(はぁ~、プール掃除しかしてないのに、それ以上の疲労を感じる。原因はわかりきっていることだけど)
『いいじゃん別に~、だって、ハジメはモテてないってわけじゃなかったんだよ?それは喜ばしいことじゃない?』
『そうだ。それに異性に言い寄られるのは悪い気分じゃなかっただろう?』
(鍠だけじゃなく嶋さんまでからかってくるなんて、勘弁してください!)
俺はあの後すぐにプールから出て帰るところだった。
『まぁ、からかうのはそれくらいにして、今この学園の校門前に人以外の気配を二つ感じた。敵意は微塵も感じられないが、用心しとくに越したことはない』
(……了解です)
そして、俺はその校門に向かって歩みを進めた。
そこにたどり着くと、銀髪の青年と日本の着物を着たちょいワルな雰囲気のおじさんが立っていた。どちらも外国人のような容姿をしている。
「アンタ達は何しにここへ?」
そう訊くと、青年の方は微笑みながら答えた。
「そうだな、今回はキミに用事があるわけじゃない。ただ赤龍帝の兵藤一誠にちゃんとした挨拶をするためかな。俺は今日戦うつもりはない」
この男はイッセーが赤龍帝だと知っている?
「なるほどねぇ、キミは前会った白いドラゴン、『白龍皇』でしょ?」
鍠は突然口を開き、彼に向けて言葉を発した。
「その通りだ。しかし、意思を独自に持ちしゃべれる神器とは」
白龍皇は意外そうな顔を浮かべている。その横では目を輝かせている人(?)がいた。
「ますます調べたくなってきたぞ!……っと、その前にお前さんとの手合わせを願おうか」
すると、彼があるものを取り出して俺は一瞬目を疑った。その手に握られていたものはケルベロスのような物が描かれたAのラウズカードだった。
「それは一体なんなんだ?」
質問投げ掛けるが、その言葉が終わった瞬間、俺の目の前に光が広がった。
その光が収まると、空間が歪んでいるような異質な光景があたり一面に広がっていた。
「これは単純な結界の一種だ。これで戦う以外の選択肢は無くなったわけだ少年、いや仮面ライダーブレイド」
「………アンタ、誰だ?」
なんとなく予想はしていたが、その通りの返答が返ってきた。
「アザゼル。堕天使どもの頭をやっている」
やはりか。今回は俺が目的だったらしいな。
「目的としてはお前さんの神器を間近で見てみたかったのと、『人工神器』であるこいつらの性能を計るためでもある」
アザゼルはそう言って、ブレイバックルとほぼ同じ大きさの固形物を取り出し、それにあのAのカードを入れた。それを腰にあてるとベルトが巻かれていった。
「変身」
〈OPEN UP〉
レンゲルバックルと同じ電子音がなり、黄色い光の壁が発現して、それがアザゼルの方へと近づいていく。
くぐり終えるとそこには、黒っぽいスーツをベースにしていて、金色のラインの入った仮面ライダーが立っていた。頭や胴体には「A」の意匠が見られる。腰にはブレイラウザーを黒にしたような剣を携えていた。
俺もブレイバックルを腰に巻きいつも通り構える。
「変身!」
〈TURN UP〉
走り抜けるようにオリハルコンエレメントをくぐり、その勢いのままブレイラウザーで斬り込んでいく。その黒いライダーもそれを防ぐように擬似ブレイラウザーを振り抜いた。
「くっ、さすが本物だな。剣戟の重さが段違いだ!」
「何?それはどういう意味だ!」
その防御を押し返して、本体の方に突きを放つが、
「さて、どういう意味だろうな?」
体をうまくひねって、避けられてしまう。そして、そのまま屈み足元をすくうように反撃をしてくる。
\ブゥン/
その攻撃は俺が後方に跳んだことで空を切った。
「戦い慣れしている。宿主のスペックも相当高い」
俺達が戦っている後ろの方で、白龍皇が俺に対してそんな感想を漏らした。その表情は笑っていた。
「そりゃ、どうも」
そんなことを言っていると、アザゼルは一枚のカードを擬似ラウザーから抜き取り、読み込ませた。
〈マイティ〉
その電子音の後、アザゼルの目の前にはケルベロスの頭部を模したような紋章が現れ、擬似ラウザーがそれを吸収していく。そして、跳び上がり、俺に向けてその一撃を放とうとしていた。
〈スラッシュ〉
〈トルネード〉
〈サイクロンスラッシュ〉
それに対して、俺もカードの力を使い迎撃の準備をする。
「オラァァァッ!」
「ハァァァァッ!」
\ギィン!/
技のぶつけ合いとなったが、競り勝ったのは俺だった。アザゼルはそのまま吹き飛んで、変身が強制解除されていた。それと同時に空間の歪みは晴れて、結界が解けた。
「ふぅ、危ないところだったな」
上からの攻撃だったから不利な状況ではあった。それでも勝てたのは『人工神器』だったからなのか?
「チッ、この衝撃で限界が来るとは。まだ改良の余地があるってことか。しかし、グレイブバックルに破損は見当たらないからなんとかなるか」
アザゼルはなんか独り言をぶつぶつと言っていた。
「悪かったな、いきなり戦いなんか挑んじまって。またな少年。まぁ次に会うのは会談の時だろうけど」
そう言ってアザゼルはこの場から去っていった。勝負には負けたはずなのにとても楽しそうな顔をしていた。
そして、白龍皇はいつの間にかいなくなっていた。
◼◼◼
それからは特に変わったこともなく時間が過ぎていき授業参観の日を迎えた。
俺は家族が一人もいないからいつもの授業と変わりなかったから、時間がゆっくりと感じたり、苦痛だと感じたりはしなかった。
そして、昼休みになると、とある廊下の一角で人だかりができていた。カメラのシャッター音が聞こえたりフラッシュがたかれていたので、何かの撮影会なのだろうと思っていた。
俺もどんな人がいるのか気にはなったものの、人口密度が多すぎて見に行けなかった。
「ほらほら、解散解散!今日は公開授業日なんだぜ!こんなところで騒ぎを起こすな。迷惑だぞ!」
すると、そこに匙を先頭に生徒会メンバーが人だかりに介入し、散らしていった。
ここになぜかイッセーと部長がいてこの場に残っていた。そして、ようやくここでの撮影会の的だったであろう人物が見えた。
魔法少女のコスプレに身を包み、見るからに10~20代ぐらいの美少女であった。
匙がその美少女に注意をしているが、全く聞く耳を持たない様子。そんな匙を見かねたのか、会長が出てきた。
「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決………」
会長がそのコスプレ少女を見るなり、言葉を止めた。……いや、動きを止めた。
「ソーナちゃん!会いたかったよぉ~」
コスプレ少女は会長が視界に入るなり嬉しそうに抱きついていく。会長の知り合いか?………あれ?よく見ると会長に似ているような。
「会長さんって、妹がいらしたんですね」
俺がそんなことを言うと、部長が溜め息を吐きながらそれを否定した。
「逆よ、ハジメ。ソーナのお姉様よ」
「「えっ?」」
その言葉に俺とイッセーは疑問符を浮かべる。
「あの方は現四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタン様よ」
……………?
「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
俺達はその衝撃の事実に絶叫するしかなかった。
悪魔なら容姿を変えられるとか、なんとか言ってた気もするけど、さすがにあのノリで会長の姉で魔王様の一人とか信じられない。いや、信じたくない。
「もぉ、ソーナちゃんったら酷いじゃない!今日のこと黙ってるなんて!お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだから☆」
………これは悪魔式のジョークの一種なのか?会長は顔を真っ赤にして体をプルプル震わせている。
「セラフォルー様、おひさしぶりです。」
そんな会長を助けるためか部長が挨拶をする。
「あらリアスちゃん☆おひさ~☆そっちの子達は?」
なんと、俺達にも振ってきた。
「兵藤一誠です。リアス・グレモリー様の下僕で『兵士』です。よろしくお願いします」
「剣一です。え~と、人間なんですけど、リアス先輩達の助っ人やってます」
「はじめまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」
横向きのピースサインを目元で作ってポーズを決める魔王様。
「噂のドライグ君と仮面ライダー君に会えてお姉さん嬉しい!」
俺の正体はもうすでに冥界中に広まっていたりするのか?違うな、サーゼクスさんにでも報告をもらっているのだろう。
「なぁ、ハジメ。この魔王様は俺の想像をはるかに越える軽いノリなんだけど」
イッセーは俺に話しかけてきた。それを聞いていたのか、部長が謝ってきた。
「ごめんなさい、言うのを忘れていた、いえ、言いたくなかったのだけれど、現四大魔王様の方々はプライベート時はいつもこんな感じで、酷いくらいに軽いのよ」
部長がまた溜め息を吐きながら言った。またまた、明かされた衝撃のしんじ2(ツー)。残りの二人もこんな感じって、トップに立つものがこんなゆるゆるでいいのだろうか?
「うぅ、もう耐えられません!」
あの厳格な会長さんが我慢しきれずに、この場を走り去っていく。
「いやぁぁん!待ってよぉぉ、ソーたぁぁぁん!」
「『たん』付けはお止めになってくださいと言ってるではありませんか!」
姉妹の追いかけっこ。平和な響きだけど、なんか危ないと思うのは気のせいだよな?
今回の授業参観を通してわかったことがひとつあった。冥界はきっと平和なんだろう。