Persona4 The StrikerS in MID-CHILDA (現在、凍結中…)   作:Neo-PSI

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第8話『星光と愚者』

>時を少し遡り、悠が到着する直前・・・。

 

 

>第1管理世界〈ミッドチルダ〉西部、山林地帯。

 

 

星々に照らされた穏やかな闇夜の空を1つの桃色の光が、まるで世界を2つに分かつかの如く駆け抜けている。

 

 

>高町なのはは、夜空を只1人で飛んでいた・・・。

 

 

1部隊の隊長を務める彼女が、何故たった1人で飛んでいるのか・・・。

まずは、順を追ってそこから説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

>更に時を遡り“機動六課”・・・。

 

 

今日の業務も終わりに近づき、人の姿も疎らになった隊舎の中に一人の女性の姿があった。

 

高町なのはだ。

 

まだ10代にも拘らず、歴戦の兵であり多くの次世代の魔道師達の育成を手掛けている彼女が不安に染まった顔をして息を切らしながら走っている。彼女から指導を受けている者達がこの姿を見たら目を丸くする事であろう。

 

 

 

「シャーリー!次元震が観測されたって!?」

 

 

機動六課内に存在する部隊の1つ、ロングアーチになのはが駆け込み、データの調査を行っている眼鏡をかけた茶色のロングヘアーの女性、シャーリーに詰め寄った。

 

 

 

「なのはさん!ええ、そうなんです!」

 

「それで規模は!?」

 

 

シャーリーもなのはに、負けづ劣らずの慌てた表情をしている。その表情に更になのはの不安感は増幅される。

 

 

「それが・・・、幸いな事に非常に小さいものでした。」

 

「な、なぁ~んだ。よかったぁ~。」

 

 

 

次元震は規模によっては世界が崩壊しかねないものにもなることを、身をもって知っているなのはは、シャーリーの報告に安堵する。

だが・・・。

 

 

「ですが、その発生した場所は未だに不安定で、何が起こるか分からないんです。」

 

「・・・そっか、気が抜けないね。」

 

 

 

ホッとしたのも束の間再びなのはの表情は険しくなる・・・。

すると・・・。

 

 

「・・・。シャーリー、私が現地に行って調査してくるよ!」

 

「そ、そんな!?なのはさんがわざわざ行かなくても!?」

 

「何か在ったらいけないし、私ならすぐに迎える。」

 

 

 

本来なら他の局員に向かわせる所だが悪い事に、彼女の昔からの仲間達は別件でここを離れており、さらに現場に向かえる他の魔道師達もガジェットを破壊するために出払ってしまっている。他にも局員はいるのだが、その局員はまだ実戦経験の少ない最近まで訓練生だった者達の為、荷が重すぎる。故に直ぐに迎えるのは、なのはのみとなるのだ。

 

 

 

「・・・分かりました。部隊長には連絡を入れておきます。」

 

「ありがとう、シャーリー。さっそく、行ってくる!」

 

 

>・・・・・・。

 

 

 

そして、今彼女はその現場に向かっている。

流石、隊長を務めているだけあって、その移動スピードは速く、現場には後数分で着く予定である。

 

 

そんな中・・・。

 

 

【マスター。ガジェットが次元震の観測されたポイントに近づきつつあります。】

 

 

 

彼女の愛機『レイジングハート』から新たな情報が告げられる。

それを聞いたなのはの顔は苦渋に満ちている。

 

 

「くぅ、どんどん悪い状況に・・・。」

 

【・・・ッ!?いえ、待って下さい。】

 

「どうしたの?」

 

【ガジェットの反応が次々にロストしています。】

 

 

 

 

状況が目まぐるしく変わり、告げられる情報が二転三転していく。

この事態に隊長である、なのはも驚き、レイジングハートに確認をする。

 

 

 

「ど、どういう事?逃げたってこと?」

 

【いえ、徐々に反応がロストしています。】

 

「誰かが倒してるってこと?」

 

【恐らく・・・。】

 

 

 

なのはだけでなく、『レイジングハート』も少々困惑しているようだ。

 

 

 

(もしかして、破壊に向かった人達が?)

 

 

 

そう考えるのが妥当だろう。実際に破壊に向かった局員が倒しているのなら何ら不思議ではない。なのははその時そう考え、確認を取る。

 

 

 

「“レイジングハート”、魔力の反応は?」

 

【ロストした付近に魔力反応はありません。】

 

「え!?じゃ、じゃあ一体誰が?」

 

 

 

 

なのはは予想していたものとは、逆の答えに再び驚愕した。

もうなのはの頭の中は、混乱しかけていた。

すると・・・。

 

 

 

【マスター、反応がロストしたのはこの付近です。】

 

 

色々と考えているうちに目的地に到着してしまった様だ。

 

 

「う、うん・・・。」

 

 

 

兎に角、状況を確認しようとなのはが視線を森へと落とすと・・・。

確かにそこには破壊されたガジェットがあった。だがそこに在ったのはそれだけではなかった。

 

 

 

「あ、あれ?誰かいる・・・。」

 

 

 

暗くて分かりにくいが、なのはの目に灰色の少し癖のある髪をした青年がいたのだ。

青年の視線はガジェットに向いている・・・。

何をしているのだろう、何故こんな所に民間人がいるのだろう。

なのははそう疑問に感じ、取り敢えず降りて話を着て見る事にした。

 

 

 

「そこの方!大丈夫ですか?」

 

高度を落としつつ、そう青年に声をかけて見たが、青年はキョロキョロと周りを見渡している。何処にいるのか分からない様だ・・・。

 

 

青年の心境を理解し、再び声をかける。

 

 

「あの、こっちです。こっち~。」

 

 

今度はちゃんと分かってもらえたようだ。

青年はこちらに視線を向けた。だが、その表情は何故か驚いているようだ。

だが、その表情はすぐに冷静な表情に変わった。

 

 

 

「ええ、大丈夫です・・・。失礼ですが、あなたは?」

 

「あ、申し遅れました。私は“時空管理局本局武装隊” 機動六課スターズ分隊隊長『高町なのは』と言います。」

 

 

 

最低限の礼儀としてなのはは、自分の身分を明かし、早速質問を始めた。

 

 

「あの・・・。」

 

「はい、何ですか?」

 

「・・・この『ガジェット・ドローン』達は、あなたが倒したんですか?」

 

「ガジェット、ドローン?このロボットの事ですか?」

 

「え、ええ・・・。」

 

 

 

なのははまず、この人が何者かを明らかにしよう、という目的で質問をした。

 

 

(魔力の反応は無かったし、もしかしたら偶然通りかかったのかもしれない。でも、質量兵器を隠し持っている可能性も・・・。)

 

 

なのはは正体の知れない彼を警戒し始め、彼の答えを待った。

万が一を考えて、直ぐに捕縛できるように身構える・・・。

だが、彼女の予想とは違う答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

「ええ、そうです。」

 

「ッ!?そ、そうですか・・・。」

 

 

 

彼はあっさりと自分が倒したという事を明かした。

何があってもいい様に身構えていたなのはは、心の中でずっこける。

 

 

(あ、あっさり認めた・・・。どうやら、敵意は無いみたいだね。)

 

 

気持ちの良いぐらい正直に白状する彼に、なのはの警戒心は解かれる。

なのはは自分の肩の力が抜けていくのを感じていた。

その時・・・。

 

 

【マスター。】

 

 

突如として、なのはの相棒が話に割って入って来たのだ

 

 

「どうかしたの?“レイジングハート”?」

 

 

レイジングハートの突然の行動になのはは首をかしげる。

 

 

【レリックの反応があります。】

 

「え!?」

 

 

 

 

知らされた情報は肩の力が抜けたなのはを再び緊張感の中に戻した。

慌てた様子でなのはは詳しい情報を聞く。

 

 

「レリックの反応!?何処に!?」

 

【非常に近いです。】

 

「ねえ、君!赤い結晶みたいな物を、この辺りで見なかった!?」

 

 

 

この場に自分より前にいた彼なら何か知っているかもしれないと思い、なのはは彼に詰め寄った。青年はなのはの勢いに若干引いている。

すると、青年は考え込み始めたが、その表情は一瞬で変わった。

如何やら心当たりがある様だ。だが、何故か青年は自らのポケットに手を突っ込んだ。そして、そこからある物を取りだした。

 

 

「もしかして、これの事ですか?」

 

 

それは、先程自分が説明した特徴そのままのもの・・・、“レリック”だった・・・。

 

 

「ああ!?そ、そう!それだよ!!」

 

【貴方が持っていたのですか。】

 

 

 

レイジングハートもまさかの展開に驚いている様だ。

驚いているなのはに対し青年が逆に訪ねてくる。

 

 

「これ、重要な物なんですか?」

 

「う、うん。」

 

「そうでしたか。それでしたら、あなたに渡した方がよさそうですね。」

 

「あ、ありがとう!」

 

 

 

青年はなのはの返答を聞いて、すぐにレリックを渡してくれた。

 

 

(よかった、この人やっぱり敵意は無いみたいだね。協力してくれたし。)

 

 

 

協力的な青年の行動に、なのはは“彼は敵ではない”と確証づけた。

だが・・・。

 

 

「あの、私と一緒に“管理局”に来てくれるかな?色々話を聞きたいんだけど・・・。」

 

 

 

まだ分からない事が数多くある。詳しく話を聞かなければ・・・。

 

 

「分かりました。俺にとってもその方が都合がいいですし。」

 

 

青年はなのはの申し出に快く応じてくれた。

それによってなのはの表情はこれまでで一番明るくなる。

 

 

 

「ありがとう!ああ、そうだ。あなたの名前は?」

 

「ああ、俺は「鳴上 悠」と言います。」

 

 

 

 

>・・・。

 

この時のなのはは夢にも思っていなかった。彼とその仲間たちと共にこの世界を襲う未曽有の大事件に立ち向かう事になるなんて・・・。

 


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