インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

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約一か月ぶりの更新です。

本作を集中して執筆しておわらせて、蒼天の魔王に集中したいです


41話

 イチカ達はアメリカで補給を済ませフランスへと向かった。そして、彼が目にしたのは荒れ果てた街並みだった。

 

 

「ここが...フランス...」

 

「酷い...」

 

「こんなのって...襲撃があってから半日も経ってないんだよ!」

 

「シャルロット...。まずは、現状の把握を...。...なんだ...この音!」

 

 荒れ果てた市街の状況を確認し探索しているとイチカの頭の中に音が響く。

 

 

「頭の中に音が...!」

 

「なんだ、これ...。鈴の音...」

 

「聞き覚えがある...。ウッソたちと戦った時の...」

 

「鈴の音...。そんな音聞こえないけど...」

 

「確か聞こえる...鈴の音が...。敵意...!」

 

 NTである、イチカ、エリス、マーク、簪は頭の中に響く、鈴の音に困惑しているとイチカの頭の中で光が弾けると抜刀した剣を縦に振るうと小さな物体が接触し、左右に割れる。

 

 

「なに...。狙撃...!」

 

「物陰に隠れて俺達を狙っていやがる!」

 

「チィ...! 今度はビームか...! 海上の時より、センサーの反応が弱い...ミノフスキー粒子か!」

 

「ミノフスキー粒子?」

 

「電波障害を起こして無線機やレーダー等の電子機器を無力化する粒子よ。長距離への索敵はできないからこうやってワイヤーを介すか、直接触れ合って通信するの」

 

 今間での戦闘ではミノフスキー粒子が散布されていなかったせいか、突然のミノフスキー粒子に焦るイチカ。ミノフスキー粒子について知らない簪は疑問に思っているとエリスがミノフスキー粒子について簡単に説明する。

 

 

「今後の通信は有視界による光通信にする!」

 

「今まで以上に神経を尖らせろ!」

 

「こうも遮蔽物が多いと戦闘がしにくい...! ...生体反応はない...。なら、街を少し破壊してでもッ!」

 

「何をする気なの、一夏!」

 

 ミノフスキー粒子による障害により、センサー等に制限がかかった状態での戦闘や見えない敵からの狙撃に今まで以上に厳しい戦いになると考えたマークは注意を呼びかけ、遮蔽物が多く狙撃ポイントを絞り込めないイチカはゲタから飛び降りると荒ぶる鷹の様なポーズを取る。

 

 

「超級ゥ覇王ッ電影弾ッッ!!」

 

 超級覇王電影弾で周囲の建物を螺旋を描きながら建物を破壊していく。

 

 

「見晴らしをよくすつもりか...」

 

「見てあそこ!」

 

 見晴らしが良くなったことで戦いやすくなったマーク達は遠くの建物の陰に隠れながら狙いを定めた敵影を見つける。

 

 

「ジム・スナイパーⅡか...」

 

「待って! ...駆動音...ゆっくり、何か近づいてくる!」

 

「この音は、ビーム・ローターか...!」

 

「何あれ...戦闘機...」

 

 ジム・スナイパーⅡを落とそうとした時、簪が低速ながら何かが近づいてくることに気が付くとその音の正体に気が付くラナロウ。

 

 

「戦闘機じゃない。あれもMSだ」

 

「あれは変形・合体機構を持った機体よ」

 

「シャルロットは制圧射撃を、エリス、コード・フェニックスはシャルロットのカバーを頼む。俺は遊撃に当たる!!」

 

四人一組(フォーマンセル)から、私と鳳、ラナロウと更識の二人一組(ツーマンセル)に変更。警戒を怠るなよ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 各々戦闘態勢に入るとイチカはジム・スナイパーⅡの狙撃を掻い潜りながら進む。

 

 

「ゲタにはこういう使い方もあるんだよッ!」

 

 89式ベースジャバーをジム・スナイパーⅡに向け射出するとジム・スナイパーⅡはベースジャバーを狙い撃つと放った弾丸は命中し、燃料に引火し爆発を起こす。

 

 

「そこだぁ!」

 

 爆炎によって遮られた視界をビームサーベルで払うが、そこにはフェニックスの姿は無く、上へと飛んだフェニックスが布状のものを叩き付けると、頭部を破壊し、バーニングフィンガーで胸部を握りつぶし止めを刺す。

 

 

「この布、使いやすいな。マスタークロスに倣って『バーニングクロス』と名づけよう──―邪気!」

 

 ジム・スナイパーⅡを倒し、今まで使用してきた布を『バーニングクロス』と名付けようとしたイチカだが、自分に向かって邪気が近づいていることに気づき咄嗟に腕を振るう。

 

 

「サイコフィールドがバリアに...」

 

「イチカ...今の...」

 

「分からない...。ただ、出来る気がしたんだ。それにあの出力の攻撃を喰らえばひとたまりもない...!」

 

 遥か上空からの高出力攻撃に咄嗟にサイコフィールドを展開したイチカ。

 

 

「上空からの攻撃はこれで防げる...けど...。いつまでも立ち往生なんてできないぞ!」

 

「あのシールド、僕の攻撃を悉く防いでいくんだけど!?」

 

「ビームシールドはビーム、実弾も防ぐ。ビームシールドを発振させるところを破壊すれば使い物にならない!」

 

 そういうと鈴がドラゴンハングで牽制し、マークがビームサーベルを左腕に突き刺しビーム・ローターを破壊するとゾロの頭部を蹴りで破壊すると鈴がドラゴンハングで止めを刺す。

 

 

「イチカ! 上空の敵はどうする?」

 

「センサー外...恐らく成層圏かそれ以上...。そして、そいつがこの鈴の音の持ち主」

 

「大気圏突破、突入を考えるのなら私のハルファスかフェニックスだろう。ナノマシンによる大気圏の摩擦熱の減衰は理論上は可能だ」

 

「いままで試したことが無いんでしょ! そんなぶっつけ本番で危険だよ!!」

 

「危険なんていつものことだ! 安全な戦いなんてこの世に存在しないッ!! 機動力と防御はフェニックスの方が上...。......俺が行く」

 

 遥か上空からの攻撃をどうするか悩んでいるコード・フェニックスに、マークは高高度からの狙撃であること、実行している機体に心当たりがあった。

 

 

「あの鈴の音はザンスカール帝国との戦いの時に聞いた事がある」

 

「やっぱりあれはギロチンの...」

 

「鈴の音が何でギロチンと関わりがあるの?」

 

「ギロチンの家系の者は腰に鈴をつけるんだ。それは死刑執行人の象徴でもある」

 

「宇宙世紀の中にはギロチンを行うところもあったのよ。それがザンスカール帝国...。私達はレジスタンスとして活動しているリガ・ミリティアに協力したわ」

 

「これは、イチカと出会う前の話だ。イチカはデータベース上に残っている情報でしか知らない」

 

 イチカと出会う前に話をするエリスとマーク。この戦いで、敵味方問わず多くの死者が出た。その中にマーク達の部隊の者も含まれている。

 

 

「恐らく機体は、ザンネック...。当時のMSのサイズの中では大きい部類だ。ビーム・フィールドと長距離射撃が脅威だが、規格外の機動力を持った機体であれば...」

 

「ザンネック...首を斬る...。ギロチン...!」

 

「イチカ、これを...! 手数は多い方がいい」

 

 マークはこれから戦うであろう機体の情報をイチカに渡すとマークは持っていたビームライフルを渡す。

 

 

「分かった。マーク達は地上の敵をお願い」

 

「まかせろ! この程度の敵、慣れっこだぜ!」

 

「イチカ、気をつけて!」

 

「行ってくる...!」

 

 そういうとイチカはその場から飛び立つと翼部のスラスターから放出された余剰分のナノマシンが燃え盛る炎の様に揺らぎ、翼のような形状になる。

 

 

「フェニックスの...翼...」

 

「あれはスラスターだけの光じゃない...。ナノマシンも放出して、推進力を挙げているのか...」

 

「不死鳥が...天に昇ってるみたい」

 

「感動するのはいいが、敵のお出ましだ!」

 

「一夏の心配するよりも僕たち自身の心配しないと!」

 

 イチカが飛び立つのを見計らったように敵の増援が現れ、地上では再び戦いが行われようとしていた時だった。

 

 

『どうやら、遅かったようだな』

 

「貴様は...!」

 

 マーク達が声のした方を見るとそこには武神を思わせる一機のガンダムがビルの上で腕を組みながら、飛翔していくフェニックスを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(放出されたナノマシンが翼になってる...。これを曲げてマントの様に纏った上で、前面にナノマシンの壁を作れば...!)

 

 イチカは初めて行う単機による大気圏突破に胆を冷やしながら、慎重に行っていた。

 

 

 

「大気圏突破...出来た...! ──鈴の音...来るッ!?」

 

 大気圏突破できたことを喜ぶイチカだが、それもつかの間に長距離狙撃が襲うがサイコフィールドを展開し、防ぐ。

 

 

「敵は...。見えた、ファンネル!」

 

 ベスパ特有のツインアイ、左右の肩部にある三日月パーツ、円盤の上に乗り、ビームキャノンを構える機体を視認するとファンネルを射出すると乗っている円盤に向けて攻撃するが弾かれる。

 

 

「円盤にもビームシールドがあるのか! クッ...!! 地上に居るエリス達に当たらないように防ぎながら動いているから俺が避けないのを知って...!!」

 

 円盤に攻撃しても意味がない事を理解したイチカに、両肩部の三日月が満月に変わりビームキャノンの攻撃が迫る。サイコフィールドを展開しながらスラスターを吹かし、ビームキャノンのチャージ時間がある事は知っているイチカはビームライフルで攻撃するもザンネック・ベースによって防がれていた。

 

 

「フェニックスの翼をV2の様に使って...チィ...!」

 

 距離を縮めようにも機動性もあるザンネックは距離を維持しながら放つ強力なビームキャノンとビームシールドによって、苦戦を強いられているイチカ。

 

 

「少しでも、あいつの攻撃を地上から逸らさないと、攻めれない! ...あの三日月を狙えば...ファンネルッ!」

 

 思考を巡らせ、どうすれば勝てるのか考えるイチカ。肩部の粒子加速器内蔵ビーム砲が粒子の縮退・収束の役割を知っているイチカはそこを狙えば突破口が見えると踏み、ファンネルを展開するが────

 

 

「クソッ! 死角はないのか...!!」

 

 粒子加速器内蔵ビーム砲が展開したファンネルを破壊したのを確認したイチカは、思わず舌打ちをする。周囲を飛び回りながらビームライフルで応戦するイチカだが、時間だけがいたずらに過ぎていき突破口が見えずに焦っていた。

 

 

「どうするどうする、どうする! ...焦るな!! 焦ったら死ぬぞ!!」

 

 高威力のビームを回避しながら、ファンネルとビームライフルで少しでも自分に気が向くように攻撃するイチカは近くにあったデブリに身を隠すと背部に収納されているビームサーベルを発振させ、放り投げる。するとザンネックはイチカではなく発振させたビームサーベルを撃つのを確認する。

 

 

「隙が見えた!!」

 

 次射までの隙を見逃さず、デブリから飛び出し、背部のウィングバインダーから炎の翼を大きく羽ばたき、全身にナノマシンを纏い急接近するその姿はさながら、燃え盛る不死鳥を沸騰させる。だが、ザンネックのビームキャノンのチャージが終了しており、フェニックスに向けて放たれる。

 

 

「今だ...! 飛べ、フェニックス!!」

 

 接近していた、突如フェニックスは途中で一回転し、上に飛ぶ。すると、纏っていたナノマシンはフェニックスから剥がれ、炎の残像はそのまま直進するとザンネックのビームとぶつかり合う。

 

 

「そこだ!!」

 

 もう一度炎の翼を羽ばたかせ、ザンネックに接近すると左手で右腰に帯刀していた剣を抜刀し、串刺しにするように振り下ろすがザンネックは咄嗟に、ザンネック・ベースから飛び降りることで直撃を避けるもザンネック・ベースはイチカによって一刀両断される。

 

 

「まだ終わらねぇ!!」

 

 すかさず、白熱化した右手を突き出すとザンネックは自衛用に装備していたビームサーベルを振るうが、イチカはビームサーベルのビーム刃を掴むとそのまま近くのデブリに向け投げつける。投げられたザンネックは勢いよく回転するのを見たイチカは炎の翼を羽ばたかせ接近する。

 

 

「これ以上、鈴を鳴らすなァ!!」

 

 ザンネックが体勢を立て直した時には、直前にまで迫ったフェニックスが、白熱化した右手でビームキャノンを持っていた右腕を手刀で切り裂き、すかさずザンネックの胸部を掴むとスラスターを吹かし、デブリにぶつけながら進んでいく。

 

 

「この俺の手が白銀と輝くッ! 明日を掴めと轟き唸るゥ!! しゃぁぁぁくぅねっつぅ...バーニングゥゥ......フィンガァァァァァッ!!!」

 

 技の発動までの掛け声が師匠であるドモンの爆熱ゴッドフィンガーと似ているのはイチカが師匠であるドモンを尊敬と憧れの表れなのだろう。掴まれたザンネックの胸部が融解し、力を振り絞りビームサーベルでイチカを貫こうとした時だった。

 

 

「ヒィィィト・エンドッ!」

 

 掛け声と同時に胸部を爆砕し、ザンネックがビームサーベルを落とし、活動を停止させる。

 

 

「ハァ...ハァ...、終わった...のか。周囲の反応も、邪気も感じられない。鈴は...落ちたか」

 

 戦いに一区切りがついたことで、先ほどまで張り巡っていた緊張が解かれるイチカだが、問題が残っており、先ほどまでの戦闘でエネルギーを多く使ったことにより、安定して大気圏突入を行うほど残っていないことだった。

 

 

「どうしたものか...。強硬策に出ても、最悪大気圏突入中にナノマシンが切れて、大気圏の摩擦熱を減衰ができずに、途中で燃え尽きちまう...。ここまでなのか...フェニックス...」

 

 諦めかけていたいた時、イチカの脳裏に大切な仲間たちの姿が映し出される。

 

 

「まだだ、まだ俺は明日を掴んでいないッ! その先にみんなと一緒に行っていない! お前も一緒に行きたいだろう...フェニックス!! ────え?」

 

 諦めかけたイチカの心が、再び燃え上がる。イチカの言葉に反応するかのようにツインアイが光ると、モニターに映し出された情報にイチカは思わず、声が漏れる。

 

 

「確かに、この方法なら使用するナノマシン量が少ない状態で大気圏突入が出来る...」

 

 ふつうはそんな出鱈目な大気圏突入は存在しないだろう。だが、緊急事態の為、仕方ないといえようがこんなダイナミックな方法で本当に出来るのか不安なイチカだが、現状これ以外策が無いので決行するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あのガンダム...。さっきから上を向いたまま微動だにしないんだけど...」

 

「あれはゴッドガンダム...。イチカの師匠である流派東方不敗の伝承者であり、キング・オブ・ハートの男だ。彼のコピーニューロだとなると私達でも苦戦は免れない...。最悪、犠牲者が出るだろう。奴らの戦闘力は色々おかしい」

 

「そこまでのなの...。一夏の師匠って...、まぁ、一夏のあの戦闘力を考えると想像つくけどさ」

 

『来るな...』

 

「え?」

 

 ビルの上で腕を組んだまま微動だにしないゴッドガンダムに警戒を怠らないマーク達。ゴッドガンダムのガンダムファイターであるドモンについての情報を軽く話すとゴッドガンダムは何かが来ることを示唆すると大気圏から何かが下りてくるのが見えた。

 

 

「あれはイチカ...! って...えぇー...」

 

「あのような大気圏突入は初めて見たな」

 

 大気圏の摩擦熱を撃破したザンネックを盾にしながら自身は大気圏の摩擦熱から逃れているフェニックスの姿があった。その姿はさながらサーフィンである。

 

 

「ねぇ、あんな方法で大気圏って突入できるの?」

 

「普通は無理だと思う...。専用の装備とかオプションとかでやるから」

 

「まぁ、機体に穴が開いた上、片腕を失った状態でビームシールドを使って大気圏突入をやってのけた奴がいたな」

 

「キンケドゥのことだな。私もあれを見た時は度肝を抜いたものだ」

 

「あれは奇跡よねー」

 

 イチカの大気圏突入方法にどこか現実逃避気味に語るエリス達。この方法は後に出会う同じソロモン72柱がモチーフのガンダムである鉄華団の少年がやった方法なのだが、この時イチカは自分以外にもあんな方法でやる奴いるんだなー、と思う日が遠くないうちに来るだろうがそれは別の話である。大気圏突入を終え、役目を終えたザンネックから飛び降りたイチカはエリス達の近くに降りるが、着地した瞬間そのまま倒れ込む。

 

 

「大丈夫、イチカ!!」

 

「大丈夫...。無事に地球に降りれたせいか、疲れが一気に...」

 

『どうやら、全力で戦うことも出来なさそうだな』

 

 倒れ込んだイチカを咄嗟に支えるエリス。イチカは倒れ込んだ理由を話す中、突如聞こえた聞きなれた声のした方を向くとビルの上からゴッドガンダムが飛び降りてきたのだ。

 

 

「この声...。師匠...!」

 

 予想だにしていない人物の登場に驚くイチカ。

 

 

『答えろイチカ! 流派ッ! 東方不敗は──―』

 

「王者の風!」

 

『全新!』

 

「系列!」

 

『天破!』

 

「侠乱!」

 

「『見よ、東方は、赤く燃えている!!』」

 

 互いに声を挙げ、残像が残る速さで拳を繰り出しながら接近し、最後は同じポーズの状態で拳を突き合わせる二人。

 

 

 

『イチカ! お前にガンダムファイトを申し込むッ!』

 

「なっ!」

 

「そんな無茶よ! 今のイチカが真面にガンダムッファイト出来るような状態じゃないのよ!!」

 

「ファイトを申し込まれた以上...受けるしか...ないッ!」

 

 ガンダムファイトを申し込まれた以上、受けるしかない。そう考えたイチカはどこか動きが鈍いながらも構える。

 

 

『だがッ!!』

 

「ウ゛ゥ゛ゥ゛...!」

 

「イチカ!!」

 

 目にもとまらぬ速さで立ち向かおうとしたイチカにの懐に潜り込み、強烈なアッパーお見舞いするゴッドガンダム。その一撃で膝を屈してしまうイチカにエリスが庇うように前に出る。

 

 

『今の貴様では、俺に傷一つつける事は出来ん!!』

 

「ゲホッ...」

 

『故に貴様に猶予を与える。一週間後の正午にギアナ高地に来いッ!』

 

「そんな、こっちにはそんなことしている猶予はないのに!」

 

『それまでに腕を磨き、可能な限り英気を養う事だなイチカ』

 

「待ってくれ師匠ッ!!」

 

『お前と全力ファイトが出来る時を待っているぞ!! 来いッ! 風雲再起!!」

 

「う、馬...!?」

 

 ゴッドガンダムはイチカにファイトまでの猶予を与え、日時を伝える。だが、自分達にそんな猶予はないと非難じみた声を挙げるシャルロットの声を無視し、言うべき事を言ったゴッドガンダムは何処からともなく現れた風雲再起に乗りそのまま姿を消した。

 

 

「今、コピーニューロを自由にできるのはコード・アメリアスただ一人。コピーであってもアレはお前の知っているドモンだ」

 

「コピーとはいえ、師匠であるドモンが敵になるなんて...」

 

「一週間後に師匠と...」

 

 何処かつらそうな声でゴッドガンダムが姿を消した方を見つめるイチカ。

 

 

「今のままじゃ、あの人に勝てない...」

 

「今より強くなるにもここを生き残らないとできない。なら、今は出来る事をするんだ」

 

「そうだな。コード・フェニックス、まずはフランスに居る敵を倒しつつ生き残った人がいないか探そう」

 

「それならデュノア社は、有事の際は避難所としての役割もあるから...。もしかしたら...」

 

「当てがない以上、デュノア社に行くのが賢明か」

 

 一週間後のガンダムファイトのことを考えた際、イチカは勝てるヴィジョンが見えなかった。今の自分では実力不足なのだと、先程の一撃で理解した。だが、今は目の前のことに集中すべきだ、とコード・フェニックスは言うとイチカはその通りだと理解し、まずは生存者の確認と敵の殲滅を第一に行動することになった。そして、生き残った人はデュノア社に非難しているかもしれないという情報を頼りの行動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処がデュノア社か...」

 

「建物自体は街よりも原形を保っているが...」

 

「地面には爆発によるクレータと金属片が多数...。戦闘があったと考えて間違いないだろうな」

 

「シャルロット、建物の案内を頼む」

 

「全員で中に入らず二つに分かれよう。私達第一部隊は周囲の警戒及び人命救助としよう」

 

「なら、俺達第二部隊が建物の中を探すとするよ」

 

 デュノア社の周囲を見渡しながら、なにがあったのか推察するイチカ達。効率を考え第一、第二部隊に分かれ行動することになった。周囲に散開する第一部隊を見送ったイチカは、扉を見つめる。

 

 

「建物の案内を頼みたいが、まずは...」

 

「剣を抜いてどうしたの?」

 

「侵入者トラップが仕掛けられている可能性がある」

 

 そういうとイチカは剣で扉を切り裂くと、切り裂かれた扉とは別に張っていた細い何かが切れる音をフェニックスが拾うと同時に爆発が起きる。

 

 

「ば、爆発...!」

 

「な、なんでイチカは分かったの?」

 

「なんで分かったか...。もし俺が同じように立て籠もるとしたらトラップを設置して迎撃する。相手と同じ立場でどう行動するか考えたんだ」

 

「なるほどな。なら、次はどう行動するんだ?」

 

 突然の爆発に驚くシャルロットとトラップが設置されているのが分かったのか質問するエリス。イチカは自分ならどうするか考えて行動したと答える。

 

 

「そうだな、生き残った連中を一掃する為、制圧射撃をする」

 

「ゲッ?! 地面から大量の機関銃が!!」

 

「行け、ファンネル」

 

 コード・フェニックスが次はどう行動するのかという質問を答えると同時に地面に穴が開き、そこから大量の機関銃が姿を現すと轟音を轟かせながら撃ってくるが、イチカは冷静な対応でファンネルを射出し、四角形を描きながらビームシールドを発生させ、機関銃の攻撃を防ぐと残りのファンネルで機関銃を破壊していく。

 

 

「何処から攻撃が来るか分からないから、警戒を怠らないようにな」

 

「一番怪しいのは社長室だが、虱潰しにするか?」

 

「いや、あまり猶予が無い。社長室に直行だ」

 

「社長室はこっちだよ」

 

 警戒を怠らない要注意すると虱潰しに探すか、怪しい場所だけを探すべきか迷っているコード・フェニックスにイチカはあまり時間が無いので時間がかからない方を選び、シャルロットの案内で二階に進む一同。

 

 

 

「この曲がり角を行って中央の部屋が...イチカ?」

 

「シー。物音が聞こえた」

 

「え? ...うーん、タイヤの音?」

 

「あ、見てアレ!!」

 

「アレは...自走砲?」

 

 社長室までもう少しの所でイチカは僅かの物音を聞き足を止めると、反対側からジオン系統に見られるモノアイ、下半身が三つの車輌を有したホイールユニットに腕部にはクレーンアームとガトリング、頭部には一門のキャノンが付いていた。

 

 

「あれは...ギガンか」

 

「知っているのかコード・フェニックス?」

 

「あれはジオンが開発した中・遠距離支援機だ突出した戦闘力は無いが、生産に必要な資材はザクⅡの半分で済むらしいぜ」

 

「そうか」

 

 機体のことを知っているコード・フェニックスに解説を聞いたイチカは剣をナイフのように投げ、ギガンの頭部に刺さり、機能停止する。

 

 

「俺の解説必要だったか?」

 

「特に危険度はないようだから手っ取り早く片付けた。今の物音で敵が集まればある意味楽なんだが...」

 

「そういうのシャレにならないからやめて。流れ弾で周りの民間人にまで危害が及んだらどうするの?」

 

「ふむ、それもそうか...」

 

「取りあえず、社長室に行こう」

 

 戦闘を手早く終わらせておけば、人命救助がしやすいと考えたイチカだが、狭い場所での戦闘はどんな予想外な事態が起きるか分からないから勘弁してほしいエリスの考えに、それも一理あると判断しながら社長室に向かう。

 

 

「誰か生存者はいるか!」

 

「騒がしいな...。少しは静かに入ったらどうだ?」

 

「お前は...」

 

「おとう──―デュノア社長、無事だったんですね」

 

 扉を思いっきり開け、中に誰かいないか確認するイチカに、何処か疲れ気味の声が返ってきた。如何にも高そうな机な椅子にもたれかかる顎髭を生やした厳格な風貌の男がいた。その男性を見たシャルロットがお父さんと言いかけるも途中で社長に訂正し、それを聞いた男性が一瞬だけ、悲しそうな表情になるがすぐさま厳つい表情になる。

 

 

「俺はイチカ・ギルオー、救援依頼を聞きここまで来た。あなた以外に生存者は?」

 

「そうか...君が...。ダメ元で待ってみるものだな。ここに来た生存者は地下の避難所に退避させている」

 

「出来れば一度に避難させたい。何か大型の輸送機はあるか?」

 

「鹵獲した見た事もない輸送機がある。これならば、一度に全員を乗せる事も、ここの資材を持っていくことも出来るだろう」

 

 生存者の確認をしたイチカは自分達では連れていける人数に限界があり、ここまで往復するにも自分達にもそして避難した人にもリスクがあると考え、何か輸送船はないか確認する。すると、空中モニターに一隻の大型輸送機を映し出す。

 

 

「アウドムラか」

 

「アウドムラ?」

 

「あの超大型輸送機の名称だ。確かにこれなら多くの避難民を収容できる。操縦は...コード・フェニックス、お願いできるか?」

 

「おう、任せな!」

 

「地下避難所の隣が、地下格納庫だ。場所の案内は此処に来る時に上った階段にある掛け軸の裏に地下への入り口がある。暗証番号を入力すれば開く様になっている番号は42865だ」

 

 赤い超大型輸送機に見覚えのあった。ネェルアーガマのデータベースに残っていた資料で見たイチカはその輸送船の名称を言い、これなら一度に多くの人をここから逃すことが出来ると確信した。コードフェニックスにアウドムラの確認をお願いする。

 

 

「遠路はるばるよく来た。お茶でも出してあげたい所だが、ここに来るまでにロゼンタを見なかったか?」

 

「え? 夫人がいないんですか?」

 

「ああ、前日に急な休みを取ったきり、連絡がないんだ」

 

「いいや、見ていない。最悪な事態を想定してもいいかもしれない」

 

 全日から姿を消したデュノア夫人が此処に非難しておらず、不安そうな顔で聞いてくるデュノア社長。それを聞いたイチカは最悪の事態が起きた可能性を示唆した時だった。

 

 

「戻ったわ。アルベール」

 

「ロゼンタ! この非常事態に連絡の一つも寄越さないとは...! どれほど心配したか!!」

 

「あら、ごめんなさい。安全の確保に手間取ってね」

 

「安全の確保? それなら、其処の彼らがいま最も安全なIS学園への誘導と護衛をしてくれる」

 

「違う、違うのよ...。あそこは安全じゃないわ。だって──―」

 

 背後の扉から入ってきた女性は何事も無かったように部屋に入ると、デュノア社長の前まで歩くと、近況を報告するもどこか様子がおかしい事に首をかしげるデュノア社長。

 

 

「私が滅ぼすから!!」

 

「ロゼンタ...! 気が狂ったか!!」

 

「この世界で一番力がある人の方が安全、そして、それは...コードアメリアスに他ならない。貴方を殺せば、私の身の安全は保証されるのよ!!」

 

「グアァァ...!!?」

 

「社長!!」

 

 何処か狂い始めた彼女は懐から拳銃を取り出すと、デュノア社長に銃口を向けると発砲する。突然の事態に頭の整理が追い付かないイチカ達。

 

 

「さよなら、貴方! 私は...私の自由のために生きるのよ!!」

 

「クソ...煙幕か!」

 

 逃走用に用意していたであろう発煙筒を放り投げ、煙幕で視界を遮ると何処かに逃走する。煙幕が晴れると、血の海の中に沈むデュノア社長の姿があった。

 

 

「しっかりしろ! クソッ、どれも急所を貫いていやがる!!」

 

「ねぇ、イチカ助からないの!?」

 

「今の手持ちだと、応急処置が出来たとしもIS学園に着くころには...」

 

「そんな...」

 

 倒れるデュノア社長に駆け寄り容態を確認するイチカだが、もう助からない事を確信する。そんな中デュノア社長が重い口を開ける。

 

 

「自分の身体の事は...自分が...理解している。最後のお願いだ、娘と...シャルロットと二人っきりにさせてくれないか? 最後位...親子として...話がしたいんだ」

 

「...分かった。何かあったらエリスを呼んでくれ。俺はあの女を追う」

 

「...うん。私は扉の奥に居るから何かあったら呼んでね」

 

 最後の望みを聞き入れたイチカは退出するとフェニックスを纏い、逃げた社長夫人を探し、続くようにエリスも社長室から退出する。

 

 

「...こうして、二人で話すのは何年ぶりか」

 

「僕がここに初めて呼ばれたときです」

 

「そうか...。シャルロット...学園生活はどうだった?」

 

「今はこんな世界になったけど、それまでは楽しかったですよ」

 

 デュノア社長の言葉をどこか冷たく返すシャルロット。

 

 

「そうだ。今まで聞きたいことがあったんだ。なんで、母さんと付き合って、僕を生んで...見捨てたんだ!」

 

「アンナは...お前をISに関わらせたくなくって私の元から離れた。彼女は私の秘書だった...。不妊体質のロゼンタの事、デュノア社の事色んな事に相談に乗ってくれた。そんな彼女の優しさが心地よくって、私はロゼンタが居ながら一晩の過ちを犯した。すぐだったよ、彼女にお前がお腹の中に居る事が分かった。その事に気づいたアンナは私に『この子はISと関係のない所で生きて欲しい』と、そういうと私に何の相談もなく、私の元から離れて行った」

 

「貴方のやったことは母さんの意思に反した裏切りだ。母さんのことを少しでも思うなら...! 病気で苦しんでる母さんのお見舞い位出来た筈だ! なのに一度も来なかった!!」

 

「私もそうしたかった...。だが、何処から漏れたのかアンナの子供が私の子供だと言う事がバレ、会社が停滞期に入る中、社長の不倫が世間に公表させれてしまえば、会社の面目は潰れ、倒産の可能性があった。それを阻止するために、アンナとシャルロットを排除する事を企てようとする一派に住所まで特定されて、いつ消されるか分からない状態だった。どうにか阻止できないか考えていた時にアンナがその一派に毒を盛られ、倒れた」

 

「じゃ、あれは...病気じゃなく...」

 

「そうだ...。あれは偶然ではない。その事を知った時には、すでに毒が全身に回り余命三年と診断されていた。私は可能な限り彼女に何かしてあげようとした。そんな時彼女は私にこう言った。『シャルロットと二人きりで過ごしたい』彼女は自分の身体よりもお前との思い出を何よりも優先したんだ」

 

 デュノア社長から語られる事実にただ黙って聞くことしかできないシャルロット。

 

 

「私は彼女の意思を尊重し、出来る限り二人で過ごせるように周りの邪魔者を法的処罰を与え、生活費を送り、お前たちの安全を確保することに尽力した。最後に私が彼女の葬儀に参列したのはせめてと、思ってのことだった」

 

「なら、なんで僕を引き取ったのさ!」

 

「アンナだけで終わらなかった。次は...お前が狙われたんだシャルロット」

 

「え?」

 

「お前たち二人を消し去り、少しでも不安を解消したかったのだろうな。お前が死ねば、全て解決すると考え作戦が練られ始めた。それを極秘ルートで入手した私は、お前を引き取ることで身の安全を確保しようとした。私の近くに置いていればそう易々と行動できないと思い、さらに手が出しにくくする為に、アンナの意思に背いてお前をテストパイロットに仕立て上げた。だが、諦めの悪い奴らは試作品の実験中の不慮の事故と言う形でお前を消せば、周りから怪しまれないと考えた」

 

「そんな...!」

 

 時間が経つ事に、言葉を話すごとに重くなっていく身体に鞭を打ちながら、出来る限り話そうとするデュノア社長。

 

 

「いつのタイミングで行われるか分からず、手をこまねいていた時だった。あの発表があったのは...」

 

「男性操縦者...」

 

「そうだ。この騒動を利用し、お前をIS学園に送れば彼らは最低でも手を出すことが出来ない。三年もあれば奴らを裁く為の証拠をそろえることが出来る。...フッ、最初からバレずに事が進むなど思っていないさ。戻ってきた時には社長と部下ではなく、親子としてきちんと受け入れようと思った...のだがな...」

 

「貴方は僕のことが嫌いじゃないんですか...。僕が居なかったら母さんと離れ離れになることは無かったんだから」

 

「そんな事は...一度も...思っていない! 例え、その生まれが忌み嫌われるようなものであっても、お前は私の大切な、私の娘だ...!」

 

 自分のことをどう思っているのか気になったシャルロットの手を掴みその言葉を全力で否定するデュノア社長。

 

 

「おとう...さん...」

 

「...泣くな、笑え。お前にそんな表情は似合わない...。ゲホッ」

 

「しっかりして、お父さん!!」

 

「お前は...何にも縛られず、自由に生きろ...!」

 

「そんな、急に言われたって...」

 

「自分の心を、偽るな。それは、ここが知っている......自分で自分を決められるたった一つの部品だ。無くすなよ」

 

 死期が近いのか、口から血を吐くデュノア社長に寄りかかるシャルロット。自由に生きて欲しいという言葉に戸惑うシャルロットに、彼女の胸を指さしの心の大切さを語った後、それまで見せることのなかった柔和な表情を浮かべる。そして、眠る様に目をつむると、シャルロットの手を掴んでいた手が零れ落ちる。

 

 

「お父さん? お父さん、目を開けて! お父さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでこなんな悲劇が続くのかな...」

 

 扉越しに聞こえる泣き声に、どの世界でも起きる悲劇が、どうしようもない現実がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃げた夫人を探すイチカは、裏庭にで追跡目標を見つけた。

 

「ロゼンダ夫人。アルベール社長の件、コード・アメリアスについて話してもらう」

 

「話す? 貴方に? そんなこと貴方に出来ない!!」

 

「グッ、光が...!」

 

 裏庭に逃げたロゼンタがピンク色のネックレスを掲げると眩い光を放つ。

 

 

「私は手に入れたんだ...! 自分の望みを叶える力を...!!」

 

「あれはベスパの...!」

 

 ピンクを基調としたネコ目の機体。背部にあるキャノンと鶏の頭部のような形状が特徴の機体が立っていた。

 

 

「ゴトラタン...!」

 

「私の手に入れた力にひれ伏せぇ!!」

 

「グッ...!」

 

 ゴトラタンがビームライフルを放つのを見ると左右の剣を連結させ、刀身にナノマシンを纏わせると高速で回転させ、ビームを霧散させる。

 

 

「此処じゃ、デュノア社に当たる!!」

 

「私と追いかけっこがしたいのかい? 坊や!!」

 

「周りを気にせずに、バカスカ撃ちやがる!」

 

 上空でビームライフルを互いに打ち合う二人だが、ゴトラタンにはビームシールドがあり、フェニックスが放つ攻撃は悉く防がれていた。

 

 

「ビームシールドの前じゃ、そんな攻撃聞かないんだよ!!」

 

「戦い方は...いくらでもあるんだよ!!」

 

「ウゥ...!」

 

 ナノマシンを纏ったが炎の様に燃え、切りかかるもビームシールドで防がれる。だが、咄嗟に左足で蹴りを叩き込み、体勢を崩させると両腕を前に突き出す。

 

 

「バーニングファイヤ!!」

 

「このッ...!」

 

「接触したビームが拡散して...!?」

 

 両腕からバーニングファイヤを放つも、ゴトラタンもメガ・ビーム・キャノン放つが、ぶつかったビームが拡散し、炎の翼を折りたたみ難を凌ぐ。

 

 

「クッ! 速い...!!」

 

「なんで、コード・アメリアスに力を貸す!!」

 

「あの人は、私の身の安全と地位を、そして長年の願いを叶えてくれるって言ったんだよ!!」

 

「そんな、自分勝手な望みの為に家族を撃ったのか!」

 

 メガ・ビーム・キャノンを背部に折りたたみ邪魔にならないようにすると、フェニックスのビームサーベルとゴトラタンのビームトンファーがぶつかり合い鍔迫り合いが起きる。

 

 

「そうか、坊や...。アンタは私の長年の夢そのものだったんだ」

 

「何を言って...。増援...!」

 

 何度か鍔迫り合いが起きる中、新たな増援としてゲドラフ二機とブルッケングが立ちはだかる。

 

 

「えぇい! ここはヴィクトリーの世界か!!」

 

 ベスパの来たとの連戦に思わず本音が漏れるイチカは、ブルッケングのビームライフルを躱し攻撃するとブルッケングのアインラッドが分離し、フェニックスを拘束しようと動き始める。

 

 

「この程度、大量のファンネルに比べれば!!」

 

 ビームサーベルを両腕に持つとそのまま回転し、ビームの竜巻を起こし、その余波で分離したアインラッドを破壊する。

 

 

「トドメッ!」

 

 白熱化した右手を手刀にし、ブルッケングの胸部を貫く。だが、その一瞬の隙を突き、ゲドラフが左右からフェニックスを挟む。

 

 

 

「ガッ!? 挟まれた...。だけどォ!!」

 

「私の夢ならもう少し抗ったらどうなんだい、坊や」

 

「俺があんたの夢? 何を言って...!」

 

「私は私の夢を叶える! 誰の命令でもない、自分の意思で一生懸命に頑張る坊やは純粋なもの...。私の夢なんだよ!!」

 

「迷惑だ!!」

 

 左右から拘束されたフェニックスの前で語るデュノア夫人の夢を押し付けられたイチカは拒絶し、フェニックス全身からナノマシンが燃えるように放出される。放出されたナノマシンがゲドラフを焼き尽くす。

 

 

「流石だね坊や。それでこそ私の夢だ! さぁ、私の腕の中で眠りなさい!!」

 

「アンタには血が繋がっていなくても、シャルロットという娘がいるだろう!!」

 

「あいつは私の娘じゃない! 子どもを産めない私が後悔している中、あいつは子供の生めない私からアルベールの子供を奪っていったあの憎たらしい女の娘なんか男共の欲望のはけ口にでもなっていればいいのよ!!」

 

「それが大人のいう事かァァァァ!!!」

 

「だけど、アンタは私が望んだ理想の子供そのもの...。戦闘不能にして、私の子供にしてあげる!!」

 

 狂っている、この問答の中でイチカはそう感じたと同時に宇宙世紀の世界で感じてきた感覚と似たものを感じていた。それNTとは似て異なる人工的に開花させられた人達、強化人間と似た気配を感じ、コード・アメリアスによって何らかの強化処置を施されていると感じると同時、彼女の中にある歪んだ思想がどれほど危険か分かった。

 

 

「楽しいね坊や! もっと、私を楽しませておくれ!! 増援?」

 

「アレはラファール・リヴァイヴ...。こっちは危険だ!!」

 

「ロゼンタ夫人! これ以上、自分を陥れるような真似はやめてください!!」

 

「女が...。私と坊やの邪魔をするなァ!!」

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ!!!?」

 

 暴走するロゼンタを止めようと、デュノア社の関係者がラファール・リヴァイヴで前に出るもメガ・ビーム・キャノンのバレル部の大質量と旋回スラスターを利用して遠心力と共に叩きつけると頭部ビーム・カッターで絶対防御ごと焼き貫かれる。

 

 

「だから、言わんこっちゃない...!」

 

「トチ狂ったお友達になりに来たかい、アハッ! さぁ、続きをしようか坊や!!」

 

「もう倒すしかない。そうしないと皆が危険だ!」

 

「私の子にならないんなら、坊やの周りの女どもをこの機体で消す炭にしてあげる。泥棒娘もIS学園に居る女どもも、家族も、恋人もね!!」

 

「...そんな事やらせるかよ!!」

 

 何処かに予備を前もって用意していたのかメガ・ビーム・キャノンを新たに装着すると発射の準備をする。

 

 

「私のいう事を聞かないのなら、お仕置きが必要だね!!」

 

「ガンダムゥゥ!!」

 

 メガ・ビーム・キャノンが発射される前に、全身からナノマシンを放出し、翼部のナノマシンと同調させ、炎のマントを身に包む。

 

 

「防いだ!?」

 

「歪んだ心に兵器は危険なんだ!!」

 

「ボウがぁぁ!!」

 

 メガ・ビーム・キャノンを防ぎきると炎の翼を羽ばたかせ、接近すると発射されるよりも速くメガ・ビーム・キャノンのバレルを切り裂くとビームサーベルでビームシールド発信機を破壊する。

 

 

「俺はアンタ夢でもなければ、アンタの子供でもない...。自分が味わった絶望を、押し付けられちゃ困る!!」

 

 取り出した二つのビームサーベルを収束させ、特大のロングビームサーベルでゴトラタンに向ける振りかざす。

 

 

「アァァァ!? 私の夢が...助けて、アルベ────」

 

 ビームサーベルによって撃ち抜かれたゴトラタンは爆炎に呑まれ、消滅した。

 

 

 

 

 

 

「もう、これは機械と人間の戦いじゃない...人間同士の戦いなんだ...。いつもの戦争なんだ...。」

 

「イチカ、大丈夫?」

 

「あぁ、この世界にきて初めて人を撃った。これが本来の戦争なんだって...」

 

「そう...。大丈夫、イチカは一人じゃない。イチカが背負ってきた業を私も背負うから...。一緒に生き抜こう」

 

「あぁ、そうだな...」

 

 

 

 イチカの様子を見に来たエリスは金属片が散らばるところを見つめるイチカの側に降りる。イチカは本来の戦争に戻ったことを実感し、どこか悲痛な声を挙げるイチカにエリスはそっと寄り添い支えるのだった。

 

 その後、コード・フェニックスから、アウドムラに避難民と物資の収容を終え、何時でも発進出来る事を伝えると裏庭が開き、地下から伸びる滑走路が姿を現す。

 

 

『第一部隊の収容は終わってるから、後はお前たち二人だけだ』

 

「俺達は途中までの警護に当たるから発進してくれ」

 

『了解!』

 

 

 

 そういうと滑走路からアウドムラが姿を現し、大空を飛んでいく。それに続くようにイチカ達も飛んでいくのだった。




本作初めての(一応)原作キャラリタイヤとなります。

V系の機体が多いのはちょうどV2ABを作っているからです。



感想が欲しい。感想があれば前話の三倍の速さで書き終えます(願望)



今のフェニックスの設定というかカタログスペックあった方がイイかな?


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