ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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今回も戦闘描写はなし。


聖剣使いの「訪問」

「祐斗は聖剣計画の生き残りなのよ」

 

次の日の朝、部室に呼ばれて部長から木場についてのことを切り出された。

 

「数年前まで、キリスト教内で聖剣が扱える者を育てる計画が存在したの」

 

そんなことがあったとは……。悪魔にとって聖剣とは最悪の武器と聞く。みんなにとっては一番の天敵と言えるだろう。

 

「聖剣は使う人を選ぶの。使いこなせる人間は数十年にひとり出るかどうかだと聞くわ。だから、教会は人為的にその適合者を生み出すためのその計画だったのよ。そして、祐斗は聖剣に適応できなかった。それどころか、祐斗と同時期に養成された者達も全員適応できなかったようだけれど」

 

「それで適応できなかった、人達はどうなったんですか?」

 

俺は最悪のことを予想しながらそう聞いてみたが、その通りの答えが返ってきた。

 

「全員『不良品』と決めつけられて、処分されたわ」

 

覚悟はしていたが、やはり聞いてて不愉快だ。こんなこと人がすることじゃない。部長もつらそうにして、こう続けた。

 

「彼ら教会の者達は悪魔を邪悪な存在だと言うけれど、人間の悪意こそが、この世で一番邪悪だと思うわ。……決してすべての人間がというわけではないけれどね」

 

たしかに、そんなことをしている奴らより、オカ研部のみんなの方が人間味がある。悪魔のすべてが悪いというわけではないはずだ。これは俺の考えだけど。

 

「私が祐斗を悪魔に転生させたとき、あの子は瀕死のなかでも聖剣に対して強烈な復讐心を抱いていたわ。そのことを忘れて欲しかったからこそ、悪魔としての新たな生を有意義に使ってもらいたかった」

 

部長は聖剣によって無惨な人生をおくってきた木場を少しでも救いたかったのだろう。だが、当の木場本人は、

 

「あの子はそれを捨てられなかった。その教会の者達への憎しみを……。とにかく、しばらくは見守るわ。今はぶり返した聖剣への想いで頭がいっぱいでしょうから」

 

部長はそう言った。たしかに一番冷静なあいつのことだ、すぐによくなってくれるといいが……。

 

「朝早くから呼び出して悪かったわ」

 

「いえ、俺の方こそ木場の事情を聞けてよかったです。それでは失礼します」

 

こうして、俺は部室を後にして、教室に向かった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

今日はアルバイトがあるので、部活には30分程度顔を出して抜けてきた。俺はいつも通る道を歩いていると、見知らぬ白いローブを身にまとっている2人の女性が前から歩いてきた。敵意は感じられなかった。そして、すれ違う直前にその片方の女性が話しかけてきた。

 

「こんにちは、あなた剣一君だよね?」

 

(なぜ、俺の名前を知っている?どこで会った?いつ?)

 

『あちゃー、またこのパターンか~』

 

(なんだよ、またって。こんな栗毛のツインテール少女なんて俺の記憶にはないぞ?)

 

『……ハジメさんの脳内のキャパシティはよっぽど小さいんですね』

 

(あわれむようにさりげなく毒を吐くなよ!)

 

「あれ?覚えてないの?私、紫藤イリナだよ」

 

う~ん?…………そうか!あの写真の子だ。でも、ショートカットだったからか印象がだいぶ違うというか。女の子らしくなったというか。

 

「お久しぶり、男の子と間違えてた?」

 

「いや、そんなことはないよ。……イッセーはわからないけど」

 

「よかった~。でも、彼はいろいろとあったみたいだね。あなたはどうかな?」

 

……この子はイッセーの正体に気づいている。

 

「イリナ、早く用を済ませるぞ」

 

「あ、待ってよ、ゼノヴィア。じゃあねハジメ君」

 

「おい!お前達の目的はなんだ?親友に手を出すつもりなら、俺は全力で止めにかかるけど」

 

俺はそう問いかけて、ブレイバックルに手をかけた。しかし、彼女は笑顔でこう返した。

 

「その気はないから安心して」

 

「まぁ、あっちが吹っ掛けなければの話しだが」

 

そう言って、2人は立ち去っていった。しかし、これは本格的にまずいことが起こりそうだな。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

次の日の放課後。俺を含めたオカ研部の全員が部室に集められた。そこには昨日の帰り道に会った2人がいた。なんでも、昨日、あっちの方から生徒会長と接触して、交渉したいと話しを持ち出したらしい。

 

それでも、みんないつも以上に緊張した様子だ。だが、木場は違った。あいつに関しては殺気がにじみ出ている。もはや隠す気もないだろう。そんな空気のなか、紫藤イリナは話を切り出した。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

エクスカリバーって何本も存在するのか?そんなことを疑問に思っていると、難しい話がどんどん続いていった。

 

エクスカリバーは大昔の戦争で折れて、その折れた破片を集めて、錬金術で修復し、その際7本に分けて作られた。ということらしい。そして、その7本の聖剣はこの2人が1本ずつ所有していて、正教会に1本。で奪われたのが3本あって、行方不明が1本。だそうだ。

 

そして、それぞれの聖剣には特性があるようだ。説明されたのがイリナの持つものだけだったが。「自由自在にカタチを変えられる」そう言っていた。

 

それと、なぜ奪われたエクスカリバーがこの日本にあるか。という話になった。

 

奪った犯人は堕天使の組織の幹部、コカビエルが中心で、日本に逃れたのはただの気まぐれ?……これに関しては詳しくわからないらしい。しかし、迷惑な連中であることは間違いない。

 

ひととおり説明が終わり、ゼノヴィアという女性がここに来た目的について口を開いた。

 

「私達の注文は私達がエクスカリバー争奪の戦いに一切介入してこないことだ。そちらにはこの事件に関わって欲しくない」

 

その物言いに対して、部長はかなりキレてるようだ。たしかに自分の領土で勝手に争いが起こりそうなのに、それに手を出すなだもんな。そんなことお構い無しに淡々とした口調でこう続けた。

 

「上の方は悪魔と堕天使を信用していない。ただそれだけの話だ」

 

まぁ、当然そうだろうな。悪魔だって聖剣が無くなってしまえば、それに越したことはないだろう。なら、教会側とではなく、堕天使側と組んだ方がリスクは低く利益が出る。ーーもっともうちの部長はそんなことはしないだろうけど。

 

ようやく、話が終わりふたりが帰ろうとした時、アーシアの方に目を向けて足を止めた。そして、ふたりはアーシアのことを『魔女』と呼んだ。それはどこか軽蔑しているような気がした。その後、ゼノヴィアが聖剣を握ろうとした時にイッセーは動いた。

 

「触れるな。アーシアは何も悪いことしてないだろ?なんで誰ひとり助けようとしなかったんだよ!それなのに『魔女』呼ばわりして、そんな酷い話しがあっていいのかよ?」

 

「『聖女』に必要なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時点でアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」

 

俺はその言葉を聞いて我慢ができなくなった。

 

「なんだよ、その理屈は!自分たちで勝手に『聖女』に仕立てあげといて、自分たちで勝手に見捨てる。そんなの絶対間違ってる!」

 

「ただの人間であるキミにとっては関係無い話しだろう。違うかい?」

 

「いいや、ここにいるみんなは俺の仲間だ。それだけで十分関係ある!だから、ここにいる誰かに手を出そうとするなら、俺は戦う」

 

「まさか、こんな熱血バカがいるとは」

 

いきなり、戦う姿勢を見せるゼノヴィアと俺の間に木場が介入する。

 

「ちょうどいい。僕が相手になろう」

 

木場の手には剣が握られていて、強烈な殺気を放っている。

 

「誰だ、キミは?」

 

そうゼノヴィアが問うと、

 

「キミ達の先輩だよ。でき損ないの失敗作だけどね」

 

そう木場は不敵の笑みを浮かべて答えた。

 

 


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