ゼロの使い魔 本能の牙-extra-   作:新世界のおっさん

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タルブの村とシエスタメインの話。

たまに実家に帰ると、凄く落ち着くんですよね……。
そう考えると、帰らなくて良いって言うイノセンスが、改めて凄い男に感じました、自分で書いておいてなんですが(笑)





不思議な記憶と少女の覚悟

宝探しから戻ったシエスタに、休暇の日時が知らされた。

話によると、どうやら一週間後になりそうと言うことで、タルブに行くのは来週と決めて、解散する運びになった。

その日の夜……眠りについたルイズは、夢を見た。

彼女は大きな屋敷の庭に立ち、辺りを見渡す。

 

「これって、また夢?……もうあんな感じの夢は勘弁して欲しいわ……」

 

ルイズは以前の夢を思い返し、居心地悪そうな顔になり。

しかし、彼女の心配に反して夢の内容は、お座敷の中で、現在に近い姿のイノセンスと、可愛らしい女の子達が仲良く話している平和な様子だった。

 

「ムッ!これはこれでムカツクわね!……と言うか、昔から女子に人気あったんだあいつ……あれ?」

 

それを見つめる人物がルイズ以外にもいた、それはハルケギニアにいる現在のイノセンス……彼は離れた所に立ちながら、ジッと眺めている。

どうやら今回は、イノセンスが見ている夢を、彼女が見ているようだ。

 

「イノセンス……!」

 

ルイズが彼に近づこうとすると、今いた事に気づいたのか、イノセンスはルイズの方に目を向ける。

 

「ルイズ?……ああ、なるほど……これもルーンの力なのか?」

 

「……もしかしたらそうかも知れないわね……ねぇイノセンス……聞きたいんだけど……」

 

「ん?どうした?」

 

「あの子達は、貴方にとってどんな存在なの?やっぱり大切な存在……よね?」

 

ルイズは不安げに、イノセンスを見る。

彼は迷うことなく、こう答えた。

 

「ああ、大切な存在だよ……俺を支え、慕ってくれる、守るべき存在……だった」

 

「……だった?」

 

イノセンスは頷き、続ける。

 

「彼女達に対する、<俺>の役目は終わったんだ……今はハルケギニアが俺の居場所……そして大切な存在はルイズ達だ」

 

彼の言葉に合わせ夢は形を変え、周囲はトリステイン魔法学院になり、イノセンスはルイズに手をさしのべる。

彼の後ろには、かつての彼自身の姿がある。

 

「……そっか、なら今度は私達が……あんたを支えていかなきゃね!」

 

そう言って笑い、イノセンスの手を取り歩き出すルイズ。

イノセンスは微笑み、彼女とともに前へと進みだした……その先は無限に光が広がっている。

そこでルイズは夢から覚める……いつものふかふかなベッドの上だ。

隣では静かに寝息をたてるイノセンスがいた。

ルイズはイノセンスを見つめながら言う。

 

「……イノセンスが私に召喚されたのが、<役目>を終えたからだったとしたら、もう心配無いって事よね?ずっと一緒って事なのよね?」

 

彼は眠っているので答えるわけがない、ルイズも分かっていたが、思わず口に出ていた。

 

「……イノセンス……」

 

髪を優しく撫でると、気持ち良さそうに表情を和らげるイノセンス、それを見てなんだか愛おしく感じるルイズ。

 

「私は貴方のご主人様なんだから……遠慮なんかするんじゃないわよ?私だって力になれるんだから……」

 

しばらくそうしていると、ノックの後、扉が開かれる。

 

「おはようございます!朝のご挨拶に……」

 

「……」

 

双方ともに固まった、シエスタは少しショックを受けた様な表情をした後、言葉を紡ぐ。

 

「……そうでしたか、お二人は既に……そう言う関係だったんですねーーー!!!」

 

「ちょっ!! 違う!これはあくまで主人と使い魔の軽いスキンシップみたいな物よ!!待ちなさいってばーーー!!!」

 

その場から逃げ出したシエスタを、追いかけるルイズ。

二人の大きな声に反応して、目覚めたイノセンスは、開きっぱなしの扉を見つめていた。

 

「朝から賑やかだな、この世界は……だから好きになったとも言えるが」

 

そう言って彼は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シエスタの故郷のタルブの村は、ラ・ロシェールの近くにあり、見晴らしのいい大きな草原が特徴の、のどかな雰囲気が漂う場所だった。

帰郷当日、ルイズ達はシエスタとともに夕方頃にはタルブに着き、タルブの宿屋にて部屋をとったのだが……。

 

「お願いします!イノセンスさんは、うちに泊まってくれませんか!」

 

「……はぁッ!?どう言う事よそれ!?」

 

「……何故?」

 

「シエスタさん、理由を教えてくれませんと、わたくし納得しかねます!」

 

突然シエスタがこんな爆弾発言を投下した。

これには女性陣も大ブーイングだ。

しかし、イノセンスは冷静に彼女に聞く。

 

「どういう事なんだ?」

 

「……実は、祖父が前から病気がちで……最近は良く寝込んでるらしいんですけど、かなり私の事を心配してくださってて……それでそのつい……安心してもらうために、手紙に私は頼りになる人と一緒だから大丈夫って書いちゃったんです、そしたらしょっ、紹介してくれって……ごめんなさい!そしてどうか、うちに来てくださいませんか!」

 

イノセンスへの申し訳なさにシエスタは謝った。

だが迷惑なのは分かっていても、彼には来てほしかった。

 

「……分かった、そう言うことなら行こうかな」

 

「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」

 

「ちょっ!?イノセンス、あんた何勝手に決めてるのよ!」

 

想像以上にあっさりOKを出したイノセンスに、シエスタは喜び、タバサやケティは彼がそう言うならと何も言わなかったが、ルイズは焦って詰め寄った。

 

「……俺はこの世界に来てから、シエスタには日常的に良く世話になってるんだ……だから彼女のためなら出来ることはやってやりたい……ルイズ、ダメなのか?」

 

イノセンスはそう言って悲しい表情になる。

それを見てルイズは怯み、しばらく頭を抱えて悩んだ結果。

 

「……貴方が節度を守って、周りに迷惑をかけないと私に誓うなら良いわよ……」

 

「分かった、誓うよルイズ……周りには迷惑かけないし、節度持ってあちらにお邪魔する」

 

「はい、なら行ってよし!」

 

「……ありがとう、ルイズ」

 

許可をくれたルイズに、イノセンスは礼を言い、シエスタのもとへと行った。

 

「……そんな顔されたら、許可するしか無いじゃないの……バカ……」

 

去り行く彼の背中に、ルイズは一人ごちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

シエスタの実家に挨拶に向かったイノセンスは、早速家族に紹介された。

手紙で活躍をたびたび聞かされていたため、祖父母、両親、弟や妹達にも歓迎され、祖父の進言でタルブの郷土料理、<ヨシェナヴェ>が振る舞われた。

これを見て、その後食べたイノセンスは思った。

 

「これってもしかして、<寄せ鍋>じゃないか?」

 

「えっ?イノセンスさん知ってるんですか?」

 

「いや、もしかしたらただ似てるだけかも知れないが、俺はこれに似た料理を、自分の世界で食べたことがあるんだ」

 

そう言うと、シエスタの両親は反応を示す。

 

「それならもしかすると、あの字が読めるかもしれない」

 

「? あの字とは?」

 

「ああ、<竜の羽衣>の前の石碑の字ですか?……確かにイノセンスさんなら……」

 

父の言葉にイノセンスが疑問を抱くと、シエスタは合点がいったような顔をした。

 

「(<竜の羽衣>……ギーシュが道中言ってた宝の名前だな……なら明日行けば分かるかな)」

 

イノセンスはヨシェナヴェをつまみながら、そうぼんやりと考えていた。

 

「ところで兄ちゃんって、姉ちゃんのボーイフレンドなんだろ?」

 

「キスとかしないの!?」

 

「なぁっ!?」

 

弟と妹に詰め寄られる、イノセンス。

この発言にはシエスタは不味いと思ったが、両親も祖父母も期待の眼差しで見ていた。

それを受けた彼は。

 

『……シエスタ、悪いな……』

 

と耳元で囁いた後、頬にキスをした。

途端に真っ赤になるシエスタ、まさか本当にやってくれるとは彼女も思っていなかった。

 

「……とまあ、まだ付き合って間もないから、このくらいで勘弁してくれないか?」

 

「い、いや……ご馳走さまです!師匠!」

 

「わぁ……お姉ちゃん羨ましい!」

 

「ハッハッハッ!こりゃ参ったなぁ!シエスタも幸せもんだな!」

 

「初々しくて良いわね~、応援するわよ!」

 

どうやら皆満足してくれたようで、祖父もからからと笑っていた。

とても和やかな時間が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

子供達が寝静まり、両親と軽く酒を酌み交わしたあと、イノセンスは外に出て、タルブの広い草原を見渡せる場所まで来た後、そこで風に当たっていた。

久方ぶりに一人だったので、先週手に入れた<歌精の魔笛>を手に持ち、見つめる。

 

「……あの時見たのはただの幻覚とは思えない……間違いなくこれは俺に関係のある品……なんだよな?」

 

最初に手にした時見たフラッシュバックは、自分は体験した覚えがない、しかし何処かで見た様な気もした。

そう思っていたイノセンスは、なんとなしに魔笛を口に含む。

 

「(これは楽器だしな……吹けば何か分かるかも……)」

 

適当に指で笛の横穴を塞ぎながら、息を吹き込んでみる。

すると、幻想的な不思議な音が鳴り出す。

指を塞ぐ場所を色々と変えながら、吹き込んでいくと、何故か段々と曲になっていく、指が、身体が、何かを覚えている……そして、浮かんでくる風景。

もう一人の本能の牙になった少女、辛い恋に悩む親友の妹、赤き猛者との戦い、そして天高くそびえる巨大な樹に、力強く叫んで自分を奮い立たせる茅場晶彦。

流れ込んでくる、感情、記憶、力……。

これが何なのか、先程までの彼には見えていなかった。

でも今は、感覚的には分かった……そうイノセンスは感じていた。

 

「……そうか、<俺>は頑張ってたんだな……別の場所だろうが、変わんないんだな、やることは……」

 

吹き終わり、イノセンスはそう呟く。

すると後ろから拍手が聞こえた。

振り向いてみると、素朴な私服で佇む、シエスタが見えた。

 

「イノセンスさんって笛も吹けるんですね!びっくりしました!」

 

「……まあ、な……そこ座りなよ、話でもしよう」

 

「! は、はい!」

 

イノセンスに誘われ、シエスタは嬉しそうに隣に座る。

 

「その手に持ってるのはワイン?」

 

「はい、先程イノセンスさんが飲んでた地酒以外にも、ブドウも良く取れるので、ワインとかもそれなりに名産なんですよ……飲みませんか?」

 

「是非いただこう」

 

それを聞き、シエスタは持ってきていたグラス二つに、ワインを注ぎ、片方をイノセンスに渡す。

 

「では、乾杯」

 

「うん、乾杯」

 

二人は軽くグラスを当てた後、ワインを飲む。

赤ワインの芳醇な香り、強いコクと渋みが、大人の味わいとも言える。

イノセンスはSAO内で、クラインと酔えないワインを飲んで、味はある程度知っていたため、余裕で飲んだが、シエスタはあまり飲まないか、あるいは飲んだことが無いのか、少し渋い顔になった。

 

「無理して飲まなくても……」

 

「こう言うのは気分ですから、気分」

 

強がるシエスタを見て、イノセンスは苦笑する。

 

「まあ、飲めるなら良いんだが……そう言えば、シエスタって髪も瞳も黒だよな、この世界だと珍しく感じるな」

 

「ええ、良く言われますね……祖父の話だと、曾祖父も黒髪黒目だったらしいので、遺伝ではないかと言われてます」

 

何となく感じた疑問をシエスタに質問すると、彼女は笑顔でそう答えた。

 

「(さっきの寄せ鍋と言い、やっぱり関係してるんじゃないかと思えるよな、日本に……)」

 

まだはっきりとした証拠が無いため、何とも言えないが、イノセンスは十中八九自らの故郷<日本>に、シエスタの曾祖父は関わっていると感じた。

 

「……イノセンスさんは、この黒髪と黒目はどう思います?」

 

「ふむ……慣れ親しんだ色だし、好きだよ」

 

「そ、そうですか……良かったです」

 

イノセンスの答えに、シエスタは頬を赤く染め、もじもじしている。

しばらくしてから、もう一度口を開く。

 

「私、これからもずっと努力していきます!……ご奉公でも、槍使いとしても……そして、いつか一人前になって見せます!だから、もしその時が来たら、私を側に置いていただけないでしょうか!!」

 

礼をしているシエスタは胸がドキドキとしている、控えめな彼女なりに遠回しに告白しているのだ。

それを聞いたイノセンスは、少し答えづらそうだったが、彼女のために答える。

 

「……俺は貴族であるルイズの使い魔だ……これからきっと何度も戦場に赴く、その課程で何が起こるか分からない……だから<約束>は出来ないかな……」

 

「……やはり、そうでしたか……」

 

イノセンスの答えを聞き、顔を上げるシエスタ。

 

「私は、その覚悟を持って話しています……こんな世界ですから、殿方はいつ戦場で命を落としても可笑しくはない、それは私も分かっています」

 

「シエスタ……」

 

「だからこそ、貴方の側にいたいのです……私の様な気持ちを持ってる人は他にもいるはずです、だから一番にとか、贅沢は言いません……私の気持ち、分かっていただけてますか?」

 

シエスタの目は真剣だった、普段の優しげな瞳ではなく、力強い覇気を持った瞳だった。

イノセンスは彼女の言葉に頷いた。

 

「シエスタは俺の想像以上に強い娘だったんだな……正直驚いた……でも約束は出来ない」

 

「そんなっ……!」

 

「ただし!」

 

シエスタが意見しようとしたのを、イノセンスは強い語気で止めてから、彼女の目を見てこう言った。

 

「これから俺をその気にさせられるかは、今後のシエスタ次第と言っておく……」

 

「……えっ?」

 

「勝負だ、シエスタ……俺意外と頑固だからな、簡単には首を縦に振らないつもりだ」

 

イノセンスの言葉に呆気にとられるシエスタ。

しかし、すぐに頭を振り、意識をしっかりさせる。

 

「つまり、今後の私の努力次第では、首を縦に振ってくれるんですか?」

 

「ああ、その通りだ」

 

その言葉にシエスタは立ち上がる。

 

「まだ可能性があるなら私は構いません!全力で貴方をメロメロにします!」

 

「おう、かかってこいや!」

 

シエスタの言葉に笑って返しながら、立ち上がるイノセンス。

そしてシエスタもまた笑っている、互いに宣戦布告状態だ、決して殺伐とはしていないが。

ふと、シエスタがあることに気づく。

 

「そう言えば、ミス・ヴァリエールとはもうキスしたんですよね?」

 

「ん?まあな……」

 

イノセンスはルイズと、出会った時一回、アルビオンの帰りに一回で合計二回している。

 

「……これぐらいは許してください」

 

「えっ?んむ」

 

シエスタの言葉に反応した時には、既に唇を奪われていた。

ルイズとは違う、優しい香りと暖かい温もりがイノセンスを包み、頭が蕩けそうになる。

唇が離れると、シエスタは微笑む。

 

「本気になった私を、嘗めないでくださいね?」

 

「……これはとんでもない娘に勝負をふっかけたのかもしれないな……」

 

今さら後悔することも無いし、寧ろ役得なのだが、シエスタもまた<女の子>なのだと、イノセンスは改めて認識させられた気がした。

 




早くもキス二人目です、なんと言う事でしょう(笑)

今後はシエスタも積極的に、絡んできます……頑張れイノセンス、負けるなイノセンス……やはり爆h(レトリビューション

そして、まさかのランキング5位!
めちゃくちゃ驚いてます!
そして……テンションあがってます(笑)
今後も精進しながら書いていきますので、応援や感想など随時お待ちしてます!

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