あ、9月の資格試験は無事に合格しました。
それと全話サブタイ変更しました。
シンとシャルルは山田先生に呼ばれて職員室に来ていた。
どうやら学年別トーナメントの事について伝えたいことがあるらしい。
「2人とも、学年別トーナメントが外部に公開されることはご存知ですよね」
学年別トーナメントは毎年外部公開されており、一般人だけでなくIS関連企業の人たちも観客として来場する。
それはつまり、このまま学年別トーナメントに出場すれば“織斑一夏以外に2人、男性のIS操縦者がいる”ことを世間に知らしめることになる。
特に今年は一夏がいるため、例年以上に1年生の試合を見に来る人が多い。
「お2人の立場を考えますとこのままでは出場できませんよね。
そこでこちらで考えたのは次の2つです。
1つは、出場を辞退すること。
もう1つは、何らかの方法で男性だとばれないように出場することです」
今年はイレギュラーが多く、例外を設けたようだ。
IS学園からも、できる事があるなら何でも補助するそうだった。
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職員室でのことを話したら、なぜかオルコットさんの部屋に行くことになった。
そして僕は抵抗することなく、おとなしく彼女に髪を梳かされながら疑問を口にする。
「オルコットさんはなぜ僕と組もうと思ったの?」
「貴方と仲良くなりたいから……ではダメですか?」
彼女は髪を梳かす手を止めることなく質問に答える。
その手つきは非常にやさしくて温もりがあって、でも母に梳かしてもらうのとはまた違う。
親子というよりは姉妹といった感覚だった。
「ううん。ダメじゃないよ」
その心地よい感覚から自然と言葉が漏れる。
彼女も鏡越しに笑顔を返してくれた。
「はい、シャルルさん。完成ですわ」
「ありがとう。これなら大丈夫そうだね」
まとめていた髪をほどいて梳かし、軽く化粧をしてくれた。
鏡の中の自分はどう見ても女の子で、ISに乗っている姿を見て男という人はいないだろう。
「シャルルさんは中性的な方ですからいいですが、シンさんはどうするんでしょう?」
この姿なら僕は絶対に男だとばれないと言い切れるが、確かにシンはどうするんだろう?
セシリアは僕の肩に手を置いて、いざとなったら自分が完璧に仕上げると自信満々に言っているが……
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「イグニッション・プラン?」
教室での出来事の原因を、なぜかペアを組むことになった当事者のラウラから聞く。
「ああ、ドイツのレーゲン型とイギリスのティアーズ型が候補に入っている。
試合に勝つことで相手に対する優位性を示し、プランを有利に進める事ができると言うわけだ。
これは互いにとって好機だからな、負けるわけにはいかない」
「そんな大事な試合なら、なんで俺と組んだんだよ?」
「お前が今、どのくらい強いのかを確かめるためだ」
ラウラの回答に衝撃を受ける。
彼女の真剣な顔から、これが冗談だとは到底思えない。
強さを確かめる? なぜ、なんのために?
「もし、俺を弱いと判断したら?」
「場合によってはIS学園以外の場所で保護するべきだと、教官に直訴する。
2年前の事件が再び起こらないためにも必要であると……」
彼女の言葉に顔を強張らせる。
2年間の事件のせいで千冬姉は決勝戦を棄権し、大会2連覇を逃した。
あの時の俺は弱く、何もできないまま、ただ助けが来るのを待つことしかできなかった。
でも今は不可抗力で得た力ではあるが、白式がある。
この力があれば自分だけじゃなくて周りの皆を守る事だってできる。
“もう千冬姉に守られるだけの俺じゃない”
いつまでも千冬姉に迷惑ばかりを……重荷を背負わせるだけなんて嫌だ。
ラウラの進言で本当にそうなるのかは分からないが、それを言わせないためにも俺は彼女に弱くないことを証明しなければならない。
「だったら……俺の強さをしっかり見せてやるよ」
「やる気があるなら結構だ。期待させてもらうぞ」
ラウラはそう言うと先に寮の方へと歩いて行った。
少なくとも最初から弱いと決めつけられてはいないようだ。
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学年別トーナメント当日――
今年は例年にも増して観客がIS学園に集まった。
特に今年多いのがIS関連企業の方々で、この機会にISを動かせる男性である織斑一夏と接触し、あわよくば自分の所へ彼を引き込もうという魂胆があることは想像に難くない。
そんな中にデュノア社長はいた。
「これはこれは、デュノア社長ではありませんか」
「マックスウェルさん。貴方も来ていましたか」
デュノア社長は声をかけて来た長めの金髪にサングラスをかけた男性と挨拶を交わす。
「はい。今は一緒に居ませんが、息子さんもこちらに来ています」
「そうか、エリックはどうだ?」
「お元気ですよ。今は機体の整備を任せています」
機体と言えば警備用のパワードスーツEZ-8の事だろうか?
本来軍用として開発したのにそちらには全く普及せず、逆に警察や災害救助隊といった方面に普及した機体で、おそらく今日も会場警備に動員されているのだろう。
ライセンス生産であるのにもかかわらずライセンス元が来るとは念の入れようである。
「出向先でも変わらないようだな」
それに息子も相変わらず機械いじりが好きみたいだ。
技術者ではなく経営者としての成長のために出向させたというのに……
2人がしばらく雑談を続けていると、ある人物の話題になった。
「織斑一夏はなぜISを動かせるのだろうな」
デュノア社長が疑問を口にする。
それはここに居る人の大半は思っている事だろう。
「おそらく本人も分かっていないでしょう。
私としては女性にしか動かせない理由の方が知りたいのですがね」
「だが、今はそうであると受け入れて考えるしかない」
「しかし、それもいつまで続くかと言ったところでしょうか。
ISによる男女の格差は既に女尊男卑という形で表に出始めている。
これが拡大していけば、いずれ格差をひっくり返そうと行動する者が現れる。
そして人間は再び引き金を引き、歴史を繰り返す。
おそらく篠ノ之博士は、それを未然に防ぐためにコアの数を制限したのでしょう」
「もしかしたら織斑一夏は、それを防ぐ存在として篠ノ之束が仕込んだのかもしれない」
「可能性の一つとしては考えられます。
問題は、女性にしか動かせない事が篠ノ之博士にとって想定の範囲内の事なのかどうか」
長い間話をしていたのか、アリーナで開会式が始まる。
2人は先ほどまでの重い雰囲気を引込め、式典を観賞する。
このトーナメントでは1学年を4ブロックに分け、ブロック優勝者で決勝者トーナメントを行う。
ルールは制限時間5分、タイムアップ時はシールドエネルギー残量の合計で判定する。
開会式が進み、各挨拶やトーナメントの説明が行われている。
ISスーツに着替えた生徒たちは、待機室で発表されたトーナメント表を見ている。
「ラウラ、俺は負けないからな」
「なら、当てにさせてもらうとしよう」
Aブロック――
織斑一夏/白式&ラウラ・ボーデヴィッヒ/シュヴァルツェア・レーゲン
「鈴……一夏の相手は私にやらせてくれないか?」
「OK。ドイツ娘は任せておきなさい」
Bブロック――
篠ノ之箒/打鉄&凰鈴音/甲龍
「ではシャルルさん、参りましょうか」
「うん、行こうセシリア」
Cブロック――
セシリア・オルコット/ブルー・ティアーズ&シャル・デュノア/ラファール・リヴァイヴ
「緊張してるのか?」
「大丈夫、サポートは任せて」
Dブロック――
シン・アスカ/インパルス&更識簪/打鉄
役者と舞台が揃い、学年別トーナメントが開幕する。
クラス代表戦のような事が起こらないようにと祈りながら……
ペアについては戦力バランスを考慮してみました。
最初はシン&ラウラとか考えたけど、どう考えても最強ペアなのでやめました。
似たような理由で簪も専用機無しで参加となります。