ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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放課後のラグナロク
初めての「デート」


とりあえず厄介事も一通り片付き、大きな学校行事であった体育祭も終え、ようやく一段落ついたところだった。

 

「なあ、そろそろ修学旅行じゃないか?時間の流れも早いもんだな」

 

イッセーのその一言で思い出した。そういえばもうそんな季節か。ちなみに俺達の高校の行き先は毎年恒例で決まっていて、京都だ。

 

「ねぇねぇ、そこの男子二人組。修学旅行の時さ、うちらと組まない?私達美少女四人組と」

 

すると、メガネをかけた女子ーー桐生が話を持ちかけてきた。なおかつ、いやらしい顔つきでだ。女子なんだから、もう少し気にして欲しいところだけどな。

 

それで、四人組といえば、彼女にアーシア、ゼノヴィアとイリナを加えた75%を人以外が占めるという、なんとも言えないグループ。

 

「イッセーさん、ご一緒してくれますか?」

 

桐生の後ろから顔を出し、アーシアもお願いをしてくる。

 

「それはもちろんいいぜ!」

 

それにイッセーは何の迷いもなく答えた。まぁ、有事の際に近くにいた方が動きやすいしな。俺ももちろん二つ返事で答えようとしていた。……あんなことが起こった直後だもんな。

 

「あ、勝手に話進めちゃったけど、ゼノヴィアっちとイリナさんは大丈夫?」

 

「ああ、私もイッセーにハジメと一緒がいいと思っていたところだ」

 

「あの二人が一緒だとおもしろそうだしね!」

 

桐生が他の二人にも訊くが、二人ともためらうことなく承諾してくれた。

 

「じゃあ、修学旅行はこの六人で行動しましょう。早速楽しみになってきたわ!」

 

そんなわけで、俺とイッセー、アーシア、ゼノヴィア、イリナに桐生。この面子で京都を巡ることになりそうだ。

 

さて、どこを回るか今度みんなで話し合おうかな。……そういえば、去年行った部長達に訊くのもアリか。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

昨日の夕方頃、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の連中がこの町に攻めてきたようだった。俺は昨日、部室に顔を出しただけで、すぐにバイトへ向かってしまったので、加勢することはできなかった。連絡を入れてくれれば、即刻向かうつもりなんだけどなぁ。

 

……まぁ、過ぎたことを言っても仕方がない。それに今日は土曜日、休日。そして、朱乃とデートの約束をしている日でもある。

 

なぜ、朱乃とデートをすることになったのかというと、俺が彼女に心配をかけすぎたからだ。それで、お詫びというのも含めてデートへ行くということになった。

 

朱乃はあの戦いが終わってから、以前以上にスキンシップが激しくなった……と俺は思う。それだけ寂しい思いをさせてしまったんだ、俺は。

 

「お待たせ、ハジメ」

 

「別に待ってませんよ。まだ、5分ぐらいですから」

 

待ち合わせ場所は駅前。俺は約束の時間の5分前に到着していた。そして、丁度午前10時を回ったところで朱乃はやって来た。

 

いつものイメージだと着ないようなワンピースを彼女は着ていた。そして、何よりも髪をおろしている朱乃を初めて見た気がする。

 

「……かわいい」

 

「も、もう……そんなことを素直に言われると恥ずかしいわ」

 

見とれてしまい、つい声に出してしまったようだ。俺の口から出た思いがけない感想に朱乃は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうな反応を見せた。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

「ええ」

 

俺と朱乃は街中へと繰り出していった。

 

 

 

 

街を歩き始めて、ブランドショップで洋服を見に行ったり、露店でクレープを一緒に食べたりもした。

 

今日の朱乃はいつものおしとやかで気品ある雰囲気が微塵もなかった。年相応の女の子、といった様子だった。口調も完全にくだけた言い方になっている。

 

いつもの大人のような雰囲気の朱乃も好きだけど、今のようにかわいらしい感じの朱乃はより魅力的に思えた。

 

「他に行きたいところはありますか?」

 

俺は要望があるかどうか訊いてみるが、それといって特に思い浮かばないのか、やや戸惑っている。

 

(どうしようかなぁ。ゲーセンもアリだけど……あ!)

 

「そうだ、水族館に行きましょう!」

 

「う、うん!」

 

咄嗟に思い付いたここから近いおしゃれそうな(?)場所を提案してみると、朱乃は笑顔で応じてくれた。

 

 

 

 

「ふ~ん、深海魚って変わった顔の子が多いのね」

 

水族館で一通り回りながら、そんなことを口にしていた。この町のは一般的なものと比べて小さかったけど、それでも水族館らしさが出てて良かったな。

 

水族館から出ると、なんだか急に腹が減ってきた。ひとまずうまくいって、一安心したからか?

 

「早い時間ですけど、どこかで昼食にしませんか?」

 

「そうしましょうか。じゃあ、行ってみたいところがあるんだけど、そこに行ってもいい?」

 

「はい。俺は構いませんよ。どこら辺にある店なんですか?」

 

「え~とね、こっちこっち!」

 

朱乃はそう答えると、俺の左手を引っ張って走り出した。

 

 

 

 

「ふぅ~、美味しかったですね」

 

「うん、そうだったね」

 

食事もしたことだし、次は……あれ、どうしよう?ここは適当に歩き回るか、それともーー

 

「ホッホッホ。こんなところで出会うとは奇遇じゃのう」

 

ん?声からして、かなり高齢のおじいさんだけど……、ってこの人は!

 

「冥界で会って以来じゃな、少年。北の国から遠路はるばる来てやったぞい」

 

北欧の神様である、オーディンの爺さんだった。

 

「なんで、この町にいるんだ?」

 

観光か?それにしても、テロが頻繁に起こっているこの時期に来るってのか?いや、むしろそれ関連での訪問の可能性もあるか。

 

「オーディン様、うろうろし過ぎです!自分が北欧の主神であることを自重なさってください!」

 

後ろにいたスーツ姿の女性が怒り出した。たしかロスヴァイセさんだったかな。以前は鎧を着てたから、一瞬同一人物として繋がらなかったけど。

 

「よいではないか。せっかく日本に来たというのに、何もせんというのはもったいないじゃろう」

 

「そういうことを言っているのではありません。あなた達もお昼からデ、デートなんて……ハイスクールの生徒だったら勉強なさい勉強」

 

えっ、なんで、俺達まで注意されてんだ?……あ、そういえば、この人色々とお堅い性格なんだった。う~、早いところこの場を抜け出したい。

 

俺は横にいる朱乃の手をとろうとするが、彼女の前にはえらい体格のいい男性が鬼の形相で睨みながら立っていた。

 

「……あ、あなたは」

 

朱乃は酷く驚いている。知り合いなのだろうか?

 

「これはどういうことだ、朱乃」

 

「あなたには関係ないでしょ!そ、それよりもどうして、ここにあなたがいるのよ!」

 

男性の方はかなり頭にきているらしく、声には怒気が含まれている。朱乃もその男性に対して、相当不機嫌な態度をとっていた。

 

「そんなこと、今はどうでもいい!とにかく、その男は何者なんだ?」

 

それって間違いなく俺のことだよな?

 

「俺の名前は(つるぎ) (はじめ)。彼女と同じ学校に通っている、ひとつ年下の後輩ですけど。あんたの方こそ何者?」

 

俺は男性の質問に答えて、逆に訊き返す。すると、まさかの答えが返ってきた。

 

「堕天使組織グリゴリ幹部、バラキエルだ。姫島朱乃の父親でもある」

 

なんと、彼は朱乃のお父さんだった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

「ホッホッホ。というわけで訪日したぞい」

 

イッセー宅にあるVIPルーム(いつの間にか増築されていた)でオーディンの爺さんは楽しそうに笑っている。

 

とある用事が日本であるらしく、そのついでにこの町に来たらしい。そして、この町の方が下手なところよりも安全だという。言われてみればたしかにそうかもしれない。

 

結局、朱乃とのデートは中止という形になってしまった。その後、みんなが集まれる場所ということで、イッセーの家に全員集合となった。

 

当然、バラキエルさんもこの場にいるが、朱乃は視線を交わさずに、ひたすら無視を続けていた。あの日のことを根に持っているのか?でも、結果的には全員が無事だったんだし……、どうなんだろう?

 

「フム、わしの紹介は別にいらんじゃろう。さて、わしのお付きヴァルキリーを紹介しておこうかのう。名はーー」

 

「ロスヴァイセと申します。日本にいる短い間ですが、みなさんのお世話になります。以後、お見知りおきを」

 

俺は知ってたけど、そういえば、みんなは知らなかったんだな。ロスヴァイセさんの紹介が終わると、次にアザゼルが口を開いた。

 

「爺さんがいる間、俺達で護衛することになっている。そんでもって、バラキエルは堕天使側のバックアップ要員だ。最近忙しい俺の代わりにバラキエルが見てくれるだろう」

 

「よろしく頼む」

 

俺達があの爺さんの護衛……ね。これはまた忙しくなりそうな予感。

 

今回、爺さんが日本に来た目的は、日本の神々と話し合いたいから、だそうだ。それで、爺さんの管轄である北欧の国々でも色々と厄介事を抱えているから、早めに行動を起こしたい、ということでもあるらしい。

 

 

 

そして、話が区切りのいいところに入ったところで、アザゼルは爺さんに切り出した。

 

「まぁ、調査中の事柄だから、一旦置いておくとしよう。爺さんはどこか行きたいところはあるか?」

 

すると、爺さんは急にいやらしい顔になって、こう答えた。

 

「おっぱいパブに行きたいのぉ!アザゼル坊、わかっとるとは思うが、でっかい胸のをしこたま用意しておくれ」

 

「ハッハッ、言われなくとも承知してるぜ主神殿」

 

「たまらんのー、たまらんのー」

 

二人は舞い上がるようにこの部屋を去っていった。……あ~。やっぱり、こうなったか。ほんとにあの人達がそれぞれの陣営のトップだとは思えない。魔王さん達のことも考えれば、真面目なのはミカエルさんだけかもしれない。


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