Persona4 The StrikerS in MID-CHILDA (現在、凍結中…)   作:Neo-PSI

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第29話『真相』

「昼」―――――→「夜」

 

 

 

 

>午後の訓練を終え、フォワード陣と共に食堂にやって来た・・・。

 

 

 

「いやぁ~・・・、今日も1日終わった~。」

 

「今日もキツかったですね・・・。」

 

 

相変わらずのご飯の量を胃に納めていくが本当に疲れきっているのだろう、スバルが肘をついたかと思ったらそのまま“ぐてぇ~”とテーブルに寝そべった。ほっといたらそのまま寝てしまいそうな勢いだ。

 

エリオもスバルの様に、寝そべってはいないが疲れているのが見て取れる。

 

 

「スバル、行儀が悪いわよ。」

 

「う~ん、ごめん・・・、ティア~・・・。」

 

 

相棒のティアナからの注意を受けると、のろのろとだが素直に姿勢を戻すスバル。

ティアナも疲れてはいるようだが、何とか気張って堪えているようだ。

こうやって見るとこの2人はコンビと言うよりも、まるで姉妹のようにも見えてきてしまう。勿論、ティアナが姉で、スバルが妹でだ。

 

 

 

「疲れてるみたいだな、皆。」

 

「はい~。・・・と言うより、鳴上さんは平気なんですか~?ずっと一人でトレーニングしてたみたいですけど~・・・。」

 

「まぁ、元々体はよく動かしていたからな・・・。」

 

 

 

悠の体力の多さについては、学校生活で運動部に所属していたのも挙げられるが、“向こう側の世界”で戦っていた事が大きな要因だろう。実際、フォワード陣の様な過酷な訓練には参加していないものの、悠にはまだ余裕がみえる。

 

 

「フゥ・・・。」

 

 

そんな中キャロが、ひと際大きな溜息をついた。

 

 

「キャロ・・・、大丈夫か?」

 

「・・・・・え?あ、は、はい。大丈夫です・・・。」

 

 

本人も無意識に溜息をついていた様で、皆が自分に顔を向けたのにも気づいていなかったみたいだ。訓練の疲れと以前からの悩みでキャロは特に憔悴してしまっており、他のフォワード陣も心配そうにしている。

 

 

>早く相談事を解決へと導かねば・・・。

 

 

〈キュウ?〉

 

「ごめんね、フリード。大丈夫だから・・・。」

 

 

キャロの大切な相棒であるフリードも心配そうな声を上げ、彼女の肩に止まって、顔をすり寄せている。

 

竜であるフリードのこの行動にもアニマルセラピー的な効果があったようで、キャロは落ち着きを取り戻したようだ。少し微笑んでいる様に見える。フリードの行いは健気で愛くるしく、その姿に悠やフォワード陣も笑顔がこぼれる。

 

 

 

 

・・・そんな時、悠の脳裏に1つの閃きが生まれた!

 

 

(何だ?何かが引っかかる・・・。)

 

 

ここまでの一連の動き、自らの感情が何かを訴えかけてくる。

 

 

>キャロとの昼間のやり取りが次々にフラッシュバックしてくる!

 

 

 

≪「“完二が睨んでくる”?」≫

 

≪「はい・・・。時々、なんですけど、私を見て険しい顔をしてるんです・・・。」≫

 

 

 

それに伴い悠の頭脳が様々な要素を弾き出して行く。

 

 

(これは!?・・・もしかすると・・・!)

 

 

そして、キャロの特徴、完二の特徴、2人の関係、2人のこれまでのやり取り・・・。様々な要素が脳内を駆け巡る。

 

 

(そうか!分かったぞ!)

 

 

>それが次々に歯車の如く噛み合って行き、1つの答えへと辿り着いた!

 

>だが、更に確証を得るために裏付けをしなければ・・・。

 

 

 

「夜」―――→「朝」―――→「昼」

 

 

 

翌日の昼・・・。

 

 

 

キャロは朝の訓練中に悠から、話があるから昼に相談事を受けた場所“機動六課ロビーの休憩スペース”にフリードと共に来るよう告げられ、指定の場所に座って待機している。

 

 

 

「鳴上さん、話って何だろう・・・。(もしかして・・・)」

 

〈キュー?〉

 

 

キャロは呼ばれた理由を察してはいるが、昨日その場にいなかったフリードは首を傾げており、不安げな声を上げている。そんな中・・・。

 

 

 

「キャロにフリード、待たせたな。」

 

〈キュクルー!〉

 

 

言伝の主、悠がキャロ達の背後からやって来た。

 

 

「あ、鳴上さん。もし、か・・・して・・・。」

 

 

 

背後からやって来た悠にキャロはパっと、そちらに視線を移し・・・目を見開いた。

まぁ、無理もない。何故なら相談事の原因である人物・・・

 

 

巽 完二が悠の後ろに居たのだから。

 

 

 

「え、えっと、鳴上さん・・・。話って・・・。」

 

 

予想していなかった状況に若干パニックになっているキャロは悠にまるでロボットの様に尋ねる。

 

 

「ああ、ごめん。実は話があるのは俺じゃなくて、完二なんだ。」

 

「え!?」

 

 

更に予想外の事態に追い込まれ、キャロは完全にパニックになっていた。キャロは「どうしよう!?どうしよう!?」と思考のスパイラルに呑まれてしまっており、顔も若干涙目になっている。

 

 

「さあ、完二・・・。」

 

「う、ウッス!」

 

 

そんな状況にあるキャロは気付いていないが、完二の方も何故か落ち着きのない顔をしている。そして、意を決したように声を上げ、キャロの正面にドカッと座った。

 

 

「ヒゥッ!!」

 

 

パニック状態のキャロは、その一連の動作だけでまたビクッと一瞬、飛び跳ねてしまった。

 

 

「あ、あのよぉ・・・。」

 

「は、はひ!?」

 

 

そして、完二もキャロと同じロボットの様な喋り方で話を始めた。悠はそんな2人を見守るようにキャロの隣に座って成り行きを見守っている。

 

 

 

「そ、その・・・、触らせてくんねぇか?」

 

「え!?」

 

 

何か文句でも言われるのかと身構えていたキャロは予想の斜め上を行くその言葉に間の抜けた声を上げた。

 

 

「フリードを・・・。」

 

「・・・・え?」

 

 

更に予想の斜め上をいき、最早、直角とまで言えるその言葉にキャロは異常な速度で思考がクールダウンしたのを感じた。

 

 

 

「キャロ、完二は別にキャロを睨んでなんかいなかったんだよ。キャロと一緒にいるフリードを見てたんだ。」

 

「え?」

 

 

 

先程までの熱を伴ったパニックではなく冷めた状態のパニックに襲われているキャロに悠が補足を入れていく。

 

 

「完二は小動物とかが好きでね、フリードにずっと触ってみたかったらしいんだ。」

 

「フリード、に?」

 

〈キュー?〉

 

「う・・・・・。」

 

 

悠の説明に必死に状況把握をしようとしているキャロとフリードは完二に視線を向けた。すると完二の頬が少し赤くなっており、視線を向けた途端、顔を逸らしている。

 

 

「え、ええ?じゃ、じゃあ、私の、勘違い、ですか?」

 

「ああ。」

 

 

自分の勘違いに気付いたキャロは見る見るうちに頬を赤くしていった。

 

 

「で、でも、そんなに触りたかったのでしたら、どうして何も・・・」

 

 

勘違いと言う事は分かったが、キャロの頭の中には新たな疑問が生まれ、まるで訴える様に尋ねた。

 

 

「ああ、それは・・・何て言って頼めばいいか分からなかったそうだ。」

 

「え?」

 

 

だが、その疑問の答えは余りにも強面の彼にそぐわないものだった。

 

 

「ちょっ!?せ、先輩!?それは・・・。」

 

「分かってる・・・。でも、完二・・・。俺はお前がどんな奴なのかを、ちゃんと分かって欲しいんだ・・・。これは完二にとっても、キャロにとっても必要な事だと俺は思うんだ。」

 

「先輩・・・。」

 

 

 

あまり言って欲しくなかった内容だったのか、慌てて止めに入る完二。だが、悠の芯のこもった声に、その考えを直ぐに理解し、自分だけでなくキャロについても考えた厳しく、それでいて優しい行いを黙って受け入れる事にした。

 

 

「え、えっと・・・。」

 

「ああ、話が脱線しちゃったな、すまない。実は、医務室で顔を合わせた時に怖がっていたのを見て、ずっと我慢してたらしいんだ。あまり怖がらせたらいけない、って・・・。」

 

「あ・・・・。」

 

 

悠の口から紡がれたその言葉でハッとなったキャロは完二へと視線を向けると、完二はバツが悪そうに顔を伏せてしまった。

 

キャロは改めて思い返してみた。確かに、あの時自分は完二の風貌に恐怖してフェイトの後ろに隠れてしまっていた。その行動を、恐怖を抱いた対象である完二が気付かないと言う事はない。

 

 

「す、すみませんでした、巽さん!あの時は失礼な事を!」

 

 

どんな人間だって露骨に怖がられている姿を見れば気を悪くする筈だ。今更ながらにキャロはあの時の自らの行動を悔いた。

 

 

「気にすんな、怖がられんのには慣れてる。」

 

「・・・・・。」

 

 

そう言ってキャロを気遣っている完二は何てことなさそうにしている。だが、それが余計にキャロの良心をちくちくと痛ませる。実際、キャロは完二のその姿が何処か痛々しく思えていた。

 

 

「そ、その、悪かったな・・・。何か逆に、気分を悪くさせちまったみてぇで・・・。」

 

「い、いえ、そんな・・・、私の方こそ・・・。」

 

 

そんな中、完二の方も自分のせいでキャロが悩んでいた事を知ったため、頭を下げ謝罪をした。だが、キャロの方も“自分のせいで・・・”と言う考えでいっぱいになってしまい、結局お互い謝罪の応酬になり、解決への糸口がつかめなくなっていると・・・。

 

 

〈キュー?〉

 

「あ、フ、フリード!?」

 

 

自分のいない所で何が起きていたのか知らないフリードから見ても完二のその姿は見ていられなかったのか、フリードは完二の前までやって来て様子を伺うように見上げている。

 

 

「お前にも、悪かったな・・・。オメェの主人に迷惑かけちまって・・・。」

 

〈キュー・・・〉

 

「巽さん・・・。」

 

「完二・・・。」

 

 

そう言ってフリードにも頭を下げる完二のその姿に、キャロの完二への先入観が音を立てて完全に崩壊した。

 

そんな時・・・。

 

 

〈キュクルー!〉

 

「ん?って!うぉっと!?」

 

「あ・・・。」

 

「お・・・。」

 

 

フリードがひと際元気な声を上げたかと思ったら完二の肩に飛び乗った。どうやら、自分にも敬意を持って接してくれる完二の事を気に入った様だ。その証拠に肩に止まると完二に顔をすり寄せている。

 

 

「お、おいっ!く、くすぐってぇ!ハハハ!」

 

〈キュクー!〉

 

「・・・、・・・フフ♪」

 

 

 

完二の本当に嬉しそうな顔を見る事でキャロの心にも、ようやく余裕が生まれ心からの笑顔が出た。

 

 

 

「良かったな完二、キャロ。」

 

「「ハイ!」」

 

〈キュクー!〉

 

「フリードも良かったな。」

 

 

キャロの悩みと、そして完二に対する苦手意識はきれいさっぱり解消されたようだ。完二の方もフリードに触りたいという願いも同時に叶える事が出来た。

 

 

(2人共、すっきりしたみたいだな・・・。)

 

 

>クエスト“完二からの視線”の依頼を達成した。

 

 

間にあった心の壁が取り払われた2人は、これまでの余所余所しい態度が嘘のように、笑顔で世間話をしている。

 

 

>・・・・・。

 

 

>完二とキャロと、他愛のない話をした・・・。


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