「だりゃぁぁ!!」
「ハァァァァァ!!」
アリーナでは、イチカとガロードの模擬戦が行われている。
今回の模擬戦にはガロードの実戦慣れと修復した機体の試験運用の二つの目的で行われている。
「行け!フェザーファンネル!!」
「ビット兵器かッ!」
千冬から譲り受けたハルファスを修復したイチカはガロードに今回の模擬戦の意図を話し、ガロードは快く了承した。
イチカはフェザーファンネルを射出するとフェザーファンネルは不規則にガロードの周りを飛び回り、攻撃する。
「グゥ! カリスのビットより動きが複雑だ...。 だけど、動いてるの物理的な物体だ!!」
ガロードは二連装ビームマシンガンを数発放つと、周囲を自由自在に飛び交うフェザーファンネルに被弾し、小規模な爆発が起きる。
「まだまだ!!」
「フェザーファンネルにもう、反応出来る様になったか...。 流石だな」
「へへぇ、こんなもん慣れちまえばどうってことないぜ!!」
「だが、油断大敵だ!!」
次々とフェザーファンネルを落とすガロードにイチカは接近すると蒼く燃え盛る右手を突き出す。
「その展開は予測済みだ!! ハモニカブレード!!」
「チィ!」
ガロードはディバイダーをイチカの居る方に翳すとディバイダーからビーム刃が形成し、射出されるがイチカは射出される寸前で上体をずらすが頭部に掠り、少し熔解するが数瞬後、熔解した部分が修復され、模擬戦を開始する前と同じ状態になる。
「オラッ!」
「うぉ!?」
イチカは姿勢を低くし、ガロードの足を蹴るとガロードは姿勢を崩す。
「バァァァァニング...フィンガァァァァ!!」
「グァァァァァァ!!」
姿勢を崩したガロードの背後に周り、後頭部を抑えながら地面に叩きつける。
ガロードがクッションの役割を果たした為、イチカにさほど衝撃は無く、ガロードを叩きつけた際に生じた土煙が晴れると其処には犬神家状態のGXがあった。
「やべっ、やり過ぎた。 今、助ける」
「し、死ぬかと思ったぜ...」
イチカはガロードの足を引っ張り、地面から抜く。
『御二方ともご苦労様です。 データは取りえました。 ハルファス、GX共に問題ありません』
「ふぅー、中々、ハードな模擬戦だったな」
「動かした側として特に気になる点は無いな。サンキュー、ガロード」
「この程度、お安い御用だぜ」
イチカは座り込んだガロードに手を貸すとアリーナを後にする。
「なぁ、イチカ。ちょっと頼みがあるんだけどさ」
「何だ? ガロード」
「買い物に付き合ってくれないか?」
「別に構わんが...なんでティファと行こうとしないんだ?」
「俺まだ、この辺りの地理に詳しくねぇからよ。 何処に何があるか教えて欲しんだ」
ガロードがこの世界に来てからまだ一ヵ月も経っていない。 全寮制のIS学園に通っている為、外出するには外出届を提出しなければいけないのだが、ここ最近、事件や問題事が畳みかけるように起きた為、外出する暇が無かったのだ。
「そういう事なら、仕方ないな」
「じゃ、今度の週末にお願いするわ」
「OK。ティファもお前とデートしたいだろうし、お前もしたいんだろ?」
「ちょ!? いや...うん、まぁ、そうだけどよ」
そんな他愛無い話をしているとイチカの自室の前に到着する。
「じゃ、また明日。 日曜日楽しみにしてな」
「おう、またなイチカ」
ガロードと別れたイチカは自室のドアを開ける。
「お邪魔してるわよ」
「はぁ...」
部屋に入ると其処にはベッドの上で脚をバタバタさせながら、ファッション雑誌を読み楯無。
「マドカ」
「何だい。兄さん?」
「い、いつのまに!?」
楯無がイチカの部屋に不法侵入するのはこれが初犯ではない。 過去に数回、同じことをしているのだが、大抵マドカの手によって地獄を見ることになる。
そして、イチカの呼びかけにいつの間にかイチカの背後に居るマドカ。
マドカはイチカが呼びかけるとゲルマン忍法でも使っているのではないかと思う程、神出鬼没で本人曰く「兄さんへの思いが可能にする」らしい。
「これより雌犬の始末に入る」
手がぶれて見える程の速さで何かを投げると楯無の頬から数瞬遅れて血が流れ始め、楯無は何が起きたのか目で確認すると床に一つのカッターが刺さっていた。
「並べく傷は残さないようにした方がいいか? いや、再生用のナノマシンもあるから問題ないか」
「え? えぇ!?」
「さぁ、戦争をしよう」
マドカは服に仕込んでいた文房具をこれでもかという程、大量に取り出す。
「ちょ、ちょっと待って!! 何処にそれだけ文房具を隠し持っていたの!?」
「仕方ない、口ホチキスで勘弁してやろう。 なに、見えないように裏側にしておいてやる」
「全然、安心できない!?」
暗殺スキルを極めたマドカにとって、例え文房具であろうと凶器になりえるのだ。
マドカが一歩近づくと楯無は一歩下がり、最終的に壁際まで追い込まれる。
「待って、は、話し合いましょう。 誤解だから、マドカちゃんが思っているようなことは起きないからね。 ね」
「私の故郷で、その言葉をこの状況で言った人は皆、帰らぬ人になったよ」
「ヒィ」
マドカが肉薄するまで近づき、涙目になりながら、小さい悲鳴を上げる楯無。
危機的状況に陥った楯無に一筋に光が差し込む。
『イチカ。 いる?』
「いる、居るわよ!イチカ君は居るからそこにいて!!今、開けるから!!」
「チィ、来客か...。 運のいい奴め」
これで助かる、と思った嬉しさと底知れぬ恐怖から逃れたことにより、涙を流しながら駆け足で扉に向かいマドカは舌打ちをしながら手に持っていた文房具を仕舞う。
「あれ? なんで楯無さんがここに居るんですか? もしかして、イチカと...!!」
「本当にいいタイミングで来てくれたわ。 後、もう少しで私の大切なものが失う所だったわ。私、生徒会の仕事があるから、ごゆっくり」
シャルロットに礼を言うと楯無は光速と思う程の速さで廊下を駆け巡っていく。
「あ、そっちには『楯無、廊下を走るな』『お、織斑先生!?』『私の目の前で校則違反...。しかも生徒会長である、貴様が破るとはな...どうだ? 久しぶりに一戦交えないか?』『た、助けて!! 殺される!!!???』もう、遅いね」
一難去ってまた一難、
「必殺仕事人に裁かれたか」
「刀でバッサリとやられたと思うよ。兄さん」
「南無阿弥陀仏」
「いや、死んでないからね!?」
ツッコミを入れるシャルロットの後ろで今は無き、生徒会長の悲鳴が学園に響いた。
「そんなとこに突っ立てないで座れよ。 お茶出すからさ」
「え、えと、お邪魔します」
シャルロットはイチカに言われた通り、イチカの正面に座る。 本音を言えば好意を抱いているイチカの隣に座りたいが彼女は見たのだ。敵意と殺意の籠った濁った眼で自分を見つめる
「楯無さん今にも泣きそうな顔だったけど...。
「何故、俺が犯人みたいになってるんだよ。 後ろで敵意と殺意を撒き散らしているマドカが楯無の命を奪いかけたけどさ。 マドカの逆鱗に触れたら楯無と同じ目に合うから気をつけろよ」
「えぇっ!?マドカのせいで楯無さん、泣いてたの。 てっきり、イチカが楯無さんを...ゴニョゴニョ」
事の真相を聞いたシャルロットは驚き、先程、自分が想像したことを思い出し、赤面しながら口ごもる。
「そ、そういえば、イチカってあんまりオシャレとかしないよね」
「オシャレとかに感心があんまりないんだよな。 動きやすい服装ならいいしな」
「じゃ、ブレスレットとかは?」
「殴る時に邪魔だし、それにフェニックスの待機状態がブレスレットだからな」
イチカは制服の袖を捲ると其処には赤い石に不死鳥が施された待機状態のフェニックスがあった。
「じゃ、時計はどうかな? カッコイイ男子になりたいなら必須だよ」
「時計か...。前はあったけど今は持ってないな」
「へぇー、それってどんなの? 誰かの贈り物?」
「やたら話に食い込むな。 誕生日に貰った懐中時計だ」
イチカマーク達と行動してから三回目の誕生日にエリスから貰った懐中時計だが、イチカは気づいていないが背面には小さく、イチカとエリスの名が記されており、イチカはネェルアーガマの自室に大切に保管している。
因みにエリスはイチカとお揃いの懐中時計を持っていたりする。
「今は持ってないってことは無くしたって事でしょ。それって挙げた人に失礼じゃない?」
「いや、無くしてないから。 大切に保管しているから問題ない」
「ならいいけど。じゃ、今度の週末に見に行こうよ。 服とか見にいきたいし」
「え? 今度の週末はガロード一緒に街の案内する予定だからな」
ここでイチカは考える。もし、シャルロットと一緒に買い物に出かけた場合、女性が好む店や欲しい物などが分かり、ガロードがティファとデートする時に役に立つ事が多いと予測する。
「マドカお前はどうする?」
「やりたいことがあるから、私はパスだ」
「マドカにしては珍しい。 ガロードと一緒でいいか? あいつ、この辺りに何があるか分からないから、教えてやりたいからよ」
「大丈夫だよ。 イチカと二人っきりで出かけたかったのにな(ボソッ)」
「? まぁ、今度の週末だな。 ガロードにも言っておくから」
溜め息をつくシャルロットに対し、首を傾げるイチカ。
「えへへ。イチカと買い物楽しだなぁ」
「気が早いな」
「じゃ、今度の週末楽しみにしててね~♪」
シャルロットはステップを踏みながら部屋を出ていくシャルロット。
「そうだ、兄さん」
「なんだ?」
「兄さんが前に使っていたGNアームズ使っていい?」
「基本、フェニックスで戦闘するだろうし、ダブルオーライザーにGNアームズは使用できないから、使いたかったら使っていいぞ」
GNアームズの使用許可与えてから数分、笑い声とも悲鳴とも取れる声が学園中に響いた。
とあるラボに夢の国のアリスを沸騰させる格好をした女性――篠ノ之束は目にも止まらぬ、投影型キーボードにスピードで打ち込んでいる。
「しまったぁぁぁぁ!!」
「どうしました?束様」
黒の眼球に金の瞳、流れるような銀髪を持つ少女の名はクロエ・クロニクルは束の声叫び声に何事かと思い束の下に訪れる。
「もうすぐ、いっくんの誕生日なんだけど、束さんとしたことが何にも用意してないんだよね。 いやー、困った困った」
「では、可愛いモノや髪飾りなどいかがでしょ?」
「それはいっくんが女の子だったら行けたけど、いっくんは男の子だから駄目かな。 まぁ、この束さんが作った性別転換薬『シンデレラタイム』があれば問題なんだけどね。 じゃ、この薬とクーちゃんが言っていた物を挙げようかな」
「冗談でいったつもりなのですが...」
冗談交じりで言ったつもりが束特製トンデモ薬のせいで実行可能になりかけていることに冷汗を流す。
「じゃ、何あげればいいのさ~。今のいっくんに束さんお手製のISを作ってあげても、今のいっくんにはいらないだろうしさ~」
「では、この前、見つけた機体から情報を見つけ出し、プレゼントするのはどうでしょう? 今のイチカ様には少しでも奥の手は多い方がよろしいでしょうから」
クロエがそう言うと二人の背後に証明が付くと其処には大破した15M以上あるであろう、人型と思わしきロボットが転がっていた。
「海中に落っこちてたのだね。 確か『GX-9900 NT-002』だっけ? あれ、凄いよね、一撃でコロニーっていう巨大な物体を破壊しちゃうんだからね」
「はい。ですが、一歩間違えれば世界を壊滅させる事が可能です。 現にあの映像では...」
「うんうん。クーちゃんの言いたいことは分かるよ」
二人はとある深海で見つけた機体に残ってた映像を見ている為、これが遭ったであろう所の結末を知っている。
「これを見る限り、こことは別の世界があるってことだよね」
「はい。大破したこの機体が証拠ですね」
「それにいっくんの友達かなあの子達? 名前は何って言ったけ?」
「腰の辺りまである髪を首の辺りで纏めている少女がティファ・アディール、不死鳥の様な仮面をした変態がコード・フェニックス、バンダナを巻いた少年がラナロウ・シェイド、そして、この機体と同じ機体に乗る人がガロード・ランです」
「後はちーちゃんそっくりな子がマドカ・ギルオードだよね。 じゃ、ティーちゃんにコーくんにラーくんそれにガーくんだね。 束さんと仲良くなってくれるかな?」
「昔の束様でしたら無理でしょうけど、今の束様でした可能です」
束が何故、直接見た事の無いガロード達の事を知っているのかというとIS学園のサーバーに登録されている個人情報を見た為である。天災の前ではIS学園のセキュリティは紙同然の様だ。
嘗ては認めた人間以外は名前は愚か、顔すら判別できず、『そこら辺に転がっている石と同じ』という認識をしていた束とは信じ難い変化である。
「ガーくんが乗っている機体もアレと同じだから、きっとあれも搭載されてるよね」
「恐らく、搭載されていると思われますが使用条件が限られてますので取り外され、違う装備にされていると思われます」
「でもぉ、この映像を見る限り、また取り付けてるね。 いっくんの事だから使える条件が整ったから取り付けてるのかな?」
「恐らく、あの機体に残されていたデータにあった、Gファルコンを使うと思われます」
「確かにアレなら、使えるけどぉ~。破壊されたら終わりだから...。 そうか!!」
何か思いついたのか、束は手をポン、と叩く。
「頑張るいっくんに束さんからプレゼントだ! まぁ、今から作るのはいっくんに直接は関係ないけど、間接的にはいっくんに助かるから良しとしますか!!」
「お決まりになられたなのですね。束様」
「これでいっくんも大助かりだよ。やっぱ束さんは天才だね」
束は大破した機体から得たデータを基にイチカへの誕生日プレゼントを作るのだった。
如何やら、天災が何かやらかすようですよ
次回からはイチカの誕生日に向けての話になる予定です。