ゼロの使い魔 本能の牙-extra-   作:新世界のおっさん

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激しい闘争展開。

友の死が新たな風を生む。



疾風の牙

イノセンスが出ていき、艦隊の相手をしている間、結婚式は再開される運びになった。

神父であるウェールズは、彼を信じ、心を平静にしながら式に臨んでいたが、ルイズは全く心中穏やかでは無かった。

 

「……では新郎、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド……汝は始祖ブリミルの名において、この者を愛し、敬い、そして妻にする事を誓いますか?」

 

「誓います」

 

本当にこんな事をしていて良いのか……確かに許嫁のワルドに情熱的なプロポーズを受けて心が揺らいだし、ウェールズ皇太子が神父役をしてくれるなど名誉な事は最後のチャンスなのだ……ここでしなければ後悔するかもしれない。

 

「新婦、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……汝は……」

 

だが、今イノセンスが戦っている……。

自分のために、命を賭けてこの結婚式を守っているのだ……。

 

『果たして本当にそれで良いのか?』

 

自らの中で、何かが問いかけていた。

 

「……新婦?」

 

黙りこんでいるルイズに、ウェールズが疑問を抱き、聞く。

しかし、依然として黙っているルイズ。

それに対して、ワルドは微笑みながら彼女に語りかける。

 

「緊張しているのかい?しかし、何も心配する事はないんだ…… 僕のルイズ……君は僕が守ってあげるよ……永遠に……それをたった今、誓った……殿下、続きをお願いいたします」

 

しかしルイズは、ここで気持ちが固まったのか、口を開いた。

 

「申し訳ありません、ウェールズ皇太子、ワルド……私はこの式を取り止めたく思います」

 

この言葉にアルビオンの貴族達はざわめき、仲間達はやっぱりな……と言う表情になり、ワルドは愕然としていた。

ウェールズはルイズを見据え、彼女に問う。

 

「新婦はこの結婚を望まぬか?」

 

「はい」

 

ルイズは淀みなく答える。

ならばとウェールズは神父としてではなく、ウェールズ一個人として彼女に問う。

 

「それは新郎、そして彼の好意を共に無駄にする答えだ……本当に良いのかね?」

 

「そ、そうだよ、彼も君と僕の結婚を認めてくれているんだ……それを裏切っても良いのかい?」

 

ウェールズの問いにワルドも乗っかり、ルイズを諭そうとする。

しかし、ルイズの気持ちはもう揺らぐことはない。

 

「彼はあの時の後悔したくない私の気持ちを尊重して、この結婚を認めてくれました……でも今の私にはもうその気持ちはありません……それに、もしこれで彼を、イノセンスを失えば、私はとても後悔します……それは彼も私も望まないでしょう」

 

その言葉にワルドはルイズの手を掴む。

 

「ルイズ……」

 

「ワルド、昔の貴方の事は好きだった……でももう今は違うのよ……」

 

ルイズにとっては最早ワルドとの結婚よりも、イノセンスを助けに向かう方が重要だった。

<かつて>好きだったワルドよりも、<今>強い絆を結んでいるイノセンスを選んだのだ。

ウェールズはワルドには申し訳無いが安堵した……ルイズの今の答えを期待していたからだ。

 

「子爵……誠に気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続ける訳にはいかぬ」

 

ウェールズがそう言うと、ワルドは突然ルイズの手を痛いほど強く握りしめる。

 

「世界だルイズ……僕は世界を手に入れる!そのために君が必要なんだ!」

 

豹変したワルドに戸惑うルイズ。

しかし構わずワルドは興奮した口調で続ける。

 

「僕には君が必要なんだ!君の能力が!君の力がッ!……ルイズ、君は始祖ブリミルに劣らぬ優秀なメイジに成長するだろう……今はまだその才能に気づいてないだけだ!君の才能が必要なんだ!」

 

手を握り潰されるほどの痛みに表情を歪めながら、ルイズははっきりと理解した、ワルドは自分を愛していないと。

だから心から彼を拒絶する。

 

「あなたは……私を愛していない、今解った……!あなたが愛しているのは私にあるという在りもしない魔法の才能!そんな理由で結婚しようだなんて……酷い……こんな侮辱……最低だわ……!もう離して!私はイノセンスを助けるのよ!!」

ルイズは暴れてワルドから逃れようとした。

それを見たウェールズは、ルイズから引き離そうとワルドの肩に手を置いたが、逆に突き飛ばされてしまう。

その瞬間ウェールズが腰に当てていた手で素早く杖を抜きワルドへ向けた。

 

「なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵!今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を引け! さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」

 

その言葉を聞きワルドはようやくルイズから手を離し、再び訊ねる。

その瞳には全く光が見えなかった。

 

「こうまで僕が言ってもダメかい?ルイズ……僕のルイズ」

 

「誰があなたと結婚なんか……!」

 

「そうか……この旅で君の気持ちを掴むために努力はしたが……仕方ない……こうなっては……<目的のひとつ>は……あきらめるとしよう……」

 

「目的?」

 

ワルドの言葉に、さっぱり意味が解らないというようにルイズは呟いた。

 

「そう……この旅における僕の目的は<三つ>あった……そのうちの二つが達成できただけでもよしとしよう……まず一つは君だルイズ……君を手に入れる事……だがもう果たせないようだ……二つ目の目的はアンリエッタの手紙だ……これは手に入れるのはたやすい……」

 

「ッ!ワルド、あなたまさか!」

 

ルイズは彼の目的に気づいたのか、ラムゲイルを抜く。

同時にタバサも気づき、素早く詠唱しジャベリンを放ったが既に遅かった。

<閃光>の名に恥じぬ動きでワルドはジャベリンを回避しつつウェールズに接近し、魔法<ブレイド>で鋭利な剣となった軍杖で、彼の胸を貫いた。

 

「……ゴフッ……!」

 

「そして、3つ目はお前の命だ……ウェールズ……」

 

ワルドはそう言って邪悪な笑みを浮かべる、何故ならウェールズは完全に致命傷、普通なら即死の位置を貫かれているからだ。

しかし……ウェールズは死んでいなかった。

それは奇跡か……否……王族としての誇り、アンリエッタへの愛、そして友の願い。

それらが彼を生かした。

ウェールズは目を見開き、虫の息とは思えない強い力で、ワルドの肩を掴む……今彼の身体は緑色の光が包んでいた。

 

「この距離ならば……避けられまい……!」

 

「なッ!?馬鹿な!」

 

「王族を……嘗めるなぁ!!」

 

ウェールズはゼロ距離で、ワルドの腹部に<エアハンマー>を叩き込む、ワルドは吹き飛び壁に叩きつけられ、倒れ伏す。

それを見た後ウェールズは、力が抜け膝をつく。

 

「ウェールズ皇太子ッ!!!」

 

ルイズは叫び、ウェールズの元へ駆け寄り、彼を抱き止める。

 

「(すまない……父よ……仲間達よ……友よ……アンよ……此処までのようだ……先に逝く事を許して欲しい……)」

 

ウェールズの頭に浮かぶ大切な人たちの顔、思い出……走馬灯が浮かんでは消える。

 

「(願わくば……我が風の加護が……彼を助ける事を……祈……る……)」

 

その思いを最後に、彼は友の主の腕の中で、息を引き取った。

享年18歳、奇しくもイノセンスと同じ年齢であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、外では十以上もある軍艦相手に、イノセンスは肉薄していた。

 

「おらぁッ!!」

 

目の前に迫っていた兵士を蹴り飛ばし、他の兵士に当て、まとめて船から落とす。

兵士たちは悲鳴を上げながら落下していった。

 

『まあ、お得っ!しかし相棒、いくらなんでも数が多い……本気で全部抑えきんのか?』

 

「やるしかないんだよ、それが俺の役目だろ」

 

飛び交う魔法を、本能の牙を使い掻い潜り、メインブリッジを襲撃し、ソードスキル<迅>を発動。

高速で横に回転、二刀による六連続の斬撃の嵐で破壊し、甲板を蹴り、別の艦に飛び移る。

結はシルフィードの上から矢を放ち、適格に敵のメイジを倒す。

 

「頑張るのネ!シルフィは結ちゃんを全力で応援するのネ!」

 

「ありがとうございます!」

 

シルフィードの声援に結は感謝し、奮闘する。

 

「クソッ!さっきので既に八隻目だ!どうなってるんだ!奴らは!」

 

「化け物め!……いや、待てよ!あの竜を狙え!今なら奴を落とせる!」

 

シルフィードの背後にいた艦が、彼女と結の死角から砲弾を飛ばす。

途中でシルフィードも気づいたが既に遅く、着弾。

爆発し、結共々墜ちる。

 

「イギャアッ!」

 

「アァッ!」

 

「ッ!結!!シルフィード!!」

 

イノセンスは二人の悲鳴を聞き、意識が逸れたその瞬間を、敵メイジに狙われ、<フレイム・ボール>が直撃する。

 

「しまッ!!」

 

『相棒!!』

 

油断したイノセンスは爆風で、外に放り出される。

段々と落下して行く中で突然彼の頭にノイズが走る。

 

「こ、これは!?」

 

この時、イノセンスとルイズの視界がリンクする。

視界が変わり、見えたのは、ワルドに胸を貫かれたウェールズが、ワルドを吹き飛ばし、その後目の前で死ぬビジョン。

 

「……ウェールズ……」

 

それを見た彼の中には、強い悲しみの感情が生まれた。

友を亡くした、その事実が何より彼の心を傷つけた。

次第に涙が溢れだし、<心が震えだす>。

イノセンスは無念の内に倒れるウェールズを思い、叫ばずにはいられなかった。

 

「ウェールズゥゥゥ!!!」

 

その叫びに呼応し、<ルーン>が光りだす。

 

『はっ!これは<心の震え>!ってことは使い手のルーンが、相棒に力を!?』

 

驚愕するデルフリンガー。

そして彼の言う通り、ルーンはイノセンスに力を貸した。

青く輝いていた瞳が、緑の輝きに変化する。

途端にイノセンスの身体に風が集まりだし、彼は空中で浮かぶ。

 

『おお……こりゃおでれぇた……』

 

「……風……?俺を……助けてくれるのか……?」

 

風は答えないが、彼から離れることはない。

涙を拭い、イノセンスは微笑む。

 

「……分かった、悲しんでばかりいたら、周りが見えなくなるもんな……ありがとう、ウェールズ……」

 

亡き友に感謝し、イノセンスは風を纏う。

疾風の如く飛行し、結とシルフィードに接近する。

 

「……えっ!?パ、パパ!?」

 

「掴まれ結!!」

 

イノセンスの言葉に結は必死にしがみつき、イノセンスはそのまま気絶しているシルフィードの尻尾を両手でつかみ、事なきをえる。

 

「よし……さて……お次はっと」

 

イノセンスは結とシルフィードを一旦アルビオンに置き、艦隊の前に姿を見せる。

 

「なにッ!!」

 

「さて、再反撃だ……行こう、デルフ、金鵄」

 

『はいよ、<お二方>!!』

 

デルフリンガーには、何だかイノセンスとウェールズが重なって見えた気がした。

イノセンスは風に乗りながら、あちらこちらを襲撃して敵を混乱させる。

風を纏った二つの刃はいつも以上に切れ味を増していた、敵の軍艦の外装をあっさり切り裂く。

これには堪らず艦隊が引きあげだした。

 

「よし、こんなものでいいか……さあ、ルイズ達を助けに行こう、ワルドが敵なんだ、苦戦しているだろうからな」

 

目的を達したイノセンスは、ニューカッスルへ向かう。

主人と仲間達を助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁に叩きつけられ、倒れていたワルドはゆっくりと起き上がる。

 

「ぐぅっ……ウェールズめ、思ったよりやる……」

 

腹を抑え呻く、風で咄嗟にダメージを抑えたが、流石にゼロ距離では余り軽減できず、特に腹部のダメージは馬鹿に出来なかった。

しかし、それでも自らの目的のために奮起して立つ。

 

「さぁ……ルイズ、手紙が手に入れば僕の目的は終了する……大人しく渡せば、君の命だけは助けても構わないよ?」

 

ウェールズの遺体を胸に抱きながら、俯き、何も言わないルイズ。

その彼女を庇うように立つタバサ、キュルケ、ギーシュ、ケティ。

 

「させない」

 

「残念だけど、通させないわよ?」

 

「た、例え魔法衛士隊の隊長でも手負いなら!」

 

「私たちドットも何か役にたてるかもしれません!」

 

それを見たワルドは笑う。

 

「猪口才な、ガキどもめ……お前達などこれで十分だ!」

 

そう言うと、ワルドは風の遍在五人分を作り出す。

遍在達はそれぞれ軍杖を構える。

 

「……五人分とか……流石はエリートは違うね」

 

「よ、弱気にならないでくださいよ!男ですよね!?」

 

「ケティあんま無茶言わないであげて、私も今無理かもっておもったんだから」

 

三人は些か引き腰だが、タバサは怯まず構える。

 

「行け」

 

遍在達がタバサ達に襲いかかろうとした、その時、横を何かが駆け抜けた。

それは、怒りで理性が吹っ飛んでいたルイズであった。

 

「ワルド……ワルドォォォォ!!」

 

「ぬぅッ!?」

 

荒削りだが、凄まじい剣筋に、ワルドは必死に防ぐ。

遍在達はこうなると援護のために、稲妻の魔法<ライトニング・クラウド>を放つ。

 

「させないと言った」

 

タバサはルイズを<オラージュマント>でカバーする。

ライトニング・クラウドは弾かれ、消えた。

続けてタバサは高速詠唱で畳み掛ける。

 

「ウィンディアイシクル……ジャベリン……ブリザードサイス」

 

氷の矢で遍在を散らし、近くにいた遍在に氷の槍を当てて倒す。

さらに氷の刃を作り、接近戦を仕掛ける。

そしてこの戦いを見ていた王党派貴族達も、参戦しだす。

 

「子供にだけ任せるなど、それこそ末代までの恥ぞ!我らも彼女達に続け!皇太子の仇うちじゃ!」

 

『くっ!』

 

「こりゃ僕らも引けない!行け!ワルキューレ!」

 

「な、何だか熱い展開!これは書けます!」

 

「本当に呆れるくらい、作家ね!嫌いじゃないけど!」

 

一気に乱戦状態になった場の中、ルイズとワルドは斬り結ぶ。

だが、単調なルイズの剣技に、段々とワルドが慣れてきたのか、

徐々にルイズが劣勢になる。

 

「くっ、何が世界を手に入れるよ!そうやって沢山の人を犠牲にして、誰も彼も不幸になるだけよ!」

 

「僕の理想は君には分かるまいさ!君は僕を選ばなかったからな!」

 

「分かりたくもないわ!貴方みたいな奴選ぶくらいなら、まだゲルマニア皇帝を選んだほうがマシよ!」

 

「言ったな!ならば後悔させてやる!!」

 

ルイズは、ソードスキル<リニアー>でワルドに迫るが、ワルドはそれを見切り、腕を腋に挟み、動けなくする。

 

「あっ!!」

 

「君と決別し、僕は高みに昇る……さらばだ、ルイズ」

 

ワルドが杖を構える。

ルイズは死を覚悟し、目をつぶった。

しかし、その瞬間は中々訪れない。

ゆっくり目を開けると、目の前にはワルドの首に剣を突きつけたイノセンスがいた。

 

「そろそろ世界征服ごっこは終わりだな、子爵」

 

「な、なぜ貴様がブゥッ!」

 

ワルドが言い終わる前に、顔面に一発パンチを入れるイノセンス。

 

「さっさとうちの主人離せ、妄想野郎」

 

緩んだワルドの腕からルイズを取り返すと、ワルドを蹴り飛ばす。

ワルドは再び地面に倒れ伏す。

 

「ルイズ……無事でよかった……」

 

「イ、イノセンス!遅いじゃないのよぉ!!」

 

ルイズはイノセンスに抱き着く。

すると、そよ風が彼女を纏いだす。

 

「あ、あれ?これって……それにイノセンス、目が緑に……」

 

「これについてはまた後で話すよ、ケティにも話さなきゃだしさ……それよりも先にやらなきゃいけないことがあるしな」

 

そう言ってイノセンスはワルドに目を向ける。

 

「き、貴様さえ……貴様さえいなければ!」

 

立ち上がったワルドは、<エア・カッター>で壁を切り裂き、そこから彼のグリフォンがやって来る。

 

「貴様らにいずれ目に物見せてくれる!」

 

「……何故逃げれる気でいるんだ?」

 

「! 速い!?」

 

イノセンスは風を纏い、ワルドに急接近する。

その後、勢いを利用して強く腹を殴る。

 

「グフッ!」

 

「あえて殺すようなことはしない……だが、しっかり裁きは受けてもらう……トリステインでな」

 

崩れ落ちるワルド。

それと同時に遍在達も倒されていたようで、タバサ達もイノセンスの元にやって来る。

 

「……終わったの?」

 

「……ああ、終わったよ……終わったんだ……」

 

「イノセンス……」

 

「……」

 

そう言ってイノセンスはウェールズの遺体に寄り添い、黙祷を捧げていた。

その様子をルイズ達はみつめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アルビオンの非戦闘員とルイズ達を乗せたイーグル号は飛び立った。

シルフィードは結の治療を受け、しっかり全快しており、タバサは結に感謝していた。

ギーシュは今回の実戦で得た経験を生かし、ワルキューレの陣形や戦い方の研究をしている。

ケティは書き終えた一冊をキュルケに見てもらっていた。

そして、ルイズはイノセンスにしばらくベッタリで離れなかった。

 

「……何で皆自分から死のうとするの?私には分からない……分からないわよ……」

 

「あれが彼らの意思だ、俺達には止められないよ……ましてウェールズが死んだんだから尚更引けないだろうしな……」

 

ルイズの質問にイノセンスは答える。

あの後、ウェールズ同様に他のメイジたちにも亡命を勧めたが、頑なに断ったのだ。

彼らには彼らの生き方やプライドがある、邪魔をしてはいけないのだ。

 

「……もう一人で突っ込む様な事しないでよ……絶対よ……?」

 

そう言うルイズの頭を撫でるイノセンス。

しかし、心の中では、いずれまたああ言う事をしないといけないだろうと考えていた、そんな予感がしたのだ。

 

「分かった、善処する」

 

「……いまいち信用できないわ」

 

「じゃあ、どうすれば良いんだよ?」

 

今だ許す気がなさそうなルイズに、苦笑するイノセンス。

ふと彼女はイノセンスの前に来て、少し恥ずかしそうにする。

 

「こうすれば……信じてあげる……」

 

「? ルイ」

 

ルイズの言葉に疑問を浮かべたイノセンスは、聞こうとしたその時には唇を唇で塞がれていた。

イノセンスは突然の事に対する驚きと、ルイズの甘い香りと唇の柔らかさに、抵抗することもなく受け入れた。

互いに離れると唾液が糸のようにツーッと伸び消える。

しばらく見つめあった後堪えかねた様にルイズが口を開く。

 

「……分かったわね、イノセンス」

 

そう言ってそっぽを向くルイズ。

その顔はとても赤かった。

 

「……ああ、分かったよルイズ」

 

彼はいつも通り、心から微笑んだ。

 




後はアンリエッタへの報告でアルビオン終了です。

そして今回の本能の牙は、ウェールズとの出会いが牙に影響を与え、その上でガンダールヴの力で強制的に第二段階になったのがあの力<風操作>なのです。

風を操るなんて、中々に強能力ですよね。
ただ心を震わせないと行けないのですよね。

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