達は力をつけて魔法精界とは違う別の世界【魔獣森(ベスティマギア)】へと飛び込んでいく、か・・・・・・。って、これ最近アニメ化した奴だろ! リリネットが大音量で観てたぜ!?」

 

衝撃の新事実、ファンが身内。さらに事実、アニメ化してた。

 

「まぁ、作者名に本名を使うわけにはいかなかったからさ。伊東拓菩って偽名で働いてるんだよ」

 

「そういや、よく俺に原稿用紙とかGペンを買ってくれとか言ってたけど、あれはこの為だったんだな」

 

「その通り。よく現世におりるなんてことは僕には出来ないからね。出版社にもメールだけのやり取りで済ませているし。間違いがあれば君にとって着てもらおうかとも思っていたよ。と言っても一度たりとも間違いを犯してはないけどね」

 

「お前がいる場所が虚園の宮の時点で間違い犯してるけどな」

 

「それな」

 

守の尤もな意見にグリムジョーが頷く。破面であるのが残念なほどだ。彼らは知らないが何とアーロニーロの描いているDyeは世界中で流行っている作品でその印税は計り知れないほどだった。実は彼自身個人口座を作っていて預金はゼロが7つほどあったりするほどだとか・・・・・・彼曰く、もうすぐで8つに上るとの事だ。

 

「ちなみに君達が持っているその話で魔獣森編は終わりだ」

 

「はっや」

 

「何を言っている。こうもしないと週刊誌に追いつかれてしまうじゃないか。普通はこうやって書き溜めをしなくちゃいけないんだよ・・・・・・樫乃木先生ェ」

 

ちなみに樫乃木先生とは、これも人気の週刊漫画である【RANGER×RANGER】を描いている作者で、よく働かないで有名な人だった。ネットでもよく樫乃木働けという天丼レスが流れる。これもアニメ化している有名漫画家。

 

「とりあえずは目的のものをありがとう。これでサービス漫画を描ける」

 

「そのパンツでか?」

 

「あぁ、同人誌と呼ばれる物も嗜んでいてね。そっちは本名のアーロニーロを使っているんだが、完全にタッチを変えた書き方をしているからね。ばれる事はない」

 

「何故そっちを本名にしたか聞きたくて堪らないけどまぁ仕方ない。それで? どれくらい違うんだ?」

 

突っ込み魂に火がつきそうになった守だったがそこはちゃんと抑えた。しかしそんな事アーロニーロには関係ない。彼はマイペースに別の原稿を渡してきた。

 

そこには、少年誌ギリギリアウトな、アウトに限りなく近いアウトな絵が描かれていた。

 

「タッチを変えれば、ストLIKEくらいには変えられるよ」

 

「言い値で買おう」

 

「そこは原価で買えよグリムジョー」

 

息つく間もなく真顔でそう言ったグリムジョーにドン引きする守。実はグリムジョー、二次でも三次でもいける男だった。彼曰く「二次だろうが三次だろうが、俺にとっては皆女」らしい。無駄にかっこよかった。

 

「まぁ、君達には今回の事があるからね。僕からのお礼と言うことであっちの原本棚の隣にある商品棚から好きなのを貰って行っていいよ」

 

「感謝する」

 

綺麗な走行フォームで駆け出すグリムジョーに守は唖然とし何も言えなかった。アーロニーロは既に何かの作業に入っていた。よく見ると動画サイトを見ているようだ。再生数というのが既に10万再生をだしているのがわかる。いったい何の作品だろうか。

 

「僕の作った曲さ。最近はオーケストラ風なものに嵌っていてね。Dyeに取り入れようかと思ったけど、アニメはアニメで専門のスタッフさんがいるから任せているし。完全に趣味さ」

 

「でもコレ。コメントでそうとう賞賛受けてるじゃないか」

 

彼の言うとおり、コメント欄には「ネ申」だったり「プロの仕業」だったりと賞賛のものが存在した。

 

「何を言っているんだい。所詮これは趣味であり、一般人が作ったものだ。本職の人の作品とは訳が違う。彼らはそれを職とし、生活としていて、そして何よりもその曲を皆に聴いて欲しいからこそ、あんなにも良い曲達が生まれるんだよ。確かに評価されないものは数多くある。だからこそこういった業界は生存競争が激しいんだよ。そんな彼らの戦いに水を差すようなこと、僕なら出来ないね。有名になりたいなんてただそんな甘っちょろい理由でされても困るからね。有名になるのは二の次なんだよ」

 

そういってアーロニーロはコメントの一つに指を刺す。そこには「プロより上手い」と書かれていた。

 

「おぉう。流石はプロ入りしてアニメ化まで行き付いた奴の言葉は違う」

 

一蹴された守はアーロニーロの語るプロとアマの違いについてを聞く羽目になった。

 

「そもそも本来、こういった職の人間は有名になりたいとかでするべきじゃないのだよ。有名になるのは二の次、まずは自分が手懸けた作品を聴いてもらいたい。見てもらいたい。そんな素朴で、それでいて挑戦的で純粋な、何とも言えない子供の頃の夢のようなそんな思いがこの職へ向ける構えなのだよ。だが何だ? 最近の若い人間はいったいなんだ? 有名になってお金持ちになりたい。有名になってキャーキャー言われたい。そんな奴らが巣食ってしまうなんて言語道断じゃないか。だからこそ僕は嘆かわしい。僕のように趣味は趣味、職業は職業として見られない頭の緩い馬鹿共を見るのがとても嘆かわしいのだよ。ここでコメントをしている一部も同じだ。すぐに上手いとプロだプロだと無駄に騒ぎ、時にはプロより上手いなんてコメントをする。そしてそれに便乗し調子に乗るアマが本当に許せない。ならオーディションなり何なり行って合格を貰ってから調子に乗ればいい。何故こういった動画サイトの中だけで有名になったからと調子づいて自分は有名人アピールをするか意味が分らない。僕だってこの作品を出版社に投稿したのだってただ皆に自分の頭の中で思い描いたものを読んでもらいたいというそんな思いからだ。アニメなんて二の次だし、金なんて要らなかった。僕の描くものに皆が面白いと、感慨を覚えると、たったそんな賞賛を貰いたい為に描いたものだ。僕が強欲したのはそんな子供達の声とこの作品を読んだ時に現れる笑顔なんだ」

 

「・・・・・・ほんと、お前は漫画家の鑑だよ」

 

「おぉ、分ってくれるかい? なら僕も長々と説明したのも悪くないと思えるよ」

 

熱弁する彼を見て、守は心底喜んだ。実のところ、いつも暗い部屋で一人黙々と作品を手懸けるアーロニーロを心配していたのだ。時々は顔を出しているが殆どが買出しだったり酒飲みの場だったりで、外で見るなんて事がなかったのだ。彼の弱点である日の光ではあるが、それでも宮の中で位は外に出てもいいと思っていたからだ。

 

だが、彼はこれでいい。それが守のたどり着いた答えだった。

 

「それよりいいのかい? あそこで一人悶絶している豹王がいるんだけど」

 

「そこは無視してくれよアーロニーロの旦那。こんなに良い話なのに全部無駄になっちまった」

 

「僕はシリアスよりもコメディが好きなんでね。シリアスをぶち壊すのが僕なんだ」

 

「・・・・・・まぁ、いつものことだしな」

 

良い雰囲気で終わりそうだったが結局、第九の宮から出た途端に匂いを嗅ぎつけてきたティアにボコボコにされたのは言うまでもない。結局、悪いことをするとどこかで必ず戻ってくるのだ。

 

そしてノイトラと合流したグリムジョーは二人仲良く紐なしバンジーを延々とさせられた。守はティアがどこかへ連れて行ったのでその後どうなったのかは分らない。

 

その時、近くにいた女性破面

「あれはもう嫉妬のレベルを超えていましたね。何故自分のを盗まない? とまで言っていましたし。流石にあそこまで行くとトラウマになるんじゃないでしょうか」※プライバシー保護のため、音声を変換しております。

 

 

教訓、もう第三の宮からパンツやら下着類を盗むのは止めよう。鮫が迫ってくる。

 

 

 




『いきなり託された魔法を操る力。その日から、俺の見ていた世界は一変した。
魔倒代役・護国白之、護りたい仲間の為に、熱き思いを激情させて、今、鼓動を詠唱を解き放つ!』

「スターク! Dyeが始まったぞ! うっはー、相変わらずカッケーなぁ!」

『テメェら。テレビを見る時は部屋を明るくしてテレビに近づき過ぎねぇようにな? 俺との約束だぜ?』

「おいリリネット。テレビから離れて見ろって白之が言ってるだろ? 少し下がれ」

「これが現世で話題の漫画が元となったアニメかい。ん? 伊東拓菩というのか原作者は」

「・・・・・・プー助(Dyeで登場する違法精神《イリガルプシュケー》の名前)」

「それにしても、外が騒がしいな。またあの三人か?」

「いつもの事だろうよスターク」

「そう言ってあげるなヤミー。彼らにもいろいろ事情があるんだろう(原因が僕だなんていえない)」

「久しぶりじゃねぇのアーロニーロ。どうなんだ調子は?」

「うん、今一段落終えたからね。こうやってみんなの顔を拝みに来たのさ」


                   とある日の十刃達の会話







誰だ。拓菩を略してtkbなんて思った奴は!byエア

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