ラブライブ! Another オッドアイの奇跡   作:伊崎ハヤテ

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ただ星空 凛ちゃんと恋愛するだけの話。

ラブライブ!は二期の後半から入りました。ですからキャラクターが少し改変されてしまっているかもしれません。
ご容赦下さい。

感想お待ちしてます。
メンタルはあまり強くないのでお手柔らかに……


出会いは茂みから

ペットボトルに入っていた麦茶を喉に流し、錦(にしき) 一(はじめ)はほっと一息ついた。

 ここは秋葉原近郊にある公園。電気街近くには珍しく木々が多く、人々の憩いの場所になっている。ただ夕方という時間帯のせいか、人は彼を除いていない。

「少子化かねぇ……」

 ぽつりと一言こぼし、麦茶を一口。誰も乗っていないブランコが微かに揺れ動く。

 都心の少子化により経営が難しくなって統廃合という結末を迎える学校が多くなっている。ここの近くにある音ノ木坂とかいう歴史もそこそこ長い女子高もその煽りを受けているらしい。次は自分の学校がそうなるかも知れないなと、一は夕焼けに染まる空を見上げた。

 一は学校では特に有名な人間でもなかった。そつなく勉強をこなし、それなりに学園生活を送るただの学生であった。人づきあいが苦手なわけではなかったが、たまに一人でいたいと思うことがあるとこの公園のベンチで茶を飲んでいる。

 今日も、ただ茶を飲んで空を見上げるだけで終わるのだろうな、と思っていた矢先だった。

 

 ガサリ、と目の前の茂みが蠢いた。その蠢きは不定期に音を立てる。猫か何かか? とベンチから腰を上げ、その茂みの眼の前で屈む。

 チチチと舌を鳴らし、茂みの主を誘ってみる。これがホントに猫なら出てくるかな、ていうか俺は何をやっているんだろうな――そう苦笑いしていると主が姿を現した。

 眼の前に現れたのは、白い猫だった。身体に模様が何一つない、少し現実離れした美しさだった。

「なんだ、お前、野良か?」

 自分と猫以外誰もいないからか、一はその猫に話しかける。こっちの言葉が通じたのか、その白猫はなう、と返してきた。彼を見つめる瞳は金、銀と左右で違う色をしていた。その眼を見て、彼はふと母が言ったことを思い出していた。

『オッドアイの猫に会うといいことがあるんだって』

 そんな眼の猫、本当にいるのかと思った物だが実際にいるとは思わなかった。一はにやりと笑う。

「さて、どんないいことがあるのかね……」

 白猫の顎をこちょこちょと撫でる。猫はそれを目を細め気持ちよさそうに受けている。

 彼が猫と戯れていると、再び眼の前の茂みが揺れる。それを察知した一は咄嗟に白猫を抱っこすると後ろに後ずさる。茂みの揺らぎは先程よりも大きい。決して猫が揺らす代物ではない。

「今度はライオンでも出るのか……?」

 冷や汗が頬を伝う。こんな状況なのに、口元は笑っていた。恐怖と好奇心が一緒くたになったみたいだった。

 そして彼はその茂みの主の鳴き声を耳にした。

 

 

「にゃお~ん、真っ白猫ちゃん出ておいで~ 怖くないニャ~」

 そう言った声の主は、茂みから顔を出した。そしてそいつと眼が合った。

 レモン色の瞳が瞬きすることなく此方を覗いている。橙色の髪を短く揃え、一見すると男の子に見える。

「ああ――っ! こんなとこにいたんだニャ!」

 茂みから立ち上がったそいつの腰には薄めと濃いめの青を基調としたスカート。赤いラインが入ったそのスカートを見て一はこの子が音ノ木坂学院の生徒だと悟った。

「なに、してるんだ?」

 いきなり茂みからニャアニャア言う女の子が現れたものだから、一はそう言う事しか出来なかった。眼の前の女の子は人見知りするでもなく、答えた。

「なにって、猫ちゃんを探してただけだよ?」

 首を傾げて、それ以外何かあるの? と一に問いかける。高校生にもなって猫なんか探さないでしょうに――。そう言おうとした矢先、一が抱えていた白猫がなおう、と一鳴きした。

「あ! どうしたの、真っ白猫ちゃん。お腹でも空いたのかニャ~」

 猫の声を聞くや否や一の方へ身体をずいと寄せた。彼女は彼の両手に大人しくしている猫に顔を向ける。

 一方、出会ったばかりの女の子に詰め寄られている

一は堪ったもんじゃなかった。彼女が発する、清々しくも甘味を帯びた香と、積極的過ぎる彼女に混乱していた。この状況、誰か助けてくれ、と願ったりもした。

 なう、と白猫が、俺に任せろと言わんばかりに一鳴き。その白い脚を詰め寄る女の子の鼻に当てた。

「ニャ――」

 その肉球が彼女の鼻を突いた瞬間、彼女の肌が波打つ。そして彼女は――

「っくしょん! はーっくしゅんくしゅんくしゅん!」

 顔をぺしゃんこにしながらくしゃみを連発させた。そのくしゃみに反応したのか、白猫は一の手から離れていった。その尋常でないくしゃみの連呼に一は驚きを隠せなかった。

「おい。大丈夫か?」

「う、うん、だいじょば――っくしょん!」

「どっちだよ! ちょっとこっち来い」

 鞄を持っていない彼女を、自分の鞄を置いたベンチへ連れて行く。そこで電気街でもらったポケットティッシュを彼女に差しだした。

 

 

「助かったニャ。ありがとうニャ」

 白猫が去って五分程、くしゃみがやっと収まった彼女は一に向かって頭を下げた。それを一は微笑みで返す。

「目の前でくしゃみ連発されれば助けないわけにはいかないしな。しっかし、猫アレルギーなのに猫が好きなのか?」

 彼の問いに女の子は満面の笑みで答える。

「うん! 凛は小さい頃から猫ちゃんが大好きなんだ! 猫ちゃんの声を聞くと猫ちゃん探しの旅に出ちゃうニャ! 昔はママの手を離してよく迷子になったこともあったよ。さっきもかよちんと一緒に帰っていたら猫ちゃんの声が聞こえたから猫を探しにここまで来たんだ!」

 ずいとこちらに身を寄せ、興奮した口調で一方的に話す彼女――、自らを凛と名乗った女の子を一はただただ面白い奴だな――、と思いながらその話を聞いていた。

「その結果、その友人と自分のバックから逸れちゃ自分で鼻もかめない状況に陥っているけどな」

 意地悪そうに言ってやると、凛は心底慌てた様子を見せる。

「ああ――っ! どうしよう! 凛、かよちんとはぐれちゃった!」

 今まで自覚してなかったのか、と彼女の後先の考え無さに笑みがこぼれる。こいつ面白いな、という興味が湧いてきた。

「凛ちゃーん」

 遠くから彼女の名を呼ぶ声がする。それを聞きとった凛は声のする方向を向く。一もその方向を見ると、二つ分の通学鞄をもった女の子が一人。

「あ! かよちんだ! かーよちーん!」

 ぶんぶんと手を振り凛はベンチから立ち上がる。一の方を向くと彼女は改まって顔を下げる。

「おにーさん、ティッシュありがとうニャ! お陰で助かったよ!」

「ああ、くしゃみが止まってよかったな」

 一はふと彼女の脚に注目した。四つん這いになって猫を探していたからか、赤く擦り剝けている。

「あ、ちょっと待った?」

「ニャ?」

 首を傾げる彼女に一は鞄から取り出した。絆創膏を差し出す。

「両膝、擦り剝けてるぞ。今度から猫を探す時からは気をつけろよ」

 女の子はそれが嬉しかったのか、ぴょんぴょん跳ねながらそれを受け取る。

「何から何までありがとうニャ! 凛、今度からはほふく前進で探すニャ!」

「違う、そうじゃない!」

 突っ込む一を見て彼女は満面の笑みを浮かべる。

「ほら、もう行けよ。友達が待ってるぞ」

「そだ、おにーさん、名前は?」

 一しきり笑った凛は彼の顔をじっと見つめる。一はかわいい奴だな、と思いながら答える。

「錦 一。ここらの近くの男子高の一年坊さ」

「一年なんだ! 凛と同じだ! 凛はね、星空 凛! またね!」

 星空 凛はその場をくるりと回ると友人の元へと駆けていった。凛と再会した友人は一に向かってお辞儀をした。遠巻きで容姿は確認出来なかったが、礼儀正しい子だな、と一は感じた。

「またね、か……」

 また、あの子に会えるのか、そう考えただけで笑みがこぼれる。これがオッドアイの猫がもたらした、幸運なのか。と一は闇に染まりつつある空を眺めた。

 




凛ちゃんが一番好きだからこれを書きました。
彼女の行動や言動はSIDをベースにしています。
もっと凛ちゃんらしい凛ちゃんが書けるといいなぁ……

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