IS BURST EXTRA INFINITY   作:K@zuKY

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注意
・この話は、時間軸を設定しないまま書き上げてます。
・この話は割とメタで出来ています。
・プロット無し、メモ帳無し、勢いだけで今しがた書いた結果が御覧の有様です。
・ものっそいキャラクター崩壊を起こしています。シロウファンの方々本当にすいません。
・いないと思いますがオリ主好きの人もすいません。
・今週末にちゃんとした続編をあげます。


えきすとら・厨二病でも投影がしたい!

 何時もの様にシロウが紅茶を淹れ、それを注がれるままに飲んでいたある日の事。

 ふとした思い付きから、全ては始まった。

 

「――そういえば、シロウ。一つお願いしたい事があるのだが」

「うん? どうした怜治、改まって」

「いや、何ね。俺を調べて欲しいのだが」

 

 どういう事だ?と言わんばかりの表情を浮かべたシロウは、怜治の言葉に耳を疑う事になる。

 

「俺も投影を使えるようになりたいなと思ったわけだ」

 

 声が出なかった。突然の出来事に混乱していたのだろうか……

 いや、そうじゃなかった……ただ目の前の少年に。そのあまりの阿呆さに。

 俺は、言葉を失っていたんだ。

 

「……というわけで、取り合えず怜治、まず深呼吸をしようか」

「? はいはい」

「吸ってーー、吐いてーー、吸ってーー、吐いてーー……もう一度、私に質問を投げかけてみてくれ」

「いや、だから投影を使いたいのだが」

 

 その言葉に、シロウは無言で立ち上がり、飾り窓から空を眺めて、太陽が二つ無い事を確認した。もう一度言うが、飾り窓だ。

 

「すまない怜治、ムーンセルの使いっ走りを長くやりすぎたせいか、耳が経年劣化しているようだ。もう一度、何と言ったか、詳細に頼む」

「だから、投影だよ投影、投影魔術、投げる影に、魔が差す術だ」

「……虚数魔術は扱えないなぁ、流石の私でもそれは専門外だ」

「シロウ、お前さんが扱う魔術を俺に教えてくれってさっきから言っているんだが」

 

 大きく溜息をついて、シロウは重々しく告げた。

 

「マスター、私は医者でも心療内科医でもありません。今のマスターにはそちらを頼る方が良いと存じ上げます」

「あれ? どうしたシロウ、心の距離が開いているぞ? もっとフランクだっただろう? フランク、フラーンク」

「黙れ、もしくは死ね」

「距離縮め過ぎだなオイ!?」

 

 妄言再生機と化している怜治をそろそろどうにかしないといかんと内心どころか表情も嫌々なままに、シロウは端的に告げた。

 

「魔術師にしか投影は出来ないのだよ、怜治。君が知らないわけがない」

「夢エクスプロージョンな答えありがとさんよ。だがな、シロウ。俺はどうしても投影がしたいのだ」

「……何故今になって投影魔術を扱いたいのか、理由を聞いても良いかね?」

「是非も無い」

 

 そう言った怜治は、喜色溢れる気色悪い笑顔を浮かべ、

 

「インターネットで――」

 

 めきょ。

 という嫌な音が怜治の顔面から響いた。瞬間的に投影魔術を行使し、虎印の竹刀をめり込ませた音だ。ご丁寧に強化を己の身にかけていた。しかも、この上なく詠唱、武器の振り共に彼の記録の中で最速を叩き出していた。こんな所で最速を出した事に、思わずシロウは眼の端に涙っぽい光を宿し、

 

「クッ、嘆かわしい。まさか怜治がインターネットの情報を鵜呑みにする程の愚か者だったとは。一体私はどうしたら良いのだ」

「取り合えず、俺の顔面凹ます事からやめようか」

 

 メリッという物理的に出してはいけない音と共に、えいしゃおらぁと竹刀を顔面から抜き取った怜治は、ポイス、とばかりに竹刀を放り出して、

 

「まぁ、経緯はともかくだ。単刀直入に言うが、俺も魔術が使いたい」

「単刀直入に返すが、魔術回路が無い普通の人間には扱えん」

「大丈夫だ、問題ない。俺はこれでも元日本人兼元グラール太陽系デューマン兼元アラガミ現自称グラール太陽系デューマンだ」

「……その言葉を早口言葉で三回言えたら考えてやらんでもない」

「大丈夫だ、問題ない。大丈夫だ、問題ない。だいだいだいだいだだだだだだ!!」

 

 途中から元英霊の物を言わぬ物言いというか、フル強化済全身全霊全力全開のアイアンクローが決まっている為、壊れかけのラジオばりにおかしな発言になっている怜治。

 オラクル細胞が予期せぬダメージに悲鳴を上げて戦闘状態へ移行した事を受け、怜治は悲鳴混じりに制止の声を上げた

 

「待て、待ってくれ、流石に割れかねん」

「割れてしまえ、そんな頭」

 

 吐き捨てる様に呟いたシロウ。流石にイラっと来たのだろう。あんなん言われたら誰だってイラっと来る。宥めるように腕をポンポンと叩いてくる怜治に、大きく溜息をつきながら手を離した。

 

「全く、余裕が無いなシロウは」

「君は判ってて言っているな? なぁ、そうだろう? その言葉は空気が読めない独善的な愚か者がよく言う台詞だろう? なぁ?」

「待った、流石に待っただ。とにかく、俺は魔術を使いたい」

「魔術回路が無ければ使えないと言っただろう」

「魔術回路が有れば使えるんだろう?」

 

 その言葉に眼を剥くシロウ。聞き捨てならぬ言葉を聞いたのだ。魔術回路があれば、確かに魔術は扱える。後は投影魔術の適正があるかどうかを解析すれば良い。

 だが、そんな事がありえるのか。異世界から来たものが、魔の理を体に宿す。確かに平行世界ならば有り得るだろう。だが、本当に?

 

「……あるのか?」

「わからんから言ってるんだろう」

 

 あぁそっちか、と肩をコケさせ、半眼になるシロウ。まぁ、本人に結果を通告してやれば諦めもつくだろう、この時シロウはそう考えていた。

 

「判った。解析をかけるから少しじっとしておいてくれ」

「頼むぞ」

 

 その言葉は自身に向けた台詞でもあるようで、瞳を閉じて待つ怜治に、嫌々全開という風に怜治の肩を手に当てて、シロウは理を紡ぐ。

 

「――解析、開」

「あーそれだ」

「始はぁ?」

 

 いきなり詠唱を止められ、思わずぽかんとした顔を怜治に向けるシロウ。ドヤ顔で何やら妄言を吐き始める怜治。悪い方向に絶好調である。

 

「その呪文詠唱、良いよな」

「……はあ、そうか……ええと?」

「ああ、すまん。以上だ」

「……君は暫く黙ってくれ」

 

 気を取り直し、手を再度当て直して、シロウは若干投げやりな感じで呪文を詠唱した。

 

「――トレース、オン」

 

 魔術回路27本に魔力を通し、センクラッドの身体を解析し始めたシロウだったが、驚愕の表情を浮かべ、罅割れた声をその口から零れ落とす事になった。

 眼を全開に見開き、酷く驚いた表情を浮かべたシロウが、

 

「これは――」

「む、どうした? 魔術回路があったのか?」

「いや、一言で言うと、判らん。ちょっと待ってくれ、流石に予想外だ、コレは何だ、一体」

「は?」

 

 余りに予想外な結果に、思わず怜治も驚いて閉じていた眼を開いたのだが、すぐに静かにと鋭く叱責され、肩を竦めて瞳を閉じた。

 だが、シロウは焦った表情のまま、自身が得意とする解析魔術を行使し続けるも、次々と異常(エラー)を吐き出す結果に、焦りを加速させていく。

 

「創造理念……クッ、ダメか、基本骨子……ダメだ、読めんッ……構成材質……なんでさ!?」

「……あーシロウ、あの、ちょっと良いか?」

「なんだねっ?」

「取り合えず、お前さんが混乱しているのは判ったのだが、一体何をそんなに焦っているんだ?」

「これが焦らない筈が無いだろう!! 君の身体を構成している物質が正体不明なのだよ!! 君が単細胞生物ではないのは見て判る、だが結果として出ているのはそれなのだ、これをおかしいと言わずして何と言う!?」

「あー……その、シロウ。すまないが、俺、今、アラガミ」

 

 ピシリ、と空気にヒビが入った。

 痛々しい沈黙。

 物凄く、痛い沈黙とそれと同種の表情を浮かべる怜治。もしくは、それ、言ってた筈なのにどうしてそうなった、と言わんばかりの表情。

 居たたまれなくなる空気の中、コホンと咳払いをしたシロウが気を取り直したのか、

 

「まぁ、結果としてまじゅちゅ、魔術回路は無かったわけだ」

「噛んだな? 今お前さん、絶対に噛んではいけない部分で噛んだよな?」

「ええい、君が妄言を吐くからだろう!!」

「逆ギレも大概にしろよお前さんは」

 

 流石に辟易とした風に言う怜治は、溜息をついた。ここまでは別に規定路線なのだ、問題はこの後だ。

 

「まぁ、魔術回路が何なのか、俺にはわからんので恐らくは元の身体にも無かったのだろう。問題はそこじゃない」

「何か考えがあっての事だったら初めっからそう言いたまえ」

「わかったわかった。で、物は相談だが、魔術回路を見せてくれないか?」

「は?」

「もしくは――」

 

 ガシリ、とシロウの肩を両手で掴んだ怜治。鈍痛と共にメキリメキリという音を立てた自身の肩を掴んできた元マスターに、嫌な予感が駆け巡った。

 

「怜治、ど、どうした?」

「――喰わせろ。なぁに、お前さんを構成するモノを喰えば、後はオラクル細胞が反応してくれるだろうよ」

「ま、待て、落ち着け、オイ服を肌蹴させるな!!」

「先っちょだけ、先っちょだけで良いから!!」

「この、たわけ!!」

 

 ぞっとする様な低い声で阿呆な事を言った割には思いっきり全力で掴みかかってきている怜治に対し、持てる全ての力をフルに使って顔面を殴り飛ばしたシロウは何一つとして間違いなんかじゃない。色々な身の危険を感じたのだ、流石に今のは撲殺しても構わんのだろう?と言わんばかりの、痛打であった。

 モロに食らって砲弾のように吹き飛び、轟音と共に壁に叩きつけられた怜治は、呻き声をあげながら、背中を摩っていた。ちなみに、恐ろしい事だが、そんな自体になっても何一つとしてテーブルや壁にかかっているタペストリー等の調度品には傷一つ付いていない。

 

「ぐぉおおぉぉぉおあぁ……本気でブン殴ったなお前さん……」

「冗談でも、二度と、言うな」

 

 本気で怖気が走ったのか、息を荒げつつ、二の腕を摩りながら鷹のような瞳で睨みつけるシロウ。

 

「あと、そんなに投影がしたいならナノトランサーを用いれば良かろう、アレなら投影の上位魔術と言っても差し支えない程万能だろうに」

 

 その言葉に、はぁぁぁああ、と大きな溜息をつきながら、怜治は言い放った。

 

「シロウ、お前さんは何一つとして判っていない。良くそれで電脳世界型主人公を務めてきたものだ」

「……何をだね? あと主人公とは何だ一体。自分の人生なら皆等しく主人公だろう」

「黙って聞け。良いか? 科学で到達出来るのも魔術や魔法が到達出来るのも、想像の理念があるからだ。だが、手段が決定的に違う。内に宿る力を持って事を成すのが術ならば、外に在る存在を持って事に当たるのが科学だ。想像は同じでも、創造方法はまるで違う。故に、俺は術を使いたいんだよ」

「…………良く判らんのだが、魔術は使えないと今しがた判明しただろう。おっと、私を喰おうとするなよ。その時は勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を抜く事も辞さんぞ」

「それだよ」

 

 またか、と溜息をついて、投げやりに何がだと言ったシロウに、舌鋒鋭く怜治は突っ込んだ。

 

「その、カリバーンというのは、どういう風に書くんだ?」

「は? 書き方とは?」

「読み方はカリバーンだろう? だが日本語ではどう書くんだ? まさかカタカナではあるまい」

「……しょうりすべきおうごんのつるぎ、だが」

「それだよ」

 

 手を叩いて、人差し指でシロウをビッと言う擬音が聞きそうな勢いで指を差してから、うんうんと頷いて怜治は言葉を繋げた。

 

「良いか? ナノトランサーは、ナノトランサーだ。俺の持っている武器にカリバーンもあるしエクスカリバーも二種類ある」

「ちょっと待とうか」

「良いから先ずは話を聞け。だがな、グラール語でもそんな書き方はしなかった。良いな、グラール語でも日本語でも、俺が持っているものはあくまでカリバーンはカリバーンであり、エクスカリバーはエクスカリバーだ」

「……ふむ?」

 

 嫌な予感がしてきたぞ、というげんなりした表情を浮かべながら、シロウは相槌を打った。

 

「だが、お前さん、今さっき言った事をリピートアフターミー」

「……英語が壊滅的にダメなのはわざとだと思っておくが。しょうりすべきおうごんのつるぎ、だ」

「そう、それだよ。お前さん、投影魔術を扱う際にも、お前さんの固有結界も、全て横文字だの意訳だのがあっただろう。ほら、お前さんの固有結界、アンリミテッド・ブレード・ワークス、コレにもあるのだろう、別名が」

「…………無限の剣製」

「どこにワークスがあるんだよ。次、詠唱だな詠唱。ほれ、言ってみれ」

 

 何処か煤けた表情で、ボソボソと詠唱を紡ぐ元英霊は、何と言うか見ていて哀れな程、泣きそうな、笑いそうな、そんな半々の表情のまま、

 

「――I am the bone of my sword.

   Steel is my body, and fire is my blood.

   I have created over a thousand blades.

   Unknown to Death.

   Nor known to Life.

   Have withstood pain to create many weapons.

   Yet, those hands will never hold anything.

   So as I pray, unlimited blade works」

 

 ……本当ならば相当格好良い筈の詠唱なのだが、言っている術者本人のやる気とモチベーションと涙腺が悪い意味で限界突破していた為、何処からどう見ても独り言をぶっ放している怪しい中東人にしか見えなかった。

 だが、そんな状態の元サーヴァントにも容赦なく切り込んでいくのが、我らが主人公、元地球人の神薙怜治である。

 

「ほうほう。じゃ、ちゃちゃっと日本語で言ってみろ」

「――体は剣で出来ている。

  血潮は鉄で、心は硝子。

  幾たびの戦場を越えて不敗。

  ただ一度の敗走もなく。

  ただ一度の理解もされない。

  彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。

  故に、生涯に意味はなく。

  その体は、きっと剣で出来ていた。

 ……もう勘弁してください」

「駄目だ。俺が言いたいのは、だ。そんな格好良さげな言葉や意訳を使っての表現は魔術には許されても、科学では一切赦されないという事だッ!!」

「……実際やったんだな?」

 

 凹みながらも、せめて一矢をとばかりに必中させた言葉だったが、何故か怜治は嬉しそうにその通りだと頷いた事で、シロウは絶望した。まだ凹まされるのか俺は、と、生前の口調にすら戻りかけていた。

 

「寄りにも寄ってワイナールとエミリアから全部駄目出しされた俺がここにいるわけだ。良いか、科学通り越してSFな世界の住人の、滅ぶ筈だった者からは冗談だと思われて大爆笑され、有り得ないセンスを持つ人間からでさえ『カッコ悪いじゃん』と返された俺の絶望は計りしれんのだ!! 故に、俺は無茶だろうが無理だろうが道理だろうが全ての言葉を過去にして、魔術の習得を望む!! 厨ニ病でも投影がしたい!!」

「……ナノトランサーから取り出す際に、何か決め台詞を言えば良いのでは?」

「駄目だ。魔術じゃない。科学で許されるのはキャストが大型銃器を扱う際のコード名や武器名を叫ぶ程度だ。デューマンやヒューマン、ニューマンには赦されず、ビーストに至っては叫んだら巨大化がバレるから無言のまま巨大化する有様だった」

 

 もう何を言ってもこいつは魔術の習得を望むのか、と思うのと同時に、こんな奴が世界を何度も救ったのか、情けない。とシロウは滂沱の涙を流した。

 がしり、と襟首を掴み、真剣な表情のまま、怜治は強要した。

 

「さぁ教えろ、英霊ならば魔術回路位の一つや二つ、カパーっと開かせてみせろ。今すぐ教えろ、さぁ教えろ」

「もうホント、勘弁してください……」

 

 ガックンガックンと揺さぶられながら、シロウは泣いた。泣きに泣くしか無かった。

 そこに。

 

 控えめなノック音が響いた後、ドアが開いてセシリアが「ごきげんよう」と言いながら、入ろうとした。

 

「ファーロスさんとシロウさんにお話があ……って……」

 

 確かに、セシリアは見た。

 割と鬼気迫った表情で、護衛の襟首を揺さぶる異星人の姿を。

 割と本気で泣いている、護衛の姿を。

 

「あ。あーすまない、今少し立て込んでい――」

「何かしら大変だと思いますが、お二方共、頑張って下さいまし。では、ごきげんよう」

 

 そう言って、セシリアは歩くような速さで逃げ出した。

 

 結局だが、この後、魔術回路がオラクル細胞で再現出来ない事に加え、魔術の素養無しの判定を受けた怜治は相当時間凹んだ。

 勿論、とばっちりを受けたシロウは暫くの間、怜治の呼び出しには一切応じず、飯も自分のものしか作らなかった。

 全方向、誰にとっても得が無かった。




・中二病でも恋がしたい!はKAエスマ文庫から二巻まで発売しておりますが、この話とは何の関連もありません。

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