作戦は正体不明の機体の乱入により、失敗し、正体不明の機体を落とした後に現れた二つの機体により、イチカは撃墜された。
イチカが落とされた事がショックなのかそれとも力になれなかったことに対するショックか、箒は自室に閉じこもってしまった。
旅館の庭では鈴音、セシリア、ラウラ、シャルロット、簪の5人がひそかに話し合っていた。
「さて、どうするべきかしらね」
「どうすると言われましても、まずは福音はあの後どこに行ったかですわ。もう日本の領域から出られていては私達にはどうすることもできませんわ...」
鈴音とセシリアがそう話しているとラウラが二人にある事実を言う。
「福音の居場所ならばわかるぞ」
「えっ、どういう事?」
「我がドイツ軍の衛星が、福音がここから少し離れた小島の陰に潜んで居る所を捉えたんだ」
「そう言う事でしたか」
ラウラの言葉にその場に居た全員が納得する。
ラウラは自分の部下に衛星の使用許可を求めた際、自分の部下の尽力により、衛星の使用許可がおり、ラウラは常に自分の為に頑張ってくれる部下たちに心から感謝した。
「で、作戦はどうするの?この中で高機動戦闘ができるのはセシリアと簪だよね?」
「そうですわね」
「でも、私達だけだと少しキツイ...」
「いや、イチカと同じ粒子を放つ機体が共に戦ってくれるかもしれない。私の推測が正しければ、あの機体はイチカのエクシアと同じ技術で作られた姉妹機だと思われる。そしてあの口ぶりからするにイチカと何らかの深い関わりを持ち、かなり友好的な関係と考えられる。恐らく、奴も私達と同じ事を考えていると思う。だが、これは不確定要素が強すぎる」
ラウラは自分の考えを言うと今まで黙っていた鈴音が口を開ける
「もう一人いるじゃない。高機動戦闘可能な機体を持った人」
そう鈴音が最後に上げたのは今現在、戦意喪失中の箒であることをその場に居た全員がすぐに理解した。
「だけど...誰が説得するの?」
「もちろん私が行くわよ。ついでに言いたいことが山ほどあるしね」
「そうですか」
「まぁ、その間にあんたたちは準備をしてるといいわ。私はその間に説得してくるから」
鈴音が箒の居る部屋の扉を開けると其処には項垂れた箒が居た。
「アンタ、いつまでそうしてるつもり?」
「......」
「そうやって黙り込んで、私は今、落ち込んでますよってポーズ?...いい加減にしなさい!!」
鈴音は右手で思いっきり箒の頬を叩く。
「人は落ち込んだり、失敗した時、二通りのパターンがあるわ。いつまで失敗を引きづり込んでじめじめと腐っていくタイプとその失敗を糧に新たな一歩を踏み出すタイプがあるわ。まさか、このまま何もしないで塞ぎこんだまま、何もしないなんて言わないわよね」
「......」
「アンタ、一体何のために専用機を手に入れた訳、クラスメイト達を見下したかったから?イチカと同じように専用機が欲しくなったから?自分よりイチカと多く話している私たち専用機持ち達が羨ましくなって自分も専用機を持てばイチカと昔みたいに話せると思ったから?」
「私は...ただ、一夏と共に戦える力が...一夏を護る力が欲しかっただけなのだ...」
「へぇー...アンタの場合欲しかったのは誰かを犠牲にしてでも自分を知らしめるための力の間違いじゃないの?」
「そんな事...」
「ないとは言わせないわよ、クラス対抗戦の時と言い今回と言いあんた自分の力でどれだけの人を傷つければ気が済む訳!?」
「だから、私はもうISには...」
「クッ!!」
箒の言葉を聞いた鈴音は先程と違い、叩くのではなく、殴りつけた。箒はその衝撃で地面に倒れるが鈴音は気にせず言葉をつづける。
「そうやって自分のした失敗から逃げ続ける訳!?力を手に入れたは良いけどいざ失敗したら現実逃避、そんな事が許されると思ってるの!!逃げ続けることに意味なんてない。 戦い続けることに意味があるのよ!! それとも恐れをなした訳」
「私だってアイツを倒したい!だが、肝心の居場所がわからないではないか」
「居場所なら、ラウラがドイツ軍の衛星を使って見つけたわよ、私以外のメンバーはもう準備してる」
「こ、ここは...」
その頃、イチカは不思議な場所にいた。何処までも暗く自分以外何も見えない分からない場所。
「イチカ」
イチカは当てもなく歩いていると何者かがイチカを呼ぶ。
「お前は...」
イチカは声がした方を向くとそこにいた人物に驚く。
何故ならその人物は自分と同じ存在であり、この世界に本来いるはずの無い、人物だからだ。
「初弾命中を確認、続けて砲撃を行う」
ラウラはそう言いながら砲撃を始めていくが2発目以降は福音に回避されてしまうがその回避先には高機動戦闘専用パッケージであるストライク・ガンナーを装着しているセシリアと簪が待ち構えていた。
彼女は福音に対し正確な攻撃と弾幕を叩き込んでいく、そしてその隙に紅椿を装着した箒が近接戦に持ち込み確実にダメージを与えていく、そして福音が二人を振り切ったとしても、衝撃砲の威力増幅パッケージ崩山を装着した鈴音が福音に攻撃を当てる。そしてシャルロットは防御パッケージであるガーデン・カーテンを装着し、この中では唯一防御力が低い鈴音をかばいながら福音の弾幕を防いでいく。
「流石軍用機と言った所かしら、火力もスピードも桁違いね」
「でもこのまま行けば、倒せますわ」
セシリアの言う通り彼女たちの攻撃によって福音は徐々にではあるが動きが鈍くなり、なおかつ弾幕を張らずに防御や回避に専念し続けていることから福音のエネルギーがもう少しでなくなるとこの場にいる誰もが思っていたのだが、ここでありえないことが起きる。
それは福音の周りを突然謎の球体が包み込み、福音がその中で悲鳴にも似た何かを上げると、機体の形が徐々に変わり始める。
「ちょっと...これってまさか!?」
「
「油断するな来るぞ!!」
ラウラのその掛け声と同時に福音は強大なレーザー攻撃を放つ、そして付近には大きな爆発が起こった。
福音が第二形態移行をした際に放った攻撃は今までのISの兵器の威力を大きく上回っていた。だが、彼女たちの機体には目立った傷は見当たらなかった。
何故なら彼女達を護るように緑色の板がそこにあったからだ。
「近くで戦闘してると思ったら貴様達か」
「お前は...」
「あの時、私達を助けてくれた人...」
簪達の目の前にはケルディムを纏ったマドカがGNスナイパーライフルⅡを構えていた。
「何故こんな所に居る? 作戦は失敗に終わり、待機命令が出ているはずだが」
「僕達は福音を倒し、そしてイチカの仇を取りに来ました」
「敵討ちか...目の前の奴を倒せたとしても貴様らではアイツは倒せんぞ」
「そんな事はやってみなければ分からん。だが、より確実にアイツを倒すためお前の力が必要だ。故に私達に協力して欲しい」
「アイツと戦うという事は今よりも激戦になるという事は理解しているのか?」
「承知の上だ」
本来ならラウラ達の考えを一蹴する所だが、彼女達には揺るぎない覚悟を感じ取ると
「フッ...貴様らの提案に乗ってやる。 だが、私の邪魔はするなよ」
そういうとマドカはGNスナイパーライフルⅡを福音に向けて放つがその精度はセシリアの比ではなく、確実に急所を狙い撃つ。
「あそこまでの精密射撃が出来るとは只者ではないな」
「しかもビットとライフルを同時に使えるなんて...。この戦いが終わりましたらご教授してもらいたいですわ」
「...そんな事言っている暇があったら援護した方がいいと思う」
簪の言う通り、先程から全員が福音とマドカの戦いを傍観している。
「そうだけど...。もう終わりそうだよ」
シャルロットの言う通りマドカの精密射撃を回避できずに当たり続け、福音の装甲はボロボロの状態である。
「もう終わるのか...」
「いや、まだだ」
箒がこれで一つの戦いが終わると思ったがマドカが待ったを掛ける。
「...複数の機体が接近」
「増援か!?」
接近してきた機体が目視で確認できるところまで近づく。
「あ、あれは...」
「あの時の敵!」
「しかも相手の戦力が増えているね...」
BDを先頭に似た様な機体が大軍で攻めてきたのだ。
「パッと見で見た感じ、同じ機体が30って所かな」
「この後、やることがあるのでね。早々にケリをつけさせてもらうぞ!」
マドカの言葉を聞くと各々が武器を構える。
場所は変わってイチカは目の前にいる男に驚いていた。
「何故お前がここに居る。刹那」
そう、イチカの目の前に居るのは自分と同じ純粋種のイノベイターであり、イチカがイノベイターに覚醒する切欠となった人物。
だが、刹那達ソレスタルビーイングはアロウズ解体後は、ソレスタルビーイングに留まって紛争の抑止力となって生き続ける役目を自分達に課し、政府などの手の届いていない組織や施設の無力化と告発をしている。
「イチカ。お前はここで終わるのか」
「終わる...。俺が?」
「お前は何も出来ずに、何も守れずに、何も変えることも出来ずに終わるのか」
「ふざけるな...! 俺にはやりたい事がある! やらなければいけない事がある! 俺は約束したんだ。必ずみんなの所に帰るって...約束したんだ!!」
イチカにはまだやらなければいけない事が残っている。
「なら、お前はここに居るべきじゃない」
「あぁ」
「行け、イチカ。未来を明日を切り開く為に」
刹那がそう言うと暗かった空間が次第に明るくなっていく。
「クソ! 敵が多すぎる!!」
「あぁ、もう! どんだけ倒せばいいのよ!!」
ラウラと鈴音は敵の多さに愚痴を漏らす。
海には多くの残骸が浮かんでいる。
「ですが、私達ではこの敵を相手にするのが背一杯ですわ」
「そうだね。 僕たちじゃ、あの敵には敵わない」
シャルル達は一度だけBDと交戦したがその人を人と思わず、力でねじ伏せていくその姿は「蒼い死神」と言っても過言ではない。
「シールドビット、アサルトモード!」
BDと交戦していたマドカはシールドビットを4基を格子状に配置し、それを二つ作るとそこから強力なビームを放つ
「...このままだとエネルギーが持たない」
簪は夢現でジムを切り裂く。
「簪! 後ろだ!!」
「え?」
簪が後ろ振り向くと其処には二機のジムが海面から浮上し、ビームサーベルを振りかぶっていた。
ジムはビームサーベルを振りかざそうとした時、二機の内一機が腕を斬られ、もう一機が縦に二つに割れ、爆発を起きる。
爆炎が晴れると其処には撃墜されたエクシアがいた。
『一夏/イチカ(さん)!!』
イチカは箒達を見るとここにいるはずの無い人物を見つける。
「無事だったんだね...兄さん!!」
「マドカ...」
マドカは戦闘中にも関わらずイチカに抱き付く。
それも仕方のない話なのだ。彼女にとってイチカはこの世で只一人の家族なのだから。
「何故、ここに居るのか聞きたい所だが今は戦闘に専念しよ」
「うん。私も兄さんと話したいことが沢山あるから。...その機体で戦うつもりなの?」
マドカが指摘したのはエクシアの状態だ。
今のエクシアは至る所の装甲が欠けており、頭部のツインアイの内右目が損傷しており、その部分には別系統のカメラが使用され、左腕は布を被せ、アルヴァアロンとの決戦で失ったGNビームサーベルなどの武装が補給されておらず、先端の欠けたGNソードが唯一の装備である。
「大丈夫だ。俺はまだ戦える!」
イチカはGNソードをライフルモードにし、ジムを次々と落としていく。
イチカの出現により、戦況は変わると思っていたがイチカの登場と共に反応する機体が一つだけあった。
対ニュータイプ用に作られたBDはこの戦場で唯一のニュータイプである、イチカにターゲットを絞るとイチカに向けて猛攻を始める。
「ハァァァァァァ!!」
イチカは目の前のBDにGNソードで攻撃するが決定打となる攻撃は出来ずにいた。
この時イチカは目の前の敵に集中していた為、自分の背後に敵が潜んでいたことに気づいていなかった。
「グゥァ!」
イチカの背後を取った福音はエネルギー弾を射出し、BDに気を取られていたイチカはその攻撃を受けてしまう。
『GNドライヴに被弾。出力73%まで低下』
「クソォ...」
イチカはGNソードをライフルモードにし、福音に向けて撃つが全て避けられる。
「一夏! 前だ!!」
「ハッ! しまった...」
イチカは正面を向き直した途端、頭部をBDに鷲掴みにされるとその手に持っていたマシンガンを押し付けるとそのまま連射する。
「グァァァァァァ!!」
BDはマシンガンで攻撃し終えるとビームサーベルを取り出し攻撃すると海に叩きつけるとそのまま沈んでいく。
海の中を沈んでいくイチカ。
(俺は...こんな所で...終わるのか?)
否、まだ自分にはやることがある。だが機体や身体が言う事を聞かない。
(何も守れずに、何も出来ずに皆との約束を守れずに...ここで朽ち果てるのか)
沈んでいくイチカは右腕を伸ばす。
(まだだ...。俺はまだ死んでない。俺はまだ戦える! 俺にはやるべき事がある!!何度やられようと俺は諦めない!!)
イチカの諦めないその心に反応したのかエクシアが光に包まれていく。
「貴様! 一度ならず二度までも一夏をォォォ!!!」
「よくも兄さんを!!」
箒は空裂のエネルギー刃を放出し、マドカはGNスナイパーライフルⅡで攻撃するが近くのジムの残骸を拾うとそれを盾の代わりにする。
BDは盾として使用したジムをマドカ達に投げつける。
BDは投げつけたジムを回避するとジムは海面にぶつかり爆発をするがBDそんな事は気にせず、ビームサーベルを構えると箒を攻撃する。
「クッ...。なんというパワーだ...」
BDは開いていた足で箒を蹴り、出来た隙を見逃さず、がら空きの箒の腹部を殴打するとBDは頭上からビームサーベルを突き刺そうとする。
「こんな所で...」
BDは何かを感じたのか箒への攻撃を中断し、その場から離れるとさきほどBDがいた場所を何かが通り過ぎる。
箒は通り過ぎた影を視線で追うと其処には青と白を基調とした機体がおり、バインダーの様な物に二つの突起物、そこからエクシアと同じ淡い緑色の粒子が放出されている。
「イチカ...」
「姿が変わっている...第二形態移行したの?」
「無事だったんですわね。イチカさん」
箒達は姿は変われどアレがイチカであるという確信があった。
「イチカ・ギルオード、ダブルオーライザー...目標を駆逐する!」
イチカの新たな剣――ダブルオーライザーはGNソードⅡを構えるとBDのビームサーベルと幾度となく交差し、鍔迫り合いが起きる。
「俺にはやるべきことがある。 だから...!」
イチカはBDの攻撃を右腕に持つGNソードⅡで防ぐともう片方のGNソードⅡをライフルモードにし、BDに放つ。
BDはイチカの攻撃を避けるがイチカの攻撃はまだ終わっていなかった。
イチカは退避しようとしているBDに対し、GNソードⅡで左肩を切り落とし、それに対し、BDは持っていたマシンガンで攻撃するがイチカはそれを難なく回避する。
「なんという機動性だ...」
「あの機動性は紅椿と同等かそれ以上だぞ」
ダブルオーライザーの機動性に一人を除き驚いていると攻めの一手を取る。
「ここで貴様を破壊するッ!!」
イチカはBDに背後を取るとGNソードⅡで横一文字に切り裂く。
BDを倒したイチカは福音に標的を絞るとGNソードⅡで攻撃するが福音は腕を交差させ防ぐ。
福音と交戦していたイチカは気が付くと先程、刹那と会った空間とは別の空間にいた。
『ここは...』
『...助けて』
イチカは声のした方を向くと其処には一人の少年が何もない空間から現れた鎖によって磔にされていた。
『君は誰?』
『俺はイチカ・ギルオードだ。お前は?』
『僕は
『お前が...』
イチカは目の前の少年が自らを福音と名乗った事に驚くが授業でISにはコア人格と呼ばれるモノが存在する事を思い出し、目の前の少年がそれに該当すると考えた。
『僕はただ、ナターシャと一緒にあの無限に広がる大空を飛びたかっただけ...。こんな誰かを傷つけるような真似はしたくないんだ!! ナターシャをこんな事に巻き込みたくなかった!! だけど操られた僕にはどうすることも...』
イチカは福音の嘘、偽りの無い気持ち、そして自分の大切な人を護る為に戦っていたのだと理解する。
『俺がお前とお前の搭乗者を助けてやる』
『本当?』
『あぁ。だが、その前に一つだ聞きたいことがある』
『僕に話せることなら聞いて』
『お前を操り、望まない戦いを強要させたのは誰だ』
イチカは今回の犯人と疑わしき人物が二人浮上していた。
一人はISの生みの親であり、世界を変えた元凶とも呼べる存在。
もう一人は自分と一緒にこの世界に来たであろう、歪みの元凶だ。
『分からない。ただ、束博士がやっていないという事は確かだけど...あんまり力になれなくてごめんね』
『いや、十分だ』
『ナターシャをお願い。 不死鳥のお兄さん』
福音の言葉と同時にイチカの意識は現実世界に戻ってきた。
イチカは何も言わず、福音から少し距離を取る。
「空域にいる友軍に告げる。福音、並びに正体不明機から直ちに離れろ」
「イチカ。一体何をするつもり?」
「この戦いを終わらせる」
そう言うとイチカは両肩のバインダーとGNソードⅡ二基を機体前方に向ける。
「福音。お前との約束を今、果たす」
徐々に機体が赤く染まっていく。
「トランザム...ライザァァァ!!」
ダブルオーライザーから放たれた一筋の光はジム目掛けて一直線に進み、横薙ぎにしながら周囲にいたジムを巻き込み、福音は待っていたと言わんばかりにその攻撃を受ける。
光が消えると其処から一人の金髪の女性が落ちてくるが近くにいた簪によってキャッチされ、安否を確認する。
「大丈夫。 気絶してるだけ」
「そうか。...よかった」
イチカが安心していると
『粒子残量...後、僅か。5秒後に機体制御を失います』
アプロディアの言葉にイチカは何かを言う暇もなく、ダブルオーライザーはそのまま垂直に落下していくが海と接触する500㍍程前で謎の浮遊感が起こる。
「やはり、粒子消費量が桁違いに多いアレを使ったせいで機体制御を失ったか」
「マドカ...」
イチカの落下を防いだのはマドカであり、マドカはイチカを引き上げると自分の肩にイチカの腕を乗せる。
福音と正体不明機をを倒したイチカ達は帰還するのだった。
福音を倒した後、旅館まで戻ってきたのだが彼らは今、イチカとマドカ以外が整列させられていた。その理由としては無断出撃をしたからである。
「さて、作戦終了と言いたいところだが、ギルオード以外は無断出撃をした。よって夏休みの最初の二週間の間罰として特別トレーニングを課す。いいな」
命令違反を起こしたのだから当然の結果と言えるだろう。
本来ならここで終わりだが、問題が一つだけ残っている。
「ギルオードと同じ粒子を放つ貴様は何者だ。そろそろ、素顔を見せたらどうだ」
「顔も分からぬ者に敵ではないと言っても信用はしないだろうしな」
マドカはそう言うとケルディムを解除するとその場に居た全員の開いた口が塞がらなかった。何故なら、マドカの顔は目の前にいる、千冬と瓜二つなのだから。
「私の名はマドカ・ギルオード。そこにいる、イチカ・ギルオードの妹だ」
「イチカの妹だと...!」
「って事は織斑先生の...」
「待て!私は一夏に妹がいたなどと言う事実は知らないぞ!!」
少なからず、イチカの正体を知っている為、マドカの発言により、少なからず動揺していた。
「待て、それはどういう事だ」
「マドカには色々と複雑な事情がある。 そして、マドカの言った事は嘘じゃない」
イチカはマドカを庇うように前に出る。事実、マドカは千冬のクローンであり、年齢的に言えばイチカの妹と言っても可笑しくは無く、少し出生が特別な血を分けた妹なだけである。
「怪我人もいるので一日はゆっくり疲れを癒してくださいね。織斑先生もそれでいいですよね?」
「あぁ、構わん。 本日はこれにて解散する」
イチカ達は解散した後、マドカはイチカの部屋にいた。
何故、イチカの部屋に居るのかというとマドカの部屋を用意することが出来ず、身内であるイチカと一緒なら問題は無いと判断したからである。
「久し振りだな。マドカ」
「そうだね、兄さん。約半年ぶりになるね」
イチカはこの世界に戻ってまだ三か月しか経っていないが向うの世界では半年が過ぎていた。国と国の間に少なからず時間差があるように世界と世界にも時間差が起きているのだ。
「マドカ。俺が居ない間に向うの世界に何があったのか説明して欲しい」
「兄さんとコード・アメリアスが居なくなって旧ジェネレーションシステムは活動を一時的に停止し、マークさん達は目の前で仲間を失った事に対し後悔と悲しみ、何も出来なかった自分に対しての怒りを私は感じた。 そして、皆は僅かな望みを掛け、兄さんの捜索を開始。その中にはコード・フェニックスもいた。一つのグループで探すのは効率が悪いため、少数の編成のグループを編成、メンバーはマークさん、ラナロウ、エリスの一班と私、コード・フェニックスの二班、エルフリーデ、エターナの三班の三つで私とコード・フェニックスが宙域を捜索していたらあの時の様に空間の歪みに飲み込まれた。この世界に来たのは二週間ほど前になるな」
「成程、大体理解したが何故、コード・フェニックスと一緒に行動しなかった?」
「この世界ならもし、戦闘が起きても一人で対処できるからな。戦力的に効率的に二手に分かれて捜索することが最適だと判断したから」
マドカの話を聞き、新たな情報が手に入ったのは嬉しいがそれと同時にマーク達に心配を掛けたことに対しての罪悪感が生まれる。
「そうか...。 別行動をしているコード・フェニックスが何か有益な情報を手に入れてくることを願おう。 この世界に何か手がかりがあるはずだ」
イチカはこの世界に帰るための手段があると考えている。自分達を異世界に連れてきた歪みがこう何度も起きるとは考えにくい、何かしらの要因があるとイチカは考えている。
イチカ自身が調べに行きたいが今はIS学園の生徒であり、世界初の男性操縦者という事もあるため迂闊に動けない、故に今、自由に動けるコード・フェニックスに頼るしかないのだ。
「俺はもう、寝るよ。 さっきから疲労がひどいからな」
「仕方ないよ。兄さんは連戦続きで疲れてるんだよ」
「そうかもな」
イチカは布団をかぶり寝ようとする。
「では、私も兄さんと一緒に熱い夜を過ごすとしよう」
そう言うとマドカはイチカ目掛けてルパンダイブをする。
「この阿呆がぁぁ!!」
この後、一人の女性の叫び声が聞こえたとか
島のはずれで束がモニターを見ながら座っているそして
「うーん、紅椿の稼働率が予想よりも上がらないなぁ...まぁこれからゆっくりと時間をかけて育てていけばいいか♪それよりも問題は...」
束はそう言うとまた別のモニターを表示する。そこにはイチカとBDとイフリート改の戦いが映っていた。
「やっぱり、現れたか。でもこの前見た時とは違う機体だねー」
束がそう一人で言っていると後ろから千冬がやってくる。
「やぁ、ちーちゃん。奇遇だね」
「そうだな。それよりも今回の事件だがお前はどう思う?」
「ちーちゃんはどう思うの?」
「ある一人の科学者がお手製のISの性能を世界に知らしめるために行った。かつての白騎士事件のようにな」
「うーん。半分正解で半分不正解かな。確かに世界に紅椿の性能を知らしめることはできたけど別にそれは違う方法でも出来るよね。 例えば無人機で攻撃するとかね」
「では、あの時現れた無人機は全てお前のお手製という訳か」
そう、クラス対抗戦の時に現れた無人機は束の差し金だと考えている。
「確かに最初に現れた無人機は束さんのだよ。でも後、から現れた無人機は知らないよ」
「アレはお前がやったのではないのか?」
「残念ながら束さんは最初の一回しかやってません。それに今回の事件は束さんは無関係だよ」
「なんだと」
千冬は前回の件といい今回も束が犯人だと考えていたのだがその考えは本人によって打ち砕かれた。
「大体、なんで箒ちゃんをあそこまで痛めつけなちゃいけないのさー。いくら束さんでもあそこまではしないよ」
「じゃ、誰がやったというのだ」
「束さんの勘だとちーちゃんでも無理かな。今回の黒幕に対処できるのは今の所、いっくん位だね」
そう言うと束は表示されていたモニターに別の映像を映す。
逆L字に折り畳まれた大型リフレクターが特徴の機体とよくテレビとかに出てくる魔法少女の様な白い服装をした束が手に持っている杖から極大のピンク色のビームを片手で撃っている光景が流れている。
「前にね束さんを襲ってきた連中がいてね。まぁ、この天災の束さんがギッタギタンにしたんだけど。その連中が使っていたIS?を分解したら、束さんの知らない技術やISコアが無いとかいっくんのちょっとした過去と分かったんだよね」
そして束は一つの音声ファイルを見せる。
「分解していたら一つのデータがあってね。それを見ようにも破損がひどくてね、音声しか復元できなかったんだ。この中に私達の知らない間にいっくんに何があったのか分かるよ」
そして、束は音声ファイルを再生する。
『始めようじぇねぇか。ガンダム同士によるとんでもねぇ戦争ってヤツをよぉ!』
『なんでそうまでして戦争がしたいんだよ!!』
『俺はタダ、戦争が好きで好きでたまらない、人間のプレミティズムな衝動に準じて生きているだけなんだよ!!』
『なんだと...』
『それにお前だって戦争をするための兵器を振り回してるのにいい子ちゃんぶってんじゃねぇぞ。えぇ、ガンダムさんよぉ!!』
『ふざけるなァ!何が楽しくて戦争なんてしようとするんだよ!そんな事をすればまた、関係の無い人が沢山死ぬんだぞ!』
『それが戦争の醍醐味だろ!それに俺は戦争屋だ。戦争屋が戦争しなくて何をするんだよ!行けよ!ファング!!』
『お前のような奴は屑だ!無暗に人の命を奪おうとするお前は生きてちゃいけないんだ!!』
音声はここで終わるが千冬はイチカの過去の一端を知る事が出来たが口から言葉が出ない。
「いっくんは誰かを護る為に戦っていたんだと思うよ。以前の私なら、なんでこんなことするのか理解できなかったけど今なら少しだけわかる気がする。今まで、ちーちゃんや箒ちゃん、いっくんから当たり前の様に感じてたモノがいっくんが居なくなって心に小さな穴が開いた感じになってね。失って初めて人の温かさってモノ理解したよ。 そして、少しづつでいいから人とちゃんと向き合おうと思うようになったんだ」
「束...」
二人がそう話していると突然束が
「ねぇ、ちーちゃん」
「どうした」
「この世界は楽しい?」
「そこそこにな」
千冬がそう言うと突然突風が吹き、気が付くと束はいなくなっていた。
そして、臨海学校が終わり、教室に一人の人物がいた。
「私の名はマドカ・ギルオード。イチカ・ギルオードの妹だ」
「という訳でこのクラスに新しクラスメイトが増えました」
この後、一波乱起きたのは言うまでもない。
マドカがデュナメスではなく、ケルディムなのかというとイチカが居なくなった後、ボロボロのデュナメスをCBから送ってもらった設計図を元に改修して今に至る。
イチカは福音と対話させる為、ダブルオーライザーにしました。