インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

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11話

イチカがクラスに行くと何やら騒がしく上手く聞き取れなかったが優勝すると何かが起きるらしい。

話に興味がなかったイチカは通常通りに過ごし、武器や機体のメンテナスの為に整備室に向かった。

「...あ、ギルオード君」

「あら、簪さんじゃないですか」

整備室に着くと其処には未完成のISの前で端末を操作する簪の姿があった。

「頑張って専用機作っているね。進捗状況はどうなのよ」

「...マルチロックシステム以外は完成している」

本来、簪は人見知りするタイプであるが以前にイチカに助けて貰った事が切欠となり、イチカに対し少しづつであるが心を開き、イチカは簪の手伝いをするようになった。

「ふぅーん、マルチロックのプログラム見せて」

「...分かった」

イチカは表示されたプログラムコードを見ながら改善点を見つける。

「ここの部分を直せば上手く動くはずだ。にしてもよくここまで一人で出来たものだな」

「...ギルオード君が教えてくれなかったらここまで進まなかった」

「俺は何もしてないさ。簪さんが「簪」え?」

「簪...これからは私の事は簪って呼んで...」

「分かった。俺の事はイチカでいいぜ」

簪の発言にイチカは少し嬉しかった。

簪は何所か他人を避けている傾向があり、イチカは他人と触れ合う喜びと温かさを知って貰いたいと思っていたが簪が呼び捨てにするという事は上手くいった様だ。

「まだ、お姉さんと仲直りできないのか」

「うん」

イチカが簪を気に掛けているのには理由があった。

それは優秀な姉に対する強いコンプレックスであり、それは嘗て『織斑一夏』として生きていた時に味わったモノと同じなのだ。

何をしても自分の姉と比べられどんなにいい成績を残しても真っ当な評価は貰えず、逆に失敗すれば面汚し、出来損ないと呼ばれたあの時の体験を簪がしてきた事を知った。

イチカはこのままでは自分と同じように姉と決別すると思い、自分と同じようになって欲しくないイチカは簪とその姉である楯無との関係を直したいのだ。

「誰にでも弱点はある。例えどんなに優れた人物でもね」

「でも、あの人は...」

「確かに簪のお姉さんは優秀だけど、それでも...ね!!」

イチカは持っていた工具を先程から感じていた気配のする通路の天井に向けて投げるとそのまま貫通する。

『え?...あ、あわあわ!? きゃぁ!!』

小さな悲鳴から少し遅れて水色の髪をした人物が顔面から落ちてくると鼻を抑えながらその場から逃げていく。

「なんだろう...今まで対抗していた自分が馬鹿っぽく感じてきた...」

「完璧な人間なんていない。どんな人にでも弱点はあるんだよ」

そんな話をしているとイチカのハロが飛び跳ねながらイチカの方に向かってきた。

「どうしたんだよ。ハロ」

「タイヘン。タイヘン」

「何が?」

「ジケンハッセイ。ジケンハッセイ」

「案内してくれ。ハロ...悪い簪、手伝いはまた、今度な」

ハロの言葉を聞いたイチカは嫌な予感が全身を駆け巡り、急いで現場に急行するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロの案内で辿り着いた第一アリーナのピットから見た光景は、ボロボロになった甲龍を纏った鈴音が気絶しているのか、アリーナの隅に横たわっている姿と、傷一つ無いシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラが甲龍同様ボロボロになったブルーティアーズを纏うセシリアがラウラの近くに倒れていた。

「如何やら来たようだな。私と戦え!こいつらの様に潰してやる!!」

「うううっ...」

「イチカさん...」

「やめろ...」

この光景を見たイチカはセシリア達を自分勝手な理由で傷つけた事に対する怒りは噴火寸前の活火山のような状態だ。

「ただ、喚くだけか...。来ないのならこいつらを...!」

近くに倒れていたセシリアを掴むとレールカノンを向ける。

この時、イチカは我慢の限界を超えた。

「やめろっていってるだろうがあああああああああああああああ!!!!!!」

イチカの怒号と同時に今までに感じた事の無いプレッシャーをセシリア、その場に来たシャルルは驚き、冷や汗を搔いたがそのプレッシャーを向けられているラウラは違った。

ラウラの顔は、得体のしれない恐怖に怯えていた。

現にイチカの身体から出たオーラの様なモノは形こそハッキリしないが荒ぶる不死鳥の様なモノがラウラを睨み、その場にいた全員にその姿は見えていた。

「いいか、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「ビクッ!」

「俺はな、俺に対して何されようが大抵の事は笑って見過ごしてやる」

この時、その場にいた全員が理解した。

イチカはキレているのだと。

「だがな!どんな理由があろうと、自分勝手な理由で他人を傷つける奴は許せねぇんだよ!!」

「ヒィ!」

イチカが放つプレッシャーによって闘技場の時間が停止したように、その場にいた全員が固まったように動かない。そして、誰も喋ろうとしない。だが、その静寂を打ち破った者がいた。

「お前達、そこまでだ」

千冬だった。彼女は、右手にIS用のブレードを装備していたが明らかに、乱入し止めようとした所イチカのプレッシャーによって出て来れなかったのは明白である。

千冬の登場と同時にイチカから出ていた不死鳥は姿を消していた。

「これ以上の戦闘した場合は、私が相手になる!」

「「「!!」」」

「だが、生憎私は学園から、私怨による戦闘は禁止されている。だから、今度行われる対抗戦で決着をつけてもらう」

彼女の提案にその場にいた全員が納得し、解散した。解散後のアリーナに残った千冬はイチカを気にしていた。

(イチカの放ったプレッシャーは一体何なんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の騒動後、鈴音達が保健室に運ばれ、お見舞いにイチカとシャルルが来ていた。

「命に別状はないし、後遺症が残る程の怪我でもない。よかったな」

「別に助けて何て言ってないし!」

「あのまま続けていれば勝ってましたわ!」

「よくもまぁ、...呆れて何も言えやしねぇよ」

「「!?」」

イチカはセシリアと鈴音の肩を小突くとビクッ、と体が震えた。

「まぁ、二人が無事だという事も確認したし、自室に戻るわ」

イチカが保健室を出ると自室に戻り、シャルルの正体がバレないようにクラス対抗タックマッチ戦はイチカと組む事になった。

その日の夜、シャルルが完全に寝静まったのを確認したイチカはアプロディアにある事を話す。

「アプロディア、頼みがあるんだけど」

『はい。なんでしょうか?』

「実は―――」

イチカはアプロディアにある頼みごとをした。




次回 ラウラ戦ですよ

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