>“ハンター”。
>漢字で書くと“狩人”。
>その意味は文字通り、狩る人を指す。
>辞書的に言えば、猟を生業としている人のこと。
>と、まぁ、前置きは少なめに、ハンターの意味を理解してもらった上で、この物語を読んでいただけたらと思います。
>
>
>
>ここは“ティーズ村”。
>日当たりのよい平地に築かれた村であり、確認されている5つの“村”の中では最も大きな村だ。
>半分海、半分山に接し、気候は常夏という温暖な地域である。
>シン
>『よしよし』
>そして、そのティーズ村の中でもひときわ目を引くのが、教会のような外観の建物のギルド本部である。
>“ギルド”というのは、ハンターにおいてのすべてを統括する組織・役所。つまり、ハンターの総本山ということだ。
>ティーズ村を除く4つの村には、それぞれギルドの支部がおかれている。
>ハンターたちが隠語で『集会所』と呼んでいるのが、まさしくそれである。
>
>そして今日は、2年に一度のハンター試験合格者、つまり新人ハンターの授章式があるのだ。
>なので、ここギルド本部に多くの若者が集まってくる。
>このシンという若者もその一人。
>係員
>『お兄さん、急いでくださ い』
>門前で忙しそうにしている係員が声をかけてくれた。シン
>『あ、はい。すいません』なぜか謝罪の言葉を述べた後、その係員の指示にしたがって、ギルドの門をくぐった。
>シン
>「ここからだ。ここからオ ヤジにつながるんだ」
>『』は実際に出している声「」は心の声とする。
>シンは内心、そう思い、ハンターの総本山に足を踏み入れたのだった。
>
>ここでシンの紹介をしておこう。
>シン・アスカ
>このティーズ村よりさらに北に位置するポッケ村という村の出身である。
>年齢は17。
>ポジティブ思考で、とりあえず前向きな性格。上から目線が嫌いなフツーの男の子。
>彼の父はすでに亡くなっているが、“白銀の竜王”の代名詞で呼ばれ、ハンターの間で知らぬ者なしと言われた伝説に語られるハンターである。詳しいことは後ほど。
>そんな父をもったシンがハンターになったのは、単に『父を越えたい』という思いだけではなかった。
>ただ、父を追ってハンターになったのは間違いない。
>人の波についていき、行き着いたところはホールだった。例えるなら学校の講堂のようなところ。
>そこにはすでに数十人もの新人ハンターたちが待機していた。
>シンもその中に混ざる。
>シン
>『多いな、こんなに…』
>思わず口に出して、辺りを見回してしまった。
>そこにはシンが思っていた以上の数の新人ハンターがいた。
>やはりというか、当然というか、その中でもやっぱり若い人が多い。
>見る限り、10代後半から20代前半といったところだろうか。
>中には30代後半ぐらいのマッチョのおっさんもいるにはいるが。
>理由を言うなら簡単。
>一流のハンターになるには10年以上の長い時間と経験、修行がいるとされているからだ。ま、これは一般に言われることであって、例外は多々ある。
>シン
>「こっちは本物のハンター か」
>今度は口には出さなかった。
>シンの目線の先には、目付きが明らかに新人ハンターとは違う人物がいた。
>それも一人ではない。
>ホールの隅に5人ずつぐらい固まっている。
>それは、今、シンたちが目指そうとしている現役のハンターだ。
>新人ハンターとベテランハンター、見分けるのは一目瞭然である。
>シンは目線の先にいるハンターに少し憧れを感じていた。
>そして、そのハンターに今自分が近づこうとしていると思うと、体が身震いをおこす。
>シン
>『…』
>なんだか叫びたい気分だ。何もかも見るものが新鮮で、シンは辺りをキョロキョロと見ていた時、ふと気づく。
>みんなの視線が前を向いている。
>シンもつられて前、舞台の上の中心を見る。
>そこには威厳あるオヤジがいた。
>また、その後ろには、これまたベテランハンターと思われるハンターが『休め』のポーズをとって5、6人ほど並んでいる。
>ギルドマスター
>『新人ハンター諸君、ハン ター試験合格、おめでと う』
>威厳ある姿から、迫力ある声が放たれた。
>このオヤジこそ、ギルドの総帥、ギルドマスターのギルバートである。
>また、“ババコンガの擬人化”というすばらしい異名の持ち主。
>ギルバートの短い祝辞を機に、新人ハンターの授章式が開会された。
>ギルバート
>『しかし、気を入れるのは 今、この時からだ。命を かけ、フィールドへ出て いくハンターに、気の緩 みは許されない』
>ギルバートのありがたいお言葉。
>この後も長ったらしい話が続いた。ま、校長の長い演説と言えば簡単に理解してもらえると思う。
>そうは言ってもギルバート自身も、以前は“巨神兵ギルバート”と異名をとった少しは名の知れたハンターだったのだ。
>なので、一概に偽善者のきれいごとというわけではない。
>シン
>『かぁ~』
>最初は気を引き締めていたシンも、妙なため息をつくようになった。
>ふと、ギルバートの後ろを見ると、そこに立っているハンターまでが寝ていた。シンは『うわぁ~…』と思いつつ、その立ったまま寝ている器用なハンターを見ていた。
>小一時間ほど長々とハンターの心得について語っていたギルバートが、後ろに立っているハンターの一人から紙の束を受け取った。
>後ろにいるハンターたちはギルバートの手伝いをしているのだとシンは思った。ギルバート
>『アリシア・エストハイム 』
>突然、ギルバートが個人名を叫び始めた。
>ギルバートの後ろで寝ているハンターに気をとられていたシンは、ギルバートの一声でハッと我に返る。
>アリシア
>『はい』
>アリシアと呼ばれた女性は一言声を上げ、階段を上り、舞台の上へあがる。
>そうして、何かの紙を持って待ち受けるギルバートの方に、ゆっくりと歩み寄る。
>ギルバート
>『アリシア・エストハイム 。貴殿を本日をもって、 ギルド公認のハンターと なることをここに認める 』
>偉そうにそう言い放ち、手に持っていた紙と、何やらカードのようなものを渡した。
>アリシアという女性は、頭を下げ、それを受け取る。同時に拍手が起こる。
>まるで卒業式だ。卒業証書を渡す校長と、それを受け取る生徒のようだ。
>シンも拍手をおくる。
>一番最初の見本にしては、完璧だとシンは思った。
>さらに、名前が呼ばれていく。
>そして―――
>ギルバート
>『シン・アスカ』
>シンの名前が呼ばれた。
>渾身の力を腹に込め、
>『はい』
>と、一言。
>アリシアのように階段をあがり、ゆっくりと歩み寄り、ギルバートの前に立つ。目の前で見ると、さらに圧倒される。
>ギルバート
>『シン・アスカ。貴殿を本 日をもって、ギルド公認 のハンターとなることを ここに認める』
>アリシアや他の人と全く同じセリフをはき、紙切れとカードらしき物体を突き出してくる。
>『へっ、こんなもの』とはたき落としたいところだが、ここは見本となったアリシアに習って、頭を下げ、受け取る。
>受け取ったものは、認定書とライセンスカード。
>認定書とは、いわゆる免許だ。
>ライセンスカードとは、ハンターが常時必ず持たなければいけない、携帯型の免許証のようなもの。一般的に『ギルドカード』と呼ばれている。
>それを受け取ったシン。
>こうして、ハンターとして、ハンターの世界に歩を進めたのだった。