織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

6 / 55
文章の改行を色々試している今日この頃・・・。
しかし、全く進まないな、この話。いまだにセッシーも出てすらいないとは・・・。


第四話・ファースト授業

「いってぇな。何も殴る事ないだろ?」

「・・・すまん。つい反射的に手が出てしまった」

「駄目だぜ、安易に人を殴るのは。千冬姉みたいになっちまうぜ」

「千冬さんに言いつけるべきか?」

「やめて!!?」

 

青空の下、箒と一夏は交流を続けていた。若干、赤く腫れてしまった顎を撫でながら一夏は箒に弁解の言葉を出す。

 

「いや~、悪い悪い。俺、世間の流れとか大体3年前で止まってるし・・・」

「ふん、私の事などどうでもいいのであろう」

 

箒は拗ねたように顔を逸らして言う。

 

「あ、そうじゃなくてさ。俺・・・2年以上寝たきりだったし。起きてからも、リハビリと勉強で忙しくてさ・・・悪かったな、箒」

「何?」

 

一夏の話す、その内容に箒は怪訝な顔をする。目の前の彼は健康そのもので、とてもではないが病気になっていたようには思えなかった。ならば、事故にでもあって寝たきりであったのかとも思うが、パッと見制服越しとはいえ傷があるようにも見えない。

だが、2年以上という言葉に彼女は心当たりがあった。

 

「まさか、一夏お前・・・SAO生還者(サバイバー)なのか?」

「お、おう。まぁそうなるかな?」

 

その肯定する言葉に、箒の顔が青ざめる。今まで何度か転校したがその中でも面識がなかったとはいえ、同じ学内でSAOの被害者はいた。

・・・亡くなってしまったという話も聞いていた

自分の知らない処で彼が命の危険に晒されていたと知った瞬間、箒は血の気が引く思いであった。

 

「な、なぜ教えてくれなかった!?」

「いや、今教えたじゃん」

「もっと早く!」

「いや、だから寝たきりだったと・・・」

「そ、それはそうだが!!」

 

頭では理解している。しかし、心が納得しなかった。どうして自分は知らなかったのかと。どうして、お見舞いすら出来なかったのかと。或は、面識すらないSAO被害者の学生の見舞いへクラスメートともに行っていれば、偶然一夏の事を知る事ができたのであろうか・・・。そんな不謹慎な事まで考えてしまっていた。

 

「悪い。やっぱり言わない方がよかったよな。変に心配させちまったか?」

「べ、別にお前が悪いわけではなかろう!」

 

一夏はバツの悪い笑みを見せ、箒はどうしたらいいかわからず、ついまた強い口調が出てしまっていた。

 

「箒」

「な、なんだ」

「ありがとな、心配してくれて」

「な!?」

 

謝れてたと思ったら、急にお礼を言われた。しかも、微笑みながら。箒は若干混乱した。

 

「ほら、こういう時って謝られるより礼を言った方がいいかと思って・・・」

「か、勝手にしろ! もう教室に戻るぞ!!」

 

箒はそう言い放つと、サクサクと屋上を後にする。

 

「お、おい。箒?」

 

一夏は、あっという間に一人になってしまう。

 

「なんだよ、あいつ。なんかまずかったか?」

 

別に一夏は悪くなかった。どちらかと言えば、箒に問題があったのだ。単に、一夏の笑みに照れてしまっただけ。

イッピーはもげるといいよ。

 

「はぁ、それにしても箒のあの態度。なるべく、SAO生還者って周りにばれない様にしないとな」

 

自分の思っている以上に、世間の眼はSAO生還者への関心が強い。良くも悪くも。そう一夏は感じていた。

 

「そういや、鈴の奴も電話越しにわんわん泣いてたっけ・・・アイツにも、心配かけちまってたなぁ・・・」

 

SAO事件はゲームクリアされるまでの2年以上、ずっとニュースになっていた。世間の関心もそれなりに高い。知られれば、奇異の眼で見られるとことは恐らく間違いないだろう。

今ニュースになっていない理由は、生還者へのインタビューが出来ないように、政府が被害者保護のために情報規制しており、接触できないようになっているからでもあった。

 

「(ちょっと、楽観的に考えすぎていたかもなぁ・・・)」

 

SAOで過ごした日々を恥だと思ったことはない。だが、自分がその事を打ち明けるリスクを考えてしまった。唯でさえ、目立つ存在だというのに。

 

「はぁ、なんでIS学園に来ちまったんだろう」

 

いや、自分の保身のためなんだけどね。そう思いながら、一夏は箒の後を追い教室へと向かった。

 

 

 

 

「・・・となっています。現在のIS運営における基準としましては・・・」

「(入学初日から授業ってきついなぁ・・・。まぁ、通常の高校過程に加えての授業だから仕方ないけどさ・・・)」

 

一夏は、初日から始まった授業に悪戦苦闘していた。確かに、千冬に入学までの間教わっていたが、やはり限度があったのだ。

 

「さて、ここまでで何かわからない子はいますか?」

 

そう言った真耶に一夏は目を合わせてしまった。やばいと思い、目を逸らそうとするが遅かった。

 

「織斑君は、ここまでの事で分からない事はありますか」

「うっ!?」

「う?」

 

質問されて側は思わずうめき声を上げ、質問した側は不思議そうに首を傾げた。

パラパラと参考書をめくる。分からない所はその都度チェックを入れているが、如何せん多すぎた。

 

「・・・すみません、先生」

「はい!」

 

申し訳なさそうに一夏は手を上げ、真耶は張り切った様子で答える。

 

「少し質問が多いので、後ほど放課後にでも個人的に聞きに来てもいいですか?」

「・・・あ」

 

その言葉に、真耶は顔を青ざめる。事情を知っていたはずの自分が、一夏を見せものにしてしまうような発言をしてしまったのだと理解したからだ。

 

「ご、ごごごごめんね、織斑君。放課後に何でも、幾らでも聞いていいから」

 

そう言い、彼女はぎゅっと一夏の両手を握る。どう考えても、誤解される対象であった。

主に、教師を誑かしたという方面で。

 

「わ、分かりましたから手を放してください!」

「お、怒っちゃった!? ほ、本当にごめんね、織斑君!!」

「い、いや怒ってないですから!?」

 

周りの視線が怖かったのだ。一夏は焦りながら真耶を宥める。

 

「山田先生。そこまででいいでしょう。織斑、分からない所は個人で後ほど来い」

「あぁ、分かっ・・・・・いてぇ!?」

「返事は『はい』だ」

「・・・はい」

 

いつも通りに返事をした一夏を、千冬は出席簿で軽く叩いた。ちなみに、IS学園は外界からはある程度切り離されてるので、この程度では体罰問題には発展しない。

 

「さて、チャイムももうすぐなろう。ここまでで何か質問がある奴はいないか?」

「あ、はい!」

「なんだ?」

 

千冬の言葉には一人の生徒が手を上げて反応した。

 

「自己紹介の時に気になっていたのですが、織斑君は先生の弟なんですか?」

「・・・それは、授業とは関係あるのか?」

「ひぅッ!?」

「(その図太い根性は認めるがけどなぁ・・・)」

 

何と言う、怖いもの知らず。いや、怖いものは今知ったか。そう思う一夏であった。

 

「ン゛ン゛。まぁ、今日は初日だ。大目に見よう」

「え!? ずるい!! 痛い!!?」

「お前は別だ!」

 

思わず、ずるいと反応した彼は再び頭を叩かれた。

 

「結論から言えば、YESだ。だが、贔屓するつもりはサラサラない。もしそう言ったことを感じたら、遠慮なく他の教師へと報告してかまわん」

「(悪い意味で、贔屓してねぇか?)」

「どうやら、授業の事に関しての質問はないようだな。・・・織斑以外は」

「(ほらぁ!?)」

 

姉の言葉にショックを受ける一夏であるが、千冬は少し思惑すると話を続けた。

 

「そう言えば、先ほどのSHRでは質問の時間を設けられなかったな。折角だ、今の質問以外でなにかあるか? 授業以外の事でも構わん」

「あ、はい!」

 

そう言い、先ほどとは違う生徒が手を上げる。

 

「あの、篠ノ之さんって珍しい苗字ですが、もしかして篠ノ之博士の関係者なんですか?」

 

その質問に、箒の肩が若干震えた。できる事ならば、触れてほしくなかった事であったからだ。箒の姉・篠ノ之束はISの生みの親である。ISのコアは彼女しか作れず、しかも現在彼女は行方不明。新たにコアを作るのを拒んでいた。

箒は、そんな姉の存在の所為で重要人物保護プログラムを受ける羽目になった。住み慣れた町を離れ、転校を繰り返し気が付けば両親とも離れ一家離散。当時小学生であった彼女にはそれはあまりにもつらい現実であった。

 

「それは、私の口からは言いかねる。プライバシーの観点からな・・・とはいえ、ここまで言えば言ったも同然か・・・」

「え、じゃぁ!」

「あの人は関係ないッ!!」

 

箒は、その周りの期待に満ちた空気に耐えきれず、つい叫んでしまった。衝動的な発言であったため、箒は自分のしでかしてしまったことに気まずげな顔をする。

 

「・・・すまない。だが私はただの妹に過ぎない。ただの凡人なんだ・・・」

 

彼女がそう言いきった瞬間にチャイムが鳴る。気まずい空気のまま授業は終わりを迎えてしまっていたのだ。

 

「ちょうどチャイムが鳴ったか、授業はここまでとする」

「(え!? アフターケアしようぜ、千冬姉!!?)」

 

そう一夏が思っていると、千冬は立ち去り際に視線を送った。フォローをしてやれと。

 

「(・・・弟に丸投げかい)」

 

どうするかと考えるが、纏まらず一夏は今の発言の所為で若干孤立してしまった箒の下へと歩いていく。

 

「箒・・・」

「・・・なんだ、馴れ馴れしく呼ぶな」

「(うお、不機嫌MAX・・・)」

「えっとさ、よかったら一緒に食堂にどうだ? ほら、俺知り合いが一人もいなくて寂しくてさ・・・」

「知らん」

 

このままでは埒が明かん。そう一夏は考えて・・・。

 

「足元に、ゴキブリがいるぞ」

「「「「「ヒッ!?」」」」」

 

箒はその言葉に思わず立ち上がり、その場から後ずさりをした。ついでに、周りのクラスメートも悲鳴を上げる。

 

「よし、立ったな。飯食い行こうぜ」

 

一夏は、その空気を無視して箒の手を握り歩き始める。

 

「な、一夏、貴様!?」

 

騙されたと気づき、彼女は思わず一夏に食って掛かる。

 

「騙されたお前の負けだ。さ、飯食い行こうぜ。ここの食堂は元ホテルシェフが作ってるらしいぞ?」

「まったく、お前は!」

 

若干強引に手を引きながら歩く一夏。だが、箒はそんな一夏に昔の姿を重ねていた。

 

「(どこか変わってしまったと思っていたが・・・一夏、お前は根っこは変わっていなかったんだな・・・)」

 

自分の知る一夏である。今までの生活の中で、心の支えにしてきた思い出の彼は昔のままであった。箒は、それが嬉しくなった。

一方の一夏は、辺りを見回しながら歩いてく。箒はその様子を食堂への道を探しながら歩いていると思ったが・・・。

 

「(それにしても、チンクの奴やっぱりいなかったな。軍人だって言ってたし仕方ないか・・・)」

 

同じ歳と聞いていたかつての仲間がここに居るのを若干期待していた一夏は、残念そうに感じながら廊下を歩いていたのであった。

女の子の手を引きながら、別の女の子の事を考える一夏。ある意味大物であった。

・・・アホとも言うかもしれない。

 

「・・・なぁ、箒」

「なんだ、一夏?」

「ここどこだ?」

「アホかぁ!!?」

 

訂正。正真正銘のアホであった。

 

「やっぱ、勘じゃ駄目だなぁ」

「ええい! 自分の通う学校の構造くらいある程度把握してから来い! こっちだ!!」

 

そう言い、今度は箒が一夏の手を引いて歩いていった。立場が逆転した瞬間であった。

 

「お、おう。流石箒。頼りになる・・・」

「黙れ、バカ」

「ひでぇ・・・」

 

だが、一夏は思う。すっかり元の箒だと。もしかしたら、今までの行動は全て彼の計算であったのかもしれない。思ったよりも彼は考えて行動をして・・・。

 

「(飯食ったら、元気出るかと思って誘ったけど、結果オーライだな!)」

 

・・・やっぱり、アホはアホであった。

 




モッピーなんでも知ってるよ。イッピーの脳はうまいもんを食べればみんなハッピー的なトリコ脳だって事を。
モッピーなんでも知ってるよ。チナツは料理スキルMAXだったって事を。
モッピーなんでも知ってるよ。アスナは料理勝負のライバルだったって事を。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。