織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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なるべく早めの更新と言ったな? 
すまない、あれは嘘になった。

とはいえ、今回は本編と番外編の2本立てですので、楽しんでもらえたら嬉しいです。ではでは~。

因みに、作中のIS学園の休日設定は独自の物です。まぁ、この作品独自設定だらけですが(笑)


第十七話・『ダイシー・カフェ』

「一夏さん、一夏さん。今日はせっかくの休日ですもの。償いの一環という訳ではございませんが、宜しければ今日街に出てご一緒にスイーツでも如何でしょうか?」

 

代表決定後の次の日の朝。その日は土曜日で休日であった。

因みに、IS学園は他国から学生が来ることもあり、基本日本の祝日は適応されていない。それ故に月に1,2回休校日が設けられている。

そんな話はさておき、セシリアは朝から若干気合の入った私服を着て先ほどの台詞を言っていた。

この場ではっきり言っておこう。セシリア・オルコットは織斑一夏に惹かれている。元々、彼に興味を持ったからこそSAO事件を調べる気にもなったのだから。

そして、同時に思っている。好きになってはいけないと。自分にはその資格がないと。

だが、それでも彼女も恋に夢見る年頃。無意識の内に償いという理由をつけてこうして一夏にデートのお誘いに来てしまっていた。

もっとも……。

 

「(よし、予行練習バッチリですわ!)」

 

未だに本人にも会っておらず、寮の一夏と箒の部屋の前でウロウロしているだけなのだが。

 

「んんっ!」

 

彼女は徐に咳払いをして、軽く片手を上げノックする体制を取る。気になるのは箒の妨害だが、何とかして……。

 

「ふぎゃッ!?」

「む? す、すまん。誰かいたのか?」

 

急に扉が開き、バランスを崩しセシリアは転んでしまった。

 

「箒さん! 急に扉を開いては、危ないですわよ!」

「それは申し訳なかったが……そもそも、なぜここにいるんだ?」

「そ、それは……」

 

箒にそう聞かれ、セシリアはしどろもどろになってしまった。余談だが、一夏を含め彼女達は名前で呼び合える程度の関係には為っている。

 

「っと、話を切るようで悪いが少し急いでいた。すまないが、私は失礼する」

「あ、箒さん!?」

 

箒は焦るように小走りでその場を後にした。

 

「そんなに急ぐと危ないですわよ!」

 

呆れたようにそう忠告したセシリアであったが、あっという間に箒の後ろ姿は見えなくなってしまった。

 

「まったく、優雅の欠片もありませんわ」

 

しかし、ふとセシリアは気付いてしまった。

 

「(あら? 箒さんがいなくなったという事は、今部屋には……)」

 

一夏ただ一人のはずであった。それに気付いた瞬間ゴクリと喉がなる。

 

「(い、いけませんわ!これはあくまで、償いの一環! 一環なんですわ!!)」

 

そう、心の中で言いつつも期待し始めるセシリアであった。

すーはーすーはーと深呼吸をした後、セシリアは意を決して部屋をノックする。

 

「一夏さん、一夏さん。今日はせっかくの休日ですもの。償いの一環という訳ではございませんが、宜しければ今日街に出てご一緒にスイーツでも如何でしょうきゃ……ッ!!?」

 

噛んだ。ほぼ予行練習通りであったが最後に噛んでしまった。

少し恥ずかしい思いもしたが、返事がないことに不審に思い首を傾げた。

 

「あれ~? 何してるの?」

「ッ!? の、布仏さん!?」

「うぃ! って言うか、そんなに畏まらなくても良いよ?」

「そ、そう言ってくださるのはありがたいですが……」

 

とは言え、セシリアにとっては本音に対しても負い目を感じている。そのため、どうしてもこわばった表情で対応をしてしまっていた。

 

「それで? なにしてたの?」

「い、いえその……」

 

言い淀むセシリアであったが、この場で偽証をするわけにもいかず結局はこの場に来た理由を話す羽目になった。勿論、償いの一環と言う言葉を連呼して。

その話を聞くと、本音はあーと何とも言えない声を出しながら、バツの悪い顔をしていた。

 

「ど、どうしましたの?」

「おりむー。さっき外出許可貰って出て行っちゃったんだよ~。タイミング悪かったね~」

「な、なんですって!!?」

 

本音は説明した。一夏は、急遽寮に入ったため最低限の荷物しか与えられず今まで過ごしていたため、今日は休みである事を利用して自宅に取りに行っているという事を。

 

「そ、そう言う事ですの……」

 

予定外の事が起きてしまったため、若干焦ってしまったセシリアであったが、理由を聞き納得せざるを得なかった。

 

「(しかし、予定が崩れてしまいましたわ。……あ)」

 

一夏の事で頭がいっぱいであったが、もはや今日は誘うのは不可能だと悟った時点で、目の前の償うべき少女の存在が頭に入ってきた。

どうやら先ほどまでの自分は、浮かれていたようであったと、今更ながらセシリアは実感していた。

償いを口実に気になる男性を誘う事ばかりを考えてしまっていた。償うべき相手はまだいると言うのに。

自分がした事はSAO生還者全員への冒涜だ。広い定義では一夏や本音だけではない。

それでも、今の自分ができる事と言えば、一番迷惑をかけた彼らへの誠意ぐらいしか思いつかなかった。

そして、それは食べ物をご馳走する事ではない。共にお菓子を楽しみながら、互いに言葉を交わし、会話をして理解し合う事こそが目的である。

それ故に、彼女を誘うべきではないかと考えていた。

 

「あ、あの!」

 

だが、一度冷静になった瞬間、もしも拒絶された場合を考えてしまっていた。

先ほどまで一夏に断られるなど微塵も考えていなかった自分が滑稽に思えてきた。

でも、それでもセシリアは。

 

「の、布仏さん!!」

 

若干裏返った声で、勇気を出しながら。

 

「う、うん?」

「か、代わりという訳ではございませんが、もしよろしければご一緒にスイーツなど如何でしょうか?」

 

言ってのけた。彼女は言いきったのであった。

その言葉を聞くと、若干呆ける本音であっが……。

 

「うん!! いいよ~!!」

 

ぱぁと明るい笑顔を見せて了承したのであった。

 

「……そういえば、どうして箒さんはあんなに慌てていたのでしょうか?」

「おりむーの手伝いに行くからじゃない~?」

「あぁ、なるほど……って!!? なんですってぇ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

「一夏。この服はどうだ?」

「ん~? あー、それは3年前のだな。ちょっと着れそうにないな」

「む。言われてみれば、少し小さいか?」

「いや、だいぶ小さいな!」

「あ、あぁ。(着れない事もなさそうだが……)」

 

箒は一夏に確認しながらダンボールに荷物を詰めていく。

 

「だいたいこんなものか?」

「何? もう終わりか?」

 

一夏が寮まで持っていく荷物を整理し終えると、その少なさに箒が驚きの声を上げる。

 

「持っていく服も少なくはないか?」

「う~ん。そうは言ってもなぁ……」

 

とは言えそれは仕方のない話でもあった。SAOから帰還して早半年であったが、まだリハビリも終わりきってない頃にISの適性が発覚していた。それからは千冬と詰め込み勉強の日々。とてもではないが、服など最低限しか買う暇がなかったのだ。

 

「こりゃ、来週には服を買いに行かねぇとな。我ながら自分の服の少なさにびっくりだ」

「服か……」

 

その言葉に箒は考える。そう言えば自分も最近服を買っていないなと。と言うか、今まで政府からの監視生活だったこともあり、あまり自由に行動ができていなかったのだ。

自分もその内買いに行くか。と思った瞬間、ある事を思いついた。

 

「(い、いいいや待て!! 今ならば自然に一夏をででで、デートに誘えるのではないか!!?)」

 

その答えにたどり着き、箒は一夏の方を勢いよく向いた。

 

「いいいいい、一夏!!」

「お、おう?」

 

若干押されながら一夏は箒に聞き返した。

 

「そ、そのだな!!」

 

しかし、いざその事を切り出そうとしても中々呂律が回らなかった。そして、視界の中に古い雑誌を見てしまう。その事が、失敗の始まりであった。

 

「こんな古い雑誌をいつまで持っているのだ!? 整理をしっかりせんか!!」

「なんで怒られてるんだよ!?」

 

結局素直になりきれずにそんな事を言ってしまっていた。あ゛あ゛~と悶える箒を尻目に一夏は受け取った雑誌を見ていた。

 

「うっわ、本当だ。3年前のじゃないか……。ちょろちょろ片付けていたつもりだったんだけどな~」

 

一夏は溜息を吐きながら雑誌をパラパラめくる。流石に3年前の物の中身を覚えてなかったからだ。しかし、あるページを開くとピタリとその動作を止めた。

 

「……」

 

そこにあったのは、ある男のインタビュー。メディアに顔を出すことを嫌った男の数少ない写真と共に彼のインタビューが乗っていた。

茅場 晶彦。

ナーヴギアの基礎設計者にして、SAOの開発ディレクター。

そして、最強のプレイヤー・ヒースクリフの正体。

一夏は、彼のインタビューの中にある言葉を見つけた。

 

『これはゲームであっても遊びではない』

 

「(当時はただの煽りだと思っていたけど、今にして思えばこれはアイツなりの警告だったのかもな)」

 

実際、SAOはゲームではあったが、遊びにはなりえなかった。”あの世界の中で”遊ぶ事はできても、”あの世界自体で”遊ぶには『HP全損=現実の死』のシステムがあまりにも大きかったのだ。

一夏は次第に思い出していくのであった。あの始まりの日の事を。

“プレイヤーの諸君。ようこそ私の作った世界へ―――”

 

「―――ちか!! 一夏!?」

「うぉ!?」

 

だが、急に箒に呼ばれ一夏の意識は現実へと引き戻されたのであった。

 

「大丈夫なのか?」

 

心配そうに自分を見つめる箒に、自分の世界に入り込みかけていた自分が情けなく感じた。

 

「いや、何でもないさ。ちょっと昔を思い出していただけだ」

 

ふと一夏は時計を見た。すでに正午が近く、そろそろ昼食を考えないといけない。そこである事を思いついた。

 

「なぁ、箒。まだ時間あるか?」

「む? 別に今日一日お前に付き合うつもりだったが?」

「お? じゃぁ、丁度いいや。行きたい店があるんだけどさ、良かったら飯はそこで食わないか?」

「あ、あぁ。構わないが」

「おう。じゃ、バイク出してくるから待っててくれ!!」

「う、うむ!!」

 

一夏が部屋を出て箒は考える。

 

「(い、一夏から食事の誘いだと!!? こ、これは期待してもいいのか!!? い、いやしかし!!)」

 

一人、悶々としていたのであった。

 

なお、箒は一夏が帰ってくるまでの間、妄想の中ではホテルまで行っていた事を追記しておく。

 

 

 

 

 

 

「えっと、確かこの辺りに……」

 

一夏はバイクを押しながらキョロキョロと街を歩いていた。箒はどこかぽや~と夢見がちでそれについて行っていた。

と言うのも道中で一夏に『そう言えば、背中に誰かを乗せるのは箒が初めてかもな』とか、『しっかり掴まってろよ、箒』とか若干憧れていたシチュエーションを満喫していたからである

 

「お、ここだ。着いた」

 

そして、一夏はそんな箒を尻目に目的地へと到着していた。看板には『ダイシー・カフェ』の文字が書かれていた。

 

「思ったよりも店を探すのに手間取ったな。腹減ってないか箒?」

「あぁ。大丈夫だ」

「そっか。(なんかボーとしてるけど、大丈夫か?)」

 

箒の様子を気にしながらも一夏は店の扉を開けた。箒もそれに続いて進み。

 

「お、いらっしゃい!」

「――――――ッ!!!?」

 

亭主らしき男を見て固まってしまった。明らかに日本人ではないその肌、その巨体。そして、物々しいルックス。同じ外人でも、IS学園にいる少女達とはまるで違うその姿に箒は息を飲んでいた。

 

「(マ、マフィアだ!? う、売られてしまう!! どこか外国に売られてしまうのか!!?)」

 

箒は絶賛混乱中であった。

 

「って、なんだ。チナツじゃねぇか。久しぶりだな?」

「おう。しっかし、キリトに聞いた通り不景気な店だな」

「うるせーな。平日の夜に繁盛してんだよ」

「(い、いいい一夏!? 何をしている!? 隙を見て逃げなくては!!?)」

 

因みに箒は彼らの会話に違和感を持つ余裕もなく、混乱を続けていた。

 

「ん? そっちの嬢ちゃんは?」

「あぁ、前に話したろ? 幼馴染で昔同じ道場で剣道をやってた娘だよ。IS学園で再会したんだ」

「へぇ、そりゃまた……(チンクの奴が発狂しそうな話だな、おい)」

 

一夏は固まっている箒に、この喫茶店のマスターの紹介をする。

 

「ほら、箒。この人はエギル……えっと、本名はアンド……アンドロイド?」

「アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。そんくらい覚えておけ」

「え~。セシリアと違って覚えにくいんだよ、お前の名前」

「ったく、失礼な奴だな」

 

呆れた顔でそう言うと、彼は箒に顔を向けニカッと笑った。箒は意識が飛びそうであった。

 

「まぁ、そう言う訳だ。この喫茶店の亭主をしている。よろしくな、嬢ちゃん。それと、一応ソイツと同じSAO生還者だ」

「な、に?」

 

その言葉を聞くと止まっていた思考が再度働き始めた。そこで箒は一夏がこの店に来たがっていた理由を理解した。かつての仲間に会いたかったのであろうと。

 

「言って良いのかよ、エギル?」

「ま、隠す事でもないしな」

 

一夏はカウンター席に座り、開いているテーブル席に指を指す。

 

「結構テーブル開いてるし、箒はあっちでゆっくり飯を食ってろよ。俺はエギルと話があるからさ」

 

その言葉に彼女はムスッとした表情になり、どっしりと一夏の隣の席に座った。彼なりの配慮と分かっていても、除け者扱いみたいで癪だったのである。

 

「お、おい?」

「煩い。私がどこに座ろうと勝手だ!」

「お、おう」

 

そんな彼らのやり取りを見て、エギルは思う。

 

「(キリトか、コイツは)」

 

元々、そう言った素質はあったからな~と、どこか納得しながらも彼らにメニューを渡す。

 

「お勧めは、マスターお任せコースだな」

「やめとけって、ぼったくられるぞー」

「人聞きの悪い事を言うんじゃねぇよ!」

「それは良い! ぜひぼったくってくれ!!」

「なんでだよ!!?」

 

一夏が奢る話になっていたが、先ほど仲間外れにされそうになったためか箒は嬉しそうにそれを頼んでいた。

 

「チナツはどうするんだ?」

「……水で」

「了解、マスターお任せコース2名様「サンドイッチセットな!!」……ちっ」

「なんて亭主だ!?」

 

一夏は勝手に注文を決められそうになったため、慌ててメニューを言った。

しばらくすると、料理が出される。箒の具材タップリながらもヘルシーなスパゲティにサラダ、加えてオレンジジュース。対する一夏はサンドイッチにコーヒーであった。

 

「(うわ、結構いい材料使ってるな。高いぞ、こりゃ)」

 

一夏は箒の料理を見て財布の心配をしていた。

 

「……で? 今日はどうしたんだ?」

「ん?」

 

急に話しをふられ、一夏は首を傾げた。

 

「別に顔見せに来ただけじゃないんだろ?」

「やっぱり、わかるか?」

「いい加減、長い付き合いだしな」

「違いない。じゃぁ、大体わかるんじゃないか?」

 

一夏がそう言うと、エギルはあるタブレットを出す。

 

「まぁ、目当てはこの近況が知りたいんだろ?……≪ザ・シード≫のな」

「あぁ、そうだ」

 

一夏は、複雑そうにそのタブレットに視線をやりながら受け取り、箒は何の事かよく分からなかったが、怪訝な顔をしながら彼を見守っていた……。

≪ザ・シード≫……これを語るのは、彼らがSAOから生還して二ヶ月経った頃の話をしなくてはならない。

当時、キリトを中心としたパーティー全員に、ある物が送られてきた。それは、ALO体験版とそれにログインする時に使用する特殊コード。さらにはある手紙が入っていた。

加えて、キリトには圧縮されたプログラムが入ったメモリーカードが付いていた。

プログラムの名前は≪ザ・シード≫フルダイブ型VRMMOを動かす環境をつくるプログラムパッケージであった。これさえあれば、3Dオブジェクトとゲーム用のサーバーさえ用意すれば、誰でもVRMMOの運営が可能という今までに類を見ない画期的なプログラムであった。

そして、手紙にはこう書かれていた。

 

『         皆で相談して決めるといい。            ヒースクリフ』

 

と。

特殊コードを使ってALOにログインした俺達に用意されたのはSAO時代のアバターと76層アークソフィアにあったエギルの店と全く同じのフロアスペース。出る事は出来ないその空間ではあったが、彼らは再会を喜び合い、それをどうするか話し合った。(手紙が届かなかったのか、残念ながらチンクは連絡がとれていないままであったが)

そして、話し合いの結果エギルの協力のもと、世界中のサーバーに誰もが使えるようにしてもらった。

色々な事を語り合ったが、それでもあの世界のすべてを否定できない物だったからだ。

 

「実際に稼働しているのも相当な数だな」

「あぁ、3年前はSAO一つだったのが嘘みたいだ」

 

ALO…アルヴヘイム・オンラインを始め、数多くのVRMMOが今や溢れかえっていた。

和風ファンタジーをイメージしたヤマトソウル・オンライン……通称YSO。

荒廃した近未来を舞台としたガンゲイル・オンライン……通称GGO。

変わり種では、すべてのアバターがツインテールの似合うような姿に設定されているツインテールヘヴン・オンライン……通称2TO。

等々。

数えるだけでも馬鹿馬鹿しい数だ。

 

「このツインテールヘヴン・オンラインってのは興味が…「ギロッ!!」…じゃなくて、ガンゲイル・オンラインってのは、どうなってるんだ?」

 

一瞬邪な考えをしてしまったが。箒にそれを感づかれたのか睨まれてしまい、すぐに話題を変えた。

 

「あぁ、リアルマネートレーディングが唯一できるゲームだな。多い奴だと月に10万稼げるって話だ」

「それは……」

 

その答えに一夏は渋い顔をする。いずれそう言ったゲームも出るかもと思っていたが、少し早いとも思っていた。

 

「今は10万がいいとこだが、プレイヤー総数が増えれば20万から30万稼げるって話も……」

そんな話を続けていると、カランコロンと店の扉が開く音がした。

 

「いらっしゃい!」

「来てやったぞ、エギル~」

 

その声に一夏は聞き覚えがあった。かつて自分達の中心にいた男の声であった。そして、IS学園に行った自分を気に掛けてくれていた、命を救ってくれた憧れの存在。

 

「……キリト!?」

「って、チナツか!?」

 

思いもよらない再会に驚く一夏。そのまま話しは再会を喜び合う内容へと変わる……はずであった。

 

「も~、お兄ちゃん待ってよ~! 一人で勝手に……ッ!?」

「……ッ!!」

 

話について行けないと分かっていた箒は、特に自己主張などもせずに一夏の傍に座ってぼーっとその風景を見ているつもりであった。だが、キリトと呼ばれた少年が入ってきた後に来た少女の姿を見て目を見開いた。その顔は青ざめたものであった。

 

「し、篠ノ之さん……?」

「き、桐ケ谷……」

 

この時、一夏は知らなかった。別々の場所で仲間になった彼女達にあった確執の事を。

 




モッピー何でも知ってるよ。この日を境に、休日はIS学園の生徒がちらほらダンシー・カフェを訪れる事を。
モッピー何でも知ってるよ。この事からエギルんはイッピーに感謝するって事を。
モッピー何でも知ってるよ。実はこのお店を広めたのはモッピー弐号だって事を。
モッピー何でも知ってるよ。エギルんはイッピーに感謝して損したって思ったって事を。



モッピー現実逃避しているよ。やたらでかい変な女の人に、かれこれ数時間説教されている事から……。

……騙されただけだもん(ホロリ)

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