ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

43 / 43
う~ん、思ったよりもなかなか更新できませんね。
おまけに今年の冬休みが短い(泣)


立ちはだかる「悪神」

「ねぇイッセー君。いくらなんでもそれは

オーバーワークなんじゃ……」

 

「……確かに、お前大丈夫か?」

 

 模擬戦を終えて、各自それぞれのトレーニング

メニューに従い自主トレを行っていた。

ちなみに、イッセーは現在バーベルを担ぎ、

スクワットをしているところだ。何kgの重さ

なのかよくわからないが、あの錘の量を見る

限りではかなり重量がありそうだ。

 

「模擬戦でハジメや木場に俺は負けてばかり

だからこそ、俺はもっと鍛えないといけない。

それに、またアーシアが……いや、仲間が危険な

目に遭うことが無いとは言い切れない。その時に

またハジメに頼らなくても、助けられるように

なりたい」

 

 そっか。イッセーも色々と考えてたんだな。

……お前は俺の最高の親友で、最高の相棒だ!

 

「うん、そうだね。いくらブレイドの鎧を纏って

いるにしても、ハジメ君に僕達は勝てていない

ことは事実。よし、僕も負けてられないな!」

 

 って、木場までも異常にはりきってるし。

……イッセーの熱血でも移ったのか?

 

「そうは言うけど、さっきは引き分けだった

だろ?それにスピードでは木場に勝てないよ」

 

俺がそう言うが、木場は首を横に振る。

 

「カードを使えば、瞬発力で僕に引けを

取らない。それに細身の強化形態になれば、

僕よりも速い。違うかな?」

 

 ……相変わらず、勉強熱心だな。そこまで(ブレイド)のことを知ってるなんて。

 

「それは買い被りすぎだ。俺は木場みたいにあの

スピードを未だにコントロールできないからな」

 

「そうなんだ。まぁ、キミが強いことには変わり

ないんだから、そこまで謙遜しなくても」

 

「そうそう。俺なんか引き分けたことすらない

っていうのに」

 

 木場の攻撃はまだ一発一発が軽いからいい。

しかし、イッセーの場合は別だ。俺も全力で

やらないと、こっちも命が関わるぐらいに

危ないんだよ!そこだけはわかってほしい。

 

「今日も特訓か。毎日毎日ご苦労なことだな。

休憩がてらにほれ、差し入れ。女子部員から

お手製のおにぎりだ」

 

 後ろからの声に振り向くと、トレーニング

ルームにアザゼルが入ってきた。そして、

持ってきてくれたそれに俺達は大喜びで

さっそく頬張っていた。どれも美味しいなぁ。

 

 

 

 エネルギー補給や休憩を終えて、俺以外の

三人は再び特訓を再開させようとしていた。俺は

時間的にもかなり遅かったので、帰ろうと

していたのだが、アザゼルが俺を呼び止めた。

 

「ハジメ、ちょっといいか?」

 

「俺に用事ですか、先生」

 

 その表情はいつもよりも真面目に見えたので、

俺も身構える。

 

「……朱乃のことをお前に頼んでいいか?」

 

「ーーッ!」

 

 それはあまりにも突然のことだったので、

言葉が一瞬詰まってしまった。

 

「朱乃のあの調子を見てわかっていると思うが、

バラキエルーー堕天使が嫌いだ。今回、

バラキエルが来たことで俺の話にも耳を

貸さなくなるかもしれない。現状で、あいつの

支えになってやれそうな奴はお前しかいない

だろう。何かあったときは頼む」

 

「わかりました。……でも、朱乃とバラキエルさんの間に何があったんですか?俺が知ってるのは、朱乃と朱乃のお母さんが殺されかけたってことぐらいなんですけど」

 

 俺がそう言うと、アザゼルは頷きながら、

言葉を続けた。

 

「そうだったか、すでに本人から聞いていたか。

だがな、その後にまた問題があってな。……俺も

詳しいことはわからんから、サーゼクスか

グレイフィアに訊いた方が一番手っ取り早い

だろう。それに二人なら客観的な目線で語って

くれるだろうさ」

 

 なるほどな。朱乃がグレモリー家の眷属悪魔で

あるからこそってわけだ。しかし、人間である

俺の場合は、魔王であるサーゼクスさんは

もちろん、グレイフィアさんとも会える機会

そのものが少ない。それがネックだな。……一番

身近にいる部長にでも訊いてみるか

 

「あいつと暮らしてわかっただろう。朱乃は

思った以上に精神的な面で極端に弱い。普段こそ

学園生徒達の憧れ、二大お姉さまとして気品ある

佇まいをしているが、メッキが剥がれれば、

そこにいるのは年相応の娘だ」

 

 それは何となく理解していた。みんながいる

時と、俺と二人きりでいる時とでは口調と、

色々な仕草が全く異なっているからだ。

 

「お前の前では仮面をとった素顔を見せることが

あるだろうから、そのときはなんとかしてやれ」

 

 なんとか……ね。俺に何ができるのか、たかが

知れているが、やるしかない。

 

「先生に言われなくともわかってますよ。

『なんとか』してみせます」

 

 俺はそう答えてトレーニングルームを後に

した。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

 オーディンの爺さんが来日して、既に一週間は

経っていた。

 

 あの爺さんはここ最近、ただひたすら夜遊びを

するために俺達を引っかけ回していた。おまけに

あの神様はそのためだけに軍用の飛べる馬車を

使っていた。

 

 そんな様子を見てきた、ロスヴァイセさんも

キレる寸前のところまできていた。

 

「オーディン様!もうすぐ日本の神々との会談なのですよ!旅行気分はそろそろお収めください」

 

 ……しかし、よくロスヴァイセさんはこんな

職業を選ぶ気になったな。俺にはとうてい真似

できないことだ。

 

「ヒヒィィィィィィンッ!」

 

 突然、馬車を引いている馬達が鳴き声をあげて

停まる。

 

『フン、またあいつらなのか?』

 

(わからない。けど、間違いなく言えることは

戦いを避けられない状況ってことだ)

 

 麟はウンザリとした声を出して呟き、それに

俺は言葉を返した。麟が「あいつら」と

呼んでいる連中は十中八九『禍の団(カオス・ブリゲード)

のことだろう。しかし、それならもう少し早く

仕掛けられてもおかしくないはずだ。

 

 俺は馬車の窓から外の様子を覗いて見ると、

臨戦態勢が既に整っているバラキエルさん、

木場、ゼノヴィア、イリナがいた。だったら、

俺もーー

 

「変身!」

 

〈TURN UP〉

 

〈フュージョンジャック〉

 

 馬車から出て変身させると、即座にジャック

フォームへとなった。

 

 そして、みんなの横に並び立つと、前方に

目付きが鋭い男が浮遊していることに気が

付いた。……着ているローブがオーディンの

爺さんの服装と似ている?

 

「はっじめまして、諸君!我こそは悪神ロキだ!」

 

『……悪い神様ってことですか?それ以前に、

自分から言うようなことなのでしょうか?』

 

 霧の言っていることはなんとなくわかるが、

そんなことを気にしている場合じゃあなさそう

だな。ここにいる全員があの悪神の登場でかなり

驚愕している。たしか、ロキって名前の神様なら

神話が正しければ、オーディンの爺さんと同じ

北欧出身のはず。なぜ、ここへ?

 

「これはロキ殿。こんなところで奇遇ですな。何か用ですかな?この馬車には北欧の主神オーディン殿が乗られている。それを承知の上での行動だろうか?」

 

 俺も思っていたことをアザゼルは冷静に問いかけてくれた。その問いにロキと名乗った神は口を開いた。

 

「それは愚問だな。我らが主神殿が、我らが神話体系を抜け出して、我ら以外の神話体系に接触していくというのは耐えがたい苦痛なのだよ。海より広い私の心も我慢の限界がきたので、邪魔しに来てやったのだ」

 

『この物言いなら、自分から悪だと名乗ることに納得がいくね』

 

 鍠の言う通りだ。おまけに悪びれもしていない

ってところがこちら側の気を逆撫でる。現にアザゼルもかなりの怒気を込めた目でロキを睨んでいる。

 

「お前の言い分なら、お前自身が他の神話体系に接触すること自体が矛盾していると思うが、どうなんだよ?」

 

「我は和平をすることに納得できないだけだ。滅ぼすのならば何も問題はなかった。とにかく、これでは我らが迎えるべき『神々の黄昏(ラグナロク)』が成就できないではないか」

 

 言っていることがよくわかっていないが、こいつもテロリスト共とほとんど同じ考えってことは理解した。

 

「ひとつ訊く!お前のこの行動は『禍の団(カオス・ブリゲード)』と繋がっているのか?」

 

 アザゼルは語句を先程よりも強めて、ロキに訊いた。すると、ロキは不機嫌そうにして返した。

 

「フン、そのような愚者共と一緒にされるなど不愉快極まりない。我は己の意思でここに参上している」

 

 安心できる状況ではないが、これ以上の加勢が

来ないとわかっただけまだマシだな。現に、

アザゼルも体の力が少しだけ抜けている。

 

「なるほどな。こいつが北で抱えている問題点ってわけか」

 

 アザゼルが嘆息するように馬車へ顔を向けると、爺さんとロスヴァイセさんが出てきた。そして、爺さんはあごの白いヒゲをさすりながら、アザゼルの言葉を肯定した。

 

「ふむ。どうにもの、頭の固い者がまだいるのが北の田舎の現状じゃよ」

 

「オーディン。確認のため、もう一度訊こう。まだこのような北欧神話を超えたおこないを続けるおつもりなのか?」

 

 ようやく出てきた爺さんにロキは問いかけるが、爺さんは迷うこともなく平然と答えた。

 

「そうじゃよ。少なくともお主よりもサーゼクスやアザゼルと話していた方が千倍も万倍も楽しいわい。それにワシも日本の神道も知りたいところじゃったし、あちらもこちらのユグドラシルに興味を持っていたようでな。和議を果たして、異文化交流をしようと思っただけじゃよ」

 

 その言葉を聞きロキは苦笑し、完全に敵意をさらけ出した。

 

「フフフ、ハハハッ。なんと愚かな!なら、ここで黄昏を行おうではないか」

 

 くっ、なんつう殺気だよ!いままで相対してきたどの敵よりも凄まじい何かを感じる!

 

「それは抗戦の宣言ってことでいいんだな?」

 

「フン、言うまでもなかろう」

 

 その不敵な笑みを合図にゼノヴィアが速効で駆け出していき、俺もブレイラウザーからラウズカードを抜き出した。

 

〈キック〉

 

〈サンダー〉

 

〈マッハ〉

 

〈ライトニングソニック〉

 

 ゼノヴィアはデュランダルを振るい、大質量の聖なるオーラを放ち、

 

「ハァァァァッ!」

 

 俺はオリハルコンウイングから大量の稲妻を走らせながら、右足で蹴りこむ体勢に入っていた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。