インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

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少し遅いですが、あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします


最後に投稿してから数年ぶりの投稿です。





39話

イチカが目覚めてから一週間が経ち、敵の襲撃もなく、束の間の休息を堪能していた。

 そんな日常を堪能する一組の男女がいた。

 

 

「い、イチカ...、クッキー作ったんだけど...食べる?」

 

「お、おう...。有り難くもらうよ」

 

 そう、イチカとエリスだ。

 イチカがエリスの好意と向き合った結果、二人は晴れて恋人同士になったのだが、どう接しればいいのか分からないイチカの様子は少し、ぎこちない。

 その様子を遠目で見ているグループがあった。

 

 

「ふむ、やっとあの二人は恋人になったか。長い道のりだったな...」

 

「本当にな、エリスがどんなにアプローチしてもあいつは気づかなかったからな」

 

「イチカは、少し距離をおいて接していました...。それさえ無ければあの二人はいつ結ばれてもおかしくありません」

 

「まぁ、何はともあれ、これでイチカの奴もこれで少しは、自分の幸せを実感できるだろうよ」

 

 

 彼らの事を知っているマーク達はエリスと一夏が結ばれたことに心の底から祝福した。

 そんな中、コード・フェニックスは大人しいマドカに疑問を浮かべていた。

 

 

「イチカが取られたのに大人しいなマドカ」

 

「何、恋にライバルがいた方が対抗心ができると思っての行動だが、どうやら問題なさそうだな」

 

「お前...」

 

 

 まさかそんな考えの元行動していたとは予想しなかったコード・フェニックス。

 

 

「エリスは兄さんの本妻! そして、私は兄さんの愛人枠で兄さんと熱い人生を送る!! これが私の考えた計画だ!!」

 

「前言撤回だ。こいつはもう駄目だ...」

 

 

 一瞬でもマドカを見直した自分が馬鹿だったと思うと同時にマドカらしいなと思ったコード・フェニックスであった。

 

 

 

 

 

 その様子をマーク達とは別の方向から窺っていた人物がいた。

 

 

「はぁ~」

 

「どうした鈴? そんなため息をついて」

 

「予想はしていたけど、こうもあっさり終わるとね」

 

「なんだ、諦めるのか?」

 

「諦めるも何も、あの二人に入り込む余地はないわよ。あんな、心から楽しそうなイチカ、居なくなる前もそして、戻ってきた後も見たことないわよ」

 

「む、だが...」

 

「諦めの悪い女は嫌われるわよ」

 

 

 鈴音はイチカとエリスの様子を見て、いままで一夏に対しての恋が終わり、どこか心に穴が開いたような気分になっていた。

 何人かは諦めた人もいるが、箒の様にまだあきらめていない人もいる。

 初恋は実らなかったが、なら、親友として彼らの恋路を見守っていこうと思うと同時にいい相手を見つけて、見返してやると考えていた。

 そんな事を考えているとシャルロットが何か真剣な顔つきで考え事をしていたのが気になり、親友として相談に乗ってあげようとした時だった。

 

 

「ねぇ、鈴...」

 

「何よ?」

 

「略奪愛ってありかな?」

 

「あるわけないでしょ。何考えてるのよ」

 

 

 何考えているんだ、と思った矢先に学園内に警告音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 警告音が鳴ると同時にイチカ達はすぐさま行動を開始した。

 

 

「アプロディア! 敵はどこに出た!!」

 

『未確認反応が一つ、第三アリーナです』

 

「了解!」

 

 

 イチカ達が第三アリーナに着くと一夏以外は展開し、武器を構える。

 

 目の前にいる機体に対して、並みならない警戒心と敵意を向けていた。

 

 何故なら、目の前にいるの白い髭に蝶の様な羽根を広げた機体──―黒歴史がそこにいたのだから。

 

 そんな彼らに対して、イチカは両手を広げ、待ったを掛ける。

 

 

「皆、待ってくれ! 銃を下してくれ!!」

 

「何故だ、イチカ! こいつは幾度となく文明を滅ぼし、剰えお前に危害を与えた機体だぞ!」

 

「それでもだ! 今の黒歴史からは敵意も悪意も何も感じない、むしろ懐かしく感じるんだ...」

 

「懐かしいだと...」

 

 

 イチカの行動に抗議を掛けるが、イチカの懐かしいという自分たちが感じれなかったモノを感じたイチカ。

 

 マークは銃を下すと、周りにも下すように言うと、納得していないようだが、渋々銃を下す。

 

 それを見たイチカは安堵すると、黒歴史と向き合う。

 

 

「答えてくれ黒歴史。お前は何をしにここまで来たんだ? 頼む、無用な争いと血を流したくないんだ」

 

『...優しく、芯の通った逞しい子に育ちましたねイチカ』

 

「黒歴史が...」

 

「...喋った!?」

 

 

 イチカの頬に優しく触れながら黒歴史から女性の声が発せられた。

 

 

「やはりお前には意思があったのか...」

 

「知っていたの?」

 

「薄々な...。思い当たる節があるんだ。一つは初めて俺たちと会った時、二つはアクシズを攻撃した時、三つ目をはこの世界に来た時に黒歴史が俺を千冬姉に引き渡した時だ」

 

 

 思い出してみると決められた行動にしろ、黒歴史の行動には不可解な点が多い。

 

 それにまるで自分を守っているような、そんな気がイチカにはしてならないのだ。

 

 

『えぇ、私には確固とした意志も記憶もありますよ。何せ、私は────── 一夏と千冬の母親なのですから』

 

「「「「えぇぇぇ!!??」」」」

 

 

 第三アリーナにイチカ以外の絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

『落ち着きましたか?』

 

「なんとかな...。だが、信じられん。黒歴史がイチカの母親だということが」

 

『私は元は人の身体を持っていましたが、わけ合って今はこの姿ですが』

 

「百歩譲ってお前が私と一夏の母親だとして、なにをしにここに来た?」

 

『知ると時が来たのです。二つの世界の真実を知る時が』

 

 

 そう言って、黒歴史は真実を語り始める。

 

 

『私達の住む二つの世界はある関わりがあります。それは遥か昔、今よりも栄えた古代文明がありました』

 

「ちょっと待った―!」

 

『いきなり出てきて、人の話を折らないでくれますか?』

 

「おぅおぅ、いきなり語りだしたと思えば、今より繁栄した文明だって? そんなのあるわけないだろ常識的に考えろよ」

 

『その常識がすべてではないのです。貴女の常識で一夏達に起きた非常識的なことが説明できますか? 出来ないのなら、口を慎んでください』

 

「クッ...」

 

 

 黒歴史の話を折った束だが、黒歴史の語ろうとしていることを聞かずに否定するが、黒歴史に反論され、現状、説明できない為、引き下がるしかなかった。

 

 

『今よりも繁栄していた古代文明達は争いもなく、平和に過ごしていました。そんなある時、未知の流行り病が流行し、ワクチンなどの特効薬が存在せず、多くの人命が失われました。多くの命が失われることを忌避した一人の科学者とその部下はナノマシン技術を作り出し、ナノマシンを駆使した治療の元、多くの命が救われました。ですが、そのナノマシン技術を戦術的に使い、世界をわが手中に収めようとした一つの国が全世界に対して、戦争を仕掛けました』

 

「その戦争で古代人たちが滅んだと言うことか?」

 

『確かに甚大な被害が出ました。現存する医療では不可能でしたがある科学者がナノマシン技術を開発し、その流行り病に対する対抗策を手に入れました。そのナノマシンをより改良し、自分たちの生活をより良いものにしようと考えました。いい方向に進んでいく傍らで、その技術を自らの私利私欲のために使う者が現れました。多くの可能性を持つナノマシンを軍事目的で使い、世界を我が物にしようと欲望のまま、破壊と殺戮を繰り返す者が現れ、既存の兵器では対抗出来ず、支配下に置いた地域から徴兵し、日を追うごとに拡大していく戦力に世界が支配される日は目の前まで迫っていました。自分の開発した技術が人々を苦しめてることに罪悪感を感じた彼は嘗てともにナノマシンを研究し開発した同士を集め対抗策を考えました」

 

「何だろうな既視感を感じるな。束」

 

「...うん」

 

 

 黒歴史の話を聞く中、既視感を感じる束と千冬。

 

 束もまた、宇宙に行くという文明発展の技術が今では戦争の道具になりかけているのだから、妙うな既視感を感じられずにはいられなかった。

 

 

 

『自分が持てる技術を以って一つの機械仕掛けの巨人を作りました。その背に羽ばたく七色に輝く蝶の羽根で戦場を駆け巡り、人工物を砂状に分解する機能の前に戦争を仕掛けた集団も抗いはするものの全て返り討ちにし、打ち取ることが出来ました。ですが、世界規模の戦いの終わりに待っていたものは荒れ果てた大地と見る影もなくなった人工物のみでした』

 

「それが、黒歴史が生まれた理由か...」

 

『えぇ。そして、何とか元の文明に戻す事は出来ないかと模索しますが、残っていた記録のその殆どが失われ、不可能だという結論が出ました。そして、彼らはある選択を迫られました。新たな世界で一からやり直すのか、戻るのが絶望的な母星に残るか』

 

「それは...苦しい選択だな...」

 

『そして、生き残った人たちは二つに分かれました。黒歴史を使い異世界へ飛んだ一行は過ちを繰り返さないためにあるシステムを作りました。争いのない世界をどうしたら作るのか繰り返し検証するために、月にそのシステムのプロトタイプを作りました』

 

「それが月のジェネレーションシステムのできた理由か、そして私たちの世界がある理由がわかったが...。試験管の上で躍らせてる気分だ」

 

 

 

 マークは行き場のない怒りを感じた。

 

 古代人たちの平和の為の実験、そのために多くの命を奪い、失った等と考えたくなかった。

 

 

 

『異世界に渡った人たちは、過ちを繰り返させない為に、平和を望む一心でシステムを構築していきましたが、あれほどの膨大なシステムを作るのに長い年月が必要でした。システムの構築と同時に一機の巨人を作り上げました。自らの再生と平和の象徴として、この宇宙(ソラ)を鳥のように自由に羽ばたけると信じて』

 

「その機体は...まさか...」

 

『その機械人形は、とある神話に記された不死鳥をモチーフに作られ、不死鳥に相応しい再生能力を持った機体フェニックスガンダムを作り上げました』

 

「フェニックス...」

 

 

 イチカは、待機状態のフェニックスを見る一夏。

 

 自分の愛機であるフェニックスの誕生経緯に一夏はフェニックスは争うための『力』ではなく、平和への『祈り』なんだと確信した。

 

 ならば、今の運用は古代人にとっても、フェニックスにとっても本末転倒なのだろう。

 

 

『そして、フェニックスの姿は今とは違うものでした』

 

「経年劣化で改修したからか?」

 

『いいえ。フェニックスはこの機体(黒歴史)をベースに、一種のアンチテーゼとしてある三大理論を基に作られました。ナノマシン搭載機は基本黒歴史がベースと考えていいでしょう』

 

「三大理論か...。デビルガンダムを思い出すな。その三大理論はなんなのだ?」

 

『その三つの内容は<再生、再構築、再現>。嘗て持っていた力です』

 

「持っていた、か...。今はその能力は使えないのか?」

 

 

 今のフェニックスは仮初の姿だという黒歴史は、フェニックスの本来の能力を伝える。

 

 どうゆう理屈か、その能力は今は使えないのか気になったガロード。

 

 

『限定的でいいのでしたら二回、正確には三回能力を使っています』

 

『サイコフレームの搭載、フェニックスに加えられた別の機体の姿、...そしてISの形態移行ですね』

 

『その通りです。本来、フェニックスにはサイコフレームは搭載されていません。ですが、あのアクシズショックの時、一夏の思いと、周囲の意思によってその能力を一時的に開放しました』

 

「私もかつて、フェニックスに乗っていたが、そのような能力を体験した覚えはない。フェニックス掛けられていた制限が解除されたくらいだ」

 

『その理由についても話します。月のジェネレーションシステムが完成し、十分なデータが取れたのを機に自分たちが生まれた母星と同じ星の内部にメインとなるシステムを構築しました。メインシステムが完成したのをきっかけに過去の災厄の象徴ともいえる黒歴史は、時代の流れ共にその恐ろしさを忘れ、世界のどこかで眠りにつきました。フェニックスを再生の象徴として祀られ、時代が進みある日を境にその力を二つに分け、封印しました。一つはシステム最奥部で深い眠りに、もう一つは現在のフェニックスガンダムとなりました』

 

「時代の流れによって、認識が薄くなり忘れ去られるか...。宇宙世紀にもあったな」

 

「シーブックの時がそうよね。ニュータイプと言う言葉は存在しても、その存在は本質とは別のモノとして扱われていた。...そんな感じなんでしょうね」

 

 

 確かに存在したものであっても、確認できなければ、体感しなければ、認められなければその認識は次第に薄れていき、同じ過ちを繰り返すのだろう。

 

 

『フェニックスの能力もまた同じでした。心悪しきものがその能力を使って嘗ての様な過ちを犯すことを恐れた、古代人は能力や機体性能を封印し、正しくその力を使うものにその力を解放するよう設定され、黒歴史とは別の世界に封印しました』

 

「なるほどな、私は完全には認めてもらえなかった。だが、力を扱うに値する存在として能力の一部を解放したのか」

 

『そして、稼働したシステムのチェックと権限、生まれた世界の行く末を見定めていく存在を作りました』

 

「それが俺たちコードを持つ者そして、アビーが存在する理由か...。決められたレールを走り続けてるのか俺たちコード持ちは...」

 

 

 言いようもない感情がコード・フェニックスを襲う。

 

 自分達の出自は分かったが、それは決められたことを永遠と繰り返す機会と変わらないと思ってしまった。

 

 

『こうして多くの世界が生まれ、また争いを繰り返していく...。まだ見ぬ平和を求めて』

 

「そんなんじゃ、平和は訪れない...。ただ哀しみが広がっていくだけだ。互いに手を取り合って、分かち合って、話し合い互いに平和を共有しなちゃダメなんだよ。それが平和への模索だとしても、ただの悲しい歴史の再現でしかないんだ」

 

「イチカ...。大丈夫だよ! 私達だって分かり合えたんだから、きっとできるよ!」

 

『そして同じく、残った人たちは自分達の母星をどうにか元に戻せないか模索し始めました。ナノマシンの汚染の影響で、食物が育ちにくい。まず土壌を調べ、ナノマシンの影響を受けずに済む食物を作り、自然を蘇らせました』

 

「結果的には成功したのだろう。でなければ私達がここに居るのは不自然だ」

 

「前にコード・フェニックスが黒歴史が描かれた壁画を見つけたが、それはきっと同じ過ちを繰り返させない為に、そして忘れないために書いたんだろうな」

 

「だが、この世界でも人は懲りずに争い続けている」

 

「つくづく人間は学習能力のない種族だね、兄さん」

 

 

 フロスト兄弟の言うように人は懲りず争い続けているのだからそういわれても仕方のない事なのだろう。先の出来事を後世に伝えられていたのなら同じ事を繰り返してはいないのだろう。

 

 

『歴史の真実を伝える事。そして、フェニックス掛けられた封印を解く時が来たのです』

 

「封印を解く、そんなことが出来るのか? フェニックスはパイロットを選ぶのなら一夏が選ばない可能性もあるのではないか?」

 

『その可能性は低いでしょう。今までフェニックスが一夏に取った行動を顧みるに、フェニックスは一夏を概ね認めていると考えていいでしょう。フェニックスガンダムとしての本来の力を発揮できるか、それは一夏自身に委ねられます。私に出来るのは扉に掛かった鍵を開けるだけ』

 

「お願いできるか黒歴史...いや、母さん。俺はコード・アメリアスを止めたい」

 

『フェニックスを起動させてください。こちらで封印解除用のコードを送り、後は貴女の覚悟次第です』

 

「俺の覚悟次第...」

 

 イチカはフェニックスを起動させると黒歴史がフェニックスの手を優しく握る。

 

 

『目を瞑り、意識を集中してください。そして、感じるのです。フェニックスの奥に眠る意思を』

 

 黒歴史に言うようにイチカは意識をフェニックスに向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くとそこは古い神殿の様な場所に居た。その外観は月のジェネレーションシステムを新しくしたような場所にイチカはいた。

 

 

「ここは、月のジェネレーションシステム...。にししては、新しく見えるな」

 

【数多の戦いを乗り越え、不死鳥に魅入られし者よ】

 

「誰だ!」

 

 一夏は、当たりを見回すと中央にそびえ立つ塔に一つの球体が降り立つ。

 

 

【私は嘗て、不死鳥の担ぎ手として共にあった者だ。汝に問う。何故、力を求める】

 

 この時、NT故か一夏は、本能的に理解した。目の前に居る光はフェニックスに宿る残留思念の様なものだと。言動から、嘗て自分と同じようにフェニックスに乗っていたという事を理解するのに時間はかからなかった。

 

 

「俺は、あんな悲劇を繰り返したくない。俺は嫌なんだ...。人と人がいがみ合い、傷つけ合うのも、目の前に起きた突然の死で、悲しみを生み出したくないんだ!」

 

【人の在り方とは謂わば、光と闇そのものだ。それが人の性故に、お前が味わったものは必然とも言える】

 

「なら、教えてくれ...。俺はあと何回戦争を体験すればいい? 俺はあと何回戦えばあの子の手を握れるんだ...!」

 

【その問いに関して言える明確な答えは、私にはない。だが、一つだけいえる事がある。NTが人の革新であり、可能性の象徴だとするのなら、それは人の数だけ存在することになる】

 

 

 親が子を論するような温もりを感じるような声で一夏に答える。人の数だけ平和があり、その可能性も多岐にわたる、その意味をイチカは理解している。

 

 

【お前もまた、その可能性を示してきた。ならばその可能性を示すがいい! この試練で証明してみせよ! 己が可能性を!】

 

「クッ...!」

 

 

 眩い光が辺りを覆うと目の前には無数の機体が現れる。一夏の知っている世界の量産機がざっと数えただけで、300は超えていた。自身が、いつのまにかフェニックスを纏っていたことに驚きながら、ビームライフルを構える。

 

 

「この程度の程度の敵どうってことはないが...」

 

 

 イチカはフェニックスの持てる武装を使い次々と撃破していくが、無尽蔵に沸いてくる敵と、試練の内容に疑問を持ち始めた。

 

 

(本当にこれでいいのか? これじゃ今までと変わらない...。敵を倒して、悲劇が生まれ、新しい戦いが始まるだけで、何も変わらないじゃないか! アイツの言う可能性は、力で相手をねじ伏せる事なのか!!)

 

 イチカはハイザックのコックピットに突き刺したビームサーベルを引き抜き、爆発するハイザックをみながら、あの光の意図を考えていた。

 

「出てくる敵を倒して、それに何の意味がある。お前の言い可能性は力で相手をねじ伏せる事なのか」

 

『...この試練の内容に疑問を抱いているようだな。何かを為すために敵を討つ覚悟が必要だ。すでに貴様にはある事を理解した。ならば、これが最後の試練だ。今から現れる奴との戦いで倒すこと以外の可能性を示して見せろ!』

 

「なに?」

 

 

 光の言った最後の言葉に疑問を浮かべるイチカの前に黄金に輝くユニコーンガンダムが腕を広げながら降り立ってきた。

 

 

「此奴が、試練の相手...」

 

 目の前のユニコーンの同型機に向け、にビームライフルを構えているイチカは知らないが、その機体はRX-0シリーズの3号機、ユニコーンやバンシィの兄弟機であり、地球連邦がビスと財団の干渉を受けずに作り上げた機体であり、同じく不死鳥の名を冠するMSである。

 

 

「簡単にはいかないだろう、な!」

 

 イチカはフェネクスに向け、ビームライフルを放つが機体の装甲から溢れる青いサイコフレームの輝きと同じ光を纏いながら可憐に避けていく。

 

「舐められている...。俺にその試練をクリアできないとでも言いたいのか!!」

 

 ファンネルを射出し、ビームライフルで牽制しながら、ファンネルで攻撃するがその全てを躱していく。イチカはフェネクスに接敵しようとすると、フェネクスは逃げる様に、その場から飛び去る。青と赤が不規則な軌道を描きながながら、飛んでいく様何処か幻想的にも見える。

 

 

「そこだっ! ファンネル!!」

 

 進路上に配置したファンネルを放ち、危険だと判断したのか急停止から急加速するフェネクスだが、その一瞬は接近するのには十分だった。

 

「貰った!! ...チィ」

 

 接敵したイチカは、ビームサーベルを振りかざすも、ユニコーン同様に搭載されていたビームトンファーで防がれる。

 

 

「防がれた...なら! なッ!?」

 

 背後からファンネルで攻撃しようとした瞬間、虹色の光が開いている手から放たれ、その輝きに触れたファンネルは崩壊して行く。

 

 

「サイコ・フィールド...ファンネルを破壊した...? いや、時を巻き戻したような...!」

 

 起こったことを分析しようとしていた時、先ほどまでファンネルに向けていた虹色の光を自分に向けている事に気が付いたイチカは、咄嗟に避けるも左肩に接触する。

 

「グワアアアアァァァァ!! ...グッ!」

 

 虹色の光から逃げる様に飛び回るフェニックスに、虹色の光で攻撃こそすれど、他の武装で攻撃してこない事に違和感を覚え始める。

 

 

「奴の動きに殺意がないッ! コピーニューロとも違う、殺意や敵意と言ったものが一切ない。ビームトンファーやサイコ・フィールドだって、防衛の時だけで、自分から攻撃してきていない」

 

 試されている、イチカはそう感じた。自分がフェネクスをどう対処するのか、それによってこの試練で認められるのか決まる。

 

 

「人が持つ可能性は人それぞれ...。なら、俺は...!」

 

 覚悟を決めたイチカに答えるかの様に、フェニックスのサイコフレームが緑色に変わっていく。持っていた全ての武器を放棄し、フェネクスに近づいていく。

 

 

「あの時、可能性は人の数だけ存在すると言ったな。なら、これが俺の...!」

 

 両手を広げ、敵意はないと意思を証明するかのようにイチカは一切攻撃せず、ゆっくりとフェネクスに向かって、進んでいく。そして、目前まで迫った時、フェネクスはビームトンファーで、フェニックスの頭部に向かって、突き出す。

 

 

「...」

 

 だが、寸前でフェネクスが軌道を逸らしたことで、直撃は避けられ、V字アンテナの一部が融解している。フェネクスはビームトンファーを仕舞うとイチカを見つめ続け、そのままどこかへ飛んで行った。

 

【それがお前の覚悟か...】

 

「あぁ、そうだ。今は戦う事しかできないかもしれない。でも、いつかは銃を向ける事なく、戦争と言う言葉自体が存在しない世界が訪れると俺は信じている。互いに分かり合うのに武器は必要ないんだ」

 

【その偽りなきその思い...。貴様であれば、フェニックスの全てを託すことが出来るだろう。フェニックスが覚醒したこの瞬間を持って、封印されていた守護獣が目覚める。『本体』(フェニックス)『担ぎ手』(パイロット)、そして核である『守護獣』が揃いつつある。フェニックスが本来の姿に戻る日も近い】

 

「うっ...! 辺りが眩しい...」

 

【貴様の覚悟しかと見届けた。此度の試練で見せたその思い、決して忘れるな】

 

 辺りが、一層眩く輝く中、イチカの意識が遠のいていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!? フェニックスが燃え始めたぞ!!」

 

「きさ...母さん! 本当に一夏は大丈夫なのか!!」

 

『大丈夫ですよ千冬。試練が始まっただけのこと。一夏が心配なのは分かりますが、私達がいない間、一夏をあなた一人の手で育ててきたのは分かっています。それ故、一夏に並みならぬ愛情を持っているのは理解しますが、少しは弟離れしたらどうですか?』

 

「誰のせいで、私達が苦労を...、私のことはどうでもいい。だが、一番親の愛情を注ぐべき時に自らの研究の為に、一夏を孤独にさせた貴女には言われたくない!」

 

「ちーちゃん...」

 

『元々一か月程度で済むはずでしたが、私達は一夏達が呑みこまれた異世界通じる穴と同じものに呑みこまれ、あちらの世界を彷徨いました。我が子を残して平然とする親がいると思いますか? 私達は戻る為の手段を探し、行くことが出来るのなら戻ることが出来ると考え、研究中に見つけた黒歴史であれば戻れると考えにたどり着き、探し続けました。ですが、夫は流行り病に倒れ、命を落とし、同じように私も感染し身体もボロボロで余命も残り僅かであることを感じ取りながら、藁にもすがる思いで探し続けました』

 

「イチカの母親だと言うには、何故機械の体...黒歴史なんだ?」

 

『ボロボロの身体で残りの命も風前の灯火も同然でしたが、我が子を残して死ぬわけにはいかない。夫との約束を護る為、必死に探し続け、ようやく見つけましたが、肉体はすでに限界で、戻る事は出来ないと判断した私は、黒歴史に私の記憶と人格をコピーし、私の脳髄を使用した電脳を黒歴史に搭載して、死にました』

 

 何故、黒歴史の姿でここに居るのか。誰もが抱いた疑問を黒歴史は自分に起きた事を包み隠さず話していく。その事実に、誰もが絶句するしかなかった。

 

 

『大切な我が子を置いて死ぬなんて認められない。例え肉体が死んだとしても、記憶と人格が残っていれば新たな肉体を用意し、貴方たちの元に戻ることが出来る。そう思い行動しました』

 

「なら、何故あの時イチカを攻撃した? 息子だと判断できなかった言われればそれまでだが...」

 

『記憶と人格の移植は成功し、電脳も問題なく起動していました。これで帰れる、そう思い黒歴史を起動させたその時でした。膨大なデータが嵐となって私を呑みこみ始め、私と言う存在は電子の海に沈みました。そこからは朧げな意識の中、黒歴史の行動見る事しかできませんでした。あの時までは...』

 

「あの時って、イチカ撃った時?」

 

『ええ、あの時コックピットの中にいた一夏の顔を黒歴史のツインアイ越しで見た時、私の意識は電子の海から這い上がり、黒歴史を完全に掌握し、これ以上一夏を傷つけまいと撤退しました。というか、私が耐えれませんでした。実の息子を傷つける等...!』

 

 あの時、止めを刺さずに撤退したのはそういうことか、とあの場で戦っていた全員が黒歴史の不可解な行動の意味を理解した。子を思う母親の思いが起こした奇跡と言えるかもしれない。

 

 

『成長した一夏の姿は、若い頃の夫にそっくりで、あの時の覚悟を決めたような表情は瓜二つよ。この身体で親の本能というのは些か違和感を感じるけど、本能的に目の前に居る少年が一夏だと理解したわ。罪滅ぼしなんて言うつもりはない、夫に続いて一夏まで、失う訳にはいかなかった。だから、遠くから一夏達の様子を見守り、危険だと判断した時だけ介入する方針で行動して、今の至るということになるかしら』

 

「約束とは何だ、母さん?」

 

『それは言えないわ千冬。ただ親として当然のものだけど、私達にはその資格がないのよ。意図せずだとしても、貴女達を置き去りにした私達に...』

 

 黒歴史から哀愁を感じる。きっと後悔しているのだろう、大切な子供を孤独にさせた自分に。

 

 

「イチカ大丈夫かな?」

 

「その試練の内容は分からないのか?」

 

『試練の内容までは分からない。ただ、一夏なら出来ると確信しているわ』

 

「様子も分からないのになぜそこまで言い切れる」

 

『子供はね、千冬。いつまでも雛鳥のままじゃない、いつかは大人になる。親の予想を遥かに超える速度で手から離れていく。そんな子供を親は信じて見舞る事しかできないの』

 

「私は信じるよ。イチカが試練を乗り越えて、戻ってくるって」

 

 黒歴史は自らの手の感触を確かめる様に握る。イチカもまた、自分の手を離れ、自分だけが持つ翼で、羽ばたいていく。確証は無くても、必ず成功させると信じていた。

 

 

 

『これから大きな戦いが起きます。二つの世界の命運をかけた戦いが...。その時あなた方は何を感じますか? 戦争の無意味さ? 命の大切さ? 命の輝き? 未知の現象に対する恐怖? それとも何も感じませんか(………………)

 

「それは一体どういうことだ、母さん!」

 

『これから起きる事の本質を見極めることが出来なければ、同じ悲劇を繰り返す』

 

「ほんの小さなきっかけで戦いが起きる。見ているものも、感じている物も人それぞれ違う。ほんの少しのすれ違いで悲劇が起きる。だけどその根底にあるモノは同じなんだ」

 

 

 黒歴史の突然の言葉を疑問に思う中、黒歴史は今後、確実に起きる戦いで起きていることを理解できなければ、この世界の人類が古代文明と同じ過ちを繰り返すことになる、その言葉に続くように今は試練を受けている人の声が聞こえた。

 

 

「兄さん!」

 

『試練は成功の様ね』

 

「ああ、あいつはフェニックスの全てを託すことが出来る、と言っていた」

 

「イチカなら成功できるって信じてたよ!!」

 

 

 試練を乗り越えたイチカの周りに人だかりができる。そして、まず目に入ったのはフェニックス外観だった。

 

 

「なんていうか、フェニックスの姿がより人型に近づいたな」

 

「俺のマスターフェニックスにそっくりだぜ」

 

「クロスバインダーソードのあった場所に赤い鞘が左右に二本、肩にあった翼は完全に背部に固定されてるな。至る所に金色の鎧の様なパーツの様なもの、クロスバインダーソードは翼部の邪魔にならないようにマウントされているか」

 

『フェニックスがマスターフェニックスに近づいたのではなく、マスターフェニックスがフェニックスに似せて作られたのです。ハルファス、マスターフェニックスといった、不死鳥の名を冠したナノマシン搭載機はのフェニックスが元になっているから似ているのは当然よ』

 

「これがフェニックスの真の姿なのか?」

 

 

 今までのフェニックスと異なり、限りなく人型に近い造形になっており、その姿を見たコード・フェニックスが自分の愛機であるマスターフェニックスにそっくりだと思う中、黒歴史が似ている理由を話す。

 

 

「これで、フェニックスはかつての力を取り戻したの?」

 

「いや、3割程度だ。大本の力はあっちの世界に別の姿で眠っている、守護獣とあいつは言っていた。この言葉に聞き覚えはないか? アプロディア」

 

『いいえ。ですが、私ですら立ち入ることが出来ない区画があります。可能性があるとしたらそこかと』

 

「え? それじゃ、フェニックスが真の力を解放するのは無理なの...」

 

「いいや、あいつはフェニックスの力が覚醒したことによって守護獣が目覚め、近いうちに真の姿に戻ると言っていた。その近いうちがいつまでなのかはわからないけど、そう遠くない気がする...」

 

 

 イチカはフェニックスの現状を伝え、試練で起きた事を説明する。

 

 

「アプロディア、ユニコーンガンダムにバンシィ以外に兄弟機はいるか?」

 

『確かにいますが...、何か気になることでも?』

 

「試練の時に対峙したユニコーンガンダムの同型機は、サイコフィールドを放ち、触れた機体の装甲を『時間を巻き戻した』ように崩壊した。俺が知っている限り、そんなこと出来るのは機体に魂が宿った時か、人の意識が集中した時だ」

 

『人は死ぬと魂となり、認識の及ばない高次元にある魂が集うフィールドに行くと考えているわ。NTは生きたまま、魂から発する未知のエネルギーを操って現実に働きかけ、サイコミュは時に魂のエネルギーを集め物理的なエネルギーに変換してモビルスーツに作用させる装置だとすれば、NTが起こしてきた数々の超常的な出来事も説明がつくわ』

 

 

 イチカの疑問に仮説で答える黒歴史だが、あまりのも突拍子もない事を言い始め、困惑するものが出始めた

 

 

「えーと、つまりどういことだ? NTはサイキッカーみたいな感じなのか?」

 

「それとも違うだろう。だが、アクシズを押し返した時、イチカが上空からの攻撃を受け止めた時、その中心にはサイコマシーンが存在した。サイコマシーンとNTのこの二つは私達の思っていたよりも密接な関係にあるようだ」

 

「サイコフレームだけでこうなんだから、フルサイコフレームだともっとすごいことになるって事?」

 

「それこそ、イチカがユニコーンガンダムに乗った時のようなことが起きるかもしれん」

 

 

 マーク達は自分達NTやサイコミュといった身近なものであっても、理解できてい居ないところが多い事を再認識した。

 

 

『ISでは、彼女の軍勢に太刀打ちするのは困難でしょう。ですから、あなた方にこれを渡しておきます』

 

「これは?」

 

『あなた方が使っていたフェニックス・ゼロの強化案、フェニックス・ゼロワンです』

 

 

 フェニックス・ゼロは嘗て、エリスや一部のクルーが乗っていた機体。フェニックスの完全再現を目指して開発されたが、フェニックスが持つ複数のブラックボックスを解析出来なかったため、フェザーファンネルやナノスキン装甲などの特殊技術を実装する事が出来なかったがビームサーベル、バルカン、ビームライフル、メガビームキャノンと一通り揃える事に成功している。他にも機体のカラーリングやツインアイがゴーグル状など違うところなどがある。

 

 

「フェニックス・ゼロの強化機ということは、差し詰め指揮官機と言った所か」

 

「なら、この機体をIS学園の教師陣にフェニックス・ゼロとトルネードガンダムを渡して、部隊のリーダー格にフェニックス・ゼロワンの強化機を渡すというのはどう?」

 

「確かに、それなら戦力としては申し分ないだろう。今後の戦いの規模を考えれば妥当か」

 

「私達に貴様たちの世界の機体に関する情報は渡すつもりはないのではなかったのか?」

 

「戦況が変わった。私達だけではこれから起きる戦火を全て消すことは不可能に近い。ましてやコピーニューロが操る機体ともなれば一層厳しいものになるだろう。織斑千冬と同等の敵が20人嘗ての機体に乗って出てきたらどうだ。対処できるか?」

 

「無理に決まってるじゃない。織斑先生が20とか太刀打ちできないわよ」

 

 

 自分達だけでどうにかできる状態ではない事はマーク達は理解している。今後は世界を股にかけて戦うとなれば彼女たちを護ることをは出来ないし、同行させればならば守りが薄くなる。今は少しでも協力者が欲しい。その為なら、多少の流出程度些細なことだ。でなければこの世界はコード・アメリアスに支配されることになると理解しているからだ。

 

 

「君たちにはそれぞれ、今の機体に近く、スタイルに合った機体を用意しよう。新しい機体に乗った際に少しでも今まで乗ってきた愛機に近ければ、乗りこなしやすいだろ」

 

「そんな都合のいい機体があるのか?」

 

「もし無かったとしても、選んだ機体をベースに改造するという手もある」

 

『ISの技術はほぼほぼ使えないと考えてください。絶対防御然り、拡張領域なんてあませんから』

 

「寧ろあるとやりずらいな私達は。これに関しては私達にはどうにもできないからそこの天災に頼るしかないだろう」

 

「このまま行くとちーちゃんも箒ちゃんも居なくなっちゃう可能性があるし、仕方ないから協力してあげるよ」

 

 

 このまま行けば戦力的にも、技術的にも上である敵に自分の最高傑作であるISが無残にやられていく姿を見てきた以上、目の前の事実を認めるしかなかった。自分ではもうどうにもできないのだと。

 

 

「機体のデータはアプロディアが持っている。彼女から自分に合った機体を選んで、より使いやすい様に改造してくれて構わない」

 

『よろしいのですね。イチカ』

 

「これ以上意地を張ったところで、なにも好転はしない。ならば、少しでも好転出来る道を選択した方がいい。それに近いうちにIS委員会は消滅する」

 

「どういう事だイチカ?」

 

「試練の終わり際にあいつは『刻』を見せた。その中に、コード・アメリアスの宣誓布告、IS委員会の消滅があったんだ」

 

 

 イチカは試練が終わり、光に呑まれた際に刻を見ており、これから起きる事を言うとマークが思案を巡らせる。

 

 

「なるほど、この世界の基幹を為すIS、それらの情報を統括、管理。今の世界において重要な拠点の一つだ。その委員会が敵の手に落ちたとなれば、自分達の信用するISでは、戦っても勝ち目がないと現実を押し付け、反攻に意思をへし折ることで、相手を服従させることが出来る」

 

「恐怖による抑圧か。確かにそれならば戦う事の出来ない民間人は効果はあるだろう」

 

「そして、湧き出てきた反攻勢力を潰せば、なお効果があるだろうしね。なんなら見せしめにブリュンヒルデを公開処刑するという方法もあるよ。そこまですれば後は圧政を引くだけということだね兄さん」

 

「何処までするか分からない以上、こっちは出来る限りの対策を討つしかないんだ」

 

 

 彼女が本気なら、完全な統治の為に何処までやるだろう。そういった執念を幾度となく刃を交えてきたイチカはそう感じていた。

 

 

『生身の肉体を持たない私に出来る事は少ないです。ですので、今回の事態に対処するのは今を生きる貴方たちだけです』

 

「そこまで強力な機体なのに戦わないのか?」

 

『生きている人が起こした問題は、生きている人が解決しなければなりません。私の様に機械の身体に記憶と人格があるだけの様に、魂だけの存在にその権利はありません。出来る事なら、協力したいですが、それは...人の摂理に反します』

 

「分かっている。この問題は俺達だけの手で解決しなければならない。例え、どんなに厳しい戦いでも俺達は乗り越えなければならない」

 

『見守ることしかできないけど、祈ることはできます。貴方たちの勝利があらん事を願っています』

 

 

 人が起こした問題は人が解決しなければならない、と言い聞かせた黒歴史はその場から文字通り姿を消した。

 

 

 

『ISに乗り皆さんはこちらに。貴女方にあった機体を選んでください』

 

「選び終わった後の慣らしなら手伝おう。MSに乗るわけではないから、すぐ感はつかめるだろう」

 

「セシリアに関しては私が面倒を見よう。あの体たらくファンネルを鍛えて真面に使える様にしてやる。私の訓練は厳しいから覚悟しておけ」

 

「絶対防御がないのに心理的に絶対防御に頼るとかも直すか」

 

「それなら、イチカとマークのファンネルとか、取りあえず回避するもしくは防ぐという手段が取れる様に鍛え直すか」

 

「俺達が可能な限り、バックアップするから。みんなは乗り熟せるように集中してほしい。俺とフェニックスも手を貸すから」

 

 

 

 彼らは反撃への一歩を踏み出した。これから一緒に戦う彼女たちにイチカは不安を感じさせない笑みを浮かべながら手を差し伸べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、世界の真実を知ってから、数日後にコード・アメリアスによる宣誓布告によって世界中には戦火が勃発し、人々は戦いの渦に取り込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、もう一つの世界で動きがあった。

 

 

「クソ、イチカだけじゃない、マークやラナロウ、エリスまでも消息を絶つとは...」

 

 ネェル・アーガマ、ブリッジでゼノンは行方不明になっている六人とアプロディアの行方を探していた。

 

「未だに有益な情報も入ってこない...。あったのは...」

 

 

 格納庫に安置されている黄金に輝くフェニックスを沸騰させるMAがあった。行方不明になった奴らを探し周辺各地や最初にイチカが行方不明になった月のジェネレーションシステムを探した際に、一際古く、警備が厳重だった場所に眠る様に厳重に封印されていたの見つけ、何かの手がかりがあるかもしてないと回収したのだ。

 

「解析を進める上で分かったの、ジェネレーションシステムと同レベルで古く、ナノマシンを含めフェニックスとの類似性が90%を超えている。恐らく、随伴機なのだろうが、コックピットが何処にもない完全な無人機。機体名称が『バーニングホルス』...」

 

 

 解析を進める上で分かったことが纏められた資料に目を通すゼノン。ゼノンはイチカ達は死亡なんてせず、どこか別の場所に飛ばされた...。それこそ嘗てイチカやマドカが自分たちの所に来たように、その逆もあり得るのではないかと考えていた。

 

「これだけ古い機体なら、何かしら異世界に関する情報があるかもしれん。あの時観測情報はイチカがこっちに来たものと同じだった。なら掛けるしかないその可能性に...その為に今は解析と捜索に集中する。幸いに今の所、敵は出ていない今の内に進めなければ」

 

 

 資料に目を通していたゼノンは気づかなかった。バーニングホルスのツインアイが一瞬輝いたことに。────― 覚醒の時は近い。




色々忙しいくせに新作書いたり、劇場版NTやGジェネ新作にあの機体がでてき事で影響を受け、修正しまっくって遅くなりました。


今年中の完結を向けが何ばりたいと思います。

私が執筆しているほか作品も近いうちに投稿したいと思います。

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