ファイナルハンターG   作:N_ローゼン

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朝霧の帰還

>ハイネ

>『ゼノンさん、オレたちも 』

>シン

>『いくらスティングさんた ちでも、2匹同時はキツ いですよ』

>飛び立った気球はヴェルガンデをふりきり、雲の下辺りを飛行していた。

>いくらヴェルガンデといっても、ここまでの跳躍力はないだろう。

>ゼノン

>『今さら戻れっていうのか 。それにお前たちはヴェ ルガンデについて何も知 らんだろ。昨夜のゲリョ スとはわけが違う』

>ヴェルガンデ、響狼と呼ばれる牙獣種。特徴は白く美しい毛並みと、赤い目。常にオスとメスが一対となって行動しており、その長けた連携攻撃は人のそれも比ではない。また肺活量がすさまじく、繰り出される空気砲は弾丸の如き破壊力を持つ。さらに脚力も異常なほど発達しており、それをいかした跳躍や足蹴も主要技の一つ。“火竜の牙獣種版”とも例えられたりする。額に角があるのがオスで、尾の先端が二股に別れているのがメス。主に密林奥地、樹海奥地などに生息する。

>ゼノン

>『アイツらもだてにHR6 を名乗っているわけでは ない。ここはアイツらに 任せる』

>確かに、一瞬とはいえシンやハイネもヴェルガンデと直接対峙したのだ。その時に悟ったはずだ。このモンスターはオレたちの手におえるレベルではないと。しかしだからといって、そこで諦めてしまうようでは主人公として失格である。

>ゼノン

>『お前たちのやるせなさも わからんではないが、お 前たちにできることは何 もない』

>シン、ハイネ

>『…』

>ゼノン

>『強いて言うなら、今は生 き延びて次に活かせ』

>

>

>アウル

>『スティング、どうするよ ?回復薬とかもう全然残 ってないぜ』

>スティング

>『コイツらを討伐する気は 毛頭ないさ。オレたちは ゼノンさんたちが逃げ切 るまでの時間を稼げばそ れでいい』

>ステラ

>『もう、大丈夫』

>残った3人は、現在ヴェルガンデと交戦中だった。

>とは言っても、3人はセルケトを討伐した直後だ。所持しているアイテムだけで倒せる相手ではない。

>アウル

>『でも、これじゃオレたち が逃げ切れるか?』

>先ほどの説明の通り、ヴェルガンデは脚力が異常に発達している。そのため、ハンパない速力を有する。さらにヴェルガンデは2匹いる。いくらスティングたちであっても、このヴェルガンデの追跡を振り切るのは不可能だ。

>スティング

>『』

>考える間もなくヴェルガンデが襲いかかる。

>強靭な前足でのクロー。

>スティングはガンランスを地面に突き刺し、その状態で砲撃する。その衝撃で左に大きく跳び、ヴェルガンデのクローを回避した。

>スティング

>『くそ、埒が明かねぇ。ア ウル、ステラ、お前ら閃 光玉とか余ってねぇか? 』

>アウル

>『あったらとっくに使って るよ』

>ステラ

>『持ってる』

>おお、ダメ元で聞いてみたスティングであったが、なんとステラが持っていたとは。やはり言うだけ言ってみるべきだな。

>てゆーか、あるんならもっと早くに言ってもらいたいな、ステラ。

>スティング

>『何個?』

>ステラ

>『一つ』

>閃光玉と言っても、モンスターの目を眩ませられる時間はほんの数秒。ましてやヴェルガンデは2匹いる。つまり逃げるなら、一つの閃光玉で2匹のヴェルガンデをひるませなければならない。

>アウル

>『うわっと』

>アウルは後方からのヴェルガンデの攻撃を、回転を加えた跳躍でかわした。

>続いてもう一方のヴェルガンデがスティングに空気のブレス。ヴェルガンデの空気ブレスは無属性であるが、威力が凄まじい。

>スティング

>『っ…』

>スティングは砲撃で空気ブレスを相殺する。

>爆煙で一瞬視界が閉ざされたが、ヴェルガンデはそれを突き破って、スティングにクロー。

>スティングは槍で受け止める。そしてそれをうまく受け流し、ヴェルガンデの腹下に回り込んだ。

>スティング

>『オウラッ』

>盾を捨て、両手で槍を持ち、ヴェルガンデの腹に槍でフルスイング。

>ヴェルガンデ

>『ウガァ』

>軽く吹っ飛んだ。今の一撃は大きいダメージとなったのは一目瞭然だ。

>スティングはすぐさま盾を拾い上げ、次の攻撃に備える。。

>もう一方のヴェルガンデはスティングに吹っ飛ばされた方のヴェルガンデに駆け寄っていく。

>スティングに吹っ飛ばされたヴェルガンデはオス、駆け寄ったヴェルガンデはメスだ。

>アウル

>『ステラ』

>ステラ

>『うん』

>うまくヴェルガンデが2匹並んでくれた。

>ステラは手にしていた双剣を背に納刀し、閃光玉を取り出す。

>倒れていたヴェルガンデも体勢を立て直し、再び攻撃姿勢をとる。

>スティング

>『今だ、ステラ』

>2匹がこちらを向いた。

>スティングの合図を待たずして、ステラは閃光玉を投げた。

>瞬間に強烈な閃光が辺りを満たした。

>見事、2匹のヴェルガンデの目を眩ませた。

>スティング

>『さっさとずらかるぞ』

>スティングが、ヴェルガンデがピヨッたことを確認し叫んだ。

>3人は木々に紛れてその場から退散する。

>

>アウル

>『ゼノンさんの気球に乗せ もらうつもりだったのに 、とんだ災難だよ…』

>というアウルの呟きがあったことは、アウル本人しか知らない。

>

>

>時刻は午前9時くらい。

>シンとハイネを乗せたゼノンの気球は、無事ティーズに到着した。無事、というわけでもない気はするが。シン

>『…』

>ハイネ

>『…』

>スティングたちに協力できなかったことがやや心残りではあったが、久しぶりのティーズだ。

>気球はゼノンの屋敷の裏側にある離発着場に着陸する。屋敷の裏にこんなものがあるなんて、とシンとハイネが驚く。さすがは何の通った運び屋。

>ティーズに到着する直前にココがスキル“以心伝心”を使って連絡を入れていたので、その離発着場では多数のアイルーが出迎えてくれた。

>ヒメ

>『おかえりなさい』

>まずはこのアイルー。

>純白の毛並みに、首に水色のスカーフ。尻尾によくわからんアクセをつけたこの屋敷最高位のアイルー、ヒメが恭しく一礼した。

>ゼノン

>『ああ、ただいま』

>ゼノン、ココ、シン、ハイネの順で気球を降りる。

>そこにいたアイルーたちにハイネは驚かさせされる。ハイネも、アイルー養成所であるシドの店で育ったのだ。だから少しくらいアイルーを見る目はある。ここにいるアイルーたちは、皆レベルが高い。

>ゼノン

>『気球の整備と点検をして おいてくれ。ワシもすぐ に行く』

>ヒメ

>『承知しました』

>ゼノンからの指令を受けたヒメはアゴで他のアイルーたちに指示を出す。

>それを機に待機していたアイルーが一斉に気球に群がる。

>ココ

>『ニャ~、ヒメ姐。さっき ヴェルガンデに襲われた んニャ。その前はゲリョ スに襲われたニャ。久し ぶりにクロノスに行った けどニャ、あの店の店主 は相変わらずだったニャ ~』

>ヒメ

>『はいはい、後でゆっくり 聞かしてもらうから』

>ゼノンの後にアイルーのヒメとココ、その後にシンとハイネが続く。

>ゼノン

>『ヒメ、小僧どもは帰った か?』

>ヒメ

>『いえ、クエストからは戻 られたみたいなんですが 、屋敷には帰られません でした』

>ゼノンの屋敷には、ゼノン本人とアイルーたちの他にまだ誰かが住んでいるらしい。クエストに行く前のヒメも、クロノスで出会ったカナリアもそれを促すようなことを言っていた。

>ゼノン

>『お前たちはこれからシド のところに行くのだろ』ハイネ

>『はい。クエストの予定日 時がだいぶ過ぎてるから 報酬金はもらえないと思 いますけど。一応、この サボテンの花だけでも届 けようと思います』

>その後、シンとハイネは世話になったゼノンとココたちアイルーに別れを告げ、ゼノン邸を後にした。別れ際にゼノンも『クエストに行きたければ、また送ってやる』と言ってくれた。その時の2人は、ただ純水に嬉しかった。ハンターだと認めてもらえたような気がしたのだ。

>ハイネ

>『お~い、シド~。いるか ~?』

>シドの店ストレイキャッツの扉を蹴り開ける。

>時間としては、まだ開店前である。

>シド

>『ハイネ~、それにシンち ゃ~ん。おかえりなさ~ い』

>語尾を伸ばす口調はやめてほしい。吐き気が…。シンは相変わらずシドの口調には慣れない。

>開店前なので店内に人はいない。シドを加えた3人はハイネのお気に入りの席であるテラスの席に腰をおろす。

>シン

>『遅くなってすいません』ハイネ

>『まぁ、いろいろとあって な。報酬金はいらねぇか ら、サボテンの花だけは 渡しとくよ』

>そう言って2人は、10個のサボテンの花を出す。

>シドはそれを見て目を瞑った。それから数秒。

>シド

>『サーシャには会った?』思いがけない質問に、ハイネは脳ミソを揺すぶられたような感覚に見舞われた。

>

 


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