ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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フェニックス戦前編です


対不死鳥「王子」降臨

ついに決戦当日を向かえた。ゲームは当然深夜の時間帯に行われる。

 

『はっ、いよいよだな!!』

 

麟も心なしかいつもよりも機嫌が良い。

 

「そうだな。まぁ、お前らは出さないがな」

 

『だと思っていたさ。しかし、お前の今の実力とあれがあれば勝てるだろう』

 

「珍しいな、お前が他人に対して好評するのは」

 

『ふん、お前のバカがうつったんだろうな』

 

ぐっ、こいつは………

 

『冗談だ。ただ、あの焼き鳥野郎が気に食わないだけだ』

 

たしかに。それはみんな思っていることだ。オカルト研究部のみんなもこころよく思っていないだろう。

 

『そろそろ時間じゃない?ハジメ』

 

鍠がそう言っている通り、もうすでに午後11時を過ぎていた。30分前には部室へ集合する予定だからそろそろだな。

 

「そうだな、よし行こうか!」

 

俺は夜の学校へと向かった。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

深夜11時45分頃、みんなはもう部室に集まっていた。それぞれが戦闘前の準備をして待機していた。

 

木場は手甲、脛当てをフル装備していて、剣は壁に立てかけている。

 

小猫ちゃんはいつもの席に座り、本を読んでいた。手には穴の空いたフィンガーグローブを着けている。

 

部長と朱乃さんはソファに座りながら、お茶を飲んでいる。先輩方は異様なくらいに落ち着いているなぁ。

 

イッセーとアーシアは椅子に座り、じっとしている。……緊張しているのか?

 

『ハジメ君わかっていると思うが……』

 

(はい、わかってます嶋さん。キングフォームの限界時間は3分まででしたっけ?)

 

『まだ体が慣れていないこともあるからな。気を付けてくれればそれでいい』

 

これからは強化フォームに耐えられるように特訓しないとなぁ。でも、今は戦いに集中しないと。

 

「皆さん、準備はお済みになられましたか?開始10分前です」

 

グレイフィアさんが魔方陣から現れてそう言った。どうやら戦闘用の異空間へと転送されるそうだ。やはり、悪魔の技術は恐ろしい。

 

「あの部長、もうひとり『僧侶』がいるはずですよね?その人は?」

 

イッセーが突然そう質問をした。そんなこと俺は初耳なのだが……。と思っていると俺とイッセー、アーシア以外のメンバーの様子が一変した。みんな口を開こうとしない。

 

「残念だけど、参加できないわ。いずれ、そのことについて知るときがくるでしょうね」

 

わけありのようだな。まさか霧みたいな引きこもりとか……。うん、さすがにそれは無いだろう。

 

「そろそろ時間です。皆様、魔方陣の方へ」

 

そうこうしているうちに、時間が来てしまった。

 

「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」

 

その説明は必要なのか?敵前逃亡なんてする気はみんなさらさら無いだろうし。

 

そんなことを考えていると、魔方陣からの光が俺達を包み込み、転移が始まった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

転送された先はいつもの部室だった。俺は一瞬、転送失敗を疑ったが、窓の外を見ると空の色が異質だったから、ここを異空間だと理解できた。

 

転移してきて、しばらくたつとグレイフィアさんのアナウンスが聞こえてきた。今回のバトルフィールドは完全再現された駒王学園。それで俺達の本陣がここの部室、ライザー達の本陣が生徒会室でゲームが行われる。

 

「全員この通信機器を耳につけてください」

 

朱乃さんから光の球体が手渡される。こんなので通信できるとは。

 

「開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです」

 

\キーンコーンカーンコーン/

 

こうして、ライザーとの戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

簡単な作戦会議が開かれ、みんなのそれぞれの配置について説明された。それと、このゲームのシステムについて捕捉説明された。一定以上のダメージを食らい、その戦闘で再起不能と判断された場合、リタイアとなって戦闘フィールドから医療設備の整ったところへ強制的に転送されるらしい。

 

つまりよほどの攻撃でないかぎりは死ぬことは無いという安全なシステムであるということだ。

 

「っしゃあ!」

 

イッセーも相当気合いが入っているようだな。

 

「イッセー、小猫、ハジメ指示通りに頼むわね」

 

俺とイッセー、小猫ちゃんの目的地は体育館。どうやらそこは重要拠点のようだ。そこでの戦闘は避けられないだろうから、変身しとこうかな。

 

〈TURN UP〉

 

「さて、敵は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。さあ、消し飛ばしてあげましょう!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

全員でそう返事をして、それぞれの場所へと駆けていった。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

俺達3人は体育館の裏口から入っていった。そして、イッセーが恐る恐る演壇の端からホールの様子を見ようとしていると小猫ちゃんが小さくつぶやいた。

 

「……気配。敵」

 

その声とほぼ同時に大声が響く。

 

「そこにいるのはわかっているわよ。あなた達がここへ入るのは監視してたのだから」

 

もうすでにここに居たとは。敵の数は4人だ。俺達は堂々と敵の前に現れる。

 

「ところで、そこのあんたは誰よ?」

 

ん?そういえば、フェニックス陣営には見せてなかったか。俺はブレイラウザーを引き抜きながら、こう言った。

 

「この剣を見ればわかるんじゃないか?」

 

目の前にいる女の子達は信じられないという顔をしている。でも、すぐに戦闘体制をとる。相当実戦慣れしているようだな。

 

「……先輩方は『兵士』をお願いします。私は『戦車』を相手するので」

 

「あぁ、じゃあイッセーはその棍を持った子を頼む」

 

「わかった」

 

それぞれがお互いの相手と対峙する。俺はチェーンソーを持った双子と向かい合っている。

 

「「解体しまーす♪」」

 

ブレイドの体はそんなチェーンソーじゃ傷はつかないだろうが、さっさと決めるか!

 

〈ジェミニ〉

 

俺はダイヤの9をラウズさせると、実体を持つ分身が現れる。

 

「な、何よそれ?」

 

「「目には目を、歯には歯を、双子には双子を。ってね!」」

 

双子達は俺達目掛けてチェーンソーを振り上げてくる。すぐにつばぜり合いのかたちとなったが、相手の得物をはじき、その一番脆いであろう操作部分を切り裂いた。

 

「こんなところで負けたらライザー様に怒られちゃうわ」

 

まったく、あの男のどこがいいんだろうか?しかし、チェーンソーを破壊したものの、戦意までは削げなかった様子だ。俺は仕方なく首筋を狙い手刀を振り抜いた。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士2名、戦闘不能』

 

グレイフィアさんのアナウンスが響いた。……倒すつもりはなかったんだけど。

 

イッセーと小猫ちゃんも優勢に戦いを進めていた。小猫ちゃんは相手をすでに押さえつけていた。イッセーの方は……

 

『Boost!!』

 

「っしゃあ、いくぜ相棒!」

 

『Explosion!!』

 

あの音がなると、自分自身を強化させる効果がある。つまり、あれを使うんだな。イッセーは魔力の塊を発生させた後、左手を引き力を貯める体勢をとる。

 

「たぁぁぁぁぁぁ!」

 

その発声と同時に左手を前につき出し、炎の塊を相手に向けてぶつけた。棍を持った子は戦闘不能とまではいかなかったが、かなりの傷を負っていそうだ。

 

『イッセー、小猫、ハジメ。聞こえる?」

 

「はい、全員無事です。俺は2人も戦闘不能にしましたが……」

 

『別に問題ないわ、撃破する予定ではあったし。朱乃の準備が整ったわ!例の作戦通りにお願いね!』

 

俺達はすぐに体育館から外に出た。その途中、俺達の行動にあの子達驚いてたな。本当にここは重要な場所だったらしい。……とか考えていると、体育館に巨大な雷が落ちた。

 

振り返ると朱乃さんが笑顔で空に浮きながら、右手を天にかざしていた。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士1名、戦車1名戦闘不能』

 

また、グレイフィアさんのアナウンスが響いた。

 

『これまた、ずいぶんと派手だねぇ~』

 

……そうだな。今日改めて朱乃さんを怒らせないように

しようと思った。

 

『最初の作戦はうまくいったわ。次の作戦に向けて動き出してちょうだい!』

 

たしか、次は木場と合流だったっけな。そう自分で再確認していると、

 

『ハジメさん、前に跳んで!』

 

突然の霧の警告に俺はすぐに反応した。

 

\ドォンッ!/

 

俺のもといた場所が突然爆発を起こした。

 

(ふう、いつもありがとうな)

 

『……別にかまいません。それよりも今の攻撃ですが……』

 

(あぁきっと、あいつだろう)

 

あの浮遊してる奴はたしか、女王だったかな?いきなり最強の駒が登場とはね。あの男も随分と大胆な手をうってくるな。

 

「2人は先に木場と合流してくれ。俺があいつを倒す」

 

「おい、それはいくらお前でも!」

 

「……そうです。無謀です」

 

2人とも心配してくれるのか。でもな、

 

「いくら無謀でも、あいつは今のうちに倒しとかないと、後々俺達を苦しめる。だから、ここは任せてくれ!」

 

「……あぁ、わかった。でも、お前が撃破されるんじゃないぞ!」

 

「……無茶はしないでください」

 

渋々だが、了解してくれたようだ。イッセーと小猫ちゃんは目的地へと向かって走っていった。

 

「朱乃さんも今回の作戦の要なんですから、ここは任せてください」

 

「しかし、ハジメ君に何かあったら……」

 

朱乃さんが真顔で食い下がってくる。

 

「あなたはグレモリー兼属の女王なんですから、俺よりもあなたが撃破された方がみんなの士気だって落ちます。それに俺は負けません、必ず!」

 

そう言うと、朱乃さんは諦めてくれたようで、イッセー達の方へと飛んでいった。

 

「ふふふ。あなたは飛べないようだけど、この状況で私とどう戦うのかしら?」

 

この兼属達はライザーに似て、人を見下すことしかできないのか?

 

「残念ながら飛べるんだよ」

 

そう言って、ラウズアブゾーバーを取りだし左腕に取り付ける。そして、カードデッキを展開しスペードのクイーン、ジャックを抜き出す。

 

〈アブゾーブクイーン〉

 

〈フュージョンジャック〉

 

この2枚をセット、ラウズさせると鷲の紋章が胸のアーマーに刻まれ、オリハルコンウィングが背中に形成されていく。ーー俺はブレイドジャックフォームへと強化変身を遂げた。

 

相手のクイーンは目を見開き、驚いていた。

 

「さて、みんなの期待のためにも頑張ろうか!」

 

俺はそう言い気合いを入れ、オリハルコンウィングを展開させた。そして、奴に向かって斬撃を仕掛けていく。

 

戦いは序盤戦から中盤戦へ移っていこうとしていた。

 




イッセーのあの技は皆さんご存じ、龍騎のストライクベントです(笑)

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