ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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あとがきは見ない人が多いんでしょうか?




停止教室のヴァンパイア
「魔王」との邂逅


季節はもう夏に移り変わりつつある。俺はいつものように部室に顔を出しに行った。

 

「失礼しま「冗談じゃないわ!」……」

 

俺が部室に入った瞬間、突然部長が怒りだした。表情から察しても相当キレてることが想像できる。

 

「ごきげんよう、ハジメ。いきなり驚かしたようで、ごめんなさい」

 

部長は俺が来たことに気づいて謝ってくれた。どうやら、俺の入ってきたタイミングに問題があったようだ。俺はひとまず安心して、この状況がどうなって起こったか、なんとなく訊いてみた。

 

「……どうしたんですか?」

 

「アザゼルが私のかわいいイッセーに接触してきたの。それも縄張りに侵入して営業妨害ついでにね」

 

なるほど、そういうことか。それにしても「私のかわいいイッセー」って隠す気ゼロで堂々としてるよな。まぁ、当のイッセーは顔を赤くしているものの、何とも思ってないのか、よくわからない様子だし、これからどうなんだろ?

 

「たしかに悪魔、天使、堕天使のトップ会談がこの町で執り行われる予定とはいえ、これは万死に値するわ!」

 

「……やっぱ、俺の神器にアザゼルは興味を持っているのかな。堕天使の総督なんだろう?」

 

イッセーが不安そうに言った。そんなイッセーに対して木場が口を開く。

 

「たしかに、アザゼルは神器に造詣が深いと聞くね。そして、有能な神器使いを集めているという噂も聞く」

 

……そうなると、俺のバックルやラウザーもその対象に入りそうだな。特に俺のはこの世界中探してもありそうにないし。

 

「でも、大丈夫だよ。僕がイッセー君を守るからね」

 

木場、その言い方は見方によって、腐な方向に発展しかねないぞ?

 

「お前からそんな言葉が出てくるなんて、俺スッゲー嬉しい!」

 

「そんなこと当然さ。そうじゃないとグレモリー眷属の『騎士』は名乗れないさ」

 

「お前達、さっきからキモいぞ。特に木場、お前のその口調は男に向けて使うべきではない。女子に対する口説き文句だろ!」

 

「そ、そんな」

 

「イッセーもだ。お前はもう少し周りを気にしたらどうだ?」

 

「お、おう」

 

二人とも気落ちしてしまった。しかし、これはなんとかしとかないと、色々と……ね。

 

『ハジメもイッセーのこと言えた口じゃないでしょ~。周りを気にしなさい』

 

(痛いとこ突くな!これでも自覚はしてる方だ)

 

「しかし、どうしようかしら。相手は堕天使の総督。下手に接触することもできないわね」

 

俺達の話が別の方向に行きかけている時、部長はさっきのことについて考え込んでいた。ただでさえ3すくみの関係が崩れかけてるんだ。これ以上悪化させるのはまずいだろう。

 

「アザゼルは昔から、ああいう男だよ、リアス」

 

突然、聞いたことのない男の声が聞こえてきた。全員がその発声源に視線を移すと、そこには紅い髪の男性が微笑みながら立っていた。

 

この人の髪の色は部長のそれと近い……いや、同じだ。朱乃さん、木場、小猫ちゃんはその場で跪いた。

 

「お、お、お兄さま」

 

部長も立ち上がり、驚いた声を出していた。

 

つまり、この方が悪魔のトップである、現魔王『サーゼクス・ルシファー』さんか。魔王さんとこんなところで会えることになるとは。

 

「先日のコカビエルのようなことにはならないよ、アザゼルの場合は。今回みたいな悪戯はするだろうけどね。しかし、予定よりも来日が早かったな」

 

そんなことをサーゼクスさんは言っている。そのサーゼクスさんの後ろには、グレモリー家のメイドであるグレイフィアさんもいた。そういえばこの人って、サーゼクスさんの『女王』なんだっけ?

 

「お兄さま、ど、どうして、ここへ?」

 

部長が怪訝そうに訊くと、サーゼクスさんは一枚のプリント用紙を取り出した。それは授業参観のお知らせだった。

 

「どうしてって、授業参観が近々行われるのだろう?ぜひとも妹が勉学に励む姿を間近で見たいと思ったまでだ」

 

それにしても、悪魔の魔王様が授業参観する光景ってシュールすぎる……。

 

「報告はグレイフィアから受けたよ。例え魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも授業参観に参加したかったのだよ。それと、父上もちゃんとお越しになられる。それにこれは仕事の一環でもあるんだよ。実は例の会談をこの学園で執り行おうと思っていて、会場下見も兼ねているんだ」

 

まさか、ここに集まることになるとは。みんなも相当驚いている。

 

「………ここで?マジですか?」

 

イッセーは思わず口に出してしまっていた。

 

「そうだ。この学園どうやらなにかしらの縁があるみたいだ。私の妹と伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹が所属し、堕天使の幹部と白龍皇が襲来した。これは単なる偶然ではない。その原因が兵藤一誠君ーー赤龍帝だとは思うのだが」

 

サーゼクスさんはイッセーに視線を送った後、俺にも向けてきた。

 

「それと、いままで確認されたことのない神器を自在に操る剣一君、キミの力も要因となってるかもしれない。おっと、紹介がまだだったね。私は冥界の現魔王のひとり、サーゼクス・ルシファーだ」

 

「はじめまして、部長から話は聞いていたので名前は知っていました」

 

「そうだったか、これからも妹の眷属の支えになって欲しい。よろしく頼むよ」

 

「魔王様にそんなこと言われるなんて、俺で良ければこれからも力を貸していきます」

 

「ありがとう」

 

俺とサーゼクスさんの会話が終わると、今度はゼノヴィアが自己紹介をして会話を始めた。

 

それも終わると、サーゼクスさんとグレイフィアさんは今日泊まる場所を探すと言って、どこかに消えていった。そして、俺も特に用事が無かったので部室を後にした。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

サーゼクスさんがこの町に来て数日がたった。結局、冥界の魔王様はイッセーの家に泊まっていったらしい。そして、駒王町の下見という名目で観光を楽しんでいるようだった。すごくフリーダムな気もするけど、こんなものなんだろうか?

 

それで俺達はというと、日曜日だけど学園に集められていた。その理由は、

 

「さて、あなた達。今日は私達限定のプール開きよ」

 

ということである。俺達は生徒会からの命令でプール掃除を任せられていて、そのかわりにプールを1番最初に使わせてもらうという交換条件で部長は乗り気になったみたいだ。でも、最初の水は絶対冷たいイメージしかないから、俺は入らないでおこうかな?

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

掃除が終わると、女性陣が水着に着替えてきた。

 

「イッセー、私の水着はどうかしら?」

 

それに対して、イッセーは鼻血を垂らしながら、見とれてしまっていた。………これは殺傷能力がありそう。

 

「あらあら、部長ったら張り切ってますわね。ハジメ君、私の方はどうかしら?」

 

朱乃さんも部長同様にビキニタイプの水着を着て、現れた。しかも白い。

 

「キレイですね。似合ってます」

 

ありきたりな褒め言葉を使い、素直な感想を伝えた。

 

「うふふ、そうですか。ありがとうございます」

 

すると、笑顔でお礼の言葉を返してくれた。

 

その後先輩二人に続き、アーシアと小猫ちゃんも入ってきた。二人ともスクール水着を着用していた。……ゼノヴィアがまだのようだけど、まぁいずれ来るだろう。

 

 

 

 

ようやくオカルト研究部だけのプール開きが始まった。といっても、俺は何をするでもないのだけど。水温は予想通り低くて、俺はパスをした。

 

イッセーは小猫ちゃんとアーシアの泳ぎを見ることになって、お姉さん二人は優雅に泳ぐことを楽しんでいた。……木場は延々と潜水している。

 

(そうだ、本でも持ってきて読むか)

 

そう思い立ったので、俺は更衣室に向かった。すると、用具室からゼノヴィアが出てきた。

 

「おや、剣一か。どうしたんだ?キミはプールに入らないのか?」

 

「俺は寒いと思ったから、今日は遠慮することにした。ゼノヴィアだっていままで何してたんだ?」

 

「私か?初めての水着だから、着るのに時間がかかっていただけだ。どうだろう似合うかな?」

 

なぜ、用具室で着替えていたんだ?そんなことは後で聞こう。

 

「似合ってるよ。水着が初めてってことは、やっぱり教会の規則か何かなのか?」

 

「うん、そうだね。というよりも私自身がこういったものに興味を持ってなかったんだ」

 

かわいそうな人生をいままで送ってきたんだな。

 

「しかし、私も女らしい娯楽を得たいと、最近思うようになってきてね。そこで剣一。折り入って話がある」

 

「その前に呼び方なんだけど、ハジメでいいよ。フルネームはいちいち長いから」

 

「そうか、ではハジメ、改めて言うが、私と子供を作らないか?」

 

……………ん?俺の聞き間違いかな?

 

「ゼノヴィア、聞き返すようで悪いんだけど、もう一回、ゆっくりと言ってみてくれないか?」

 

「聞こえなかったか?すまない。ハジメ、私と子作りをしよう」

 

……俺の空耳ではなかったようだ。

 

「おいおいおいおいおい、ちょっと待て、だいたいむがっ!」

 

パニック気味の俺の口元ゼノヴィアがふさいだ。

 

「そんな大声を出すな。気づかれてしまう」

 

「お前、それはおかしいだろ?どうすれば、この答えにたどり着くんだよ!」

 

「なら、順を追って話そう」

 

ゼノヴィアは語りだした。

 

小さい頃から具体的な夢や目標が教会絡みのものだったゼノヴィアは悪魔となった今、その夢や目標が無くなったと。たしかに、いままでの彼女の価値観からすればそう言える。

 

そこで何をしたらいいか部長に聞いた結果、これに辿り着いたらしい。

 

「なんとなくはわかった。いままでは宗教上、貞操意識とか強かったからできなかったから、でもそのしがらみから解放されたので、子供を産みたいと?」

 

ゼノヴィアはその言葉にうなずいた。

 

「でも、なぜ俺なんだ?ここには悪魔であるイッセーに木場もいるだろう?」

 

平静を装っているが、内心はテンパっている。もう心臓バクバクいってるし。

 

「私は子供を作る以上、強い子になって欲しいと願っているんだよ。父親の遺伝子に特殊な力、もしくは強さを望む。キミはコカビエルとの戦闘においても終始圧倒していたではないか?それでハジメが一番適任だと思った」

 

そんな理由で俺なのか。でも、これは誇っていいことなのだろうか?

 

「それとも私では不服か?これでも身体はそこそこ自身があるんだが」

 

そして、突然ゼノヴィアが水着を脱ぎ始めた。

 

「い、いや、そ、そんなことはないけど」

 

(こんな乗りと勢いの空気で女の子を抱いていいのか?いや、さすがにまずいだろ!)

 

「ゴメン、ゼノヴィア。また次の機会に……な!」

 

俺はそう言い残し、この場から離脱した。……と同時に重大なミスに気付いた。

 

(あれって、「子作りはまた今度な」って言ってるに等しいじゃん!)

 

『僕はわざと言ってるもんだと思ってたけどねぇ~、違ったんだ』

 

「はぁ、やらかした。どう誤解を解こうかな?」

 

そんな大変なことがあったプール開きだった。


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