ゼロの使い魔 本能の牙-extra-   作:新世界のおっさん

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リアルだと休日って色々安くなりますが、ハルケギニアではあんまり関係ないかもですね。

まあ、町が賑わうのは変わらないでしょうが。


虚無の曜日は買い物日和

 

「イノセンス!結!買い物に行くわよ!」

 

朝起きて身なりを整えたルイズはそう言った。

 

「随分突然だなルイズ、今日は授業無いのか?」

 

「そうよ、今日は虚無の曜日って言って、授業がないのよ」

 

「虚無の曜日ですか……何か恐そうな名前ですね」

 

ルイズの言葉に結は街中が誰もいない空虚なイメージをしてそう言った。

 

「リアルで言う日曜か、ならばお供するよルイズ」

 

「ええ、してくれないと困るわ、今日は貴方に昨日のご褒美を買ってあげるために行くんだもの!」

 

ルイズは胸を張って言う。

 

「なるほど、そのためにわざわざ……ルイズ、ありがとう」

 

「ふんっ、礼はいらないわ、変わりに今後もしっかり働くのよ!」

 

そう言ってそっぽを向くルイズ。

それが彼女なりの照れ隠しだ。

イノセンスは微笑んで立ち上がり、布団をかたずけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でタバサは、日課の本読みも忘れて、自らのメインメニューを開いて眺めていた。

 

「もっとこれの使い方が知りたい……」

 

昨日から彼女の好奇心がやまない。

もっとこれをイノセンスのように使いこなしたいと、その衝動に駆られていた。

しかしその裏には彼を知りたいと言う願望もあった。

 

「……部屋にいるかな?」

 

だんだんいても立ってもいられ無くなってきたため、身支度を済ませ、外に出るタバサ。

すると廊下の向こうから走ってくるキュルケが見えた。

 

「タバサ!お願いだから!貴女の風竜貸してぇ!」

 

「……何故?」

 

必死に懇願するキュルケにタバサは疑問を投げ掛ける。

 

「あたしの愛しのイノセンスが、ヴァリエールと馬に乗って町に出掛けちゃったのよ!!」

 

「!」

 

キュルケの言葉に反応するタバサ。

すぐさまメインメニューを開き、フレンドリストを見ると、確かに既に学院内にはいないようだ。

キュルケはタバサが何をやっているのか、理解が出来ないためキョトンとしている。

 

「すぐに追いかける」

 

「! 流石タバサ!ありがとう!」

 

タバサが自分の部屋の窓を開けると、分かっていたとばかりに既にシルフィードが待機していた。

 

「……仕事が早い」

 

「キュイッ」

 

どこか自慢げな彼女にキュルケと共に飛び乗り、空へと飛び立つ。

 

「目標、イノセンス……行って」

 

「頼んだわよ!」

 

「キュ~イッ!」

 

シルフィードは出来うる限りのスピードでイノセンスを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ルイズ一行は馬で移動しながら、昨日イノセンスが発見した事について話し合っていた。

 

「ほ、本当だ!自分で開ける!」

 

「パパ、良く見つけましたね!」

 

「俺も昨日は驚いたよ、だが気づけたのはきっかけをくれたルイズとタバサのおかげだな」

 

ルイズとは既にフレンド登録を済ませ、彼女もまた仲間入りを果たしていた。

ふと、ルイズは不機嫌そうな顔になる。

 

「でも不本意なのは、貴方の最初のフレンドが私じゃないってことね!何でもっと早く気づかないのよ!」

 

「それは理不尽だろ……まあ、それでこそルイズか」

 

早速我が儘を言う主人に苦笑する使い魔。

ルイズは得てして、ご機嫌とりが難しい人物である。

 

「何よそれ、相変わらず生意気な使い魔ね!」

 

「! パパ!後方から何かが接近してきます!」

 

「ん?」

 

結の叫びに後ろを見ると、接近してくるシルフィードの

姿が見えた。

 

「シルフィードってことはタバサか?」

 

向こうが近づくにつれてはっきり此方に向かってきている事が分かった。

よく確認すると上に乗っていたのはタバサとキュルケだった。

 

「イノセンス!追い付いたわ!」

 

「……」

 

「キュルケ!タバサ!追いかけてきたのかお前ら!」

 

「ちょっと!なんでツェルプストーがいるのよ!あんたは帰りなさいよ!」

 

叫ぶキュルケに、イノセンスを黙って見つめるタバサ。

ルイズはキュルケの声に反応して振り返る。

 

「なに言ってるのよ!私はイノセンスに会いに来たのよ!あんたこそ、その馬降りて私に譲りなさいな!」

 

「何ですって!?それなら私はイノセンスの主人よ!この年中色情魔!」

 

ルイズとキュルケが口喧嘩を始めている中、タバサはイノセンスの馬に飛びうつる。

 

「おっと」

 

タバサを抱き止め、自分の前に座らせるイノセンス。

イノセンスは彼女がわざわざ自分を追いかける理由が察せなかったので、聞いてみる。

 

「別に買い物後でも会えたのに、どうして追ってきたんだ?」

 

「……頼まれたから」

 

そう言って困り顔のシルフィードの上で口喧嘩しているキュルケを指差すタバサ。

それを聞いてイノセンスは苦笑する。

 

「そうか、お疲れ様」

 

そう言ってイノセンスはタバサの頭を撫でる。

 

「ん……」

 

タバサは相変わらず無表情だったが、心なしか嬉しそうだった。

と、そんな事をしている内に街が見えてきてしまったため、イノセンスは二人に向かって叫ぶ。

 

「ルイズ!キュルケ!もう街に着くんだからいい加減にしとけこら!」

 

「えっ?あっ、本当ね……キュルケに構っている暇無いわね……っていつの間に!?」

 

イノセンスの言葉に冷静になったルイズだが、彼の前に座るタバサの存在に今頃気がついた。

 

「……ちょっと、なに人の使い魔と馴れ馴れしくしてるのよ!自分の使い魔の所に戻りなさいよ!」

 

「……いやだ」

 

ルイズの言葉を否定し、イノセンスに身体を預けるタバサ。

 

「!? も、もう!何で私の周りは揃いも揃って私の言うこと聞かないのよーーー!!」

 

ルイズの叫び声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズ達の来た街トリスタニアは、トリステインの首都であり、それなりに大きく、虚無の曜日なためとても賑わっていた。

そんな中ルイズ一行にタバサとキュルケを加えたメンバーは散策に来ていた。

 

「正直大変不本意だけど、街で暴れたら面倒だからあんた達と

行動を共にするわ、ただし妙な真似したら即刻杖を使うからね」

 

「ヴァリエールの失敗魔法なんて恐くはないけど、イノセンスに迷惑かけないために大人しくしてるわよ」

 

「……」

 

ルイズの不満げな声に、キュルケは答え、タバサも黙ってはいたが頷く。

 

「……まあ、良いわ……それよりイノセンス!あんたは何か欲しいもの……?」

 

二人をとりあえず許容し、イノセンスに声をかけたルイズは、彼の様子がいつもと違う事に気づく。

普段は穏やかな茶色の瞳が、青く輝いていたのだ。

 

「……この路地に入るのが最善か」

 

「イノセンス……?……ってちょっと!待ちなさい!」

 

「あら、イノセンスったらどうしたのかしら?」

 

「……ついていく」

 

イノセンスは結を連れだって、横の路地に入っていく。

置いていかれそうになるルイズ達は彼を追いかけた。

彼が立ち止まった場所は、煤けたスラムの武器屋だった。

 

「ここだな」

 

「パパ、本当にここが最善なんですか……?」

 

結は彼の力である<本能の牙>の、生きる為の最善の高速思考を信用してはいたが、この店の景観を見ると些か疑問を抱いた。

 

「何?武器が欲しかったの?それだったら言ってくれれば良かったのに、せっかちね」

 

ルイズは彼の行動に不満を抱く。

 

「こんな場所より良い市場が沢山あったのに何故ここに来たのかしら?」

 

「……彼は常識では計れない」

 

「そう言われると確かにって、思っちゃうわね」

 

キュルケの疑問にタバサが簡素に答えると、彼女は何となく納得し、苦笑する。

イノセンスが、武器屋に入ると、ゴロツキ崩れの髭を蓄えた店主がパイプを吸ってリラックスしていたが、貴族だと気づいて慌てて対応する。

 

「うちは全うな商売してまさぁ、お上に目をつけられることなんか、 これっぽっちもありませんぜ!」

 

「大丈夫よ、今日はただ買い物に来ただけだから……彼に武器を見繕ってくれる?」

 

ルイズはイノセンスを指して言う。

店主はイノセンスを見て、豪華な装飾の剣を持ってきた。

 

「これなんてどうです?」

 

「イノセンス、良さそうよ!この剣!」

 

「そりゃそうでさぁ!なんせ、かの有名なゲルマニアの錬金術師シュペー卿が自ら鍛えた剣ですぜ!」

 

「……」

 

イノセンスはその剣を受け取り、指で軽く叩くとパラメーターが出現する。

店主とキュルケはそれに対してギョッとする。

彼はルイズとタバサにそれを見せ、説明する。

 

「武器には、攻撃力、特殊効果、耐久値、属性があるが……この剣は低い攻撃力、特殊効果なし、脆すぎる耐久値、打撃属性と……見た目だけの完全になまくらだ、騙されないようにな」

 

「……勉強になる」

 

「わ、分かったわ……イノセンスには100%詐欺が出来ないことがね」

 

タバサは興味津々で剣を眺め、ルイズは苦笑する。

そのまま、イノセンスは唖然とする店主を無視して、立て掛けてある武器を漁る。

何れもなまくらばかりで、落胆気味なイノセンスだが、そこに結が声をかける。

 

「パパ、こんなものがありましたよ!」

 

「?」

 

結の言葉に顔をあげると、その手には錆び付いた片刃の剣が握られていた。

それを手に取り叩くとパラメーターに銘が浮かぶ。

 

「デルフリンガー……?」

 

『おっ?なんだなんだ!?俺を知ってんのか!?』

 

名前に反応した剣<デルフリンガー>が突然喋りだす。

 

「これ、インテリジェンスソード?」

 

「特殊効果にも書いてあったから間違いないな」

 

ルイズの疑問にイノセンスが答える。

 

『まさか俺の名を知るやつに出会えるたぁな、それに誰かは知らねぇが、おめぇかなり腕がたつな?力をひしひし感じるぜ?』

 

「ほう、そんな事も分かるのか……ならこれについても何か知らないか?」

 

物知りそうなデルフリンガーに、自分のルーンを見せる。

すると、驚くデルフリンガー。

 

『なんと!おめぇ、<使い手>か!これも何かの運命かねぇ!』

 

「<使い手>……どうやら、本能は嘘をつかないな」

 

イノセンスは笑い、ルイズを見る。

 

「ルイズ、俺はこいつを買う」

 

「えっ?良いの?そのボロ剣で?」

 

『ひでぇ言い様だな嬢ちゃん!まあ、錆びだらけなのは事実だけどよ!』

 

疑問を浮かべるルイズにカラカラ笑うデルフリンガー。

 

「俺はこいつに会うために、この店に来たんだ……間違いないよ、ルイズ」

 

『あ、ありがてぇ言葉じゃねぇか!感動したぜ!』

 

「そ、そう……貴方がそこまで言うなら、幾らなの?」

 

「はっ、はい……それなら100エキューで良いです」

 

思わず敬語になっている店主に、金を払うルイズ。

これでデルフリンガーは晴れて使い手を得た。

 

「ありがとう、ルイズ」

 

「はいはい、さっさと出るわよ」

 

ルイズはさっさと外に出ていく、長居はしたくなかったのだろうキュルケも続いて出ていく。

タバサと結だけはデルフリンガーと語らうイノセンスを見つめていた。

 

「これから長い間、よろしく頼むデルフ」

 

『おう!相棒!あんたのためならエンヤコラだぜ!』

 

こうして、イノセンスはこれからの人生においてかけがえのない新たな友と出会ったのだ。

 




デルフリンガー獲得。

やはり片刃の剣のために二刀流(裏)と相性がよく、尚且つ魔法に対して高い性能を誇るデルフリンガーは、イノセンスの良き相棒となるでしょう。

お喋りなのがたまに傷ですが(笑)

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