Fate/deep diver ~天月の逆杯~ 作:幻想の投影物
投槍を弾かれた事に舌が跳ねるが、その程度で倒せない相手だというのはとうの昔に確認済みだ。だが、小手先の技に頼ろうとも相手は武術の達人。即ち、幾多の英雄達が戦いを繰り返していくことで読み取れるようになる筋肉の動きから相手を予測する、と言った先読みをこの敵は鍛錬によって更に鍛えているのだ。火力頼みのタマモを先読みさせれば、この場で再び致命傷を喰らう事は免れないだろう。
「どうした? かかって来ぬのか」
「アリーナの強制終了システムに期待したかったが……んじゃま、オレが先に行かせてもらっとくか」
タマモに目で合図を施し、ザリチェとタルウィが彼の手の中で踊る。何ら意味の無い剣の舞踊にアサシンも手加減の必要はないと悟ったか、構え一本を崩さず貫き通した姿をさらしてきた。
「先手を譲ってハメようってか」
「分かっておるではないか。其方は敢えて乗るのであろう?」
「まぁな。オレは愚かな生贄ですよっと」
スズメが地面を跳ねるように、アンリは足音すら立てずに接近する。鎌のように捻じれて回り込んだ刃は読みにくいリーチを取るが、難なくアサシンの動きにいなされ、流木が滝を流れ落ちるが如く方向を逸らされた。怒涛の勢いに太極拳の動きを加算されたアンリの体は、無様にも見当違いの方向へと傾いてしまう。
しかし彼は文字通り腕を曲げると、人体の構造を無視した流れでアサシンに刃を逆向けた。タコが獲物を捕えるかのような動きだったが、それすらもこのサーヴァントには通用しなかったらしい。剣の峰に手刀を叩きつけて攻撃を反らすだけでなく、その切っ先をアンリ自身へと返してしまったのだ。
「痛ッ」
「読みにくいが、動きは素人か」
「所詮は付け焼刃で動かねぇ神サマさね。それよか、流石は
「ほう、ならばこれより先に三度打ち込んでくるがいい」
「頭だけはご勘弁願いたい!」
突き刺さったザリチェを体の中に収納しながら、しなる鞭のように足払いをかける。最低限飛ぶ事で避けられ、更にはその足の上に乗った状態で拳を一発貰ったが、傷つけるべき気の流れが無い為にアンリは涼しい顔でそれを受けた。しかし体は吹き飛ばされて無様にも地面を転がってしまう。
直後、アンリの離脱と同時にタマモの呪符が飛来してアサシン―――に見せかけたユリウス狙いの密天の呪術が放たれていたが、その符を握りつぶし、染み込んだ術式を乱すことでアサシンに止められてしまった。効力を完全に失った札を投げ捨てると、アサシンはたったの一歩で間合いを詰め、タマモに魔拳を向ける。
「そぉら、導師の狐よ。受けられるや否や」
「断固拒否しますッ!」
喰らってはたまらないとその場から飛び退いた彼女は距離を取り、風水結界を発動する事で吉の方角へと免れることに成功した。更に伸びてきたアサシンの拳を寸でのところで回避し、タマモが氷天の符を地面に張り付ける事でスケートのようにその場から離脱。直後、アサシンの背後にある影が盛り上がって人の腕の形を取った。
「アサシン」
「応ッ!」
サーヴァントと化した事で人外の威力を持った拳圧によってその腕を斬り飛ばし、ただの魔力と悪意のチリへと還元する。案の定、いつの間にか居なくなっていたアンリがその影から飛び出して刃を向けると、捻じり狂ったタルウィの牙が拳士の喉笛を噛み砕かんと光を反射した。
されどアンリの不意を打った流星は、目の前のアサシンが気配を殺した事で躊躇してしまう。一瞬の気の迷いの後にアンリが腕に衝撃を感じると、内側から泥を撒き散らしながら破裂して激痛を体中に撒き散らかす。常人ならば気絶して防衛本能に従うところだった、彼はそう毒づいて間を取り、タマモの横へと下がって行った。
「双方未熟、未熟よな。故にこそ、一撃離脱の策を用いてきたか」
「お前には始めて言うだろうが、オレはサーヴァントの中でも最弱でね。何と、今は魔力を除けば最高ステータスはCと来た! これもこの電子世界の人間が少ないせいだがな。ま、つぅわけでオレはコイツに頼り切った戦闘モドキをやってるってワケだ」
「勝ち進むごとに弱くなる、と」
「ひっでぇ補正もあったもんだ。あーあ、子も作れず疲れも感じず。サーヴァント何ざやるもんじゃねぇな」
「その点に関しては同感だ。が、儂は既に十分に生きておる。故に見届けるはユリウスが願いのみよ」
話を聞いていたタマモがせっせと呪符に魔力を込め、アンリの前方に物理障壁を展開しようとしたその時だった。会話で幾ばくかの無駄な時間が取られていたのか、戦闘を仕掛けた此方側がバチンッと愉快な音を立てて岩場の外に放り出される。
―――警告、警告、戦闘を強制終了します。
此処の所見なかった
「むぅ、いささか興が冷めた。ユリウス、此処は退くしかあるまい」
「下らん会話に付き合っているからだ。いつでもくびり殺すことも出来ただろう」
「其れは否定せんが……。何、道化と試合にて踊るも中々に楽しめるものぞ」
「……決殺を誓ったお前が遊び続けるとはな。だが、次は無い」
「応とも。さて復讐者の主に魔術師の従者よ、再び見える時は決戦である事を願う。其方の智将の動きにも期待させてもらおう」
アンリ達とはまた違う、影に溶けて行くような手法でユリウスはアサシン諸共姿を消した。大方、此方としても見せに見せた手札や破れかぶれにも見える一撃離脱の戦法から、さほどの脅威にはなりえないとの再確認に来たのだろう。あちらとしては驚きようから圏境が破られるのは予想外だったろうが、相手にある意味で正しい評価を植えつける事は成功した。しかし、それも恐らくは見切られた上でのことだろう。真の武術家である李書文の前では、どのような技能の誤魔化しも看破されそうな威圧感があったのだから。
「……思いっきり手加減されてましたね」
「ああ。あの縮地で近づいたにもかかわらず、ワザと拳のモーションを見せてきた。奴にとっては劉邦の眼前で行われた剣の舞と変わらねぇってか。先が思いやられちまう」
加えて、ご丁寧にもアンリの攻撃は全て相手の左手だけで逸らされていたのだ。アサシンにとっては晩年の時、子供相手に武術の稽古をつけているような気持も含まれていたのだろう。打ちこんだ際、まるでお手本の様な丁寧さで攻撃を捌かれていく様子は、アンリの目には実演中の教材もかくやと見えていた。
ごろりとその場に倒れ伏し、背中に硬質な通路の感触を感じながらにアンリは上を見上げた。海上から差し込む光がリアルに再現されたこの世界にある不思議な雄大さは、まるでアサシンが此方を見下ろし愉しげに笑っているようにも見えてくる。
「ご主人様、お立ちください」
「へいへい」
視界の横からぬっと現れたタマモが此方を除きこみ、片手を差し出して寝転んだ彼を引っ張り上げた。すっと立ち上がった彼は慣れ切ってしまった痛みを表現するかのように、刺し返された箇所を擦って払い落す仕草をする。
「トリガーのトコまで行けるようになった訳だが、このままだとタマモ、お前さんがやられちまうな。オレの宝具でも復活までのタイムロスは長すぎて、ありすみたいな失格扱いにされちまうし」
「…やっぱり、私も宝具を使わないといけませんか。開帳した所で効果のほどは知れてますけどー……」
「それでも実用性がある限りは十分だろうさ。オレの五つ目は制御なんて天地をひっくり返しても不可能な独立型宝具だ。お前さんを敵として認識して自滅する可能性もあるしよ。たった一言、解呪の言葉を何処かの誰かが言えば一発で解除される代物だけどな」
「とすると、私達の利点はご主人様と二人で戦えるってことだけですよね。いつぞやのマスターみたいにキャスターである私を前線に出して真正面からぶつからせるよりは、遥かにマシですが……」
相手サーヴァントの情報が分かっていても、正面からぶつかることしかできない相手と言うのは初めてだった。今までは相手の死因や弱点を前面に押し出し、不意を討って戦いを制してきたが、現状に至ってアンリの弱体化は弁慶の泣き所にぶつけた時よりも痛い。動きはどんどん雑多なものになり、相手へと触れることへの嫌悪感を与える事が困難になってくる。
信仰し、憎み殺す感情を持つマスターの質は上がっていくが、肝心なのはそう言った悪意を心のどこかに宿す人間の数なのだ。そう言う点では、アンリは存在するだけで知名度の補正を受け、もっとも不安定なサーヴァントであるともいえよう。これが地球や人間のいる惑星であれば、彼はこの月の全てを泥で覆い尽すことも出来ただろうに。
「ったく……いっそのこと、もう少し魂喰わせて契約を強め―――」
「じー」
「やっぱやめとくか。この贅沢狐にゃ発泡スチロールに乗せられた稲荷寿司で十分だ」
「え……ちょ、ちょっと位ならいいじゃないですか~…ね?」
「却下」
アサシンと闘っていた時よりも見事にバッサリと切り捨てる。
アンリは日に日に鈍重になってくる手の動きが、世界の狭間で彷徨っている間の感覚と似ているもんだと苦笑しながら、アリーナの探索できていない一角へ向かって歩みを進めた。
「そんなにオレの魂ってのは美味いのか?」
「そりゃあもう! たとえるとですね、餓死寸前の釈迦に差し出されたスジャータの乳粥というべきか、汗水垂れ流して必死に努力しても最期まで報われなかった相手の絶望しきった顔と言うべきか! それすらも断トツで抜き去るような“満足感”!! 魂を喰う事が出来る輩であれば、時々ついばんでは恍惚にうっとりと数時間はトリップ可能と銘打っても過言ではなくてですね―――」
「オーケー、ストップだグルメっ
「そ、そんな殺生なぁ~……」
とはいえ、タマモの一例はあながち間違っていない。
悪意と無を両立する泥の奔流に全てを奪い取られた後、探し求めた光明を照らすかの如く照らしだすのが彼の体内である。更に魂は「生きる」というただ一つの純粋な思いに帰結した無垢なる魂の姿。その無垢を穢したいと思う背徳感や欲求は更なる欲望を引き立て、とことん魂と対面した人物の全てをさらけ出させてしまう魅了の光でもあるのだ。
恐らく、タマモが彼の全てを喰らい尽した暁には大妖狐である九尾へと到達し、彼の内包する魂の全てを取り込む事で「外なる神」にすら手が出せない存在へと生まれ変わる事であろう。無論、その際にアンリの精神は彼女の中に幽閉される事は間違いないが。
とまぁ、この様な話はさておいて、アンリはトリガーコードカッパを手にした際にふと思い出していた。言わずもがな、この作戦に協力してくれたラニとありすの二人である。
通信の声では一応は無事のようだったが、考えてみればありすはジャバウォックを使わざるを得ない状況になり、更にはそれを運営役の言峰に禁止を喰らってしまうほどに使ってしまう自体が起こったという風にも受け取れる。さて、その状況で二人は回復しているのだろうかと不安になったのだ。
「とりあえず拠点に戻るぞ。あの二人の調子見とかねぇと」
「態々あのバカみたいなサーヴァント追い込んでくれましたからね。労わるくらいはしないと割に合いませんよ。それから……」
「しつこい女は嫌われてもいい奴だと判断するが」
「うぅぅ…ご主人様のいけずー」
こんな奴に心が傾きかける自分がどうにもやるせない。頭を抱えたアンリは帰還結晶を手にし、鬱憤と共に地面へ叩きつけるのであった。
「あ、お帰り! ラニお姉ちゃーん! 帰ってきたよ!」
「心配もいらねぇ位に元気なこった……」
見慣れたライダースジャケットを見かけた途端、ありすは勢いよく部屋の向こう側にラニを呼びに行ってしまった。しばらくして、彼女を引き連れて戻ってくる。
「お疲れさまでした。此方から端末を通じて戦闘はモニターさせていただきましたが、何とも手厳しい相手の様ですね。李書文も隠れていた姿を見せたからこそ本領発揮へ至ったのだと推察します」
「アサシンのクラス補正のおかげか、一撃必殺に繋がる内気功も出力は生前以上と捕えてもよさそうですからねー。というかラニさん、あの極悪技にやられかけたって何してたんですか」
「最初はユリウスを追いこもうと画策したのですが、あちらのサーヴァントが突如背後から襲いかかってきました。独立して歩かせていたのか、作戦だったのかは分かりませんが私達は既にマスターとは認識されていない脱落者です。ユリウスもそれに気付いて、サーヴァントに手を下させようとしたのかもしれません」
敗退者であるラニと、アンリの一部ではあるが「物」として扱われるありす。校舎の中で直接敵のマスターへ攻撃することは禁じられているが、誰でも思いつく様な盲点はサーヴァントを持っていても使役できないラニにとっては非常に都合が悪い。ユリウスの方を追い込めたのも、あのサーヴァントが姿なき声で遊ぶことを提案したからだと言っていたのだとか。
「それで、追い込んだとは言わず“其方に行った”つぅ説明だったのか。かぁ~~! せめてこの月に一万人以上の人間が残ってりゃ話も違って来たのによ」
「あれー? それって私の事いらない子発言ですかー? うう、いいですよーだ。どうせキャスターは他のセイバーとかみたいに正面突破できませんしぃ、ご主人様みたいな体感巨砲主義者とは反りが合わないことだって多いですもん」
「お姉ちゃん、すっごく色んなことを準備するんだもんね。でも、お兄ちゃんには何してもダメみたいだけど……」
「言わないでくださいよぉ……こっちだって頑張ってるのに…」
項垂れたタマモはちゃぶ台にうつぶせになっているため、アンリの耳にはしっかりと聞こえていた。
「つってもなぁ、そっちのアピールとか、伴侶とか…そりゃ男として嬉しいが、人間の範疇に収まってくれねぇのが現実だしよ。色恋沙汰とか以前に、タマモは恋に恋する乙女だと思ってるんだが」
「ぐぐぐ……こちとら歴史調べた瞬間に未婚だって知られるのも辛いんですよ。だからあんまり真名とか言いたくなかったのに……まぁそれ以外の理由もちゃんとありますけど」
「うっわ、オレギリシャ系列の神じゃなくてマジで安心したわ。ゼウスとか見方によっては女の敵でしか無いって奴だし? 神さまも碌な性格した奴ぁ見た事ねえからな」
「……少々話について行けませんね」
「ラニお姉ちゃん、あたしもだから大丈夫!」
何が大丈夫かは分からないが、程良く脱線している事は皆が気付いていた。
ラニの小さめの咳払いがされ、アンリとタマモは真面目に座りなおした。
「まずはあのアサシンについて対策を練らなければなりません。史実では代表的な李書文の死因に三説ありますが、毒殺・病死・精神崩壊。この三つはこの陣営で再現するとなると非常に難しい。代用策の起案を私は提唱させていただきます」
「なーるほど。ちなみに、ラニ嬢の代案は?」
「ありません」
「…………ああ、そうかい」
万策尽きたか。
「い、いやいや……もっと何かありますって。それじゃ、単純ですけど逆に考えてみましょう。相手を倒す策を練るのではなく、相手の特徴を掴んで戦闘を有利に進める研究から始めるんです」
「おっ、それも一理あるな。クーフーリンみたいなゲッシュを利用する事は出来なくとも、相手の槍裁きや必殺の交わし方を心得るだけでも相手の虚を突けちまう。なまじ上っ面の情報に頼るよりは、実戦で癖を掴んだ方が細かい対処も出来そうだ」
「巴さん。それでしたら、戦闘データを此方に集積してあります」
「でかしたラニ。……あ、忘れちゃいけねぇな」
三人だけで話を進めていては、真にまとまって勝利を目指すとは言えない。この場に残った仲間の内、最後の一人にアンリは話を持ちかけた。
「ありす、何か思ったことは無いか? あの中国武術家に勝てるような事じゃなくても言い、本当に少し思った事でいいからよ」
「うーん、あんまりお兄ちゃん達の戦いとかは見えて無かったから分かんないけど……そうだ! いいこと思いついたわ! あのねお兄ちゃん――――」
アリスを思わせる口調に変化し、ニコニコとありすはその考えを述べる。
驚くべきは子供の豊かな発想力か。予想外にも程があるありすの思考はアンリを含め、全員の度肝を抜くには十分な策だった。
「よぉ嬢ちゃん。成果はどうだ?」
「話しかけないで。ちょっと手を貸す程度が旧式のパスワードがこんなに手ごわいだなんて……燃えてるんだから」
「俺にゃ何がどうなってるかもわっかんねぇけどな。マスターがやる気出してんのは喜ばしい限りだけどよ」
最初の邂逅でアンリに正体を見破られた凛のサーヴァント、クー・フーリンは正にお手上げだ、と言わんばかりに両手を広げて肩を竦めた。
現在凛達が籠っているのは、アンリが貸し出した例の視聴覚室だった。アンリの遺していった泥の中にいる人間達の思念が「この部屋は見るのに最適な場所である」という認識をし続けている事で、この部屋は一種の概念武装をこさえた魔術工房としても扱う事も可能だろう。別段監督役のNPCは「聖杯戦争中に教室を陣地にしてはならない」という制約などつけていないため、これは列記とした法の範囲内として罰せられる事も無い。
そうしたやる気で満ち溢れている凛に手伝えることは無いかとランサーも画面を覗いてみたのだが、そこに在ったのは彼の死後に初めて登場した「0」の概念と、訳の分からない二進数を無造作に並べたようにしか見えないデータの数々。悪く言えば野う金の彼にとって、すぐさま別の事を考えるのも仕方のない事であろう。
「しっかし、近道とはなぁ」
必死にプロテクトとやらに悩んでいる凛の姿を見て、提案をしてきた甘い囁きの主の姿を思い出す。喋り方が被っているという点で少し共感するところもあるが、アレは人を正しく狂わせる悪神として十二分の素質を持っている。正規の道と堕落の道と、その両方の選択を提示しながらに、決定権を握るのはアレそのものだ。
自分の甘い言葉にも耳を貸さない凛をいとも容易くたぶらかした話術に関しては見習いたい所もあるが、この調子では全力での戦闘は期待できないかもしれないと、ランサーは小さく息をついた。
少し辺りを見回し、張り巡らされたアンリマユの呪いが蠢く壁を見て辟易する。
「ぃよっし、ようやくアクセス出来たわ。生きるプログラムがいるってホント便利ねー。しかも使い捨てが利くからコツコツと溜める必要も無いし、無限に湧いてくれるから幾らでも使える…! ふふふ……あぁ、本当にいい条件で紹介してくれたものよね!」
「……にしても、あの黒色め。ちぃっと嬢ちゃんのツボをつき過ぎじゃねぇか? 俺だって射抜けなかったってぇのに」
「ランサー、何か言った?」
「何にも言ってねぇよ。独り言だ」
「そ」
再び没頭し始めた彼女の背中を見て、ランサーは息苦しいこの部屋の居心地がドンドン悪くなってきた。気分転換にアリーナでトリガーでも取ってくるか。彼がそんな思考に行きつくまで、そう時間はかからなかった。
少し短かったですかね。
なんにせよ、タマモさんの魂にかける情熱は凄まじいようです。
……ん? 初めて主人公勢以外の描写書いたような気が……