ラブライブ! Another オッドアイの奇跡   作:伊崎ハヤテ

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錦 一は星空 凛と恋人となった。
これはその後の、彼と彼女の続いていく物語


くるくる凛

秋葉原駅。錦 一はその駅前で壁を背もたれにして立っていた。ふと振り向いて壁の広告に眼を向ける。広告には、「祝! 音ノ木坂学院スクールアイドルμ’s、ラブライブ本選出場!」と書かれている。どこで撮ったのかわからないが、メンバー全員のスクールアイドルとしての姿が載っている。彼女達の中で一の視線の先にいるのは、橙色のショートカットの女の子。星空 凛。元気一杯で、語尾が猫っぽい女の子。そんな彼女が一の恋人だ。

「寒っ」

 北風が一に吹き抜ける。思わず声が漏れてしまう。吐いた息が白くなる。コート等を着込んでいるのにも関わらず、身体が身震いする。今日は特別に寒いな、と一は感じる。

「にしても、遅いなアイツ……」

「はじめちーん」

 そうもらす一の耳に届く、こんな寒い時にでも元気な声。そんな声を聞いて少し寒さが和らぐ。走っている彼女の頭にはちょこんと結んだちっちゃいポニーが揺れる。

「ごめんね、待った?」

「十分前に来たばっかだ。約束の時間丁度にな」

 走ってきて少し息が上がっている凛に軽口を叩いてやる。それを凛は少ししょんぼりとしている。

「ごめんね、とってもかわいい猫ちゃんがいたからちょっと寄り道しちゃったニャ」

 彼女の言い訳に軽く頭を抑える。ほんの少し強めに彼女の頭を小突いてやる。

「彼氏とのデートよりも猫を優先する彼女なんて聞いたことないぞ」

 凛は甘んじてそれを受ける。しおらしくなる彼女が愛おしくて、小突いた拳を解いて頭を撫でる。しゅんとした凛の表情がぱっと嬉しさに満ちたものになる。

「ま、凛らしいと言えば、凛らしいけどな」

「えへへ」

 頭に置いた手を頬へと移す。その瞬間、凛は頬を赤らめる。

「あっ、はじめちん……」

 優しく微笑むと、頬から顎へと移動させる。そしてそのまま顎をくすぐってやる。猫にやるのと同じように。

「そーら、ゴロゴロゴロ」

「ニャニャ、はじめちん、くすぐったいてば~!」

「ほんとに猫みたいだな」

 笑っていると凛がもー、と怒りだす。すると再び頭を撫でる。

「わるかったよ。でもこれで集合時間に遅れたのは、チャラな」

 うん、と凛が頷く。改めて彼女を見ると、一つの変化に気付く。

「そういえば凛、今日はスカートなんだな」

 今日の彼女の服装は、藍色のタイ付きのブラウスを水色のコートで着込み、短いスカートという今まで一が見た事のないものであった。

「あ! 気付いた? パパに買ってもらったんだ!」

 その場でくるりと回って見せる。その姿が可愛らしくて、微笑む。

「なかなか似合ってるじゃないか。このちっちゃなポニーもな」

 小さな髪留めを撫でてやる。凛は嬉しそうにしている。

「えへへ! 今日のデートの為に凛、とびっきりおめかししたんだ! 可愛いでしょ!」

「ああ、可愛いよ」

 そう言った瞬間、体温が上昇するのを感じた。赤らんだ顔を凛も顔を赤らめながら煽る。

「あれぇ? はじめちん、そんな恥ずかしいセリフよく言えるねぇ? ちょっと恥ずかしくないかニャァ?」

 そんな彼女の煽りに更に顔が赤くなる。このまま言い負けるのは悔しいので返す。

「好きな子を、彼女を可愛いって言うのは、当たり前だろ」

「ニャ~」

 一のその言葉に凛は呆ける。顔は一よりも赤い。半年付き合っていれば、彼女の煽りに切り返せるようになった。

 凛はぶるると顔を振ると一の手をとる。

「そ、そんなことより電車に乗ろ! 今日は初めての遊園地デートなんだから!」

「ああ、そうだな」

 彼女の手を取り、指を絡ませ、一は歩きだした。隣には嬉しそうにしている凛。そんな彼女の笑顔をずっと一は横で電車が駅に来るまで見ていた。

 

「着いたニャ~! 遊園地だニャ!」

 遊園地前のゲートでぴょんぴょんと凛は跳ねる。彼女の可愛らしさに一の頬も緩む。

「はしゃぎ過ぎじゃないか凛?」

「何言ってるのはじめちん! 遊園地っていったらカップルのデートの定番だよ!」

「親子連れだってここには来るがな」

「とにかく! 遊園地は最強のデートスポットなの!」

 もー、と頬を膨らませる凛をなだめる。

「そう言えば俺達、付き合って本格的なデートは始めてかもな」

 そう言う一の脳裏には凛とのデート、もといラーメンが過る。毎度毎度違うラーメン屋に行ってそこのラーメンを食べるだけの代物であった。

「ごめんね、はじめちん。μ’sの活動が忙しくて、なかなか時間作れなかったから」

 申し訳なさそうにしおれる凛の頭を優しく撫でる。

「ラブライブ本選に向けて頑張ってたんだろ、仕方ないさ。それにあのラーメンデートだって俺達らしいさ」

 撫でられる凛の表情もほっこりとしている。

「今日はその本選出場を祝して、遊園地で思いっきり遊ぼうぜ」

「うん、ありがとはじめちん!」

 凛は肩に手を置き、ぴょんと勢いよく跳ぶと一の頬にキスをした。

「り、凛……」

 当の彼女は頬を赤らめながら上目遣いで一を見ている。そしてぱぁっと笑う。

「さぁ~て、どのジェットコースターに乗ろうかニャ~。やっぱり全部乗りたいよね!」

 凛の発言に一の脳に電流が奔る。

「ちょっと凛さん、この遊園地のジェットコースターって幾つあったっけ?」

「ん? 全部で十三だニャ」

 その不吉な数字とその数に眩暈を起こす。

「ちょっと待ってくれ。それ全部乗る気か?!」

「もちろん! 凛、ジェットコースターが大好きなんだ! かよちんと一緒に遊園地に行った時もジェットコースターは全部制覇してるニャ!」

 それを聞いた一は彼女に振り回され眼を回す小泉 花陽の姿が眼に浮かぶ。

「小泉さんも大変だな……」

「もしかしてはじめちん、ジェットコースター苦手?」

 心配そうにのぞきこんでくるレモン色の瞳を見ると、嫌だとは言えない一だった。

「いや、普通に乗れるよ。流石に連続はキツイけどな」

「じゃあ、ジェットコースターに乗ったら、その後ははじめちんが乗りたいもの乗ろうよ! これなら公平でしょ?」

 凛の心遣いが嬉しくて、彼女の頭に手を置く。

「ああ、そうしようか。ありがとな凛」

「凛はお礼言われるようなことはしてないニャ。変なはじめちん!」

 彼女の笑顔につられて一も笑顔になる。素で自分のことを気遣ってくれる凛が一は大好きだ。

「それでね、はじめちん。一つ凛のわがまま、いい?」

「ん? 何だ?」

「ジェットコースター全部乗った後、凛、あれに乗りたいな」

 彼女の指さす先には――

「観覧車か?」

「うん」

 肯定する彼女の顔は赤い。顔を一の耳に近付けると周りに聴き取れない程小さな声で喋る。

「あそこで、さっきの続き、しよ?」

 その言葉に一の心臓はバクバクと脈動をする。これ程の脈動は、神田明神の階段で彼女を抱き寄せた時以来だ。凛は顔も赤い。それを誤魔化すように一の手を握って走りだす。

「さ、はじめちん! 行こ!」

「ちょ、速いって! ジェットコースターは逃げないぞ」

「じっとなんかしてられないニャ! 凛、はじめちんと色んなものを楽しみたいんだもん!」

 一を引っ張りながら振り向いた凛の満面の笑顔。それを見て一の引っ張られていた足に力が入る。速度を速め、彼女と並んで走る。

「じゃ、どうせならこの遊園地のアトラクション全部、回ってみるか!」

「うん! それじゃあ、行っくニャ~!」

 

彼らは二人並んで走る。

 

笑顔を絶やさぬまま

 

時に凛に引っ張られながらでも

 

走り続ける

 

どんな時もずっと

 




凛ちゃん単品の薄い本を見つけた時、思わず涙ぐみました。彼女単品の本なんて、殆ど見つからないから嬉しくてつい……。
どうして凛ちゃんはネタにされないのでしょうか?もっとまな板のにこ先輩は多いのに……。ツインテ補正かなぁ……
そんなことより作品のあとがきを。やっとこのシリーズを書ききりました。やり遂げたよ、最後まで。読んで下さった皆さんは満足頂けたでしょうか?
今回のデート話のベースは、スノハレのドラマCDの凛ちゃんの理想のクリスマスデートです。まぁファーストキスは前回捧げちゃってるんですけどね。
凛ちゃん単品の薄い本を見つけた時、思わず涙ぐみました。彼女単品の本なんて、殆ど見つからないから嬉しくてつい……。
どうして凛ちゃんはネタにされないのでしょうか?もっとまな板のにこ先輩は多いのに……。ツインテ補正かなぁ……
そんなことより作品のあとがきを。やっとこのシリーズを書ききりました。やり遂げたよ、最後まで。読んで下さった皆さんは満足頂けたでしょうか?
今回のデート話のベースは、スノハレのドラマCDの凛ちゃんの理想のクリスマスデートです。まぁファーストキスは前回捧げちゃってるんですけどね。
今回の凛ちゃんの私服はアニメ二期終盤の私服を私なりに再現しました。スカートだって指摘された時に「パパに買ってもらったの!」と言った凛ちゃんが可愛過ぎる。そのせいで、「恋人になるのも悪くないけど、父親になって『パパ』と呼ばれるのも悪くないな」思うレベルです。
このシリーズは終わりますが、μ’sの残りのメンバーの逢瀬(?)も別の話として書いていきたいと思います。あと八人……。
現在執筆中なのは、μ’sのリーダー、高坂 穂乃果ちゃんです。少し時間が空くと思いますが、次回のシリーズも読んで頂けたら嬉しいです。
ここまで私の作品におつき合い頂き、ありがとうございました!
 御意見、ご感想よろしくおねがいします!
 最後に、この作品を見て、凛ちゃんの薄い本がいっぱい増えることを心から願います。

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