ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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またまた遅くなりました。

ようやく冬休みに入ったので、更新が早くなるかも?


男達の「特訓」

 俺が自宅に帰ろうとしていたら、廊下の方から

話し声が聞こえてきたので足を止めた。

 

「朱乃、お前と話をしたいのだ」

 

「……気安く名前を呼ばないで」

 

 朱乃の声はさっき部屋にいた時と同じように

不機嫌そうで冷たいものだった。

 

「あの剣という男と逢い引きをしていたという

のはどういうことだ?」

 

 父親ならやはりそこは気にすること。これは

当然のことか。……でも、古くさい言い回し

だなぁ、「逢い引き」って言い方は。

 

「私の勝手でしょ。あなたにとやかく言われる

筋合いは無いわ」

 

「……たしかにそうかもしれん。だが、人間の男は

やめておけ。悪いことは言わん」

 

 バラキエルさんは人間嫌いなのか?いや、

彼自身が人間の女性と結婚してるんだ。それは

ありえない。……なら、なんで?

 

「彼は……ハジメ君は誰よりも他人思いで優しい

男性なの。他の男性とは全く違うわ。それを

あなたは何もわかってない」

 

「私は父として心配なのだよ」

 

 バラキエルさんのその一言によって、朱乃は

激昂した。

 

「父親顔しないでよ!そんなことを言うのなら、

どうして、あの時来てくれなかったの?あの時、

私達を助けてくれたのは彼よ!」

 

「…………」

 

 朱乃が言い放ったその一言でバラキエルさんは

瞑目して、黙ってしまった。

 

「…………」

 

『あのおじさんから直接訊かなくて

いいのかい?』

 

(あぁ、今日はやめておく。間が悪いからな)

 

 あの二人は本当の家族なのに、なんで仲が

悪いのか俺にはわからない。……でも、この機会に

あの二人を仲直りさせたい。絶対に朱乃も

心の底からバラキエルさんを嫌ってるわけ

じゃないはずだから。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

「ドラゴンナイト!がんばってね!」

 

「はい、ありがとう!」

 

 俺達は次の日、冥界に来ていた。理由はとある

イベントが開催されているからだ。

 

 今、冥界では『仮面戦記ドラゴンナイト』

という題名の特撮テレビドラマが放映されている。

それがかなりの高視聴率を記録していて、

社会現象に発展するほどらしい。

 

 この番組の主人公はもちろんイッセー(演じて

いる俳優は別人で、顔のみCGのはめこみ)で、

ヒロイン役は部長など、その他にもグレモリー

眷属のメンバーもなんだかんだで出演している。

 

物語のあらすじはたしか……。

 

「無双龍ドライグと契約した若き悪魔の

イッセーは、敵対する悪の組織と戦う変身

ヒーローである。冥界の平和を揺るがす怪人達を

倒すため、ドラゴンナイトへと変身するのだ!」

とか、なんとか。

 

(そういう番組って冥界でもあるのか)

 

 俺は初めてそれを聞いたとき、その程度の認識

だったのだが、イベントに俺まで参加するという

ことで話が進んでいたことに驚いた。

 このイベントの内容としては握手とサイン会

だけなのだが、どうやら、俺もこの番組に出演

することが決まったらしく、お披露目も含めて

参加してほしい。とのことだった。

 

 それで、俺の役がどんな立ち位置なのか

というと、敵なのか味方なのかイマイチ掴めない

ライバルキャラ?ーーまぁ、要するに

『仮面ライダー剣』で例えるなら、

初期の相川始(カリス)みたいなポジションだろう。

 

 ちなみに、木場が敵組織の幹部役で名前が

ダークネス……なんだっけ?度忘れしてしまった。

そして、当然のことながら、女性ファンがかなり

多い。……むしろ、女性しか並んでいないのかも

しれない。

 小猫ちゃんは味方役として出演している。

獣っぽい衣装を着てお客さんに応対しているの

だが、ほとんどのファン層が……う~ん、

なんとも言えない。……大きいお友達?が多い。

 

 社会現象になるほどのこともあり、かなりの

人……じゃなかった、悪魔がこのイベントに

集まっていた。一番集まっているところは、

当然ながら、イッセーのところだ。そのことも

あり、あいつは疲れた様子を見せていた。

 

(ん?たしかあの子は)

 

 イッセーが休憩しているところにタオルを

持っていく女の子がいた。どこかで見た覚えが

あるのだが、……いつだったかな?

 

「その……お久しぶりですわね」

 

 彼女も俺に気付いて挨拶をしてくる。え~と、

そうだ、思い出した!フェニックスと戦った

ときの『僧侶』の女の子!

 

「え~と、あの時は名前を聞いてなかったよね。

よかったら教えてくれないかな?」

 

「わたくしはレイヴェル・フェニックス。

フェニックス家の長女です。調子に乗って天狗に

なっていた兄に灸をそえてくれてありがとう

ございました」

 

『へぇ~、あの焼き鳥の妹さんだったんだぁ~。

兄と違って、しっかりものみたいだね』

 

 たしかに俺もそう思った。……ってか、実兄を

そこまでバッサリと切るか。すごいな。

 しばらく話を進んでいくと、なぜ彼女がここに

いるのかもわかってきた。イッセー達が冥界で

イベントをすると聞いて、協力しに来てくれた

みたいだ。

 

 あと、もうひとつわかったことは、この子は

イッセーに惚れていることだ。あいつと喋って

いる時と俺と喋っている時とでは、明らかに

違っていた。

 

 ……ホント、おもしろいぐらいにイッセーは

モテまくるよな。ま、その自覚は本人に無いん

だろうけど。

 

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

 冥界でのイベントを終えて、俺、イッセー、

木場、ギャスパーのオカルト研究部男組は

戦闘の特訓をしていた。

 

 ブレイドに変身している俺は壁を蹴りながら、

神速で動き回る木場を追う。……やっぱり木場は

速いな。通常形態だと、なおさらスピードの差を

感じる。ーーでも、

 

〈マッハ〉

 

 ものの数秒だけなら、それを上回ることだって

できる。俺は木場の速度に追い付き、

ブレイラウザーの斬戟を一番防ぎ辛いであろう

左脚に放った。

 

 手加減をせずに本気で打ち込んだはず……

なのだが、直撃はしなかった。脚の側面には

いつの間にか刃が生成されていて、それによって

防がれ、逆に両手に聖魔剣を持ち反撃してきた。

俺は空中で強引に体を捻り、木場の斬戟を

なんとかかわした。

 

(やるな!)

 

 木場の思考の柔軟さに思わず舌を巻くが、

俺も即座に頭を切り替えた。

 

〈アブゾーブクイーン〉

 

〈フュージョンジャック〉

 

 俺はあえてハートではなく、クローバーの

クイーン、ジャックを選択してラウズさせた。

 

 さっきとは違う重厚な鎧を纏っていることで、

速さで勝負することは不可能。だから、木場との

立場を逆転させて、カウンター狙いで勝負だ。

 

『へぇ、ハジメは慣れない戦い方で挑むつもり

なんだ』

 

(別にいいだろ?こいつは特訓なんだからさ)

 

 問題があるとしたら、木場はイッセーより

思慮深い。この餌にはたして食いついてくれる

だろうか?

 

 俺の考えとは裏腹に木場は何の迷いも

なく自分から仕掛けてきた。しかし、その攻撃は

刀身による斬戟ではなく、巨大化させた柄による

打撃だった。

 

 そのまさかの方法での攻撃を俺は空いている

左手で弾き、後ろに飛び退こうとするが、

脚が動かなかった。

 

「氷の聖魔剣さ。簡単には逃がさないよ!」

 

 木場の手には氷のような剣が握られていて、

俺の足はいつの間にか地面と繋がっていたのだ。

だったらーー、

 

〈ブリザード〉

 

「氷には氷だ!」

 

 木場は電子音を聞くと、すぐさま引き下がるが

わずかに遅い。俺も木場の脚を完全に封殺した。

 

「もらった!」

 

 動けなくなった木場へ俺は鉄球を投げ飛ばした。

 

「まだまだ!ソードバース!」

 

 木場は地面に手をつき、そう叫んだ。すると、

大量の剣の群れが地面から生え、俺の方へと

波のようになって襲いかかってくる。

 

 それぞれの攻撃がお互いの体に当たる寸前の

ところで、目覚まし時計のようなアラームが

鳴り響き、俺達は攻撃を止めた。

 

 今回の戦闘結果は時間切れーー引き分けだ。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

 木場とハジメが激戦を繰り広げていた一方で、

俺ーー兵藤一誠は〈ジェミニ〉で増えた

もう一人のハジメと戦闘を行っていた。

ちなみに、俺は赤龍帝の鎧を発動させた状態で、

ハジメは細長い翼を六本生やした強化形態の

ブレイドとなっていた。

 

 空中を舞うハジメを俺は背中のブースターを

使って追いかける。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost

BoostBoostBoost!!』

 

 さらに、倍加の重ね掛けを行い、瞬間的な

加速力を増幅させ、ハジメとの距離を一気に

詰めた。

 

「アスカロン!」

 

『おう!』

 

『Blade!』

 

 左手からアスカロンを抜き斬りかかるが、

ハジメは俺の攻撃を容易に受け止めた。

 

 そんなことはわかりきっていたことだ。俺は

怯まずに拳打でラッシュをかけた。それでも、

俺の攻撃はハジメをとらえることができずに空を

切った。

 

 クソッ、さっきから攻め続けているのに、

まともな攻撃を一発も当てられない。でも、

器用に戦うことができない俺にはがむしゃらに

でも攻め続けるしか活路は見出だせない!

 

(とっておきを使うぞ、ドライグ!)

 

『承知した!』

 

 背中から新たに赤い翼を生み出した。しかし、

それらは翼と言っても、手のように指もはっきり

とした形で生えている。つまりは腕が二本増えた

ようなもの。

 

 俺はその翼を動かして、ハジメの両上腕部を

掴んだ。

 

「っしゃあ、いくぜ!」

 

 俺は再びアスカロンを構え直して突きを放つ。

 

「甘いぞ、イッセー!」

 

〈ドロップ〉

 

〈ファイア〉

 

〈バーニングスマッシュ〉

 

 完全に動きを封じたと思っていたが、ハジメは

肘から下の腕をうまく動かし、カードを

スラッシュさせていた。すると、ハジメの翼は

強い輝きを放ち、火炎を発生させた。

 

「ダァァァァァッ!」

 

「ウェェェェイッ!」

 

 俺の突きとハジメのドロップキックはぶつかり

あい、お互い弾け跳んだ。

 

 俺は空中で姿勢を立て直すことができなかった

のに対して、ハジメは体を反転させ、俺の方へ

突っ込んできた。

 

(嘘だろ?なんであんなに動けんだよ!)

 

 ハジメは剣を真上から両手で持って振り

抜いてくる。俺はアスカロンを使い、なんとか

それを防ぐが、徐々に推されていき、高度が

どんどん下がっていく。

 

「制限時間がきました!そこまでです!」

 

 ギャスパーのその一言でけたたましい音が

鳴り響いていることに気が付いた。ハジメは剣に

込めていた力を抜いて地面に降りた。俺もアスカロンを左手にしまい鎧を解除した。

 

 ……今日は俺の負けだったな。あのまま続けて

いって勝てるビジョンが見えない。

 

(せめて、あの強化形態には勝てるように

しないと、ハジメの足を引っ張ることになる)

 

 まったく……俺はまだまだだな。


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