ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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騎士の「覚醒」

あれから、俺は連絡が来るのを待っていた。そして、時間が深夜の12時を回った頃だった。俺と朱乃さんのケータイが同時に鳴り出した。

 

「ハジメ君、行きましょう」

 

「はい!」

 

俺達は駒王学園に急いで向かった。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

駒王学園が目の前に見える公園にオカルト研究部のメンバーと生徒会のメンバーが集まっていた。

 

話を聞く限りでは、シトリー眷属の皆さんが学園の周りを大きな結界で囲っていて、できる限り外に被害を出さないようにしている。しかし、会長が言うには、

 

「これは最小限に抑えるためのもので、正直に言ってしまうと、コカビエルが本気を出せば、この地方都市そのものが崩壊します」

 

……とのことらしいが、あくまでも下準備が必要である、とそのようなことをあとに付け加えて言っていた。なら先手を打てばいい。ただそれだけの話だ。

 

「攻撃を少しでも抑えるために私と眷属はそれぞれの配置について、結界を張り続けます」

 

「ありがとう、ソーナ。あとは私達が食い止める。お兄様には朱乃に伝えるように言っておいたわ」

 

たしか、部長のお兄さんは魔王なんだっけ?

 

「部長、ソーナ様、サーゼクス様の加勢が到着するのは1時間後だそうですわ」

 

1時間か……。けっこうな時間だけど大丈夫なのか?

 

『いざって時は僕たちを使えばいい。キングフォームだって、今なら安定して使えるようになってるんだから勝てるよ』

 

(そうか。でも、油断する気はない)

 

『ハハッ、それでこそハジメだよ!』

 

「さぁ、みんな、これはフェニックスとの一戦とは違い、死戦よ!でも、死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園にまた通うわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

俺達はそれぞれ返事をした。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

正門から堂々と乗り込んでいく俺達。

 

校庭の中央には聖剣と思われる4本の聖剣が光を発して、宙に浮かんでいる。それを中心として、異様な雰囲気漂う魔方陣が校庭全体に描かれていた。

 

魔方陣の中央には木場の仇である男、バルパー・ガリレイの姿があった。あのじいさんは何をするつもりだ?

 

「なんだこれは……」

 

イッセーも疑問に思ったようだ。

 

「4本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」

 

笑いながら奴は口にした。

 

「バルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合する?」

 

空中から声が響いた。ここにいる全員が空に視線を向けると、黒い翼を大量に生やした堕天使の姿があった。

 

あれがコカビエルか。余裕そうにして、宙に浮かした椅子に座っている。

 

『あれが幹部ねぇ。たしかに、いままでの戦ってきた敵とはオーラの質が違う』

 

(あぁ、俺でもあいつが危ないってことを感じ取れる)

 

『だが、いままで戦ってきた奴らが弱すぎた。ただそれだけの話だと俺は思うがな』

 

「5分もいらんよ、コカビエル」

 

「そうか。では、そのまま続けろ」

 

堕天使はあのじいさんから俺達に視線を移した。

 

「サーゼクスかセラフォルーは来るのか?」

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりにーー」

 

\ヒュッ!/\ドォォォン!/

 

突然爆発が起こったかと思うと、後ろにあった体育館が消し飛んでいた。

 

「つまらん。まぁいい。余興にはなるだろう」

 

嘘だろ?なんだよあの光の槍は?もはや柱じゃないか。

 

『へぇ~、実力は本物みたいだね。あれ、ハジメびびってる?』

 

(あれでビビらない方がおかしいだろ!でも、ここまで来たらやるしかない)

 

俺はブレイバックルを取り出して、いつも通り構えた。

 

「変身!」

 

〈TURN UP〉

 

「ほう、珍しい神器持ちだな人間!なら、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」

 

コカビエルが指を鳴らすと、10メートルはあるであろう巨大な犬が闇の中から現れた。いや、犬じゃない。首が3つある!

 

『ケルベロスか……』

 

忌々しそうに麟が言った。しかし、いつもの覇気が無い。

 

(おい、どうした?)

 

『いや、俺達アンデッドにとって、思い出したくない奴に似ていたからな』

 

『そんな昔話はほっといてください、来ますよハジメさん!』

 

「お、おう」

 

全員が戦闘体勢をとる。俺はその巨大な魔物に向かって駆けていった。

 

「はぁぁっ!」

 

ブレイラウザーを使い全体を斬り裂いていくが、体がデカイこともあるのか、効いているのかどうかわからない。

 

部長と朱乃さんも魔力で攻撃をしているが、消滅させるまではいたっていなかった。

 

〈キック〉

 

〈サンダー〉

 

〈マッハ〉

 

「ウォォォォォ、ウェイ!」

 

〈ライトニングソニック〉

 

「ウェェェェェェイ!」

 

電撃の跳び蹴りを打ち込むと、ケルベロスの首が2本飛んでいき、その場で倒れた。

 

しかし、まだケルベロスはいた。そいつはイッセーとアーシアがいる方に向かっていく。

 

さらに別のところからも出てきた。今度のは俺狙いか。

 

「こいつら何匹いるんだよ?」

 

\ズバッ/

 

いきなり、ケルベロスの首が飛んだかと思うとそこにはゼノヴィアがいた。

 

「遅れてすまない」

 

そう言うと、今度は胴体目掛けて斬りかかっていった。

 

イッセー達の方には木場が駆けつけていた。イリナは重傷を負って、治療を受けているから、これで全員揃ったか。

 

「完成だ」

 

バルパーの声が聞こえると同時に、校庭の真ん中にあったエクスカリバー達がさっき以上の光を発し始めた。そして、空中にいるコカビエルが拍手をしだす。

 

「4本のエクスカリバーが1本になる」

 

その眩しいほどの光が無くなると、校庭の中央にあったエクスカリバーが1本だけになっていた。

 

「エクスカリバーが1本になった光で、下の術式も完成した。あと20分もしないうちにこの町は崩れ散るだろう。解除したいのならコカビエルを倒すしかない」

 

会長の言ってた下準備はこれのことだったのか。しかし20分か……。部長のお兄さんが来るまでもたない。

 

「フリード!」

 

コカビエルが誰かの名前を呼ぶ。暗闇からあの悪魔祓いが歩いてきた。……そんな名前だったのか。

 

「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興に楽しませろ」

 

「ヘイヘイ。ちょっくら、このスペシャル仕様のエクスなカリバーちゃんで悪魔と愉快な仲間達でもチョッパーしますかね!」

 

不気味な笑みを見せながら、奴は校庭のエクスカリバーを掴んだ。

 

木場にゼノヴィアが近づいて、何か話しかけている。二人の目的はあくまで聖剣。共闘でもしよう、と持ちかけているようだった。

 

「ほう、あの計画に生き残りがいたのか。それに、こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな」

 

その後、バルパーが昔話を語りだした。正直、聖剣が好きだっただの、使える適性がなかっただの俺にとってはどうでもいい話だった。しかし、なぜそこから「聖剣使いを人工的に創りだす」という考え方にいたるのか?

 

それに必要な因子だけを抜き出し、不要となったら殺すだと?理論はさっぱりわからないが、こいつの性格は歪んでいること。そして、もはやこいつは人間ではないこと。それだけは理解ができた。

 

「同志達もその因子を抜いて、殺したのか?」

 

木場が絞り出すように声を出して聞く。

 

「そうだ。この球体はその時のものだぞ?これは最後のひとつ。まぁ、今となっては不要なものだ。そんなに同志とやらが大切というならこの結晶は貴様にくれてやる」

 

バルパーは興味を無くしたかのようにその球体を投げ捨てた。

 

木場はそれを拾い上げ、悲哀に満ちた表情で、愛しそうに、懐かしそうに、その結晶をなでていた。

 

その時だった。結晶の光が広がっていき、それはポツポツと所々から浮き上がり、人のカタチをなしていく。

 

あの子達が木場と同じ被害者であり、死んでいった者達の魂なのか?

 

木場は彼らに話しかけているようだった。すると、その思念体である少年のひとりが微笑みながら、木場に訴えている。

 

何をしゃべっているかはわからないが、どんなニュアンスかは伝わってくる。

 

そして、彼らはひとつの大きな光となって木場のもとに集まっていく。

 

「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼし、負の連鎖を今ここで終わらせる」

 

木場は静かにそう言うが、

 

「ふん。研究に犠牲はつきものだと昔から言うではないか」

 

バルパーは当然だと言わんばかりにそう返した。

 

「木場、お前自身で決着をつけるんだ!あのエクスカリバーを砕くんだ!」

 

俺がそう言うと、続けてほかのみんなも木場に対して激を飛ばす。

 

「僕は剣になる。部長そして仲間達の剣となる!今こそ僕の想いに応えてくれ!」

 

木場は魔剣創造の力を使い、1本の剣を出現させた。ーーがいままでの魔剣とは何かが違うオーラを放っていた。

 

「禁手、『双覇の聖魔剣』聖と魔を有する剣の力、その身で受けてみろ!」

 

すぐさま、フリード目掛けて走り出していた。木場は新しい力に目覚めたんだな。あれは木場とゼノヴィアに任せておいて大丈夫だろう。あとは、

 

「イッセー、俺に譲渡頼む」

 

「それはいいけどよ、お前何するつもりだよ?」

 

「あの親玉を叩く」

 

イッセーはそれを聞き、驚きを見せていた。しかし、

 

「わかった。頼んだぞ、俺の親友!」

 

それを了承してくれた。

 

イッセーは俺の肩に左手を置き、俺はアブゾーバーからスペードのカードを取り出した。

 

『Transfer!』

 

〈アブゾーブクイーン〉

 

〈フュージョンジャック〉

 

コカビエルに向けて飛び立っていく。そして、つばぜり合いの形となった。

 

「人間ごときが。俺を倒せると思っているのか?」

 

「あぁ、勝つさ。何があっても絶対にな!」

 




コカビエルをオーバーキルしそうな予感が………

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