インフィニット・ジェネレーション   作:ハルン

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6話

セシリアとのクラス代表決定戦から翌日、朝のSHRで教壇に立った山田先生がイチカが代表になった事を伝え、イチカの周りは騒いでいるが当の本人は項垂れていた。

一時間目の授業が終わった後、セシリアから謝罪の言葉と自分の態度を改める事をイチカに言ってきた。

この時、イチカはセシリアがいい方向に変わった事が嬉しかった。

小さな変化だがそれは歪んだ世界を変える大きな一歩でもあるのだから。

 

 

 

 

 

その後、イチカ達はグラウンドにて千冬の授業を受けていた。

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。ギルオード、オルコットの両名はISを展開。試しに飛んで見せろ」

千冬の言葉にイチカとセシリアは即座にISを展開した。

「何を呆けている。授業に集中しろ」

『は、はい!』

イチカの展開した全身装甲のISという物珍しさにクラスの大半が見惚れていたが千冬の叱咤ににより、即座に切り替える。

「よし、では飛べ」

その言葉に二つの閃光が空を舞い、上空で制止する。

「先日もそうですが、ISを数回起動させた初心者と思えませんわ。なにか、心構えやコツの様なモノがございまして?」

「慣れとしか言いようがないな。まぁ、そこは深く言及しないでくれ」

イチカの言葉にセシリアは少し不満そうな顔をすると、

「一夏っ!いつまでそんな所にいる!早く降りてこい!」

いきなり通信回線に箒の怒声が響き、下を見ると箒が山田先生からインカムを奪い取り、後ろで山田先生がオロオロしていた。

千冬が箒を出席簿で頭を叩き、インカムを取り返すと、

「丁度いい。その位置から急降下をし、目標から地表から十センチだ」

「では、お先に失礼します。イチカさん」

千冬の指示を聞いたセシリアは降下し、指示通り十センチで止まっている。

「さて、行きますか」

イチカはZをWRに変形し、そのまま地表に急降下を開始し、地表二十センチの所でMS形態の変形を開始し、十センチでMS形態で停止する。

「そこまでの事を求めていなかったのだが...まぁ、よくやったと言っておこう」

その後、イチカはセシリアの横に並ぶと武装の展開を開始する。

「では、ギルオード武装を展開しろ」

「はい」

そう返事をした後、イチカはビームサーベルを展開する。

「出すのに0.3秒...上出来だな」

イチカの出来に千冬は褒めるとセシリアの方を向く。

「セシリア、武装を展開しろ」

「はい」

そうしてセシリアは左手を肩の高さまで上げ、横に突き出すとその手にスターライトmkⅢが握られていた。

「流石は代表候補生と言ったところか。だが、そのポーズは止めろ。横に向かって展開させて一体誰を撃つ気だ。正面に展開するようにしろ」

「で、ですがこれはわたくしがイメージをまとめる為に必要な―――」

「なら、左を見てみるといい」

「え?」

セシリアは左側を見てみると殺気を含んだ鋭い目つきでビームサーベルをセシリアに突き立てるイチカが目に入った。

「......あ、悪い。銃口を向けられたから反射的に構えてしまった」

「言いたいことは分かったな。仲間にやられたくなかったら直せ。いいな」

「......分かりました」

「セシリア、近接用の武装を展開しろ」

「え?あ、は、はい」

千冬に言われセシリアは直ぐに武装を展開しようとしたが、スターライトmkⅢの様に直ぐには展開できず光りの粒子が彼女の手の中で漂っていた。

「クッ」

「まだか?」

「も、もう直ぐです....ああ、もう!『インターセプター』!」

千冬の催促にセシリアは武器の名前をやけくそ気味に叫ぶとその手にショートブレードが現れた。

「....何秒かかっている。お前は実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いには入らせません!ですから、問題ありませんわ!」

「巧妙な手段であったにしてもいとも容易く懐に入られ、負けたのはどこの誰だ?」

「そ、それ...」

セシリアはごにょごにょとまごついた後、イチカの方をキッ、と睨みつけた。

「オルコットは今回上げられた難点の克服に専念しろ。では、今日の授業はここまでだ」

 

 

 

 

 

 

 

夕食後の食堂には一年一組のクラスメイトがいた。

「それでは、ギルオード君クラス代表決定おめでとう!」

「おめでとう~!」

 

パン、パパァン!

 

一人のクラスメイトの音頭であらかじめ配られていたクラッカーが一斉に鳴らされた。

しかし、クラスが盛り上がってる中一人だけテンションが低い奴がいた。そう、今回のパーティーの主役のイチカであった。

「はぁ~、何でこんな事になったんだろうな」

イチカは並んでいた料理を少し取ると外に向かう。

「あれ、ギルオード君どこに行くの?」

「少し、外の空気を吸いに」

そう言うとイチカは外に行き、雲一つない星空を眺める。

「綺麗な星空だ。...こんな綺麗な空の下で今も戦いは起きている。それに関してどう思いますか?織斑先生」

「ほぉ、いつから気づいていた」

「最初っからだ」

イチカは壁に背を付け、手を組んでいる千冬に聞く。

「私自身戦争という物を体験したことがないのだからどうと言われても困る」

「戦争は多くの命を奪い多くの悲しみと悲劇を生む。そしてその悲しみや悲劇は憎しみに変わり、新たな戦争の火種になる」

「まるで見て来たという物言いだが、それは自身が体験した話ではないだろう」

「確かに自分の家族自身がそうなった事はない。だが、自分に力が無いばかりにその悲劇を起こしたことならあるんだよ。織斑先生......いや、千冬姉(・・・)

「!?」

イチカが自分の事を小さい頃から言っていた呼び名で呼んだことに驚く。

「...い、一夏......私のことが...分かるのか...」

「あぁ、元気そうだな」

千冬はイチカに抱き付こうとするがイチカはそれを手を伸ばし止め、自分が何をしようとしたのか自覚すると羞恥で少し顔を赤くし少し下がる。

「心配を掛けたことは謝る。だけど、俺はもうアンタと一緒に居れない」

「もし、あの時の事が原因だと言うのなら、アレは日本政府のせいなんだ!」

千冬はあの時、イチカを助けずに決勝に出たのは大会二連覇という偉業を成し遂げようとした千冬に『気を使って言わなかった』日本政府により、誘拐の事を知らされぬまま表彰式まで行き、そこで束とドイツ軍により、イチカが誘拐された事をしり優勝トロフィーを投げすて現場に向かったが其処には血痕一つなく、捜査は難攻し、打ち切りとなった。

「別にそのことに関して何も思っていない。...といえば嘘になるが今となってはどうでもいい」

「なら、何故一緒に暮らせないなんて言った!」

「俺はこの手を直接では無いとはいえ、この手を血に染めた。そんな俺と一緒に居たくないだろ。それに歪んだ世界を良しとし、平然と暮らすアンタらが俺には理解できない」

「まて、一夏。私が知らない間に何があったんだ!!」

女尊男卑という歪んだ世界が当然のように振る舞い、男性を奴隷、家畜の様に扱い人としての尊厳そのものを否定していると言っていい。

だが、これは人が本来やってはいけない事だとイチカは理解しているからこそ、現在の社会に何の違和感もなく過ごしている事事態が理解できなかった。

「それは言えない。これは俺の問題であり、アンタじゃ、どうにも出来ない問題だ」

「そんな事はない!私や束がお前の力になれるかもしれないのだぞ!!」

「今は束さんを信用することは出来ない。それに例え世界最強と呼ばれたアンタでもきっと無理だし、最悪...命を落とすかもしれない」

「お前を守る為ならこの命など惜しくない!!」

千冬の言葉にイチカの目つきが一瞬、鋭くなる。

「俺達が起こした戦いに無関係な奴を巻き込みたくないんだ!!例え、それが元家族でもな!!」

「今、お前は『達』と言った。それは敵、もしくはお前に仲間がいるということだ。もし後者なら、他の奴に任せてお前は戻ればいい。お前を戦いに巻き込む様な奴と関わらなくていい!!だから...!」

「違う! あの人達は俺に戦うよう強制したことなんて一度もない! 誰の意思でもない、俺個人の意志で戦いに参加している。もう、二度と...あの惨劇を...悲しみを生まないために俺は戦う事を決意したんだ!!」

「一夏ァ!」

千冬の眼にはいつの間にか涙を流し、その光景にイチカは心が痛むがイチカは引かなかった。

「頼むよ千冬姉...。俺は世界でたった一人の姉であるアンタを失いたくないんだ。これは...イチカ・ギルオードとしてではなく、アンタのたった一人の弟『織斑一夏』として、最後の願いなんだよ」

「一夏...」

イチカは笑顔で言うがそれは何所か悲しみを感じる笑みだった。

心の中にはまだ、彼女を家族と思う気持ちが残っているのかもしれない。

「ギルオード君。さっき、叫び声みたいなの聞こえたけど大丈夫?」

「あぁ、大丈夫。少し、脚を捻っただけだから。今、行くよ」

イチカは自分呼んだクラスメイトの元に向かう途中、千冬に周りには聞こえない小さな声で言う。

「だから、俺にはもう関わらないでくれ」

千冬はイチカが何処か遠く、自分の手が届かない所にいる様に感じた。

 

 

 

 

 

 

イチカはバルコニーから出ると自分を呼んだ女子と合流する。

「アレ、織斑先生は?」

「星が綺麗だから、少し見てから戻って」

「そうなんだ。そういえば、新聞部の人が「あ、いたいた!」あの人だよ」

クラスメイトが離していると2年生の女子が割り込んできた。手にはカメラとメモ用紙、それからペンが握られていて、見るからに新聞部辺りの人間だというのが解る。

「私は新聞部の黛 薫子、今話題の男性IS操縦者であるイチカ・ギルオード君を取材しに来ました~!」

「インタビュー?」

「そそ、君がイチカ君よね。取材してもいいかな?」

インタビューくらいなら構わないと、了承の意を示すと、何処から取り出したのか薫子はマイクをイチカに向ける。

「じゃあ先ず、代表候補生であるオルコットさんを倒してクラス代表に就任したわけだけど、その意気込みなんかを聞かせて頂戴」

「戦いになる以上全力で相手する。そして、相手が女尊男卑だろうと屈したりはしない」

「無難だけど全力で相手する。いいね、いいね。それに今の社会に対するその発言最高だね!」

その後も質問は来るが自分の経歴やフェニックス関しては答えず、他はすべて答えた。

「それじゃあ最後に専用機持ち全員で写真を撮りたいから、イチカ君とオルコットさん集まってくれる?」

言われた通りに集まり、薫子がカメラを構えた。

セシリアとイチカが手を握るように指示するとシャッターが押されるのを待つ。

「じゃあ、いくよー! 49+56÷6×4は?」

「86.333」

「おぉ、正解!」

暗算しろとでも言うのだろうか。

普通なら即座に答えれない四則計算を答えたイチカに内心、感心しながら一同は薫子がシャッターを切った瞬間、イチカとセシリアの後ろにクラスメート全員が集まって写真に収まった。

何気に箒もイチカの後ろに立っているので、これでクラスの集合写真と化したのは言うまでもない。

「あ~、まぁ良いか」

これはこれで記念になると、強引に納得する事にした薫子であった。




次回 中華娘登場です

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