ゼロの使い魔 本能の牙-extra-   作:新世界のおっさん

6 / 25
魔性の女キュルケ。

数多の男をその手に収めた彼女は、とても大人の魅力に溢れます。

そして、あのタバサがイノセンスの異常さにその無表情を驚愕に染めます。


微熱の誘惑、雪風の困惑

決闘の後、イノセンスはルイズに連れられてハルケギニア史の授業に参加していた。

字が読めないため、黒板の内容はさっぱりだったが、教師の話の内容は分かった。

始祖ブリミルの話や、現在の国に至る経緯等、日本史のように歴史を感じ、イノセンスは楽しんでいた。

ふと、後ろからサラマンダーのフレイムがやってきた。

口に手紙がくわえてあったので、見てみるが、黒板同様に内容が分からなかった……なので仕方なくルイズに聞いて見せると、明らかに不機嫌な表情になったあと。

 

『忘れなさい……この後何があろうと、アイツは無視よ!分かったわね!?』

 

そう言ってキュルケの手紙を自分の懐に入れてしまった。

後ろにいるキュルケはこちらに手を振っている。

イノセンスは少し考えたが、今はとりあえず、ムスッとしながらも、真面目に授業に取り組んでいるルイズの様に、目の前の授業に集中した。

そんな彼を見る青き髪の少女は目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ってきたイノセンスは、布団を用意を済ませたあと、二人に話しかける。

 

「そしたら、少し図書館で調べものしに行ってくるよ、遅かったら二人とも先に寝てても構わない」

 

「調べもの?」

 

「もしかして、ハルケギニアの文字ですか?」

 

結の言葉に頷くイノセンス。

 

「今後もここで生きていくのに、文字の一つや二つ、読めたほうがいいだろ?」

 

「そう言えば読めないんだったわね……結は良いの?」

 

「私はパパの代わりにルイズさんの護衛です!」

 

ルイズの質問に結は気合いを入れて答える。

それを見てルイズは吹き出しながら笑う。

 

「ふふっ、何か頼り甲斐なさそうな護衛ね!」

 

「おや、なめるなよ?結は俺とほぼ同格の強さなんだぞ?」

 

「……えっ!?」

 

「はい、お任せください!」

 

イノセンスの言葉にルイズは驚愕し、結は自慢げに胸を張っている。

 

「んじゃ、俺は行ってくるよ」

 

「あっ、うん、いってらっしゃい」

 

「お気をつけて!」

 

二人に見送られ、イノセンスは外に出る。

そのまま真っ直ぐ図書館に向かおうとしたのだが、フレイムが再び彼の前に現れた。

 

「またお前か……」

 

「クエェッ!」

 

フレイムは向かいにある部屋に誘導しようと、イノセンスのズボンの裾を引っ張る。

それに合点がいったイノセンス。

 

「……キュルケが呼んでいるんだな?」

 

「! クエッ」

 

イノセンスの質問にフレイムは頷く。

 

「嫌な予感しかしないが……決闘の時助け船出してくれたからな……無視しづらいんだよな……」

 

ルイズには無視しろと言われたが、借りがあるため断りづらく、それにもしかしたら重要な話があるのかもしれない。

イノセンスは暫く葛藤したあと、今回はキュルケに会う事にした。

彼女を知るのも、今後の為に必要だと思ったからだ。

フレイムと共にドアの前に立ち、ノックする。

 

「どうぞ」

 

中から声が聞こえたため、ドアを開けて中に入る。

どうも中は暗いようであまり様子が分からない。

 

「こっちよ、イノセンス」

 

キュルケは蝋燭に火をつけ、イノセンスを導く。

今の彼女はかなり薄着で露出が多く、官能的な見た目をしている。

 

「普段からそんなの着てるのか?」

 

「ふふっ、そんなわけ無いじゃない……この格好は……」

 

イノセンスの質問にキュルケは怪しく笑い、彼に近づき抱きついてから艶っぽく囁く。

 

「私が燃えている時だけよ……」

 

「……どう言うことだ?」

 

キュルケの言葉にイノセンスは質問する。

彼女はイノセンスに触りながら語る。

 

「私の二つ名は<微熱>……熱しやすくて冷めやすい、そんな恋に恋する女……だけど一度燃え上がると中々冷めないの……」

 

「……」

 

「貴方の決闘を見てから、燃え上がった火が治まらない……うずきが止まらないの……」

 

キュルケの言葉は熱を持ち、黙って聞くイノセンスに絡み付いてくる。

彼女は今なお燃え盛っているのだ。

 

「はしたない女と思うかもしれない……でも、私はね……今貴方が好きよ……イノセンス……貴方がほしい」

 

そう言ってイノセンスに向かい合い、顔を近づけるキュルケ。

イノセンスは何故か動けなかった……今彼女の魅力に、彼は間違いなく釘付けであった。

しかし、二人が交わる事はない。

 

『キュルケ!これはどう言うことだい!』

 

窓から謎の男子生徒達がやって来たからだ。

 

「……キュルケ?」

 

さしものイノセンスもこれには熱も冷める。

キュルケは慌てて杖を取り出す。

 

「皆、ゴメン!今は出ていって!」

 

キュルケはファイアーボールで男子生徒達を吹き飛ばす。

 

「……熱しやすくて冷めやすいか、まさにだな」

 

「あ~あ、折角盛り上がってたムードが台無しよ!絶対今日で貴方を落とす予定だったのに……」

 

イノセンスは苦笑し、キュルケは不満げに頬を膨らませる。

 

「残念だったな、俺はご主人のルイズが待ってるんで帰らせてもらうよ……だが、お前が魅力的なのは認めとく……じゃあな」

 

そう言って、イノセンスは外に出る。

 

「……魅力的かぁ……ふふっ、まあ悪くない気分ね……まだ諦めないわよ私は……」

 

キュルケは暗がりで微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

イノセンスが外に出ると、そこには青い(と言っても水色が近いが)髪の眼鏡をかけた少女が待っていた。

 

「おっと……キュルケに用事の娘か?」

 

「……違う……待っていた……貴方を」

 

彼女はイノセンスをしっかり見据える。

 

「……どんな用事かは分からんが、場所変えようか」

 

「……」

 

イノセンスの言葉に少女は黙って頷く、二人は共にヴェストリの広場に向かった。

 

 

 

 

 

 

広場につくとそこにはシルフィードも待っていた。

イノセンスは疑問が氷解する。

 

「君がシルフィードの?」

 

少女は頷く。

 

「そう……まず、貴方にお礼を言いたい……この子に肉をくれてありがとう」

 

「ああ、どういたしまして……ってそれだけってことは無いよな?」

 

礼を言う彼女にイノセンスは聞くと、少女は再び頷く。

 

「力を貸してほしい……私が強くなるために……」

 

「ほう、何かわけありだな……」

 

彼女の言葉にイノセンスは顎に手を当て考える。

しばらく考えてからこう答えた。

 

「交換条件を掲示する」

 

「……言って」

 

少女は強くなるためならなんだってする覚悟があった……がやはり相手は男で自分は女、少し手に力が入る。

 

「この世界の言葉を教えてくれないか?」

 

「……え?」

 

意外な答えに思わず聞き返す少女。

 

「何か成り行きでこの世界の住人として生きる事になっちまったが、やっぱりそう言うの分かんないと不便でさ……だから君が教えてくれると嬉しいんだが……ダメか?」

 

イノセンスの言葉に少女首を横に振る。

 

「なら、それで契約成立だな……知ってるかもしれないが俺はイノセンス、よろしくな」

 

手を差し出すイノセンス。

 

「……タバサ……よろしく」

 

その手を握る少女タバサ。

この時、二人の間に不思議な縁が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、強くなるための協力って具体的に何をすれば良いんだ?」

 

イノセンスはタバサに気になっていた事を聞く。

 

「貴方の強さの秘訣や、技術……何でも知りたい」

 

タバサの表情はいまだ無表情だが、瞳には好奇心が見てとれた。

 

「……なるほどな……そう言う事か」

 

タバサの答えにイノセンスは渋い顔をする。

自分の強さは、ゲームのアバターが長い時間をかけて培ったものだ……故に彼女を早々に強くする事は難しい。

しかし、イノセンスは初めてルイズのメインメニューを開いた時から、自分なりにこのシステムの力を考察した。

もしかしたら、自分と親密なほどシステムの影響と恩恵を受ける事が可能になるのではないかと。

 

「ちょっと、失礼」

 

「……?」

 

イノセンスはルイズにやったように、タバサの右手をとり空間をスライドさせる。

すると、やはりメインメニューが現れる。

タバサもこれには目を見開き無表情が崩れる。

後ろで見ていたシルフィードも同様だ。

 

「考察は当たりかな?となるとステータスは……」

 

タバサのメインメニューを操作しステータス画面を開く。

それを見てイノセンスは驚く。

 

「! この世界だとINT、MND、LUCが存在するのか……そしてLUCやたら低いな……仕様か?」

 

どうやらハルケギニアにおいては、STR、VIT、DEX、AGI以外にステータスが存在するようだ。

今まで自分のステータス画面を見ていなかったイノセンスは興味津々だった。

 

「……これはなに?」

 

黙っていたタバサが画面の内容について聞いてきた。

イノセンスは答える。

 

「これはタバサの強さを数値化したものさ、STRが力、VITが耐久、DEXが器用、AGIが敏捷、INTが知力、MNDが精神、LUCが運って感じかな」

 

「……なるほど、でもこれでは分からない……貴方のも見せて欲しい」

 

タバサの言葉に了解し、左手でタバサの手を持ちながら、右手で自分のステータスを開いて見せる。

 

「……凄まじい強さ」

 

「ふふっ、お褒めに預かり光栄だね」

 

イノセンスはタバサのマジマジ画面を見比べる様子に思わず笑う。

 

「……どうすれば……貴方の様なステータスになれる?」

 

タバサはイノセンスを見つめる。

イノセンスは一考して答える。

 

「とにかく経験値を稼いでレベルを上げる」

 

「……戦うってこと?」

 

「そうだな、主にモンスターと……んでポイントをしっかり振っていけば自然と強くなる」

 

イノセンスはタバサのステータス画面に表示されている、余っているポイントを全部AGIに振る。

ステータスの変化が分かりやすく表れるのは、恐らくこれだろう。

 

「動き回ってみな?」

 

「?」

 

タバサは疑問に思いながらも、動いてみる。

すると明らかに俊敏に動ける様になっていた。

驚愕するタバサ。

 

「……凄い」

 

「これがレベルが上がるってことだ、今後はもっと凄いことになるだろうさ」

 

そう言ってイノセンスは微笑む。

そして、とある事に気づいた。

 

「あ、<フレンド>システムを応用すればもしかしたら!」

 

「?」

 

イノセンスはメインメニューを操作し探すと、目的のフレンド申請ボタンを見つけた。

ニヤリと笑い再びタバサの隣に立ち、彼女のメインメニューを開き、その状態でフレンド申請をする。

すると、タバサの前にフレンド申請受理の有無の画面がきた。

迷わずyesを押し、フレンド登録する。

互いのメインメニューを消し、イノセンスは離れる。

 

「タバサ、自分で君から見て右側の空間をスライドしてみてくれ」

 

「……わかった」

 

タバサはイノセンスを信用し、スライドする。

するとメインメニューが現れた。

 

「ビンゴ」

 

「!」

 

タバサは困惑しながらメニューを色々動かしてみたり、色んな方向を向くとそれについてくるメインメニューに驚いていた。

 

「これでタバサもシステムにアバターと判断されて、晴れて俺の仲間入りだ」

 

「……仲間?」

 

イノセンスの言葉にタバサは首を傾ける。

 

「ああ、ようこそ!俺の世界へ!」

 

「ーーーー」

 

そう言った瞬間世界が塗りかわり、彼の後ろに、空に浮かぶ城を幻視するタバサ。

 

「こうなった以上契約だから、みっちり鍛えるよ……まあ、そろそろ遅いから今日は帰るがね……じゃあまたなタバサ、シルフィードもゆっくり休めよ」

 

「! 待って!」

 

そう言って背を向けるイノセンスに声をかけるタバサ。

イノセンスは立ち止まる。

 

「……貴方は……一体……」

 

タバサは人形としての自分が既に吹き飛んでいた。

ただただ彼が気になった。

イノセンスは笑って言った。

 

「<剣の世界>の使い魔さ」

 

去り行くイノセンスをタバサは呆然と眺めていた。

 




キュルケとタバサのイベント回。

イノセンスの自由さに拍車がかかる!
一体どこまでいくのか!まて次号!

あ、感想おまちしてます!(迫真)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。