ソーマ
>『そろそろ着くぜ、お2人 さん』
>気温はぐっと下がり、辺りの大地は白く色づいてきた。標高が高いので、気圧の変化に対し、耳が変な感じになる。
>シンとハイネはクエストの詳細が書かれた用紙を読んでいた。
>
>【雪の山のガウシカ】
>レベルは☆1
>報酬金は1500Z
>制限時間は24時間
>指定地は雪山
>クリア条件は[ガウシカの角]10本の納品。
>
>フィンクス
>『茂みの中に着陸する。キ ャンプ地はそこになるな 』
>雪山の場合は、密林のように木の上で一夜を明かすということはできない。
>理由は簡単。寒いから。
>寝たら、そのまま目が覚めないというのがオチだ。
>ゆえに、拠点のキャンプ地を選ぶ際には十分か配慮が必要なのである。
>気球は小高い崖の上に着陸した。
>ソーマ
>『オレたちは雪山上空に滞 空しているから、何かあ ったら合図してくれよ』キャンプ地にテントなどの小道具を並べ、再び空へ飛び上がっていく。
>シンとハイネはソーマとフィンクスを見送って、クエストスタートだ。
>シン
>『支給品はっと』
>さっそく支給品箱を開け、中を物色する。
>[地図][応急薬][携帯食料][ホットドリンク]など、必要最低限のものが入っている。
>当然、仲良く半分こ。
>ちょっとここで2人とも同様。
>2人とも、ホットドリンクを持ってきていなかったのだ。
>一応、支給品にはあるのだが、雪山のクエストに出る以上、ホットドリンクは必須中の必須アイテムである。
>今後、こんなことのないようにと誓うシンとハイネだった。
>ハイネ
>『よし、しゅっぱ~つ』
>勢いよくキャンプ地を後にする。
>目的はガウシカだ。
>ポッケ村出身のシンにとっては、言わずと知れたモンスターだ。
>ガウシカ、雪山に住む草食モンスターで、危害さえくわえなければ気性はおとなしい。
>ハイネ
>『まずはガウシカを探さな いとな』
>そう、ほとんどのクエストでは、『狩る』を行う前に『探す』をしなければならない。
>今回は目標が複数生息しているのでさほど難しくはないが、本来なら指定されたモンスターをピンポイントで探し狩らなければならない。
>そのためにも、膨大な数のモンスターの情報をすべて頭に叩き込まなければならないのだ。
>それらの知識は勉学によってよりも、経験で身につけるもの、己の体で時間をかけて習得するしかない。
>ハンターとは、『経験』がすべてなのだ。
>と、まぁ、そんなこと考えたり考えなかったりしつつ、ガウシカについての知識は限りなくゼロに近いハイネは、シンを頼っていた。シン
>『雪原にもいるけど、ガウ シカはこういう場所も好 むんだよ』
>ここは緑が顔を出しているエリアだ。雪山では珍しい。
>ここではまだホットドリンクを飲まなくても大丈夫。ハイネ
>『でも、アレってポポじゃ ね?』
>巨大な毛と肉の塊。
>雪山の草食獣ポポである。7頭の群れとなり、シンとハイネの前をのそのそと歩いている。
>ハイネ
>『肩慣らしに、いっちょや るか』
>[生肉]の調達も踏まえてポポを狩ることになった。目標は、なぜか一番デカいやつ。
>ハイネいわく、『ちっこいやつなんてセコいこと言わずに、どど~んとデカいやついっとこうぜ』、と…。シン
>『よし、オレが回り込む。 スキをついて斬り込んで くれ』
>ポポは仲間が襲われると、他は逃げる習性がある。
>欲張って7頭全部狩ろうとするのは無理だ。
>とりあえず目標は一番手前にいる一番デカいポポ。
>ハイネの親指を立てたポーズを確認し、シンが駆け出す。
>シン
>『ハァ』
>岩の上を駆け上がり、そこから飛び出して斜め上から斬りかかる。
>ポポ
>『う゛おぉ』
>うめき声をあげるポポ。
>やはり鱗がないといっても、一撃で決めることはできない。
>シン
>『まだまだぁ』
>シンは片手の剣を持ち換え、回転斬りをする。
>ふらついた足を持ちこたえさせるポポ。
>それを見た他のポポは一斉に体勢をかえる。
>ハイネ
>「チャーンス」
>シンの回転斬りの六連撃で弱ったポポを確認し、ハイネも飛び出す。
>走り出し、その勢いで大剣を地面に叩きつける。
>その反動で思い切りジャンプし、シン同様、上空から大剣を振り下ろす。
>ハイネ
>『もらったぁ』
>ハイネの大剣が手負いのポポに命中しよとした時、
>別のポポ
>『うおお』
>手負いのポポを助けるかのように、別のポポが空中のハイネに体当たりした。
>ハイネ
>『うぅ』
>ハイネは投げ飛ばされ、地面に激突した。
>シン
>『ハイネ』
>さらにハイネに体当たりしたポポが、ハイネに追撃をくわえる。
>助けに行こうとしたシンも、手負いのポポの牙に突き飛ばされた。ハイネに目がいっていて、ポポの攻撃に気づけなかったのだ。
>ハイネ
>『くそっ』
>大剣でポポの突進をガードする。
>しかし、踏ん張りきれていない体勢でガードしたため、防ぎきれずさらにぶっ飛んだ。
>シン
>『ハイネ、逃げろ』
>体勢を立て直したシンが、ハイネを追撃しているポポに斬り込む。
>ポポは動きを止めた。
>そのスキにハイネはポポの側面へ回り込む。ポポは前方にしか突進しないので、側面へ回り込めば問題ない。
>手負いのポポはその場から逃走。
>ポポ
>『おお』
>ポポはシンを振り払い、手負いのポポを追うようにその場から逃走する。
>場は一気に静まり返る。
>シン
>『ふぅ~』
>シンが腰を落とす。
>ハイネ
>『ぃててて…』
>ハイネも大事はなさそうだ。
>腰を押さえながら、身体を持ち上げる。
>シン
>『大丈夫か、ハイネ?』
>ハイネ
>『おう、骨はイッてないみ たいだ。てて、めっちゃ 痛いけど』
>胸(あばら骨付近)を押さえながら、ハイネは答えた。まさか、ポポからこんな反撃をうけるとは思わなかった。
>ポポっていったら、ただの草食獣で、仲間が襲われたらソッコー逃げ出すようなチキンなモンスターなのだ。
>ハイネ
>『あ~、クエスト開始から いきなりこんなんかよ。 先が思いやられる~』
>シン
>『まさかポポにな~』
>まぁ、いい経験かもしれない。
>どんなモンスターにも、気を抜いてはいけないということだ。
>シンが初めてランポスと戦ったあの時の気持ちでいけば、必ず狩ることができるはずだ。
>シン
>『ガウシカの前に、ポポを 倒さないとな』
>シンが宣言のような口調で言った。
>ハイネも最初は『え?』というような反応だったが、『もちろん』という答えがかえってきた。
>『やられっぱなしは趣味じゃねぇ』ってことだろう。