「ハァァァァァッ!」
「ウェェェェイッ!」
俺は大小異なる二対の剣で、イッセーはさっきまで使っていたアスカロンという剣を左手に持ち、ヴァーリを攻め立てる。しかし、ヴァーリは容易に俺達の剣戟をかわした。
俺達は空中で体勢を立て直すと、再び攻撃を仕掛ける。
『ヴァーリ、赤龍帝が持つその剣は
「了解だ、アルビオン」
ヴァーリは自分の神器と話していた。それに気をとられた刹那、目にも止まらぬ速さでヴァーリは殴ってくる。俺は空中を蹴り後方へとかわすが、イッセーは胸に直撃をもらっていた。
「困ったな。ホントに弱い。弱すぎるよ!」
イッセーのことをバカにしているヴァーリ。俺はその隙をつくように斬りかかるが、一気に距離をとられてしまった。
「しかし、キミはやるな。あの強力な一撃を放てる人間となると、やはり侮れない」
そこまで警戒されてるとは。てっきり、俺のことを見下してるものだと思っていたのだが。そうなると、イッセーの底力を信じるしかない。
『Divide!』
ヴァーリが装備する鎧の宝玉から音声が聞こえると、イッセーの纏っているオーラがごっそりと失われた。代わりにヴァーリの力が増しているように感じる。
『ハジメさん、イッセーさんの力が吸いとられた原因はさっきの白龍皇の拳打です。おそらく、攻撃を当てることが能力発動のトリガーだと思います』
霧は俺に白龍皇の能力を推測ではあるが、解説してくれる。
(わかった。霧、ありがとな)
『Boost!』
しかし、イッセーも負けじと自身の能力を使い、力を元に戻す。
「ほう。なら、これはどうかな?」
ヴァーリは無数の魔力の弾丸を俺達に撃ちだしてくる。あいつは俺のカードの力をあまり見ていない。だったら……、
〈リフレクト〉
これで弾き返す。
俺の目の前にはシールドのような壁が出現し、ヴァーリの放った弾全てを奴に返した。俺はその瞬間にイッセーに目で合図を送る。
ヴァーリは一瞬驚いた顔を見せるが、それらを全てかわす。
「へぇ、そんなこともできるのか!しかし、それも無駄だったけどね!」
「残念ながら、本命はここからだ」
上空には急降下してくるイッセーの姿がある。
さっきのあれでヴァーリの虚をついた隙に、イッセーは背中のブースターを勢いよく吹かし、近づいたのだ。そして、空中で体を一回転させ右足で蹴り込む姿勢に入った。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
「ダァァァァァァァァァッ!」
思いがけないところからの攻撃だったからか、ヴァーリはかわそうとしていたが、もろにイッセーの蹴りが入った。その勢いのまま地面に激突する。
「まだまだ!」
イッセーはさらにヴァーリとの距離を詰めて、両拳で殴りかかる。
「くっ!」
それに対して、ヴァーリは光の盾を作り、両腕でも防御の姿勢をとった。だが、盾に纏った鎧すら、いとも容易くイッセーは砕いていく。あれが
「ハハハ、やればできるじゃないか!それでこそ戦いがいがあるというものだ!」
口からは血を吐き出しているが、鎧はすぐに再生させていた。現時点でイッセーとヴァーリの実力差を考えると、イッセーのスタミナが持つかどうか怪しいところがある。俺がなんとかするしかないか?
「アルビオン、今の彼らになら『
『たしかに、彼を葬るにはそれしかないか。しかし』
「問題ない。俺にならやれる。ーー『我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし、二天龍なりーー』」
〈始まったか〉〈始まりましたね〉
ヴァーリが何か呪文のようなものを唱え始める。さらにそれとは別にノイズのかかった聞いたことのない他人の声も聞こえてくる。
『無限を妬み、夢幻を想うーー』
〈全部だ!〉〈そう全てを捧げろ!〉
これは危険な香りしかしない!俺は地面を蹴り、斬りかかろうとするが、強固なバリアを張っていて、本体まで攻撃が届かない。
『我、白き龍の覇道を極めーー』
「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう」」」」」
『Juggernaut Drive!!!!!!!!!』
呪文の詠唱を終えると、ヴァーリの力はさっきよりも桁違いに跳ね上がり、鎧が変形していく。姿形は完全にドラゴンそのものとなっていた。
「これが現時点での俺の奥の手『
奴の体は気がつくと消えていた。俺が気を抜くことはこの戦闘で一瞬たりともなかったのだが、俺が予想していた速度よりも速くヴァーリは詰め寄ってきた。それでも、俺は寸分のところで攻撃をかわす。
「これもかわすのか。さすがだね、仮面ライダー!」
「それはどうも!」
〈マッハ〉
俺も負けじと速さを上げて反撃に出る。
「ハァァァァァァッ!」
「ウォォォォォォッ!」
真っ向からの殴り合い。俺も直撃を食らっているが、ヴァーリにも剣戟が当たるようになった。しかし、このまま続けても、なんの打開策にはならない。ヴァーリも同じことを考えたのか、真上に飛び上がり極大のエネルギー弾を撃ってくる。
〈エボリューションキング〉
俺はわずかな時間でアブゾーバーにカードをラウズさせて、キングフォームになる。エネルギー弾はキングラウザーで斬り裂き軌道を反らした。
「フフフ、俺はそれを待ってたよ!」
『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!!!!!』
体から力が一気に抜けていく感覚に陥る。これが白龍皇の能力かよ!
俺から力を奪うと、胸元と腹部を開放させて、何かの発射口をあらわにする。そこには白いオーラが溜まっていく。
『ハジメ、「アレ」を使えばなんとかなるはずだよ?』
「あぁ、わかってる!」
俺は13枚全てのギルドラウズカードを右手に集めて、それらを1枚のカードとして新たに創造させた。
〈ワイルド〉
それをラウズさせると、さっき奪われたはずのエネルギーを一気に取り戻すことができた。むしろ、さっき以上の力が溢れてくる。
俺はキングラウザーを両手に持ち、静かに構えた。ヴァーリの方もそろそろ溜めていたあれをいつ掃射してきてもおかしくない。
そんな状況なのに、俺は妙に落ち着いていた。
色んな戦闘を経験したから?絶対に負けないと思い込んでいるから?ーーその理由は定かではないが。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
『Transfer!』
「ハジメ、決めろぉぉぉぉ!」
イッセーからの譲渡を受け、さらに激が飛ばされる。あぁ、任せろ!
「ウェェェェェェェイ!」
俺はキングラウザーを振り抜き、ワイルドサイクロンを放った。
『Longinus Smasher!!!!!!!!!』
音声が発せられると、俺のこれに対抗するかのように、ヴァーリも胸にある砲台から大出力のレーザーを照射してくる。
互いの攻撃はぶつかり合うが、俺の一撃がヴァーリの攻撃ごと押し返していく。そして、そのままヴァーリの体を光が飲み込んでいったように見えた。砂煙が舞い上がっていて、直撃させたのかまではわからないが。
「どうだ?」
煙が晴れるとそこには今にも崩壊しそうな鎧を身に纏ったヴァーリの姿があった。最も、鎧の形状は通常のものに戻っているうえに、その場に浮いているのがやっとの状態に見える。
「まさか、『
ヴァーリの表情はマスクをしているのでうかがい知ることはできなかったが、悔しそうな声を出していた。
「ヴァーリ、お前無茶し過ぎだぜぃ」
突然、空から中華風の鎧を全身に着込んだ若い男がヴァーリの近くにやって来た。
「美猴……もう時間だったか」
「そういうことだぜぃ。カテレアは暗殺に失敗したんだろう?なら、俺っちと一緒に帰ろうや」
「何者だ?お前は」
イッセーはその男に指を差し、訊く。それに答えたのはアザゼルだった。
「闘戦勝仏の末裔。お前らがソッコーで把握できる名前なら孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」
あの伝記の孫悟空だっていうのか。あの男が。
「しかし、もっと正確に言えば、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪といったところか」
「まぁ、そういうこった。俺っちは仏になった初代とは違い、自由気ままに生きてるのさ。俺っちは美猴。よろしくな、赤龍帝に仮面ライダー」
俺達に軽く挨拶をしてくる美猴。彼は金斗雲と思わしきものにヴァーリを乗せると、とんでもない速さで闇の中へと消えていった。
緊張からようやく開放されると、俺は変身を解除して、麟にプロパーブランクを投げた。
(今回はお疲れさん)
『……』
麟にそんな言葉を投げ掛けたが、返事は返ってこなかった。そのくせ、機嫌はとても良さそうだったけど。
戦闘後は、ここに来ていた三大勢力の軍勢が総出で処理をおこない始めた。
こうして、俺達は『
◼◼◼
「…………っつーわけだ。これからはアザゼル先生と呼んでくれ。まぁ、総督でもいいけどよ」
オカルト研究部の部室にはなんとアザゼル……先生がスーツ姿でいた。全員が全員とても驚きつつも、呆れている様子だった。
これからは俺達のことを鍛えてくれるそうだ。というかそれがこの学園に滞在できる条件だと言う。
でも、こうして激動の一学期がようやく幕を閉じるのだった。
活動報告に新たなアンケートを書き込みました。
今回はこの小説に関係あります。