織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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今後はALOが舞台の際にはタイトルにALO編とつけたいと思います。

特に意味はないのですが、取りあえずIS本編とはある程度区別をつけようと思いまして。(無論、しっかりと繋がった話ですが)

それよりも、まさか、まさかのSAOゲーム新作決定!!

やべぇ、正直もう無理と思ってたから震えが止まんねぇ。




第三十四話・純粋なゲーム(ALO編)

「おらぁあ!!」

 

槍を持つサラマンダーが、鋭い突きのソードスキルをチナツ目掛けて繰り出す!!

だが、彼はその攻撃を紙一重で避けカウンター気味に切り裂いた!!

 

「はぁ!!」

「ッ!! テメェ!?」

「(くそ、一撃って訳にはいかないか!?)」

 

チナツの攻撃は見事であった。しかし、それ以上に敵の装備がよくPKプレイヤーのHPは精々2割削った程度であった。

 

「(だが、ここで追撃を!!)」

「チナツさん!? 後ろです!!」

「しまッ!?」

 

更なる追撃を繰り出そうとするチナツ。しかし、背後から迫る別のプレイヤーに気付けず隙を作ってしまっていた。そこを!

 

「やぁ!!」

「リーファ!?」

「大丈夫、チナツ君!?」

「ああ、助かった!」

「お礼は後! まだ来るよ!!」

 

戦闘開始から早数十分。チナツ達は未だに一人のプレイヤーを倒すことなく防戦一方であった。

 

「くそ、粘りやがる!」

「は、久しぶりの生きの良い獲物じゃねぇかよ」

 

PKプレイヤー達はチナツの思っていた以上に良い連携をしていた。メイジであるプレイヤーの的確な遠距離からの支援もあり、攻めてもHPを削り切れずにいた。

 

「くそ、どうにも魔法スキルありの戦闘が慣れねぇ!」

 

SAOは魔法等のスキルは一切ない世界であった。確かにモンスターがブレスなどで遠距離攻撃をする事はあったが対人戦で遠距離ありだと、どうしても感覚が違った。

しかし、この状況打破出来ない理由は他にもある。それはチナツ自身の問題だ。

彼はリアルでIS競技ばかりに最近力を入れていた。競技の殆どは1対1。先日の無人機騒動では2対1であった。こう言った相手の数の方が多い複数戦は最近行っていなかった。

早い話が……。

 

「チナツ君、周囲の注意が足りてないよ? 勘が鈍ったんじゃない?」

「ちょっとな!」

 

リーファの言う通り、勘が鈍っているのだ。

 

「おい、そろそろ面倒になってきたな」

「お、なんだよ。見逃してくれるのか?」

 

攻防が続く中、不意にPK側のプレイヤー達の動きが止まりリーダー各の男がポツリとその言葉を口にした。チナツはその言葉に『諦めてくれるのか?』と尋ねるのであった。

 

「なわけねーだろ。ただ、このまま続けても埒があかねぇって言っただけだ」

「じゃぁ、見逃しなさいよ!」

「冗談言ってろ。こっちにだってプライドがあるんだ。二人相手に逃げれるかっての」

 

この時チナツは考えた。今までだって防戦一歩だった。このままゴリ押しすれば自分達の敗北は必須のはず。なのになぜこんな会話を始めるのだろうかと。

 

「つーわけで、時間だ。メイジ共、こいつから焼いちまえ」

 

これが狙いか。それがチナツの出した結論であった。いつの間にか、少し離れた場所で支援していた魔法使いスタイルのプレイヤーが詠唱を終わらせ、無数の火球を作っていた。

だが、チナツもここまでの戦闘で魔法の軌道は何となく掴み始めていた。2人しか居ないメイジの魔法をチナツは何とかよけようと構えるが……。

 

「(ん?なんだ?)」

 

何か違和感を感じ目をよく凝らすのであった。

 

「―――ッ!? チナツさん! プレイヤーの数がいつの間にか2人増えています!!」

「なに!?」

 

その違和感にチナツは気付く。いつの間にか、メイジプレイヤーが4名に増えていたのだ。いくらなんでも、4名の魔法攻撃を避けるのはチナツには不可能であった。出来る事があるとすれば、この場からの一度離脱だが……。

 

「(それをしたら、隙を見せるよなぁ)」

 

それをすれば、先ほどのプレイヤーが避ける隙を突いて攻撃をしてくる。軽装のチナツではひとたまりもないだろう。

 

「ッ!! チナツ君!?―――――――!!」

 

すぐにリーファがフォーローをしようと魔法詠唱をしようとする。だが!

 

「リーファさん! 危ない!?」

「え? きゃあ!?」

「おっと、てめぇの相手は俺達だぜ!」

「そう言うこった」

 

魔法詠唱をしようとしていたリーファであったが、それも他のプレイヤー達に邪魔されてしまった。

 

「ッ!! 邪魔なのよ!!」

 

リーファはすぐに目の前の敵を切り伏せチナツを助けに行こうとする。しかし、そんな簡単に倒せているのであればここまで戦闘が長引く事はない。完全にリーファはこの場に足止めをされてしまっていた。

 

「――――!!! 行くぞ!!」

「燃えちまえ!!」

 

そして、4人のメイジ達が詠唱を終える。すると、無数の火玉がチナツ目掛けて飛ぶのであった!!

チナツはその場から動けない。どう行動すればいいのか判断がつかなかったのだ。

 

「チナツ君!!」

「チナツさん!!」

 

リーファとユイの悲鳴が聞こえる。

だがチナツには、その迫りくる火球がスローモーションにも見えていた。

 

「(見える)」

 

一見無軌道に向かってきているそれ等は、結局の所自分目掛けて飛んでいるには変わりない。所詮はシステムによって作られた魔法。チナツはそれがどんなふうに来るか、無意識で頭の中で予測線を作る。

弾丸よりもはるかに遅い魔法。頭の中に予測線さえできていれば。

 

「いくぜ!!」

 

チナツには何をすればいいのか分かっていた。

まずは一発目の火球、突きの一撃で威力を軽減。魔法の着弾速度をより正確に把握。

 

「(よし、いける!!)」

 

次に二発目、三発目とくる火球をチナツはなんなくその剣で切り裂いていく。

 

「―――な!?」

 

無論、直撃を防いだだけで攻撃の余波をチナツは浴びている。HPは既に残り1割。だが、それだけあれば!!

 

「呆けてる奴を斬るのはわけないぜッ!!」

「―――しまっ!?」

 

今までの一撃とは違い、チナツの剣が発光する。ソードスキル発動時のエフェクトだ。彼が、チナツがALOに来て初めて放つソードスキル。

 

「うぉおおお!!!」

 

片手剣上級ソードスキル、サベージ・フルクラム。大型モンスターにも有効な強力なスキルだ。いくら上位プレイヤーとは言え、無防備な状態でもろに受けたのであればひとたまりもない!!

 

「うっぉおおおお!!?」

「ッし!! まずは一人!!」

 

チナツのソードスキルがクリーンヒットをして敵のHPゲージは0となり赤い火玉となるのであった。このALOではHPが0になったプレイヤーは各種族のイメージカラーと同じ色の火玉となるのである。

その証を見たチナツは内心ほっとする。本当にデスゲームではないのだと。

 

「リーダ―をよくも!!」

「スキル後の硬直中だ! やっちまえ!!」

「―――って! まず!?」

 

だが、チナツの内心などPK達にはどうでも良かった。威力の高いソードスキルには発動後長い硬直時間が発生する。はっきり言ってチナツは現在良い的でしかなかったのだ。

 

「(くそ、単発スキルの連打にすればよかったか!?)」

 

チナツは己の判断を呪った。やはり集団戦の勘が鈍っていたのだ。迫りくる無数の刃。リーファは未だに足止めをされ間に合わない。

万事休す。もはやこれまで。

そう思った時だ!!

 

「やぁあああ!!!」

「え!? うわぁあああ!!?」

 

一筋の閃光が敵の包囲を掻い潜り、チナツを狙っていたプレイヤーの一人を斬り裂いた!!

 

「(閃光……!?)」

 

この閃光の様な攻撃を彼は知っていた。何故ならそれが彼女の二つ名だったからだ。

そう、彼女の二つ名は閃光の―――!!

 

「アスナ!!?」

 

ウンディーネ特有である水色の髪をしているが、その姿を忘れる事等はあり得なかった。

 

「ふぅ、遅くなったね。チナツ君」

 

突然現れたアスナに当然リーファもユイも驚くしかなかった。

 

「アスナさん!?」

「ママ!?」

「ごめんね、二人とも。ちょっと時間かかっちゃった?―――さて」

 

そう言いつつもアスナは静かに細剣を構えるのであった。仲間と愛娘が追いかけ回されて温厚でいられるほど、彼女は人間が出来ていないのだ。

 

「次は誰? かかってきなさい!!」

「くそ、一人増えたくらいで!! メイジ共!! コイツごとまた焼いちまえ!!」

 

仲間の一人がそう言い放つ。リーダー格の男ではなかったが、メイジプレイヤーはその指示通りに詠唱を始める。

 

「―――ッ!! まずい、ここからじゃ!!」

 

間に合わない。チナツはそう口を開きかけた。だが、そんな彼にアスナは力強く言う。

 

「大丈夫だよ、チナツ君。来たのは―――」

「―――――……ッ!!? ギャァアアア!!?」

「私だけじゃないから」

 

アスナがそう言っていると、詠唱をしていたプレイヤーの一人が何かに貫かれ火玉になるのであった。

チナツはその何かが飛んできた方角を見て、目を見開く。ケットシーの猫耳、水色の髪をしており、現実とは若干容姿も違うが、その鋭い眼差しをチナツは見間違えるはずもない。

 

「ふぅ、動かない的を射るのって退屈ね」

「シノン!!」

 

そして、仲間達の登場は止まる事を知らない。

 

「うぁあああ!!」

「な、なんだ!? このチビ竜は!?」

「ったく、対人なんて慣れない事させんじゃないわよ」

「け、けどチナツさんのためです!!」

「くきゅ~♪」

「シリカ、リズ。ピナも!」

 

いつの間にかリーファを囲んでいた一団に小竜が飛び回り攪乱しており、その隙をリズベットとシリカが突いてリーファを救出していた。

一人、また一人と次々と増えていく仲間達。その様子にPK集団もどよめき始めていた。

 

「くそ、何がどうなって……っぐあぁあ!!?」

 

そうこうしている内にまた一人、火玉となるのであった。なにもないはずの空間から黒髪の少女が現れキザキザの短剣で斬り付けたのだ。

 

「スプリガンの幻影魔法は不意打ちにも有効だよ。チナツの趣味じゃないかもしれないけど、覚えておいて損はないよ?」

「フィリア!?」

 

かつてSAOで、システムトラブルによってホロウエリアに閉じ込められて少女、フィリアがチナツ同様にスプリガンの姿で現れた。

 

「くそ、撤退だ!!」

「おっと、そうはいかないぜ!!」

「せっかく来たんだ、もうちょっと遊んでけよ」

「ひ!? うわぁあああ!!?」

「今度はクライン!? エギルも!?」

 

更に現れたのはクラインにエギルであった。彼らは逃げ出そうとしていたプレイヤーを切り裂き、退路を塞いでいたのであった。

 

「ったく、こんな奴らが俺と同じサラマンダーだなんてな!!」

「そりゃぁ、こいつらもお前さんに言われたくないだろう」

「どういう意味だよ、エギル!?」

「さぁな?」

 

もう残っている敵も僅かになっていた。アスナが駆けつけてわずか数分。一体何がどうなっているのやら。

チナツはスキル後の硬直時間が過ぎたにも関わらず固まるしかなかった。

 

「皆、どうして……?」

「俺が呼んだんだよ」

 

そして、彼の横に一人の男が空から降り立った。

 

「キリト……?」

「ユイからメッセージが届いてな。ったく、あまり心配かけるなよ」

 

チラリとリーファの横いるユイを見る。するとユイは小さくガッツポーズをしていた。

戦っていたのは自分とリーファだけではなかったのだ。彼女もその小さな体で出来る事をしていたのだ。

 

「で、どうするんだ?」

「え?」

「残りの敵さんは後僅かだ。このまま皆に任せるか?」

「……」

 

その言葉に、チナツはニヤリと笑う。

 

「へ、冗談!」

 

チナツは、剣道の構えを変質させた独自の構えをする。

 

「最後の奴は俺が貰うぜ」

「さぁ、それはどうかな?」

 

一方キリトもまた武器を構える。

 

「いくぜ、チナツ!」

「ああ!!」

 

もう、後ろを気にする必要はない。チナツはそれを力強く感じ目の前の敵に突っ走るのであった。

 

 

 

 

 

 

決着は存外あっさりとついた。

残った数人をキリトとチナツのコンビが一瞬にして撃ち破ったのだ。

 

「はー、対人戦なんてドキドキしました」

「何々? シリカってばPKに味をしめちゃったの~?」

「そ、そんなことありません!!」

「こらリズ。シリカちゃんをいじめないの!」

 

リズベットはシリカをからかい、アスナはそれを諌めていた。

 

「け、これが本当のサラマンダーの生き様だっての!!」

「いや、別にお前がサラマンダーの代表って訳じゃないだろ?」

「あはは。クラインって相変わらず面白い事言うね」

「威勢が良いだけでしょ」

「ちげーね。SAOにいた頃からそうだったな」

「そ、そりゃ言いすぎじゃねーか!?」

 

クラインが威勢のいい事を言って、エギルやシノン、そしてフィリアにからかわれていた。

そんな仲間達の様子をチナツは嬉しそうに見ていた。多少外見は変わっているがまぎれもなく自分の知る仲間達が目の前にいるのだと。

 

「お疲れ様、チナツ君」

「リーファ」

 

そんなチナツの肩をポンとリーファは叩き、彼を労った。

そんなリーファに彼は剣を借りていた事を思い出し、アイテムストレージからそれを取り出した。

 

「これ、返すよ。助かった。修繕費はその内な」

「いいよ、それくらい気にしなくても」

「それにしても、悪かったな。無茶に付き合わせて」

 

そんな言葉をチナツは口にするが。それにリーファが答えるよりも早く、別の人物がそれに答えた。

 

「まったくだ。ビギナーの癖に無茶しやがって」

「キリト」

 

呆れた口調でキリトはチナツにそう言ったのであった。

 

「けど、ま。俺達らしいと言えば、らしい再会かもな」

「違いない」

 

そう言うと、チナツとキリトはコツンと拳を軽くぶつけるのであった。

 

「この仮想世界で、またお前に会えて嬉しいぜ」

「おうよ。またよろしくな」

 

そこでチナツはふとある事を考え、未だに残っているPKプレイヤー達の火玉へと近づく。

 

「これって、まだここにプレイヤーがいるんだよな?」

「ん? あぁ」

「そっか……」

 

とは言え、いつまでもここに残っているはずもない。チナツはそう考えると迷わずある事を言い始めた。

 

「誰か蘇生魔法って使えるか? コイツにかけてほしいんだけど」

「「「はぁ?」」」

 

チナツのその言葉に、数名がすっとんきょんな声を出すのであった。当然だ。何故せっかく倒した相手を態々蘇生しないといけないのだろうか?

 

「ちょっと、あんた何を言って……」

「まぁ、いいじゃないか。リズ」

「ちょっと、キリト!?」

 

キリトは深くチナツに追及しようとはしなかった。チナツに詰め寄ろうとする仲間達を押さえ、キリトはアスナに蘇生魔法を使うように促した。

蘇生されたのはチナツに斬られたPK集団のリーダー各だった男だ。

 

「てめぇ、何のつもりだ。リンチでもしようってのか?」

 

当然、その男はなぜこんな事をされたのか理解ができず、不貞腐れた様子でそう言う。

 

「あ~、別に大したことじゃないんだけどな……」

 

そう言うと、彼はアイテムストレージを再び開き、アイテムを取り出すとそれを渡すのであった。

 

「な、何のつもりだ!?」

 

それは先ほど、チナツが男を斬った時に手に入ったドロップアイテムだ。PKが横行する理由の一つは、倒したプレイヤーのアイテムからランダムにアイテムを奪える事がある。

チナツは今し方倒した目の前の男のアイテムを、そっくりそのまま返したのだ。

 

「言っとくけど、今回だけだからな。次は返さないぞ」

 

アイテムを返したのに特に意味はない。別にもうPKはするなとか、借り一つとか言う気はない。ただ単純に、ALOに初めてダイブして、仲間に会えたのが嬉しかったから。

そして、ここが本当にデスゲームではなく純粋に遊べるVRMMOである事を実感させてもらえたから。

安心してゲームがプレイ出来るとはっきりと分かった。そのお礼と言った所だ。

それを何となく仲間達は察したのだろうか。それぞれが思い思いにアイテムストレージを開く。

 

「ったく、折角いい素材が手に入ったのに……ほら、私達のドロップしたのも渡しとくから!」

 

リズベットが。

 

「ちゃんと、仲間達に返しなさいよ?」

 

フィリアが。

 

「ほんと、馬鹿馬鹿しい。ただ働きじゃない」

 

シノンが。

 

「まぁまぁ。シノのん、いいじゃない。チナツ君らしくて」

 

アスナが。

そして、他の仲間達もチナツの意見に賛同したのであった。

 

「くそ、礼は言わないからな!」

 

男は、そう捨て台詞を吐きながらその場を去っていく。当然アイテムは全て受け取っていた。その後、アイテムをちゃんと死に戻りした仲間達に返したかは定かではない。しかし、それはもうチナツ達には関わりの無い話であった。

 

「へへ、今度サラマンダー領で会ったらからかってやるよ!」

「止めとけって。変なトラブル作るんじゃねーよ」

「(クラインは相変わらずだな)」

 

チナツはクラインの様子を半分呆れ、半分安心した様子で見ていた。

 

「っと、そうだ。皆、助けに来てくれてサンキューな」

「まったくよ。キリトと言い、アンタと言い、一々トラブルを持ってこないといけないわけ?」

「キリトと一緒にすんなよ、リズ」

 

キリトほどではない(と思いこんでいる)チナツは不服そうに言うのであった。

 

「しっかし、アンタのアバターって……」

「ん? なんだよ、かっこいいか?」

「かっこいいって言うか……ねぇ?」

「ちょっと、私に振らないでよ」

 

どう答えたらいいのか、素直に笑ってやるべきか。リズベットは判断に困り、シノンへと振る。

当然、シノンもどう答えたらいいのか言い悩むのであった。

 

「な、なんだよ。そんなに見た目が変か?」

 

流石に不安になってきたのか、チナツは思わずたじろくのであった。

 

「ふふ、大丈夫だよ。別に変じゃないから」

 

そう言いながら、フィリアはチナツへと手鏡を渡す。正直、SAO開始当初を思い出すため、手鏡はあまり好きではないのだが、チナツは自分の姿を確認するためにそれを覗き込むのであった。

 

「……は?」

 

そこには、現実の顔に近くも現実以上に女顔をして、かつて装備の影響で長くなっていた髪と同じ髪型をしていた自分の姿がそこにあった。

 

「な、なんじゃこりゃぁぁあああ!!!?」

 

成長期に寝たきりであったため、少し中性的な顔付きになっているチナツは男らしい顔に憧れていた。それ故に、思わず叫ぶしかなかったのであった。

そんな彼の叫びを聞いて、仲間達はドッと笑うのであった。

そんな彼を見てユイは、それにしても……と改めて思っていた。

こんな絶妙な加減であるチナツのアバター。誰かが弄らなければ形成されないように感じたのだ。

勿論、自分はしていない。今の彼女はSAO時代とは違い、キリトのナビゲーションピクシーでしかない。ある程度のカーディナルシステムへの干渉は出来るが、制御までは出来ないのだ。

やはり単なる偶然か? しかし、それにしては……と彼女は首を傾げるしかなかった。

 

そして、こことは違うエリアで、彼らを見ている存在に気付くことなく、彼女もキリト達の話へと加わるのであった。

 

 

 

 

 

 

ALO・カーディナル・モニタールーム

 

「モッピー何でも知ってるよ、イッピーにはその姿がお似合いだって事を」

 

そう言いながら、箒の出来損ないみたいなナマモノはニヤニヤと笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◎俺的設定

・魔法破壊(スペルブラスト)

原作でキリトが魔法をぶった斬ったアレ。本来は魔法効果が付いたソードスキルで、魔法を相殺するのだが、今回チナツがしたのは魔法を斬る事で直撃を防いだだけである。そのため、HPはギリギリまで減ってしまっていた。

けど、武器の耐久値はもっと減っていた模様。

 




「うわちゃ~、耐久値ギリギリだわ~。チナツの奴どんな無茶な使い方したのよ~」

「そ、そんなにですか? 修理費は」

「これ位かしらね」

「       」

「サブウェポンだし。ぶっちゃけ、新しいの買った方が得よ?」

「借りにしておけば良かった~(泣)」

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