>カナリア
>『ちょっと大きいかな?』カナリアの持ってきた少々おっさんくさい浴衣を着せられて、シンとハイネは横に並ぶ。
>ハイネ
>『いや、大丈夫ですよ』
>シン
>『オレもちょうどです』
>シンは紺色、ハイネはシンのより一回り大きいサイズの灰色の浴衣。
>カナリア
>『ウンウン、2人とも似合 ってる似合ってる』
>カナリアは水色っぽい生地に波模様があしらわれた浴衣を着ている。3人並ぶと、カナリアがやたら際立って見える。まぁ、浴衣なんだから、男は地味なものでちょうどいいぐらいか。
>しかし、こうやって見ると、カナリアも結構かわいいと改めて思う。
>カナリア
>『よ~し、んじゃ行ってみ よー』
>カナリアが両手で2人と腕を組み、強引に連れ出す。ハイテンションなムードメーカーに腕を引っ張られ、抵抗する余地もないシンとハイネは、カナリアに従属するしかなかった。
>シン
>『どこ行くんですか?』
>カナリア
>『2人とも、クエスト終わ ってすぐにこっちへ来た んでしょ。だから、まず は腹ごしらえ』
>まずは、ってこれから引っ張り回すつもりなのか、このポニーテールは。
>こんなテンションであちこち連れ回されたら、気力がもちそうにない。
>しかし、カナリアのこのテンションに2人は抗うことができなかった。
>
>
>トキ
>『そうかい。とうとう来た のか』
>慰霊碑の前に立つ年配の女性が悲しげに呟いた。その後ろにはセキレイとハゲタカが並んで立っている。
>トキ
>『アイツが現れて2年。運 命の歯車は、確実に噛み 合い動き出してるね』
>トキは静かに慰霊碑に手をのせる。
>墓石のような形の水晶の慰霊碑には、数百名程の名前がびっしり記されている。これは何の慰霊碑なのか?ハゲタカ
>『彼に、会われますか?』セキレイの隣にいるハゲタカが、慰霊碑をなでるトキの背中に問い掛ける。
>振り向きもせずに、トキは首をゆっくり横に振った。そして、トキはその場にしゃがみこみ、慰霊碑に記された名前を順に指でおっていく。
>トキ
>『知らぬ方がいい。この子 は…』
>慰霊碑の名前を指でおっていたトキが、指を止めた。普通、慰霊碑というものは、死者の鎮魂や霊魂を慰めそれを後の世に伝えるためにある。
>しかし、トキが指を止めたところ、その指が指し示す名前は紛れもなく、『シン・アスカ』だった。
>セキレイ
>『知らぬが仏ってこと?』険しい表情のセキレイが、少し怒り混じりの質問を放つ。
>そんなセキレイをハゲタカは横目で見下ろす。
>セキレイ
>『あの子…ううん、あの子 たちには、何の罪もない のよ。それを、知らない 方がいいって…。それっ て結局、アンタが逃げて るだけってことなんじゃ ないの?』
>吐き捨てたセキレイ。
>普段から口の悪いセキレイを見てきているハゲタカであったが、この瞬間はただ純粋に驚いていた。
>ハゲタカ
>『私も左に同意です。彼、 シン・アスカにはすべて を知る義務があります。 その慰霊碑に名を刻まれ た者たちや亡きヴェステ ンフルスをはじめとする 、犠牲となった数多の人 々のためにも』
>慰霊碑には、確かにシンの名前が刻まれている。
>先ほども言った通り、慰霊碑というものは、死者の鎮魂を慰めるためにある。ここではハゲタカの言っていた『犠牲になった人々』というのがそれにあたるのであろう。
>それならばなぜ、シンの名前が慰霊碑に刻まれているのか。
>もしや、『犠牲になった人々』の『犠牲』とは、単純に“死”を表したものではないのかもしれない。
>もっと別の、もっととてつもない何かなのだろうか。トキ
>『一度背負った罪は、償う ことはできても、決して 消し去ることはできない のだよ。お前たちはこの 子に、そんな罪を背負わ せるつもりかい?』
>トキが優しく慰霊碑に刻まれたシンの名をなでる。
>そして、ゆっくりと立ち上がり、セキレイとハゲタカに向き直って、その眼で語りかけてくる。
>トキ
>『アイツを見てればわかる だろう。犯した罪と、自 らの原罪に苦悩するアイ ツを』
>セキレイ
>『そんな言い方するな。罪 とか原罪とか、そんなも の、今のアイツには何も 関係ない』
>難しい論理を説くトキに、セキレイが食らいつく。
>トキ
>『言ったろ。罪は、決して 消し去るができないのよ 』
>トキが語る罪の在り処。
>未だ知らされることのないシンの罪と、アイツと呼ばれる者の原罪。
>罪という呪縛によって絡み合う運命の糸は、確実に少年たちを巻き込んでいく。
>
>そんな頃、己の議題で論争を繰り広げられていたシンは、当然ながらそんなこと知るはずもく、相変わらずハイテンションなカナリアに手を引かれていた。
>現在は、公園のような広場で一休み中。
>シン
>『もう食えねぇ…』
>イスの代用に置かれていると思われる岩に腰かけたシンが、青ざめた表情で空を見上げる。
>事の発端は三時間程前にさかのぼる。
>カナリアに腹ごしらえと言われて連れ出されたシンとハイネは、連れてこられた店の主人にやたら気に入られ、とんでもない量の飯をサービスしてもらった。もちろん、料金はタダ。
>サービスしてくれて料金がタダになったというのはいいのだが、そうなると出された料理を残せないのだ。結局、そのとんでもない量の飯を処理するのに二時間オーバー。ハイネは『これぐらい食わないと男じゃない』とか言って、さらに店の主人と意気投合していたし。
>カナリアも女性にしてはなかなか食べる方で、ハイネとカナリアと店の主人でめちゃくちゃ盛り上がっていた。
>シンだけは、嫌いなおかずがあるから残したいのにそれを先生が許さず、周りの友達はみんな食べ終えて遊びにいって、自分だけ教室で泣きながらそれを食べてる小学生のようになっていた。
>ハイネ
>『今の店長さん、いい人っ スね~』
>カナリア
>『でしょ~。テキトーなこ と言っておいたら、いろ いろサービスしてくれる しね』
>なんかハイネとカナリアは、胃袋破裂寸前のシンをほったらかして、いい感じに盛り上がってるし。
>カナリア
>『そうだ。腹ごなしに一手 手合わせ願えない?』
>いきなりカナリアが妙な提案をした。
>手合わせ、つまり何かしらの勝負をしようということだ。
>当然、2人は『え?』って感じだ。
>いつも通り、カナリアはニコニコと笑っていた。
>
>
>
>スコール
>『ハァア』
>灼熱の大気に響くスコールの声。
>青い髪の青年スコールの大剣【滅慄叉】と、黒轟竜ティガレックス亜種の剛爪が激突する。
>一進一退の攻防。黒轟竜の破壊的な威力のクローを真っ正面から受け止めたスコールも力負けはしていない。
>ケネス
>『オゥラ』
>スコールの背後から飛び出したケネスが、ライトボウガン【慟哭スル魂】でティガレックス亜種を銃撃する。放たれた4発のLV3徹甲榴弾はすべて命中、着弾直後大きな音と閃光とともに爆発した。
>爆発によって怯んだティガレックス亜種から、スコールはその腕をはね除け後方にさがって間合いをとる。スコール
>『フゥ~、なかなかいい感 じじゃん。ケン』
>ツンツンした青い髪が特徴のスコールと呼ばれる青年が、大剣【滅慄叉】を肩に担ぎ上げて、視界の左の方にいるケネスを称賛する。ケネス
>『まぁな』
>ライトボウガン【慟哭スル魂】に弾を装填しながら、ケネスは親指を立ててかえす。
>ティガレックス亜種は、徹甲榴弾によって生じた爆煙に包まれている。
>ケネス
>『』
>と、その時、その爆煙の中から、溶岩の塊がケネス目掛けて飛ばされてきた。
>ケネスはとっさに装填したばかりのLV3徹甲榴弾を放って、その溶岩の塊を爆砕する。
>しかし、それはフェイクだった。
>爆砕した溶岩の塊の後方から、ティガレックス亜種が迫っていた。
>ケネス
>『…マジ?』
>砕けた岩をさらに砕く勢いでティガレックス亜種が怒涛のドラゴンクロー。
>回避不可能と察したケネスは受け身の体勢をとる。
>そこへ、【滅慄叉】の刀身を盾にスコールが両者の間に割って入った。
>スコール
>『ったく、もっと動体視力 鍛えとけ』
>ここでもスコールはティガレックス亜種の攻撃を防ぎきった。
>ケネス
>『スコールがいるから大丈 夫だよ』
>ケネスは跳び上がって、ティガレックス亜種の真上を弧を描くように飛び抜ける。
>ケネスを目で追って顔を上げたティガレックス亜種。スコール
>『よそ見してんじゃねぇ』それを見計らっていたように、スコールはティガレックス亜種の腕をはじき、顔面を斬り上げる。
>ティガレックス亜種の黒い厚鱗がえぐれ、大きく後ろへ後退する。
>そして、ケネスはその後退したティガレックス亜種の背に着地した。
>ケネス
>『はっ、喰らえ。徹甲榴弾 LV5だ』
>ケネスはそのティガレックス亜種の背中に、【慟哭スル魂】の銃口を密着させ、ゼロ距離で引き金をひく。反動でぶっ飛んだケネスは、それをうまく利用してスコールの隣に着地する。
>直後、ティガレックス亜種の全身を閃光が包む大爆発。
>ハンパじゃない爆煙がその場を覆い尽くす。
>スコール
>『これは効いたな』
>しかし、その爆煙はすぐに消し飛ばされた。ティガレックス亜種の強烈な咆哮によって。
>それには、ケネスとスコールも思わず手を顔の前に出してしまう。
>爆煙が一気に消し飛び、そこには眼を赤く染め上げたティガレックス亜種が。
>ケネス
>『あ~あ、キレちゃった』スコール
>『あれだけ斬ったり、撃っ たりしてたんだから、無 理もない』
>怒り状態になった黒轟竜ティガレックス亜種。
>2人は武器を持ち直し、ティガレックス亜種に向け、再度戦闘体勢をとって見せる。
>スコール
>『ここからが本番だぜ』
>ケネス
>『がってん』