インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

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明けましておめでとうございます。

こちらの作品は後、少しで終わりそうです。

それまで、長い目で見守ってください。


38話

ベースジャバーに搭乗しながら、ドイツに向かうマーク達。

今回、エリスはバンシィ・ノルンに搭乗している。

バンシィに搭載されていたアームド・アーマーXCのON・OFFが可能になった事により、バンシィに乗る事が出来る様になったのだ。

他にも試験的に作ったNT用の武器を簪の専用機に搭載している。

「ねぇ、エリス達は戦うのが怖くないの?」

震えた声で聴いてくる簪。

「確かに最初の頃は怖かったわよ。でも、戦う内に戦うことに対する恐怖は無くなったわ」

「何故だ?戦えば死ぬかもしれんのだぞ」

「確かに戦えば最悪、死ぬ。だが、私達は戦いの中で各々、護りたいモノが出来た。それこそ、自分の命を代償にしてもだ。それはイチカも持っているが、何かは分からん。おおよその見当はつくがな」

「一夏が護りたいモノ...」

「私達は殺し合いをする為に戦うのではない。大切なモノを護る為に戦うのだ。君達も何の為に戦うのかもう一度、見直すといい」

『間もなくドイツに着きます。警戒態勢に入って下さい』

マーク達が戦う意味を自分達なりに説いているとアプロディアが目的地であるドイツに着こうとしていた。

「祖国が...」

「こ、これは...」

「酷い...」

雲を抜け見えたのは荒れ果てたドイツの首都ベルリンだった。

「一時間だ...。通信が入って、たった一時間だ!一体、ドイツ軍は一体何をしていたんだ!!」

「ラウラ...」

「これだけの被害を出すには相当な数が攻めてきたか、それとも...」

自分が帰還するまでに起きた惨状にラウラは怒りを露わにし、マークはどんな敵が攻めてきたのか考えていると簪に異変が起きる。

「簪ちゃん。さっきから震えてるけど、寒い?」

「違うよ...お姉ちゃん...。なんだか、怖い...」

「怖い?」

簪の怖いの意味が分からず、首を傾げると簪は自分で自分を抱きしめる。

「怖い...。何かが、来る...!」

「!? 総員、退避!!」

怯える簪を安心させようとエリスが近づいた時、エリスの中で光が弾けると全員に退避行動を取らせると、先程いた所に高エネルギーのビームが通り過ぎた。

エリス達の視線の先には一見すれば、ビグ・ザムに似ているがカラーリングや武装が異なり、黒やグレーを基調とした大型の機体がそこにいた。

「なんだあのバカデカイのは!?」

「アレは...」

「デストロイ...ガンダム...」

困惑する一同だが、その中で交戦経験のあるエリスとマークはその破壊神の名を呟いた。

「先手必勝ですわ!」

セシリアがデストロイを狙撃するが、陽電子リフレクターにより、無効化された。

「やはり、搭載済みか! 奴は接近戦に弱い!高機動かつ、接近戦に強い機体が相手をする必要がある」

「なら、私が「隙アリィ!!」キャァァァァ!!」

エリスがバンシィのビームサーベルを構え、接近しようとした瞬間、物陰から現れた一機の機体が蹴りを連打し、蹴られた衝撃でエリスは近くの建物に衝突する。

「貴様!何者だ!!」

『私ノ名ハ、シュバルツ・ブルーダー。サァ、拳デ語リ合オウゾ!』

何処か機械染みた男性の声が目の前のガンダムから、発せられた。

「まさか...。シュバルツのコピーニューロか!」

「コピーニューロ?」

「簡単にいえば、オリジナルと同等のコピーだ。奴は神出鬼没の危険な敵だ。注意しろ」

『ソリャァァ!!』

シュピーゲルはクナイを投げると全員回避行動に移るが、クナイが途中で爆発し、周りの建物を破壊していく。

「シュピーゲルは私が相手をする!お前たちはデストロイを倒せ!!」

「敵接近を確認。体照合完了。M1アストレイ、バクゥ、シグ―、ウィンダム、カオスガンダム」

「えぇい...!」

『ヨソ見ヲスル暇ガアルノカ!』

「グッ...」

シュピーゲルは自分に任せ、デストロイを倒せと命令するマークにシュピーゲルがシュピーゲルブレードを使い、接近戦を仕掛けてくるがビームサーベルで応戦する。

ガンダムファイターとの交戦は少なく、シュバルツの戦闘も映像で見ただけなので、コピーとはいえ、実際に戦うのはこれが初めてである。

「イチカの様に拳で戦う事は出来ないが...。私なりの戦い方でやらせてもらう!」

『ソノ心ハヨシ。サァ、貴様ノ力見セテミロ!!』

「言われなくてもォォ!!」

シュピーゲルブレードとビームサーベルがぶつかり合い、火花が飛び散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物に衝突した際に意識を持ってかれかけたエリスだが、培われた忍耐力で何とか保ち、目の前のデストロイガンダムの本体から分離した両腕部誘導式攻盾システム「シュトゥルムファウスト」がエリスに向かって飛んでくるのを確認するとすぐさまその場から離脱する。

「大丈夫か、エリス!」

「何とか...。あれの弱点さえ突ければ倒せる!」

「アイツに弱点があるのか?」

「確かにあの機体のビームシールドは脅威よ。でも、あの機体はビームを一定の長さで発振させ続ける武器...。例えば、ビームサーベルとかに弱いわ。後、懐に入られると弱いの」

言葉で言うのは容易だが、実際にやろうとすると困難であり、歴戦の戦士であるエリス達はまだしも、箒達にはキツすぎる。

「ガロードは彼女達と一緒に量産機の相手をして。デストロイは私がやるわ!」

「まーた、御守かよ」

「押し付ける様でゴメンね。貴女達はガロードと一緒に行動して」

エリスの言葉に思いの外素直に従う箒達。

エリスは先程イチカの過去を見せたことによって、彼女達の心境に変化が起きたと推察した。

「おう!任せておけ」

デストロイがガロード達を行かせまいと両腕を飛ばすが、エリスは瞬光式徹甲榴弾を放つと片方の腕に着弾し、閃光を放ち爆発した。

もう片方の腕が破壊されたデストロイは残った腕を戻し、MAからMSに変形すると先程よりも一回り程、大きくなる。

「ここから先は行かせないわ!」

デストロイは胸部の3連装大口径ビーム砲、スーパスキュラを放つが余裕のある回避行動をとるとデストロイに接近しようとするが、フライトユニット円周上に計20門内蔵さているビーム砲を放ち、近づけないようにする。

「迂闊に近よれない!」

背部フライトユニットに装備されたミサイルランチャーから追尾性の高いミサイルが放たれるとバンシィの頭部バルカンで撃ち落としていく。

回避行動をしているとデストロイの後方から来たアビス、ガイアが攻撃を仕掛けてくる。

「邪魔をしないで!」

アビスは両肩部シールドに搭載された武器を惜しみなく使うが、アームド・アーマーDEを背部のアームド・アーマーXCにマウントし、バレルロールを描きながら接近する。

アビスは接近したバンシィに胸部内蔵の大出力ビーム砲のカリドゥス複相ビーム砲で迎撃しようとするが、放たれるより前にアームド・アーマーDEを突きつける。

アビスを難なく撃破するが、MA形態のガイアが建物と建物の間を高速で移動しながらウイング前面に展開されるビームエッジでバンシィを攻撃しようとするがバンシィはビームトンファーを起動させ、受け止める。

「アンタに構ってる暇はないのよ!」

瞬光式徹甲榴弾をガイアに向けて放つと閃光を放ち、爆発していくが、ガイアは寸前でビームライフルを放つが決定打とならず装甲に掠る程度だったが、出来た一瞬の隙をデストロイは見逃さず、腕部を飛ばしバンシィを建物に叩きつけた。

腹部から伝わってくる衝撃に徐々に意識が遠のきかける中、エリスは懐かしい声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガロード達は迫りくる量産機を相手にしていたが、その圧倒的な数の差に押されていた。

「前に出過ぎるな!死にたいのか!!」

「だ、だが...」

「死にたいのなら死ねばいい。だがな、それによって多くの人が悲しむことになるんだぞ!」

前に出過ぎる箒に叱咤するマドカ。

「えぇい...。このままではGNアームズの弾薬が底を尽きるぞ...」

「だがよ、こっちはルーキーの御守もしてるから動きたくても動けないしな。それによ」

弾薬が切れかけている事に嘆くマドカ。

それに対し、ガロードは簪の方を見る。

そこには身体を震わせ身動きが取れないでいる簪が居た。

まだ、自分の力に整理が付かない状態での実戦、死ぬかもしれないという重圧が簪を襲い、動けずにいた。

「兄さんが居れば説得することも出来たろうが...」

「今、居ない奴の事を言っても仕方のない話なんだからよ」

「最悪、サテライトキャノンを使う事になるな。ガロード、弾薬はどれ位ある?」

「全部合わせて6割だな」

「GNアームズの弾薬はもう、3割程度だな。増援が欲しいがそれは高望みか」

「!? どうやら、奴さん本格的に俺達を落としたいらしいぜ...」

マドカはガロードの見て居る方を見ると其処には敵の増援が100以上来ていた。

「少し、勿体ないが...」

マドカはGNアームズをパージするとそのままGNアームズを敵増援に向けて突進させる。

GNアームズはGNミサイル、GNキャノン、GNツインライフルを放ちながら突貫する。

敵の中央にGNアームズが着くとマドカはGNアームズに搭載せれていた太陽炉を狙撃し、GNアームズが大きな爆発を起こし、爆発に飲まれ周囲の敵を撃破していく。

「これで、8割削れれば御の字なんだが...。半分しか削れなかったようだ」

「それくらい削れれば結構だと思うぜ?」

「そうか。少し、簪の所に行ってくる」

「了解!」

マドカは簪の所に向かって移動していくと簪の前に行く。

「マドカ...私...」

簪が何かを言いかけた時、パシッ!、と乾いた音が戦場に響くと同時に簪は頬に痛みを感じた。

何が起きたのか一瞬理解出来なかった簪だが、振り向かれた腕を見て平手打ちをされたのだと理解した。

「お前は何の為にここに来た。地獄絵図と化したドイツに観光に来たのか!」

「ち、違う...私は...」

「落ち着いてマドカちゃん。簪ちゃんも突然のことだらけで整理が付いていないんだと思うの。だから」

「お前は黙っていろ。このシスコンストーカ過保護残念生徒会長駄目無」

「ちょっと!?」

ここに来て、過保護気味の楯無にマドカは思いつく限りの悪口を言う。

それに抗議をする楯無を無視し、マドカは簪の説教を続ける。

「お前は家族を...仲間や大切な人を無駄死にさせるために来たのか?違うだろ!お前は助けるためにここに来たんじゃないのか!!自分の力が怖いか?自分に自信が無いか?誰だって最初はそうだ。兄さんだって――」

「私はイチカの様に強くない!私をイチカと一緒にしないで!!」

「お仕置きが足りないか!」

マドカは握りこぶしを作った時、敵接近のアラームが鳴り、ガロードの攻撃を潜り抜けた敵がこちらに来たのだろう。

マドカはGNシールド、GNライフルビットを展開し、迎撃開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、イチカが眠っている病室に千冬の姿があった。

「お前はいつまで眠っているつもりなんだ。馬鹿者」

今の千冬の言葉にはいつもの気丈さは感じられず、悲しみを含んだ、今、出来る精一杯の強がりを言った。

「他の奴らは皆、戦いに行った。平和の為に多くの人を救う為に戦っている。お前もそうだったんだろう、一夏」

千冬はイチカの横に座り、手を握るとイチカの温もりを感じた。

「平和などあって当然、戦争など自分には関係ないと思っていたが...平和がどれだけ尊く、難しいのか分かった。それが、大切な弟がこんな状況になって初めて理解するとは...」

イチカの手を更に強く握るが何の反応を示さない。

「私はもう、お前と一緒に暮らすなどという高望みはしない。だから、...眼を覚ましてくれ一夏!!これからはお前が何を言おうが隙にして良い、掃除も洗濯も全て出来る様になる、ビールの数も減らす、世界最強なんて称号なんか要らない...。お前さえ、お前さえ生きていればそれで...」

イチカの手に雫が落ちる。

それは千冬が泣いている証拠だった。

「お前は目を覚ませば戦うのだろ。私はそれを止めない。お前が生きて、あの時の様に笑ってくれればそれだけで私は......」

誰もいない病室で泣く千冬。それから、数分経つと千冬は席を立つ。

「私に何が出来るのか分からない。お前の様に特別な力が無い私に一体何が出来るか分からないが、私なりにやれることをやってみる」

千冬が病室から離れると待機状態のフェニックスが緑色に輝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガーくん達も苦戦しているみたいだし、ここは束さんお手製のこのGビットで助けるとしますか!」

GXの残骸から得たデータを基にコード・フェニックスから貰った資材で作っ為、従来のISの強度を超えるモノが出来た。

「でも、これもNTの力が必要なんだよね。ティーちゃんの力を借りるのが手っ取り早いけど、そうしたらガーくんに嫌われるだろうなー」

悩んでいる束に予想外の事が起きる。

「あー!Gビットが勝手に起動した!?しかもこれNTによって動いてる!!それに目的地がドイツだ。でも、誰が動かしているんだろう?」

束は可能性として一人の少年を思い浮かべたが、その少年はベッドの上で眠り続けている為、不可能だと結論を出す。

最近、束の周りでは予想外な事に頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガロードが増援のリ・ガズィを撃破した時、普通の爆発とは違う緑色の光が輝くと戦域に異変が起きた。

「なんだ...この感じは...」

「すごく...温かい...」

「何かが...この戦域を...」

増援に苦戦しているガロード達の周辺に今まで感じていた緊迫感がまるで嘘の様に消えていた。

起きた異変に困惑しているとガロード達の頭に誰かの声が聞こえた。

『ガロード。あと少し、持ちこたえてくれ。そうすれば、助かる』

「この声...イチカなのか...。分かった、お前を信じるぜ。イチカ」

その声の主はここに居ないハズのイチカの声だった。ガロードは何故一夏の声が聞こえたのか分からなかったが、イチカの言っている事を信じてみようと思った。

『マドカ。お前は俺が倒れたことで、無茶な事をしている。お前はすぐ、無茶をする癖がある。俺の言えたことじゃないが、余り無茶をするな。困ったらみんなに頼ればいい』

「兄さん...」

『箒。お前は過去に囚われ、依存している。お前に何があったのかは俺は分からない。お前の周りに心を許せる人が居なかったのかもしれない。そんな中、お前は心の安らぎを求めた。だけどな、行き過ぎた安らぎは依存に変わる。お前は自分にとって都合の良い存在に依存している。だけど、人は子供から大人に成長して、親から自立しないといけない。誰かに頼りぱっなしじゃなくて、自分の意思で、自分の足で歩けば周りの景色はきっと変わる』

「一夏...私は...」

『お前の歩んだ人生は確かに悲惨だ。家族を失い、他人の意思を押し付けられ、自分の意思で行動したことは少ないと思う。だけどな、お前の人生は誰のモノでもない、お前の物だ。やりたいことがあるならすればいい。それを止める権利は誰にもない。それは親も例外じゃない。お前の人生なんだから、お前の生きたいように生きればいい。周りの事を気にする必要なんて無い』

「イチカ...。うん、そうだね。僕は僕の生きたいように生きるよ」

現れたイチカの精神体に驚くガロード達に対し、イチカは助言をしていく。

イチカの手が簪の肩に触れる。精神体である以上、温もりなどといったモノは感じることはできないが、イチカの手から確かな温もりを感じた。

『誰だって戦うのは怖いものだ、俺もそうだった。だけど、俺は戦う決心をした。家族や仲間を、大切な人を護りたかったからだ。お前は何の為に戦い、何の為に剣を取るんだ?』

「それは...お姉ちゃんの様になりたくって...」

『それもあるだろうが、お前の本心は違うはずだ。人は他人になる事は決してできない。お前の本心はきっと「姉の力になりたい」なんだよ。それに自分を過小評価するな。お前は自分が思っているより強いんだから。信じるんだ、可能性という内なる神を』

簪はイチカの言っていることに心当りがあった。

確かに昔は楯無の力になりたいという一心で、鍛錬を積んできた。

鍛錬を積んでいる時に楯無との大きな実力差があっても、力になりたいという気持ちを糧に続けてきたが、あの時に楯無に言われた「何もしなくていい」という言葉が今までの努力を否定されているような気がした。

何故、そんな事を言われたのか考えた時に優秀な姉との実力差だと気づき、何時しかそれがコンプレックスに変わり、何時しかあの時の思いを忘れてしまい、自分を過小評価するようになったのだと思い出した。

「皆の足手纏いにはなりたくない...。もう、弱い自分に負けない!」

弱い自分とはこれで決別することを決めた簪の言葉にイチカは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュピーゲルとの戦闘で、装甲の一部が破壊され、武器の殆どを破壊されてしまい、残ったのはビームサーベル一つだけだった。

「このまま終わるわけには...やってみるか」

『チェストォッ!!』

シュピーゲルがステップを踏みながら接近し、シュピーゲルブレードで攻撃するがマークはそれを受けると逃さないように腕を掴む。

「グッ...。肉を切らせて骨を断つとは意外にキツイものだな」

『貴様、ワザト受ケタトイウノカ』

「貴様の様に神出鬼没な奴が相手ならこういった、捨て身戦法が効果的な事が多いのでね。私の技ではないが受けてみろ!!」

ハルファスの拳が青紫に輝き始める。

「バァァニングフィンガァァ!!」

それは今も目を覚まさない家族の技はシュピーゲルの顔半分を破壊する。

『中々、イイ拳ダ...。ナラバ、私モ全身全霊ノ技ヲ持ッテ貴様ヲ倒ソウ!』

シュピーゲルブレードを展開しながら高速回転するシュピーゲルガンダム。

『シュツルゥゥム・ウント・ドゥゥラァァンクッ!!』

「アレを避けるのは不可能だ...。なら、真っ正面から叩くまで!!」

ハルファスは一度上空に飛ぶとバード形態に移行し、ナノマシンを展開し青紫の炎を纏う。

バーニングファイヤの上位版であるバーニング・フレアを放ち、シュツルム・ウント・ドランクとぶつかり合う。

力は拮抗していたが、徐々にハルファスがシュピーゲルを押し始める。

「貫けェェェェ!!」

『ココマデカ...』

シュピーゲルブレードを破壊し、シュピーゲル本体を貫くハルファス。

『イイファイトダッタ...。イズレドコカデ、マタアオウ!』

負けたのにも関わらず、一切の憎しみや怒りの感情を出さずにコピーシュバルツは爆炎に飲まれ消滅した。

シュバルツとの戦闘が終わり、一息つくが、まだ戦闘は終わっていない。

「早く合流せねば...」

先程、シュピーゲルに斬られた所を押さえるマーク。

生身では無いとはいえ、装甲を切り裂き、身体まで斬られたとは予想だにしなかった。

「少し、切り傷が出来た程度...」

痛む身体に鞭を打ち、動こうとするマークにイチカの声が耳に入った。

『無茶をしないでくれマーク兄。俺が言えたことじゃないがマーク兄まで無理をして倒れたら、皆悲しむ。...あの時の様に』

「だが、そうも言ってられないのが今なのでね」

『大丈夫。マーク兄がそこまで無理をする必要はないよ。後は任せて』

イチカの声が聞こえなくなった次の瞬間、GXを簡略化したような姿をした機体が二機降り立つとその内の一機がマークに手を指し延ばした。

「フッ、お前はあの状況下でも私達の為に戦うのか...。お前らしいな」

マークは差し伸ばされた手を掴み、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が遠のく中、エリスは自分に手を差し伸べるイチカの姿を見た。

エリスはその手を掴んだ時、何かが爆発する音が聞こえ、何事かと周りを見渡すと先程まで自分を圧迫していたデストロイの腕が粉々に爆発し、掴んだはずの手には引き金を引いたビームマグナムが握られていた。

今のは幻影なのかと思った時、エリスの目の前にイチカの精神体が現れる。

『エリス』

「イチカ...」

『エリス。諦めるのにはまだ早い』

「ごめんなさい...イチカ...。私のせいで貴方は...」

イチカに対して謝り始めるエリス。

『謝る必要なんてないよ。エリスやマーク兄が語り掛けてくれたから、皆が俺を人として繋ぎとめてくれた』

「私が操られていたから、あんなことに」

『そんな事ない。アレはいずれ起きるであろう事象なんだ。俺がサイコマシーンに乗って、何かを成し遂げたいと思ってる限り、いずれ起きる事なんだ。それが少し、早くなっただけ』

「でも...そのせいで、眠りについたままなのよ!」

『確かに俺は目覚めないままだ。そのせいで、皆に心配させて、苦労させて、悲しい思いさせてしまった。その事に対する、罪悪感もある。だけど、眠りについた俺は刻を視た』

NTは時として、認識力の拡大から刻、すなわち時間を事象として認識する者がいる。

例として、アムロやララァが挙げられ、イチカもその領域に至ったのだ。

『それにな、エリス。俺は偶に思うんだ。もしも、お前の俺に対する思いに応えていれば、こんな事にはならなかったのかなって』

「知っていたの...」

『...気づいてた。だけど、気づかぬふりをした。俺は怖かったんだ...。この手を血に染めた俺がお前の思いに応えるのか、例え応えたとしてもあの時の様に俺の目の前から消えるんじゃないかって...あの時助けれなかった少女の様に突然消えるんじゃないかって、ずっと...怖かった。だけど、俺はもう、目に見えないものに怯えない。だから、エリスも自分の過去に怯えないでくれ』

「私は...貴方の傍にいながら、気づいてあげれなかった...。イチカの思いに...」

『今だから思える。俺は少しずつでいいから、お前とちゃんと向き合って、一緒に歩みたい。そして、今度はお前の思いに応えたいと思う。だから、エリスも最後まであきらめないで、俺はまだお前の思いに応えていない』

バツ悪そうに言うイチカの言葉にエリスは言葉が詰まった。

今まで届いていないと思ってた思いが実は届いていたことに、届いていてもなお、応えなかったその真意を始めて知った。

「煩わしいのよ...。今まで、どれだけ、私が苦労したのか...どれだけその言葉を待っていたと思ってるのよ...。だけど、こんな形で、その言葉を聞きたくなかった!」

『俺もこんな形で言いたくなかった。だけど、今だからこそできる事や見えるモノもあった。俺が言えたことじゃないけど、無事に帰って来て。それが俺の望みだ』

命をかけた戦いをしてきた彼らにとって、一番難しいであろう願望。

大切な人達と笑って過ごしたい。それがどんなに難しいか分かっているからこそ彼らは望むのだ。

「えぇ、約束するわ。必ず、イチカの所に帰るわ。そして、ちゃんと私の思いに応えてもらうんだから」

『忘れないで、俺はどんな状況だろうと、どんな時だって、皆の傍にいる。例え、肉体が使い物ならなくなっても、皆を護るから』

エリスを背後から抱きしめるイチカに確かな温もりと安らぎを感じながら、目の前の敵を見据える。

「バンシィ!何かを壊す為じゃなくて、護る為に力を貸して!」

エリスの思いに応えるように背後から鬣状に展開・変形すると続く様にバンシィも展開し、『ガンダム』になるが、バンシィの金色のサイコフレームからは嘗ての様な荒々しさは感じられなかった。

バックパックにあるビームサーベルを抜き、ビーム刃を発生させた状態で放ち、即席のビームブーメランとして、デストロイに投げつけると高速回転しながら、デストロイの脚部に損傷を与え、フライトユニット先端にある陽電子リフレクタービームシールド発生器を破壊するとアームド・アーマーDEに内蔵されているメガ・キャノンを放ち、無力化していく。

「これで...終わり!」

ビームトンファを起動させ、コックピット貫き、破壊するとエリスはガロード達の所に向かい合流するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い。ファンネルミサイル!!」

「シールドビット、アサルトモード!」

「敵の増援が多いすぎる...」

ガロード達が敵増援と交戦し、一夏の助言によって、今まで抱えていたモノが無くなった簪は自分のやるべき事の為に自分の力を使っていた。

一機のヅダが特攻を仕掛けてくるとガロード達は撃ち落とそうと攻撃を当てるが、その勢いは止まらず、自分達の近くまで来た時、ヅダの背後から青白い閃光が放たれ、爆炎に飲まれるとガチャ、と何かを取りかえる音が聞こえ、爆炎が晴れるとそこにはNT-Dを発動させたバンシィの姿があった。

「皆、大丈夫?」

「エリス...だよな?」

「大丈夫よ。もう、私は自分を見失ったりはしない!」

メガ・キャノンで周囲の敵を薙ぎ倒しながら言うエリス。

「隊長!此方に接近する敵影あり。総数、九機です」

「イチカ?...待て、今から来るのは敵じゃない!見方だ!!」

途中から合流したシュヴァルツェ・ハーゼの生き残りである、クラリッサとその部下たちが増援に来たのだが、クラリッサがセンサーに複数の未確認反応が接近している事を知らせると、ガロードが敵じゃないと言う。

先程、センサーに反応があった機体の内、七機がエリス達を護るように配置する。

「これは...Gビット? でも、なんでこんな所に」

「分からねぇ。でも、イチカが助かるって言ってた理由がこれかもしれない」

「まさか、一夏がこれを操っているとでもいうのか?あいつは...今はベッドの上なんだぞ」

「フラッシュシステムも謂わば、サイコミュと似た性質だから、イチカが来た時にGXに搭載されているフラッシュシステムを起動させたのかも」

「どうやら、全員無事の様だな」

「マーク!」

声のした方を見てみるとGビットの肩を借りながら、マークが現れた。

Gビットはマークをマドカに預けると他の七機のように、移動する。

『ガロード、お前に俺の力を貸す。だけど、引き金を引くのはお前の意思だ。俺はお前の意思に従うだけ』

「あぁ、やってみるよ。イチカ」

ガロードは意識を集中する。

「見えたッ!」

自分に力を貸してくるイチカを感じ取ると、一筋の光が見えるとGビットがガロードの思うように動き出し始める。

「すげぇ...、これがNTの力なのか...」

「あれほどの数を一度に操るなんて...」

搭載されてるビームサーベルやビームライフルを駆使し、次々と敵を落としていくGビット。

前方からデストロイが二機接近してるのに気づく。

「やるか?いや、やるしかない!」

『ガロード、お前に力を』

GXの周辺にGビットが集まるとGXは照準用ガイドレーザーを胸で受けるとすぐにスーパーマイクロウェーブが照射され、リフレクターが輝き始め、エネルギーが溜まっていくと周囲のGビットのリフレクターも輝き始める。

「これで、終わりだァ!」

GXとGビットのサテライトキャノンが接近していたデストロイに襲い掛かると何もさせる暇も無く、塵一つ残さず、消えていくと後方にあった山の形を変えた。

『ガロード、後は頼んだ』

「分かってるよ、イチカ。俺達の未来にこんな、戦争の道具は必要ないだッ!」

「待て、何をするつもりだ!」

箒の抑止の声に耳を貸さずにGビットをビームライフルで撃ち落としていく。

「俺達が望んでいるのは戦争じゃない。平和を望んでるんだ!平和な世界に武器なんか必要ないんだッ!」

「ガロード...」

最後のGビットを撃ち落とした時にガロードが言った言葉の意味を理解しているようでしていなかった箒達は言葉が出なかった。

「戦いも終わったし、帰りましょ。イチカに無事だという事を教えましょ!」

「そうだな」

「だけどよ、エネルギーが残り僅かなんだぜ。どうやって帰るよ?」

「だったら、我がシュヴァルツェ・ハーゼの移動用ヘリを貸そう。祖国と市民を護ってくれたお礼だ。いいな、お前ら!」

「「「ハイ!」」」

エリス達はラウラの言ったヘリに乗り日本へ帰国した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆に迷惑をかけた...。ごめん」

「気にする事ないわよ。そんな小さい事気にする事ないわ」

「兄さんの顔を見てから、今後について話そう」

「そうね」

エリス達一行はイチカの居る病室のドアを開けると一筋の風がエリス達の頬を撫で、風が止むと一同は病室の一ヶ所に釘付けになった。

「お、お前...、やっと...」

「どれだけ、私達を心配したことか...」

誰もが声を詰まらせる中で、ガロードとマークがようやく口から出た事を言う。

「...ぅ、...ぅぅ、......」

「厳しい戦いだったね。でも、皆が無事に帰って来て嬉しいいよ」

「奇跡、ですね」

余りの事態に、涙を流している人もいる程の出来事。

つい先ほど眠っていた人物が目を覚まし、話しかけてきただけで、自然と涙が出て来た。

「お帰り、皆。そして、ただいま」

『イチカァァ!』

イチカが目を覚まし、笑顔で語りかけてきたその瞬間、誰もが喜び、笑い、そして、思いを寄せる人物たちはイチカに抱き付いた。

 




次回は物語の真相についてです。

にしても、だれがハイネグフをマキブに出ると予想できただろうか?

てか、ハイネデスティニーもそうなんだよなー。


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