ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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無限の「襲来」

「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです」

 

前回と同様、奴は突然俺達の前に姿を現した。

 

俺達が映像を見終えたタイミングでこの部室に彼は転移してきたのだ。ここに来た目的は当然アーシア関連の何かだろう。

 

「リアスさん。単刀直入に言います。トレードをお願いしたいのです。僕が望むリアスさんの眷属は『僧侶』アーシア・アルジェント」

 

ディオドラは優しげな笑みを浮かべながら言った。それぞれ同じ駒の眷属同士なら交換できるっていう制度なのか?しかし、部長ならーー

 

「それはできないお願いね。私はトレードをする気は微塵もない。単純に大事な眷属悪魔として、アーシアを手放したくないもの」

 

ディオドラのその提案に対して、間髪を入れずに否定した。あそこまで溺愛しているんだ。そうなるのは当然。

 

「それは能力としてですか?それとも彼女が魅力的だからですか?」

 

諦めの悪い男だ。ディオドラはまだ部長に質問を訊いてくる。

 

「それは愚問ね。両方に決まっているじゃない。それに求婚した女性をトレードで手に入れようってこと自体がおかしいわね。あなたは求婚の意味をわかっているのかしら?」

 

逆に部長は強烈なプレッシャーを放ち、言い返した。あれは相当頭にきてる。

 

それでも、ディオドラは微笑んでいるままだった。

 

「わかりました。では、今日のところは帰らせていただきます。けれど、僕は諦めません」

 

そう言うと、アーシアの方へ近付いてくる。そして、アーシアの前に立つと、その場で跪き、手を取ろうとする。ーーが、イッセーはそれを黙って見ていられなかったのだろう。

 

イッセーはディオドラの肩をつかんで、その行為を許さなかった。

 

「放してくれないかな?薄汚いドラゴン君に触れられるのはちょっとね」

 

それに対しても、笑顔を浮かべながら言った。それでイッセーはキレたのか、拳を振り上げようとする。しかし、それよりも早くアーシアがディオドラの頬にビンタした。

 

「そんなことを言わないでください!」

 

アーシアは睨み付けるように、ディオドラの方を見ていた。

 

「なるほどね。では、次のゲーム、僕は赤龍帝の兵藤一誠を倒す。そうなったら、アーシアは僕の愛に応えて欲しい」

 

奴は魔方陣を展開させて、ここから去ろうとしていた。

 

「あんたには絶対に負けない!ドラゴンの力を甘く見るなよ!」

 

ここから消え去る直前に、イッセーはディオドラにそんなことを言った。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

「くそっ……、俺はどうすることもできないのかよ!」

 

帰宅途中、俺は道路に立っている電柱を殴った。

 

俺はあの後、アザゼルに麟が立てた仮説を打ち明けてみた。みんなに聞かれないような場所で。

 

「まだ、全員には伝えるな」

 

アザゼルの答えはそうだった。理由は完全に断定できたわけではないからだと言う。それはもっともな言い分かもしれないが、レーティングゲームの際にディオドラが何をしでかすかもわからない。

 

かと言って、俺はゲームに参加することすらできない。結局のところ、俺はみんなを信じてやることしかできないんだ。

 

\♪~♪~/

 

「……誰だ?こんなときに」

 

俺のケータイの着信音が鳴り響く。

 

「もしもし?」

 

『おお、ハジメか?』

 

「なんだ、先生か。どうしましたか?」

 

『なんだとはなんだ、ったく。……まぁいい。今から話すことを落ち着いて聞けよ。あいつらを危険にさらすかもしれないからな。そして、このことも他言無用で頼む』

 

「……なんですか?」

 

『それはな、ーーーー』

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲーム当日。俺は前回と同じようにVIPルームで待機していた。そして、レーティングゲームが開始する時刻となった。

 

ーーそれと同じタイミングでこの空間に大量の転移魔方陣が発生した。紋章の形は以前見た『禍の団(カオス・ブリゲード)』のそれだ。

 

『アザゼルの読み通りってわけだね』

 

「残念ながらそうらしいな。……変身!」

 

〈TURN UP〉

 

俺は変身し、ブレイラウザーを引き抜いた。ここには他の勢力の実力者も沢山いる。今は通常の状態でなんとかなるはずだ。

 

「仮面ライダー、貴様は確実に殺せと言われている。早速で悪いが、この場で散ってもらおうか」

 

一人がそう言うと、俺にだけ敵が集中し始めた。さっきの考えは撤回しよう。面倒だからまとめて片付けてやる!

 

〈フュージョンジャック〉

 

太いフォルムが特徴的なジャックフォームに姿を変えて、アイアンを力の限り振り回した。

 

それを喰らった連中は壁があるところまで吹き飛び、バタバタと倒れていった。

 

もちろん、単純な奴等ばかりだけではない。俺の攻撃を避けて、反撃してくる敵も当然いた。しかし、生半可なものは今の俺にとって無意味だ。だから、ほぼ無傷でこの場は切り抜けることができた。

 

「ハジメ、こっちの準備は完了した。いつでもいけるぞ」

 

どうやら、アザゼルの方もある程度の数までは片付けたようだ。

 

「わかりました。じゃあ、お願いします!」

 

俺のその言葉にアザゼルは無言で頷き、イッセー達がいる空間に俺達を跳ばした。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

「……ここは?みんなは?」

 

「フィールドの隅っこの方だな。あいつらは……話の通りであれば、あそこの神殿らしき場所に向かっている。そして、あいつらの言ってることが正しければ、そこにアーシアが捕らわれている」

 

アザゼルは俺の疑問に答えて、指で示した。アーシアをさらうなんて……ディオドラはそんなに性根が腐っていたのかよ?

 

俺は身を翻し、その方向に向かおうとしたが、アザゼルが別の方向を見て、急に顔をしかめたので足を止めた。

 

「……まさか、お前がこの場にいるとは」

 

その視線の先には、とても長い黒髪で、黒いワンピースを着ている華奢な少女が立っていた。

 

「アザゼル、久しい」

 

その少女は薄ら笑いを浮かべる。どうやら、お互い顔見知りのようだが……。

 

「お前は一体何を考えている?ーーオーフィス」

 

俺はその言葉を疑った。この子が『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップだというのか?

 

彼女は神殿の方にずっと視線を向けている。

 

「見学。ただ、それだけ」

 

「ハッ、高みの見物ってわけか。しかし、ここに現れるなんて思わなかったからな。この場でお前を倒せば世界は平和か?」

 

アザゼルは苦笑いしつつ、光の槍を右手に作り出した。しかし、彼女は首を横に振るだけだった。

 

「無理。二人がかりでも我、倒せない」

 

『言ってくれるね。この女の子は』

 

さすがは親玉。実力もとてつもないらしい。

 

「では、さらに頭数が増えたらどうかな?」

 

いきなり空から羽ばたく音と、低音の声が聞こえてくる。あれはタンニーンさんだ!

 

「あれほど、世界に興味を示さなかった貴様が今頃になって世界を混沌に導くテロリストの親玉だと?貴様をそうさせたのは一体何だ!」

 

タンニーンさんは激しいプレッシャーを放ち、オーフィスをギロリと睨む。

 

「静寂な世界。故郷である次元の狭間、帰りたい」

 

ーーん?それって、ただのホームシックだよな?

 

「そんな下らない理由で……ふざけているのか?」

 

「そうか。お前は知らなかったな。次元の狭間ってところにはーー」

 

「グレートレッド、存在する」

 

アザゼルの言葉を遮って、オーフィスが言った。

 

「そういうことだ。そいつはオーフィスとほぼ同じか、それ以上の力を持っている」

 

グレートレッドーー以前、聞いたことはあった。まさか、そんな事情があったなんて……。

 

「そういうことだったか。……剣一。お前はあいつらの助けに行ってやれ。後のことは俺とアザゼルに任せておけ」

 

突然、タンニーンさんはイッセー達の援護に行くように言う。

 

「……いいんですか?」

 

「あぁ、だから、早く行け!」

 

俺はタンニーンさんに一礼し、

 

〈フュージョンジャック〉

 

オリハルコンウイングを展開させて、俺は神殿の方へ向かった。しかしーー

 

\バシュンッ!/

 

ブレイドアーマーを何かがかすめた。

 

「……なんだ?」

 

その何かが飛んできた方向に目を向けると、貴族服を着た一人の悪魔がいた。

 

「俺は真のアスモデウスの血を引く者。クルゼレイ・アスモデウス。はじめましてですね、仮面ライダー」

 

アスモデウスと名乗った上でこの口振り。恐らくは、

 

「なるほど、偽者の魔王様か」

 

俺がそう呟くと、その男の不適に笑んだ表情は怒りに変わった。

 

「偽者だと?俺達が真なる魔王の血統だ!」

 

奴は翼を広げて、俺に突進してきた。俺はブレイラウザーでそれに対して応戦する。

 

「カテレア・レヴィアタンの敵、とらせてもらおう!」

 

「それは人違いだ!」

 

この男は何か勘違いをしている様子。あの女を倒したのは麟だ。

 

「おい、麟!自分の後始末ぐらいは自分でやってくれ!」

 

『チッ、わかっている』

 

〈リモート〉

 

俺は金色がかったアンデッドを召喚して、踵を返した。

 

「後は任せたからな」

 

「フン、この展開には大分慣れた。適当になんとかしてやる」

 

麟は両手に剣をそれぞれ一本ずつ持ち、構えた。

 

「お前の女を殺したのはどうやら俺らしい。敵討ちをしたければ、かかってくるんだな。……どうせ無駄だろうが」

 

そして、不機嫌そうに、ため息をつきながら敵を挑発をする。

 

「どいつもこいつも……減らず口も大概にしろ!」

 

俺はその言葉を最後に聞き、改めてみんながいる方へ駆けていった。


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