ファイナルハンターG   作:N_ローゼン

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黒い記憶

>サク

>『お気をつけて』

>翌朝、シンとハイネの姿は集会所にあった。

>たった今、受付にて契約を済ませ、クエストにたつ直前だ。

>ハイネ

>『おう』

>シン

>『いってきます』

>サクに背を向けシンとハイネは船着き場に向かう。

>サクはその後ろ姿にやはり何か感じるものあるようだった。

>イク

>『やっぱり似てるな、あの 2人』

>サク

>『うん。本当に』

>イクもそれに共感し、記憶に残る過去の映像と現在のシンとハイネの後ろ姿を重ねる。背を向け立ち去っていく姿が記憶の人物と重なるのだ。

>

>2人は船着き場に出て、いざ湖へ繰り出す。

>しばらく気球での移動が続いていたので、船(いかだ)に揺られる感覚は懐かしく思える。

>シン

>『え~と、今回のクエスト は…』

>ハイネがいかだを漕ぎ、シンはそこに腰を落としてクエストの詳細を記した用紙を取り出す。

>

>【肉食竜討伐“密林編”】指定地:密林

>報酬金:2500z

>契約金:500z

>成功条件:ランポス20頭     の討伐

>制限日時:24時間

>

>これが今回、シンとハイネが受けたクエストの詳細だ。無論、討伐クエストである。

>多分お気づきではないと思うが、このクエストは2人が初めて受けた討伐クエストでもあるのだ。

>今まで密林、雪山、砂漠と下位ハンターの基本になるこの3つの指定地をめぐり採取クエストを行うことで、少なからず経験をつんできた。

>そして今回、それらの経験をいかすべく討伐クエストに踏みきったのだ。

>ハイネ

>『とうちゃ~く』

>いかだは波の勢いで浜に打ち上げられる。シンとハイネは白い砂浜に降り立ち、いかだを波の届かないところまで引っ張りあげる。それが2人ではなかなかに重労働だ。前回はスティングたちがいっしょだったので、そう思うこともなかったのだが。

>シン

>『ふぅ~、とりあえず、ラ ンポス探すか』

>シンが額の汗を裾でぬぐいハイネに同意を求める。

>『そうだな』とハイネも一息ついて答える。

>数種類あった討伐クエストの中でこのクエストを選んだのには、ちょっとした理由があった。2人とも、そろそろ武具の強化を考えているのだ。

>少し早いのでは、と思うかもしれないが、2人とも両親が優秀なハンターであったため幼少のころよりそれなりの訓練は受けてきた。なので、ハンターとして最低限以上の実力はある。

>それに本編には書いていないが、練習やトレーニングという形で2人とも日々鍛錬を怠っていない。

>ハイネ

>『この手の鳥竜種は群れる 習性があっからな。群れ 見つけんのが近道だろ』シン

>『けど、ドスランポスに遭 遇したら終わりだぜ?』ランポスを主とするこの手の鳥竜種は、ドスと呼ばれるリーダー格に率いられ群れをなす。もちろん、ドスは通常のものよりも高い戦闘ステータスを持っており、あらゆる意味で群れの配下のものを統括することができる。今の2人の武具では少々厳しいのが現実だ。ゆえに、武具の強化を考えているのだ。

>2人は支給品をポーチにつめ、ランポスを目指して歩き始める。

>

>

>イク

>『アンタたち、もう行くの か?』

>シンとハイネがクエストに発って数時間後、集会所にてイクが声を張り上げていた。

>ケネス

>『おはよーさん』

>そこに現れたのは紛れもなく、あの【つがいの猫】だった。

>銀髪のテンパがイクに午前のご挨拶をかます。

>イク

>『昨日帰ってきたばっかな のに、元気だね~』

>通常、ハンターは大きなクエストを終えると長期休暇をとる。と言うかハンターには、クエストに出てかかった日程分、帰ってからはそれと同じ日数休養をとる、というセオリーがあるのだ。

>ケネスたちはセルケトの討伐に6日かけたので、それと同じ6日の休養をとるのが普通なのだ。

>ヴァニラ

>『ホントよ。振り回される こっちの身にもなってほ しいわ』

>銀髪の隣には、少々ご立腹の金髪の女の子が。

>腕を組んで顔をしかめて、いかにも『機嫌悪いです』を表現したようなそのたたずまい。

>ケネス

>『だから、無理についてこ なくてもいいって』

>ヴァニラ

>『誰も無理なんかしてない 』

>ケネスは『はぁ』と息をつき、イクとサクはクスクスと笑っている。

>イク

>『そういえばさ、ちょっと 気になってたんだけど、 ゾルディックのじいさん から話聞いた?』

>突然の話題変換。

>ヴァニラ

>『話?』

>サク

>『ゼノン様、昨日まで砂漠 のクロノスに行かれてた んです。それに同行され たのが、あの…』

>ケネス

>『あ~、その話なら聞いた 』

>ケネスがサクの言葉に割り込んだ。気のせいか、サクにその先を口にさせたくないかのように。

>ケネス

>『イザークの弟と、キラの 息子だろ』

>ケネスがヴァニラの顔を見る。

>ケネスと目が合ったヴァニラは表情を暗くしてうつむく。

>ケネス

>『よもやこんなところで再 会を果たすとは思いもし なかった。運命ってのに は、ホント驚かされる』ケネスの作り笑いに、イクとサクはこのような質問はするべきでなかったと、後悔に似た念にかられる。

>ケネス

>『彼らには何も言わんでく れよ。すべてオレがケリ つけるから』

>この話題はケネスの決意をもって終了した。終了させたかったというのが本音かもしれない。

>ヴァニラ

>『カッコつけてんじゃない っての』

>ヴァニラがケネスの背中をバシッとはたいた。

>ケネス

>『やっぱガラじゃねぇな』その後、ケネスとヴァニラはクエストを受注し指定地までの移動のため、屋敷にゼノンの気球の整備を手伝いに戻った。

>イク

>『やっぱり、あの2人とケ ンを引き合わせるのは、 どうかと思うんだけどね ぇ』

>サク

>『こういうのを、運命の歯 車が回りだしたって言う のかしらね』

>

>ヴァニラ

>『ケイ、どうするのよ?』集会所からゼノンの屋敷まで帰途、ケネスとヴァニラの影は前後に並んで歩いていた。

>ケネス

>『…』

>先を行くケネスに問いかけたヴァニラであったが、ケネスの応答はなかった。無視したわけではない。

>ヴァニラの漠然とした問いには、様々な意味や思いが込められていた。

>ケネス

>『…キラのガキ…』

>ヴァニラ

>『ケイ』

>かすかなケネスのつぶやきをヴァニラは聞き逃さなかった。

>ヴァニラはとっさにケネスの肩をつかむ。

>ケネス

>『』

>ヴァニラに触れられたケネスはピクッと反応し、その背後を振り返る。

>その時、眼に映った少女の姿に少年は妙な安堵感を感じた。

>ケネス

>『いや、何でもない』

>ケネスは前に向き直り左手で左側頭部を押さえて、再び歩きはじめる。やや早足で。

>少し距離がひらきはじめたところでヴァニラもケネスを追って駆け出す。

>ちょうどその瞬間、ケネスはそのタイミングを見計らっていたかのように、再度振り返る。

>ヴァニラ

>『?』

>ケネス

>『ヴァニラ、オレ、どうす りゃいいんだ?』

>

>

>ハイネ

>『ハァア』

>ハイネの変幻自在の斬撃。それは重量武器である大剣を振るっているとはとても思えない華麗な動きだった。

>シン

>『えぇい』

>またシンは小回りのきく双剣で、それに準じた戦闘を繰り広げていた。

>一撃必殺のハイネと、小回りを活かしたシンの連続攻撃。2人は真逆の戦闘スタイルであるが、それがまた互いの欠点を補いあい、なかなかのコンビネーションをかなでていた。

>シン

>『ハイネ』

>シンは最後に残ったランポスに、側面から軽い斬撃を与える。

>ランポスは、どのような攻撃にも怯むという、一種の弱点がある。

>一瞬怯んだランポス、それを見逃すハイネではない。ハイネ

>『任せぃ』

>天を裂くような縦斬りが炸裂。ランポスは真っ二つとなった。

>ハイネ

>『これで何体目だ?』

>シン

>『10匹。ちょうど半分だ 』

>シンは刃に付着したランポスの血を専用の用紙で拭き取りながら、ハイネの適当な問いに答える。

>クエスト開始数時間で、早くも10匹討伐。順調な滑り出しだ。


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