食堂に来たイチカ達は各々、食べたい物を頼み食事をしている。
因みにガロードは焼肉定食、コード・フェニックスは豚肉生姜焼き定食、マドカはラーメン定食、ティファはガロードと同じ焼肉定食を食べている。
「ガロード...。あ、アーン」
「あ、アーン」
「おぉ、甘い甘い。ガロードの周りから甘い物を感じるぜ」
「俺、いつの間にミルクコーヒー飲んだんだ？ 確かブラックを飲んでたはずなんだけどな」
ガロード達の周りから甘い雰囲気が放出され、それは味覚にまで作用したのか、口にしたモノが甘く感じたイチカ達だった。
「所で兄さん。それは何だ？」
「何って食い物だよ」
「そんな、真っ赤な麻婆豆腐があるか！！」
「食うか？」
「食わん！！」
イチカが頼んだ泰山特製の激辛麻婆豆腐は赤く煮えたぎった真っ赤な液体の中で浮き彫り見える白い豆腐は人骨を連想させ、この世の料理とは思えない程、グロテスクだった。
「なぁ、イチカ...」
「どうした？ラナロウ兄」
「マヨネーズが足りねぇんだけぇどォォォォ！！」
「知るかァァァァ！！」
ラナロウは天ぷら定食を頼んだのだが、ラナロウの頼んだ料理にはマヨネーズがふんだんに掛けられているのだが、ご飯にマヨネーズが全体的に掛かっていない事が不満らしい。
「知れねぇよ！！食堂に行って貰って来いよ」
「食堂のおばちゃんにマヨネーズ丸々一本くれって頼んだら引きつった顔で無いって言われたんだよ！！」
「当たり前だ！！てか、ラナロウ兄は高カロリーすぎなんだよ！！今は良くても将来、重い病気になったりするからやめろよ！！」
「俺からマヨネーズを取るとか、死ねって言っているようなものだぞ！！」
「ドンだけ、マヨネーズが好きなんだよ！！ そんな、イカれた味覚...。修正してやる！！」
「お前が言うな！！ 外道麻婆がァァ！！」
ラナロウが殴り、イチカが麻婆を食べながら避ける中、二人の喧嘩にオドオドするティファとコード・フェニックスに対し、マドカは二人の喧嘩を無視し、ラーメンを食べている。ちょっとしたカオスである。
「なぁ、マドカ。あの二人を止めなくていいのか？」
「あの喧嘩の中に入れだと？ ラナロウはまだ何とかなるが、兄さんはどうにもならん。 生身でも規格外だからな、兄さん」
「そこまでなのか？」
「素手で放たれた銃弾を掴むくらい、朝飯前だからな」
「マジかよ...」
イチカの規格外さを聞いたガロードはイチカ達の喧嘩に目を向けるとイチカの手には外道麻婆があった。
「隙あり！！」
「イ゛ェアアアア ！！」
イチカは外道麻婆をラナロウの口の中に流し込むとラナロウは奇妙な悲鳴をあげながら仰向けのまま飛び上がった...ように見えた。
「どうだ？ 昇天するほど美味いだろ」
「いや、別の意味で昇天しただろ」
この料理はイチカが偶然寄った世界にあった紅洲宴歳館と言う、中華料理店で元神父の店主におすすめの料理を聞いた時に出た料理がこの泰山特製の激辛麻婆豆腐だ。
その余りの辛さに感激したイチカは時間があった時に立ち寄り、いつしか常連客となり、店主から特別にレシピを教えてもらい、以降は自分でも作るようになり、この世界に戻ってからは食堂の人に頼み作って貰っている。
この料理の存在を知っているのはごく一部であり、興味本位で食べた人は病院送りになっている。 その中には世界最強のIS乗りも含まれているとか。
「因みに味は食べれば食べる程、味覚や痛覚を破壊する辛さでその店主の味は一口で五感が破壊されるらしい」
「それもう料理じゃね。 料理の皮を被ったなんかだよ...」
「アレを食って、あの美味しい料理が作れるとか...。世の中可笑しな事だらけだ」
「喜べ、ラナロウ兄。君の願いはようやく叶う」
外道麻婆を食いながら不敵な笑みを浮かべるイチカの横では白目を剥き、気絶しているラナロウの姿があった。
外道麻婆を食べたラナロウは二時間後に目覚め、気絶している間に『死んだ、お袋と親父に会った』らしく軽く臨死体験していた。あと少し、目覚めるのが遅かったら手遅れになっていたかもしれない。
「まさか、先客がいたとは思わなかったな」
「ここに来たら、イチカに会えると思って」
腹ごしらえもし、キャノンボール・ファストに向けて、作業をしようと思い、整備室に向かうとそこには簪とシャルロットがいた。
如何やら、二人もキャノンボール・ファストに向けて、自身の専用機の整備と調整をしていたようだ。
「まぁ、居るからこっちが不利になるってことは無いしな。マドカ、そこにある工具箱持ってきて」
「ハイよ、兄さん」
「所で、GXのサテライトキャノンは何処にあるんだ？」
「奥の資材置き場の中に入って右側にある」
イチカ達はガロードのGXの調整とガロードが追加で頼んだGファルコンの製作をしている。
GXは背中のバックパックを外された状態で宙吊りにされている。
「イチカ達は何をしているの？」
「ガロードのGXの調整」
「ねぇ、僕達じゃ、イチカ達の戦いに参加しちゃダメ？ 僕はそれなりに覚悟はできているつもりだよ。 引き金を引いて奪う覚悟もある。それだけじゃ、足りない？」
「俺達が一体何をしようとしているのか分かっているのか？ あの馬鹿四人衆よりは理解しているつもりだろうけど」
「...分かってるよ。 戦争をするんでしょ...」
戦争という言葉が周りの空気を重くする。
「あぁ、そうだ。血で血を洗い、死と隣り合わせの戦争だ。 ゲームや遊びじゃない...。友達、家族、恋人、もしかしたら、自分の命を失うかもしれない。失ったモノは二度と戻ってこない。特に命はな...」
「じゃ、私達はイチカ達が命をかけて戦ってるのを知りながら、何も出来ないなんて...そんなの耐えれない...！」
「お前たちは
「そういえば、イチカ。お前の誕生日って何時なんだ？」
重い話題から別の話題へ切り替え、重い雰囲気を何とかしようとするガロード。
この時、シャルロットと簪の眼が一瞬、鋭くなったのは気のせいだろう。
「9月27日生まれのてんびん座」
「えぇぇ！！ そう言う、大切な事はもっと早めに言ってよ」
「聞かれなかったし、別に言う必要性を感じなかったからな」
イチカは聞かれる、必要性が無い限り言わないのがイチカである。
「その日、何か予定あるの？」
「友人の家で誕生日パーティがあるからそれに出るくらいかな」
「なぁ、それに俺も参加していいか？」
「俺はいいけど、弾に聞いてからだな。 まぁ、特に断る理由もないから了承してくれると思うよ」
「ねぇ、僕も参加したいんだけど。ラウラとか誘っていいかな？」
「チョイ待ち。弾に聞くから」
イチカはポッケからスマホを取り出すと連絡先から弾の名前を見つけ出し、タッチする。
『もしもし？』
「よぉ、弾。 ちょっと誕生日パーティで相談があるんだけどよ」
『まさか、行けなくなったとか言わないよな』
「いや、行くけど。パーティに参加したいって人が増えてさ。大丈夫か気になってよ」
『あぁ、別に良いぜ。 親父に頼んで貸切にしてもらうから。蘭の為って言ったら即OK出すぜ』
イチカは弾からOKサインを貰うとガロード達にサムズアップする。
『お前の頼み聞いたんだから、俺の頼みも聞いてくれねぇか？』
「別に良いけど」
『学園祭の時に言った人を連れて来てくれねぇか？ 知ってるみたいなこと言ってたし』
「眼鏡をかけた、三つ編み、ヘアバンドに少し堅い雰囲気の人だよな？」
『そうそう。そんな感じ』
簪は誰の事か分かったのか手を叩くと誰かと連絡を取り始める。
「多分、行けると思うぞ」
『例え、来れなくても仕方ないしな。その人だって用事はあるだろうし』
「そうか。 じゃ、楽しみにしてるから」
『おうよ。すっぽかしたりするんじゃねぇぞ』
イチカは弾との電話を切る。
「言うまでもないがその日開けておけよ」
「「勿論！！」」
「誕生日パーティか...なんかワクワクするな」
「そうですね」
簪とシャルロットはイチカの誕生日パーティの事を知らせる為に整備室から出ていく。
「にしてもよイチカ。 お前って素直じゃないよな」
「何がだ？」
「何って、ちゃんとアイツらに用意しているんだろ？アイツらが戦うための力を」
「...何か勘違いしてる様だが、俺はアイツらに戦争をする為の力は与えるつもりは無い。 だが、護る為の力なら、与えるつもりだ。今のISじゃ、太刀打ちできない。 自分の命を護れるのは結局、自分なんだからな」
「まったく、素直じゃないぜ」
イチカの不器用さに肩を竦めるガロード。
「GXにサテライトキャノンを取り付けたら、今日の作業は終わりだ」
「はやく終わらせて、シャワーを浴びたいぜ」
GXの換装作業が終わったのは約二時間後だった。
場所は変わって、とある無人島。
無人島にある一つの洞窟の中に巨大な基地があった。
その基地を眺める二人の男性の姿があった。
「始めるとするか、オルバよ」
「そうだね。兄さん」
オルバは手に持っていたスイッチを押すと洞窟の中にあった基地から連続的に爆発が起き、爆発によって生まれた紅蓮の炎は瞬く間に基地全体を飲み込んだ。
「そろそろだね」
「あぁ、そうだな」
燃え盛る基地から悲鳴が聞こえる中、複数のISと機体が飛び出してくる。
「貴方達一体何が起きたの？ まさか、敵襲！？」
「あぁ、そうだよ。スコール・ミューゼル」
「敵は一体何処に居るの！！」
スコールと呼ばれた金髪の女性は黄金の装甲に巨大な尾を持つIS
「君たちのすぐ近くにいるよ。...すぐ目の前にね」
「誤魔化さずにとっと言え！！」
「目の前？ まさか...！？」
「その...まさかだ」
シャギアはヴァサーゴを展開するとヴァサ―ゴの腹部が上下に展開し、砲門が露出すると光が収束し始める。
「！？ 皆、避けなさい！！」
「もう、遅い」
「え？」
スコール、オータム、他数名のIS乗りの内、スコールとオータムを除く、IS乗りが跡形もなく消し飛ばされる。
「なんて威力なの...。ISの絶対防御を破って、搭乗者を消し飛ばすなんて...」
「テメェェェ！！何の真似だ！！」
「私達は君たちの下から離れる。 私達の力を必要とする輩が居るのでね。そちら側に付くことにした」
「私達から離反して、用済みになった私達を消そうという事かしら？ 恩を仇で返すってこういう事を言うのでしょうね」
「そう捉えてもらって構わないよ」
オルバもアシュタロンを展開し、戦闘態勢に入る。
「君も全力で着た方がいいよ。 なぶり殺しにされるのは趣味じゃないだろ」
「そうね。貴方達を相手にするならこの子じゃ役不足ね。なら、私も本気で行かせてもらうわ」
スコールが持っていた金色の獅子のネックレスが光り輝くとスコールを包み込む。
スコールを包む光が消えると其処にはゴールデン・ドーンの姿は無く、ゴールデン・ドーンと同じく金色の機体。
違う点があるとしたら、全身装甲に変わり、ガンダムの様な顔を持っている事だろう。
今、スコールが展開している機体の名はアカツキ。
元オーブの代表ウズミ・ナラ・アスハが愛娘のカガリ・ユラ・アスハに遺した機体。
オーブのフラッグシップ機としてその理念を反映し、防御力を重点に置いた機体として完成され、大気圏内用のストライカーパックである、大気圏内航空戦闘装“オオワシ”を装着している。
「我らが次のステージに上がる為の舞台を始めるとしよう」
「貴方達が作った舞台で貴方達を倒すわ。散って逝った同胞たちの為に！！」
「閻魔様と対面する覚悟は出来たか！！」
「それは君たちの方さ！！」
スコールはビームライフルをシャギアに向けて放ち、オータムはライフルモードのGNバスターライフルをオルバに向けて放つ。
「何でこんな事をした！！」
「最初は同じ思いを持っていた」
「貴方達は私達の『世界を変えた根源である、ISを全て破壊もしくは管理し、世界を正しき姿に戻す』に賛同したんじゃなかったの！！」
「最初はそう思ったさ。前に大罪を犯した私達がせめてもの償いとして世界を変えようとした」
「なら！！」
ヴァサーゴとアカツキのビームサーベルが交差し、鋼鉄の仮面が触れるのではないかと言うほどに肉薄する。
「スコールゥゥゥ！！」
「残念だけど、君たちは此処で沈んでもらうよ」
「グゥ...！ 離しやがれ！！」
オータムはGNソードを大きく振りかぶり、鍔迫り合いが起きているスコールを助けようとするがスコールとオータムの間に割り込み、アトミックシザースで腕を挟まれ身動きが取れ無くなる。
「騒がしい女は嫌いだねッ！！」
「グフッ！」
「オータムッ！！」
オルバは身動きの取れないオータムの腹に何度も殴りかかり、それを見かねたスコールは“オオワシ”の両脇に合計2機装備されたビーム砲を放つ。
「グッ！」
「た、助かった...ぜ...」
「しっかりして、まだ戦闘は終わってないわ！！「いや、もう終わりだ」！？」
放たれたビームはアシュタロンに命中し、拘束が緩み、落下するオータムの腕を掴み、肩を貸すと意識が危うい、オータムに声を掛けるスコールにシャギアのストライククローに叩きつけられ、基地の壁に激突する。
「では、さらばだ」
「させない！！」
ストライクシューターと呼ばれる二挺の3連装ビーム砲とクローの複合兵装を連結させるとスコール達に向けて、放つがスコールがオータムを庇うように前に出る。
「な！？」
すると放たれた計6連装のビームはアカツキに触れると反射し、ストライクシューターを破壊する。
「どう、驚いたかしら？ このアカツキの前ではビーム兵器は無意味よ！！」
「なら、こうするまでだ！！」
「グッ！？」
ストライククローを射出し、スコールの左腕を捉えると射出されたストライククローごとスコールを引き寄せる。
「落ちろ！！」
「グアァァ！？」
スコールを目の前まで接近するとビームサーベルで左腕ごと切り裂く。
アカツキの最大の特徴である黄金に輝く装甲であるが、これは「ヤタノカガミ」と呼ばれるビームを屈折・反射する特殊な装甲によるものだが、この装甲は強力な反面、実弾やビームサーベルは無力化出来ないという欠点があり、現にシャギアのビームサーベルで切り落とされ、切断面からアカツキとはまた別の機械の部分が露出し、破損した左腕から時折スパークしている。
「やはり、その身体...
「いつから、気づいていたのかしら？」
「君の動きには何処か機械染みたモノがあったからね。会った時から疑問は抱いてたさ」
「では、さらばだ」
そう言うとシャギアはメガソニック砲を拡散モードで洞窟の天井に放ち、亀裂が生じると洞窟が崩壊し始める。
「僕達が会った上司の中で一番仲間思いの良い上司だったよ。僕達は僕達のやり方で世界を変えるよ」
「生きていたら、また会おう」
フロスト兄弟は落下する岩を潜り抜けながら洞窟から脱出する。
「このままだと、私もオータムも...」
スコールは切断された左腕を抑えながら落下する岩を破壊しながら気絶しているオータムの近くまで移動する。
「オータム...貴方は生きて私の―――」
――――大切な人
スコールは落下する岩石からオータムを護るように覆い被さりながら呟くのだった。
イチカが絶賛する中華料理店詳細？
店主は元神父
イチカ曰く「他の世界でラスボス張ってそう」
妻子持ちで、家族で経営している。
本来辛くないはずの料理すら辛くなっている。
激辛より上の辛さがあり、その辛さの料理を食べるのは店主に認められた者のみ知る、合言葉が必要。
因みに合言葉は漢字二文字。