〈フロート〉
俺は飛び上がり、レイナーレに斬り込んでいった。深く斬ったはずだったが、あの女はその傷口に手をかざすと一瞬にして治癒させる。
「なんだ?あれは!」
「ウフフ、素敵でしょう?これが〈聖母の微笑〉の力よ。あの子の神器は私達にとって素晴らしい贈り物だったわ」
こいつは人の命をなんだと思っている?ふざけやがって!
「…………わかった」
「どうした、イッセー?独り言か?」
言葉ではそう言いつつも、俺はなんとなく自分と同じような感じがした。ーーそう。いつもカテゴリーキングの4人と話している自分のように。
「頼むハジメ。1分だけ時間を稼いでくれ!」
「あぁ、任せろ!」
『Boost!!』
イッセーの籠手から音声が発せられる。
「ずいぶんとなめられたものねぇ。そんな時間すら与えないわ!」
レイナーレの両手に光の槍が形成されていく。前に見たものよりも大きめで発光が強い。
「食らいなさいな!」
〈リフレクト〉
しかし、その槍は俺を貫通することなく跳ね返っていく。
「嘘?あれが効かないっていうの?」
「残念ながらなぁ!」
その勢いで跳びかかり攻撃するが、飛んでかわされてしまう。さて、イッセーの準備もそろそろだろうし、あいつをどう地面に落とそうか。
◼◼◼
「ふぅ、この雑魚どもの相手は退屈だったな」
さてと、あの2人を助けに行こうかな?
「ねぇ、君は誰なんだい?」
「………ハジメ先輩と同じ匂いがします」
あらっ、そういえばこの2人のことを忘れてたよ。
「僕はハジメの友達だよ~。味方だよ~」
「うん、敵じゃないことはだいたい想像がつくけど、君は人間かい?」
「………悪魔でも無い」
うーん、この子達勘が良すぎる。
「ひどいなぁ、僕も人間だよ~。たしかに特殊な力は持ってるけどさぁ~」
「………まぁ、君が助けてくれたのは事実だから、今は聞かないことにするよ」
うわ~。完全に怪しまれてるなぁ。
「ところで、君たちはハジメ達の助けに行かないの?」
「僕らは2人を信じてるからね。ここで見守ってるよ」
◼◼◼
『Boost!!』
「っしゃあ!準備はいいぜハジメ。行くぜ、
『Explosion!!』
音声が変わった?それにイッセーが龍の影を纏っているように見える。
「そ、そんな。嘘よ!赤龍帝の籠手がこんな子どもに宿っているなんて!」
イッセーはとんでもないものを持っていたらしいな。奴は神器の正体に驚き、逃げようとする。
〈バイオ〉
………がブレイラウザーから出したツタでレイナーレを拘束する。
「えっ?何よこれ!」
「誰が逃がすかよ。さぁ、これで決まりだ!」
〈ドロップ〉
〈ファイア〉
〈バーニングスマッシュ〉
「ウォォォォ、ウェイ!」
俺はブレイラウザーを地面に突き立てる。
「ハァァァァァァァァ!」
イッセーは両腕を前に出した後、すぐに引き独特な構えをつくる。そして、右足にだけ赤のアンクレットが発現する。
俺達は跳び上がると空中で1回転して、俺は炎を纏わせた両足蹴りを、イッセーは右足のみを使った蹴りをそれぞれレイナーレに向けて放つ。
「ウェェェェェェイ!」
「ダァァァァァァァ!」
\ドゴッ!ズドン!/\ガッシャァァァン!/
大きな爆発音と破砕音を立てて、堕天使は壁を突き抜けていった。食らった相手はピクリともしないから恐らく絶命しただろう。
「ざまーみろ」
イッセーはそう言って笑ったが、すぐに涙もこぼした。
「無事に勝ったようね。あなた達ならあの堕天使を倒せると信じていたわ」
そう言って、部長は突然現れた。そして、このことの顛末やイッセーが持つ神器の詳細など色々と教えてくれた。
………話が終わりにさしかかった頃、部長は瓦礫の上に浮かぶ緑色の光を手に取り、ポケットからは赤いチェスの駒?を取り出す。
「あの……何をするつもりですか?」
「前代未聞だけれど、このシスターを悪魔として転生させてみるわ。」
「イッセーと同様にですか?」
「そうね、要領は一緒よ」
部長の体を紅いオーラが覆う。これが転生させるための準備のようだ。その後、少女の胸に駒を置き言った。
「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。今再び我の下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔となれ。汝、我が〈僧侶〉として、新たな生に歓喜せよ!」
言い終えると、駒と緑色の光は彼女の体へと入っていった。
しばらくして、アーシアが目を開けると、イッセーはそれを見て再び涙を流し、彼女を抱きしめていた。
◼◼◼
悪魔として転生した彼女は部長が色々と手を回して、この駒王学園の俺達のクラスに転入することとなった。当然だが、オカルト研究部に所属することにもなっている。
そして、最近になって聞かされたのだが、イッセーはポーンの駒を8個消費して転生させていて、とても価値があったそうだ。あの神器の影響なのだろう。
「失礼します」
俺が部室に入ると、すでにみんな集まっていた。朝から集まりがあると言われてはいたが、すでに集まっていたとは。
「おはよう、ハジメ君」
「………おはようございます、ハジメ先輩」
「ごきげんよう、ハジメ君」
「おはようございます、ハジメさん」
「遅いぞ、ハジメ!」
「皆さん、おはようございます」
みんながあいさつし終わったところで、
「ようやく全員揃ったところでパーティを始めましょうか」
部長がそう言うと、テーブルの上に大きなケーキが出現した。とてもおいしそうだ。
イッセー、アーシア、お前達を救うことができなくて申し訳ないと思っている。俺は仮面ライダーなのに。
だから、これからはみんなのこの大切な居場所ぐらいは守っていける位に俺は強くなる。そう心に誓うのだった。