IS BURST EXTRA INFINITY   作:K@zuKY

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リハビリがてらの前後編です。
後編は後日投稿致します。


えきすとら・やはり俺の投影バトルは間違っている。(前編)

 仮定。IF。

 もしもあの時、あの場所で、何かが出来ていたら、何かが出来ていなかったら。

 そう思う事は悪いことではない。結果に対しての後悔から出たものだとしても、それを考え、先の、未来で二の轍を踏まないように心がける為の布石としてならば、別段悪い事ではない。

 それが例え、自らの非が殆ど無く、それでも許容しかねる結果を突きつけられた場合でも。

 不本意な結果、満足出来ぬ現実、そんなものは誰しもが持つものだ。

 だから、この結果も、この現実も、既定路線、或いは運命というモノだ。

 

「だからってコレは無いだろう……」

 

 とある時期、とある時間、とある宇宙船からデータを復元した場所。

 怜治によって広々と拡大された殺風景な部屋に、蒼の英雄が獰猛な笑みを浮かべて朱の魔槍を肩に担いでいた。ランサー、或いはキャスターというある視点から見れば力を制限された状態から外れ、生前の能力を余す事無く扱う事が可能になった今の彼は、真実、大英雄の名に相応しい強さを持っている。死力を尽くさねば即座に暗い死がオラクル細胞の核、つまり今の怜治にとっての心臓と脳にあたる部位を貫く可能性もある、そんな確信を怜治はヒシヒシと感じていた。

 感じているが故に、げんなりとした表情と下方に限界突破したモチベーションを持っているわけだが。

 その部屋の隅には、何処か呆れた表情で対峙している2人を見る錬鉄の英雄と、シャーウッドの森の守護者が佇んでいる。いや、微妙に罪悪感を感じているのが1名、その1名をもう1名が時折「アンタマジ何やってんの」と言いたげな視線を送っていたが。

 

「さぁてと。そんじゃ、そろそろやろうぜ、怜治」

「どうしてこうなった……」

 

 元凶は怜治自身だが、この状況に陥らせた原因の1つは、シロウにあった。

 時は、インフィニット・ストラトスが席巻している世界にワープし、その機体性能と進化の可能性から危機感を持った怜治がシロウに幾度目かの鍛錬を申し出た後まで遡る。

 鍛錬中に覚えのある気配と魔力をを察知したのだ。全力とまではいかないが、限界まで戦っていたシロウと怜治を見ている者が居る事に途中で気付き、怜治が疲労とオラクル細胞の励起によって生じたカロリー不足を補う為に、自室へ戻り、シロウの思念を受け取った宇宙船が、今居るシロウの自室を畳とちゃぶ台等の和風の部屋へと戻させた直後、

 

「よう、精が出るじゃねぇか」

「やはり君だったか。久しぶりだな、ランサー、いや、それともキャスターと言った方が?」

 

 本来の聖杯戦争ではランサーとして凛と共に、ムーンセル・オートマトンによってエミュレートされた聖杯戦争では北欧魔術を主体に肉体と武器を組み合わせた戦闘術を扱うキャスターとして怜治と共に戦い抜いた男が、唐突に姿を現した。

 霊核も無い、サーヴァントでなくなった彼が姿を消す事が出来るのは、一重に彼が扱う魔術に隠蔽があったからだ。

 トレードマークの朱色の魔槍を持たず、普段着である黄色のアロハシャツと青いジーパンを上手に着こなし、蒼穹色の短髪を逆立て、紅色の眼が特異な、だが野性味溢れる美丈夫だと主張している顔の造り、その口許は緩やかな弧を描いており、無邪気さを表していたが、キャスターと呼ばれた事でそれはへの字へと変わる。

 

「よせよ、もう聖杯も何も関係無いだろ」

「ならば、クーとでも呼ぶべきかね?」

「あぁ、それで良いぜ。俺もシロウと呼ばせて貰うしな」

 

 ふむ、と腕組みをして思わず沈黙するシロウ。いや、名前で呼べと言わんばかりのあの態度だったのだから言ってみたのだが、実際肯定されてしまうと違和感が強かったのだ。

 まぁ慣れれば良いか、と直ぐに頭を切り替えたのは当然として、

 

「それで、私に何の用だ? いや、怜治の方か?」

「用があったのは怜治になんだけどな。鍛錬に水を差す真似はしたくなかったんだよ」

 

 クランの猛犬らしい、ケルト神話における大英雄らしい言葉に納得するシロウ。死力を尽くして、全力を振り絞って、限界を突破しての戦を望む漢の人生の過程と末路を振り返れば、その言葉に重みを感じるのは当然だろう。

 

「怜治に、か。すまないが、期間をおいてやってくれないか。転移直後というものもあるが、色々あってな、本人も参っているようだった」

「あぁ、ちょっと前に妙な感覚があったのはそういう事か――」

 

 そりゃタイミングミスったな、と左手で自身の後頭部を抑えるようにして撫でるクー・フーリン。怜治に用がある、という言葉に、ほんの少しだけ目付きを鋭くさせ、シロウは聞いた。

 

「一応聞いておくが、怜治に危害を加える類の……すまない、違ったか」

「ったりめぇだろ。何で俺がそういう事しなきゃなんねぇんだよ」

「となると、君もロビンフッドと同じか。降って湧いた第2の人生を謳歌する、という風な」

「――あ? アイツも居んのかよ」

 

 シロウの言に、少し違うと言いかけて、二重の意味で顔を顰めてみせるクー・フーリン。無理もないだろう。初っ端の言では感謝も恨みもなく、ただ現実として受け止めている心境なのにそう言われ、2言目には眼の前の無銘(シロウ)ではなく、エミヤシロウ(第五次聖杯戦争時のアーチャー)という存在と同等レベルで相容れない奴の話題が出たのだ。

 クー・フーリンもシロウも、ロビンフッドも、他の元英霊達も、この船に搭乗している者達全てに共通している事は、怜治が元マスターで、元英霊達は元サーヴァント、そして1度以上、文字通り殺し合っている、この3点だ。

 故に、怜治がマスターだった時のクー・フーリンはロビンフッドの顔のない王を捜索のルーンで、イチイの結界を炎のルーンで、イチイの毒を魔眼すら遮断するルーンでそれぞれ破り、自己強化のルーンと宝具を組み合わせてステータスを大幅に上回らせた状態で近接戦闘に持ち込んで封殺した過去がある。それを指示したのは怜治だったが。

 逆の立場だった場合は、ランサーとして怜治の前に立ちはだかっていたのだが、クラス上、ルーン魔術を使いこなせない為にイチイの毒と顔のない王、更には相手の戦力の6割をも削る陣地破壊によって完封された過去があった。それを指示したのも怜治だったが。

 更に、お互いに死力を尽くす意味合いが違った事や、対決した際にお互いが言った言葉で抉りあった結果、ガチギレしたのだ。

 曰く「キャンキャン吼えるだけの狗っころが」

 曰く「テメェはコソコソコソコソ泥の中を這いずり回ってんのがお似合いだ」

 以降、エミヤシロウ以上の犬猿の仲となったのは言うまでもない。

 

「それで、怜治に何の用だ?」

「あー、まぁ、ちょっとな」

「ちょっとでは判らんよ。一体どうした、君らしくない」

 

 心底不思議そうにそう聞いてくるシロウに、確かに俺らしくねぇな、と息を吐くクー・フーリン。

 

「まぁ、一応俺も思う処があるからな、一発殴ってチャラ、ってわけじゃねぇが」

「……成る程、怜治と1度戦いたいのだな?」

 

 おー流石に判るか、と白々しい拍手を送るクー・フーリンに対し、頭痛を感じ始めたと言わんばかりにこめかみを揉み始めるシロウ。しまった、そういうバトルマニアな人種だった。怜治との鍛錬を見られる可能性もあったのだから、怜治が来た時点で部屋にロックをかけるべきだった、と後悔しながらも、

 

「君が手心を加える事が出来るとは到底思えないのだが」

「するわけねぇだろ。第一、オマエと互角以上に打ち合える英雄(奴)に手加減なんて失礼だろ」

 

 その言葉を聞いて、深々と溜息を吐くシロウ。クー・フーリンは本気だ。本気で、怜治との全力戦闘を望んでいる。限界までではなく、今現在、持てる全ての力を使った、いわば短期決戦を。それも、戦場や戦略が一切混じらない場所でだ。シロウはそう判断した故に、ピシャリと言い放った。

 

「言っておくが、殺し合いは許容出来んよ。私が止めに入るぞ」

「だろうな。だからよ」

「うん?」

 

 何だ、私と戦うのか?と視線を上げてみたシロウだが、別にそんな事もないようで、何やら企みを思いついたような表情を浮かべていた。

 

「殺し合いにならない程度なら、良いんだろ?」

「……手心を加えないのではなかったのでは?」

「殺し合いと手合わせは別物だろ。そこら辺は俺も弁えてるぜ、幾らなんでも」

 

 本当か、とやはり喉元まで出かかった言葉をどうにかこうにか飲み干して、シロウは思案した。彼の誓約(ゲッシュ)に嘘はつかない、は無かった筈だが、クー・フーリンがこういう時に嘘をつくとも思えない。バトルジャンキーだが、そういう点では信頼性はあるのだ。それに、伝承上では兄弟子が居たり、師の下で散々鍛錬はしている。そういう意味での加減は出来るだろう。

 うぅむ、と腕組みをして様々な可能性を検証し、やはり危険だと首を振ろうとした時に、クー・フーリンはそのタイミングを読んだように言葉を継いだ。

 

「ま、どうしても信用できないってんなら、誓っても良いんだぜ?」

「――何?」

 

 クランの猛犬が出した誓いという言葉は、凄く重い響きを伴っている。誇りを重んじ、誓約を遵守した結果、命を落とした英雄が新たな誓いを作ると言ったのだ。それは、聖杯戦争における令呪に等しい強制力を持つと同義だ。

 そこまで言うのなら、と思わずシロウは首を縦に振りかけ……自分の事ではないのだから安易に意思表示するのは拙いと気付いて動きを止めた、その時。

 

「シロウ。オマエ、今、首を振ったな?」

 

 かかったな、と笑みを浮かべるクー・フーリンに、しまったという表情を映し出したシロウ。微かにだが首を振りかけ、途中で我に返って止めたとしても、この男が見逃す筈が無い。

 限界まで怜治と戦っていた反動で、思考力が落ちたのか、と後悔しながら分析するも、後の祭りだ。

 仕方無しに、シロウが、

 

「一応言っておくが、怜治本人から承諾を得ないまま戦おうとしたら、全力を以って邪魔しにいくぞ」

「判ってるって」

「それに、流石に刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)は駄目だ。因果逆転がある以上、怜治が防げる確証が無い」

「仕方ねぇなぁ」

「使う気だったのかね!?」

 

 実際は、刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)なんて使うわけがなかった。クー・フーリンが言う「思う処」なんて別になんも無い。そもそも、シロウとの鍛錬を見なければクー・フーリンとて戦うなんて選択肢を取らなかった。何となく暇だったからシロウの部屋へ遊びに行ったら、面白いものが観れた。という、ぶっちゃけ勝負を仕掛けようとする為の方便に過ぎない。

 

 これが、最初のフラグというか、顛末というか。

 

 そして時は現在より少し前、ツーマンセル・トーナメントが開催される数日前へと戻る。

 のんびりとロビンフッドが出した緑茶を呑みながら、シロウが作った餡蜜を平らげて俺、大満足と言った風な怜治の眼の前に、

 

「よう、邪魔ーするぜー」

「ぶほぅ!?」

 

 陽気な挨拶と共に、クランの猛犬が現れたのだ。怜治にとっては全く予期せぬタイミングだった事、そして、ついに来やがった、だが今かよ!!という想いもあって、意図して口に入っていた緑茶を噴いたのだ。まぁ、咄嗟に首を誰も居ない方向へ振った御陰で被害は床のみであったが、拭くのは怜治ではなくシロウだ。そして「俺の緑茶……」と哀しそうな声をあげたのがロビンフッド。そのロビンフッドが無惨に散った緑茶からクー・フーリンへと視線を移動させると、不機嫌そうな表情で、

 

「何しに来たんだよ」

「テメェに用はねぇよ」

 

 早速、視殺戦をおっぱじめるロビンフッドとクー・フーリンだが、怜治は咳き込み終えた後、

 

「いやいや、俺も突っ込むぞ、お前さん何しに来たんだよ」

「やり合いに来たに決まってんだろ」

 

 断言してきたクー・フーリンに対し、怜治は嫌な予感が今炸裂するとは、と言った風な、冷や汗が噴出したと言わんばかりの表情を浮かべた。

 

「悪いが今、手合わせする理由も時間もが無い。明後日は重要な――」

「怜治、俺に借りがあるだろ、でっかい借りが」

 

 借り。

 その言葉の持つ意味を怜治は即座に思い当たり、苦い表情を浮かべた。それを持ち出されると非常に弱い。ただでさえ主従関係を結んだ際に助言やら何やらを貰って切り抜けていたのだ、個人的な見方をすれば仇で返しているように感じられたとしても仕方ないとすら思ってしまう。

 確かに踏み倒しは良くないと思ってはいるのだが、だからといって殺し合いに発展しかねない全力戦闘は勘弁願いたいものだと思った怜治は、

 

「……戦闘以外で返す、というのは無理か?」

「無理だね。シロウと互角で戦えるのを見ちまった。俺は、オマエと戦ってみたい」

 

 一発ブン殴られる代わりに命懸けの勝負とか洒落にもならん、とぼやきながらも、抵抗する怜治だったが……

 

「それに、シロウが許可を出したしな。殺し合いにならなければ良いってな」

「おいそこのコーチャー」

「シロウ、アンタ何してんの」

「いや、アレは口約束というか、弾みでな……ほら、限界まで付き合った直後というものは、往々にして集中力が落ちる事ってあるだろう? それにそもそも――」

 

 ロビンフッドと怜治からド強い視線をブチ当てられ、思わず視線を逸らしたシロウが何やらボソボソと言い訳めいた事をのたまい始めたが、途中から誰も聞いていない。怜治はこの後のバトルフラグが解消されないだろうから、全力で嫌がらせをしてやろうと心に決めた上に、言い訳を聞こうかどうかの前にロビンフッドが速攻で噛み付いたからだ、それも結構な毒を持って。

 

「つーか、大将がやる気になんないんだから帰れよ」

「テメェが指図する事じゃねぇよな、それ」

「あぁ? アンタが此処に来てるのが既にオレの中では我慢ならねぇんですけど? ナニ? また何時かのように毒殺されたいわけ?」

「あ? 縛りが無い状態で勝てると思ってんのかよ。イチイの毒なんざどうってことねぇよ。また封殺されてぇのか?」

 

 まさに犬猿の仲。アイルランドの英雄とイギリスの英雄では、国の対立が今現在も続いているからか、仲が非常に宜しくないのもあるだろう。お互い傷抉りあったというのが一番の理由だろうけれども。

 怒気どころか殺気丸出しの2人に、殺し合いはしないで貰いたい、というかあの結果は俺の戦法のせいなんだけどな2人とも、そこ忘れてるだろ、と思いつつ大きく溜息を吐いて止めに入る怜治。

 

「はいはいケンカしないケンカしない。判った、1戦だけな。殺し合いじゃないなら俺も構わんよ。何時までも借りっぱなしってのもアレだ、此処で清算しよう」

「え、大将、マジで言ってんの? コイツ絶対に弾みと勢いだけで刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)使うよ?」

「弾みでんな事するか」

「いや、別に使っても良いが……多分意味が無いと思うぞ」

 

 一転して困惑の雰囲気を出す一同。シロウはある事実に思い当たり、逸早く納得していたが、ロビンフッドやクー・フーリンはそうはいかない。マスターとサーヴァント、或いは敵として立ち塞がった際、刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)の威力は嫌でも理解している筈なのだ。それを意味が無いとまで言うのは、不自然だと感じていた。

 怜治の言葉の意味は、現時点ではシロウしか知らないのだから、仕方ないのだが。

 

「大将、流石にそれは舐め過ぎって奴じゃ……」

「おい怜治、そりゃあ俺が取るに足らないって言いたいのか?」

 

 だとしたらマジで殺りあうぞ、と言外から伝えてくるクー・フーリンに対し、手と首を全力で振って否定する怜治。言葉が足りないのは相変わらずだが、矜持を傷つけかねない言葉運びはマズイ手だったと、深く反省しつつ、

 

「いやいや、違う違う、全然違う、そうじゃないから落ち着いてくれ、すまん、言葉が足りなかった。確認するがな、クー、ゲイ・ボルクって確か因果逆転とかいう奴で心臓にほぼ必ず当てる必殺技だが、弱点に当てるという概念は無いんだよな?」

「まぁ、そうだな」

「なら、今の俺だと心臓が無いから、宝具の真名解放は速度以外は意味が無いと思うぞ、多分」

「は?」

「へ?」

 

 凍り付く2名と、やはりそうだったか、だがそれを説明したら本当に全力戦闘になるというのに、と額に手を当てて溜息をつくシロウ。

 それに全く気付かず、怜治は説明を始める。

 

「ちょっと理由があってな、身体を改造されてガワだけ人間ぽくなっているだけで、臓器とか血液とかはもう無いんだよ。あぁ、サイボーグとか機械化とかでもなくて」

「ごめん大将、ちょっと意味がわかんないんだけど……」

「ええと、まず始めに身体を遺伝子から変異させられてな。その次に、俺自身が希望してとある手術を受けてな。結果的に見ると俺は完全に人間やめたわけだ。一応、心は日本人のまま、のつもりだが」

 

 説明不足にも程がある言葉だったが、それぞれ微妙な納得の仕方をしていた。ロビンフッドは、ラウラちゃんを抜いて怜治を攻撃する為の布石として放った毒が効いていなかった理由はそれかと誤解し、クー・フーリンは人間やめてたんなら元がつくとは言え英霊であるシロウとやりあえるのも頷けると思ったのだ。

 それ故に。

 

「――と言う事は、全力(マジ)でやりあえるって事だなっ」

 

 歓喜の声を上げるのはシロウの予想通りであったが、怜治は今更それに思い当たり、顔を青褪めさせていた。キャスターとして共に戦場を駆け抜けていた記憶と、ランサーとして眼の前に立ち塞がった時の動き方がまるで違う事を思い出したのだ。

 キャスターらしい中遠距離の魔術や投擲術に加えて自己強化からの剣と槍と体術の複合技、最速のサーヴァントであるランサーを体現した神速を体現した速度で繰り出してくる必殺の槍術。

 それが自分の失言でダブルパンチとして来るのだ、いや、適正としてならバーサーカーもある。

 という事は、ガチの殴り合いをした場合、伝承通りの姿になる可能性もある。そりゃ青くもなるが、完全に自業自得である。

 しかし、今更やっぱナシでなんて言える筈も無い。精々言えるとしたら、

 

「……念の為言うが、殺し合いの方じゃなくて、手合わせの方の試合だからな? それと、部屋を変異させての試合だから、余り強力な武器や技を使うと宇宙船にダメージフィードバックが入るから、該当するような技は使わないようにな、いやマジで」

 

 とだけだ。

 ただ、クー・フーリンもそれは重々承知の上だ。別に殺したいわけでもなく、殺し合いがしたいわけでもない。ただ純粋に、怜治が何処までやれるか、どの強さにいるかを知りたいだけだ……いや、命をかけた戦いは何時でも歓迎しているのだが、それを今それを強要すれば確実に袋叩きにされるだろう、幾らなんでもそれは望むところではない。

 覇気の伴った応、という返事を聞いた怜治が溜息をついて、全員が立ち上がった事を確認すると、言葉を舌に乗せ、部屋を変えた。シロウとセンクラッド、そしてラウラと千冬の模擬戦を行ったタイプの部屋だ。勿論、市街戦を想定したものではなく、平坦なままの状態だ。

 

 そして、冒頭へと話は繋がる。


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