はぐれ悪魔を討伐して、数日が経ったある日、イッセーが理由も無く学校を休んだ。
『イッセーが学校をサボるなんて、なんか珍しいねぇ~』
「サボりと決まったわけじゃないだろ。たしかになんか変だと思うけど」
こういう時は、同じ部員に聞くのが一番だ。というわけで………木場に聞きに行こう。一番教室近いし、男同士で話しかけやすいからな。
「お~い、木場居るか?」
「僕なら居るけど?」
「おわっ!」
木場は俺の後ろに立っていた。
「心臓に悪いっつーの」
「別に驚かすつもりはなかったんだけど、どうしたんだい?ハジメ君」
「そうだ、イッセーのことなんだけど昨日何かあったのか?」
「………イッセー君はいつも通り、仕事に行ったんだけど、その召喚先に『はぐれ
『悪魔祓い』にも『はぐれ』がいるとはな。
「それでね、部長から休むよう言われて、今日は来ないんだ」
「なるほどね、サンキューな木場」
「くれぐれもキミも気を付けてね」
そう言って、俺は自分の教室に戻っていった。
◼◼◼
「しかし、イッセーが居ないと、こんなに静かになるんだな」
いつの間にか、下校する時間になっていた。
『違うよ~、ハジメがコミュ障なだけ~』
「う、うるさい!逆にお前はもう少し黙ったらどうなんだ?」
『これは僕の性だから、どうしようもできないってば』
鍠とそんなたわいのない話をしていたが、突然ケータイの着信音が鳴り響いた。俺はそのメールの文面を見て、学校へと引き返した。
◼◼◼
「失礼します」
そう言って、部室に入って行った。………なんだか気まずい空気が漂っている。大方の理由はなんとなく予想できていたが………。
「来たわね、ハジメ。私と朱乃は大事な用で少し外に出るから」
と言いながら、俺の方に近づいてきて、
(あの子のこと頼むわよ)
と俺に耳打ちをして、朱乃さんと共に部室から去っていった。そして、イッセーは何かにいらだっているようだった。
「なぁ、イッセー。お前は本気で教会に殴り込むつもりなのか?」
「っ?ハジメがどうしてそれを?」
まぁ、驚くのも無理ないか。
「事情は部長から聞いた」
「そうか………でも俺は行く!俺はアーシアを助けたい!」
イッセーは勘違いしているようだな。
「俺はお前を止めるつもりは鼻から無い。むしろ、部長から助けてやってくれと頼まれててね。だから、俺も行く」
「部長がそんなことを?」
「たしかに、部長ならキミを閉じ込めてでも止めると思うけど、それをしなかったってことは………」
木場が苦笑しながら言う。
「それに、プロモーションの話をさっきしたのは、遠回しに教会を敵陣地だと認めた。ってことなんだ」
イッセーはようやく気付いたか。
「つまり、部長は行っていいと認めてくれたんだよ。2人じゃ危ないから僕も行くけど」
「……私も行きます」
木場に子猫ちゃん(本人から名前で呼んでほしいと言われたので)までついてきてくれるのか。
「みんな………俺なんかのために……」
「気にするなイッセー。じゃあ、4人で救出作戦といこうか!」
「そうだな!待ってろ、アーシア!」
こうして、俺達は教会へと向かった。
◼◼◼
「さっき話した通りだ、みんな行くよ!」
「あぁ、わかった」
「おう」
「……了解です」
俺達の目的はアーシアという子の救出。それで、木場が言うには、聖堂の地下で大抵は怪しい儀式を行うらしいので、とりあえずそこに向かって行く。というのが俺達のプランである。
そして、両開きの扉を開けて、聖堂の中へと入っていった。
\パチパチパチパチ/
突然、拍手が鳴り響く。そして、柱の裏から人影が現れた。
「ご対面!再会だねぇ!って、初顔合わせもいたよ!キミもクソ悪魔なのかなぁ?」
なんだ、この下品な男は。
「あれがはぐれ悪魔祓いだよ」
木場が小声で教えてくれる。
「へぇ、あんたがねぇ。まぁ、俺には関係無い。人間だからな」
「あら、そーなんすか。でもでも、悪魔とつるんでる時点でキミもクズだねぇ。終わってるねぇ!」
『うちのクイーンよりうるさいの久しぶりに見た気がするよ』
鍠があからさまに嫌そうな声でしゃべる。
「でも、こっちの方がはるかに不快感を覚えるけどな」
『たしかに、それは同意するよ』
「俺を好きにならないやつは邪魔なんだよ!死ねよ!このクズどもがよぉぉぉぉぉぉ!」
「こいつイカれすぎだろ、変身!!」
〈TURN UP〉
突進してきた、キチガイは光の壁に激突し、吹き飛ばされる。
「げぇっ!」
『ははっ、悲鳴まで下品とは、救いようが無いね』
「なんですか、なんなんですか。てめぇは!んー!邪魔くせぇ!」
こいつは口を閉じることができないのか?………とか考えていると、野郎は攻撃を仕掛けてきた。俺はブレイラウザーを抜き、奴の斬撃を防ぐ。
「あはは!やるねぇ、あんた!」
こんななりなのに、意外と強い。俺は後ろに跳んで、カードデッキを展開する。
「悠長にカードでも眺めてどーしたんすか?んー!ぶっ殺す!」
奴はまた突っ込んできた。
〈アッパー〉
カウンターの要領で奴の顔にアッパーカットを打ち込んだ。それにより斜め上へと吹き飛んでいく。
3人共それを見て、唖然としているようだった。
「みんな先に行け!あとから俺も行くから」
「………あぁ、わかった」
3人は階段を使い、下へ降りていこうとするが、
「逃がすかっての!」
あの神父は起き上がって襲い掛かってくる。こいつは頑丈過ぎるだろ。
「お前の相手はこの俺だ。この外道が」
「あんたホントしゃらくさいってばぁ!」
今度は2本の光の剣を使い、攻撃してくる。
「ほらぁほらぁほらぁぁ!」
「ちっ、悪いけど力を貸してくれ。鍠!」
〈リモート〉
一瞬のスキをついてカードをラウズさせる。
「まぁ、まかせてよ。ハジメも先を急ぐといい」
「あぁ、悪いな」
金色の異形を召喚し、俺も3人の後を追った。
◼◼◼
うーん、僕もこんな奴と闘いたく無いんだけどなぁ。ハジメがみんなの後を追っていった後、僕ーー兜鍠はキチガイな男と対峙していた。
「今度はマジもんのバケモノすか?お宅らホントに鬱陶しいよぉぉ!」
「キミも十分バケモノだけどなぁ」
でも、ハジメのためだ。これくらい協力してやらないとね!……それにしても、さっきから攻めのパターンが全然変わってないんだけど、こいつはホントなに考えてんだろ?
「切り刻んでやるよぉ!このバケモノォ!」
「……やってみなよ」
光の剣を振り回して、僕を攻撃してくる。………がその刃が鎧を通ることはなかった。
「堅すぎだろぉ!なにそのチートはよぉぉ!」
なんか叫んでいたけど、気にすることなく僕は右手のオールオーバーで脇腹を叩いた。軽めにやったつもりだけど、奴は勢い良く壁に激突した。
「ふぅ、さすがにこれは効いたでしょ」
しかし、あいつは瓦礫から起き上がってくる。……生命力はゴキブリ並だね。
「おい。そこの金ピカのバケモノ……俺、お前を絶対に殺すから。絶対だよ?んじゃ、ばいなら」
あぁ~あ。変人に目をつけられたなぁ。でも、僕死なないんだけどね。……さてと僕もみんなの後を追うかな。
◼◼◼
俺はようやくイッセー達に追いついた。木場と子猫ちゃんは大勢の神父と乱闘を繰り広げている。そして、イッセーは一人の少女を抱き抱えていた。その子は衰弱しきった様子だった。
「ハジメ君、イッセー君のフォローを頼む!」
「あぁ、わかった!」
邪魔をする神父達を切り払いながら、儀式場の奥まで駆けていく。
「イッセー、その子は無事なのか?」
「……あぁ、きっと「助からないわ」……」
目の前にいる女堕天使がイッセーの言葉を遮りながら答える。
「なんだと?」
「どいつもこいつもバカばっかね。アーシアは死ぬわよ、神器を抜かれた者は死ぬしかないの」
「なら神器を返せ!」
イッセーはそう叫ぶが、堕天使は笑って答える。
「なに言ってるの?返すわけないじゃない」
当然の返答ではあるが、やはり頭にくる。
「レイナァァーレェェェ!」
イッセーは激昂して、相手の名前を叫んだ。
「気安く、私の名前を呼ぶんじゃないわよ!」
さっきのあれも外道だったが、雇い主の方もさらに外道とはな。放っておくのは危険だ。しかし、ここで闘うのは不利。何よりもその子を庇いながらは可能……ではあるが、みんなの前では今は無理だ。
「何考え込んでるの?ハジメらしくも無い」
聞き覚えのある声が、入り口付近から聞こえてくる。そこにいたのは鍠(人間体)だった。
「その子のお守りは任せていいからさ、2人でその堕天使やっちゃってよ」
そう言って、神父達に片手剣向ける。
「誰だよ?あんた」
イッセーが不機嫌そうに問いかける。
「ハジメの友達ってとこかな?別に敵じゃないんだから、気にしないで」
「そうかい、なら遠慮なくやらせてもらう!」
「あぁ、行くぞイッセー!」
俺達は女堕天使に向かって走り込んでいった。
話の区切り方が微妙で申し訳ないっす。
次で原作1巻は終わる予定です。