ハイスクールD×D~スペードの切り札~   作:保志白金

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山での「修行」

ライザーとのレーティングゲームが10日後と決まり、オカルト研究部全員で山へ修行に行くことになった。それで、グレモリー家の所有する別荘で合宿をすることになっているが、学校は例の如く、部長のコネで全員が公認欠席扱いとなっている。

 

「「はぁーはぁー」」

 

今、部長と朱乃さんとアーシアを除いた部員は大量の荷物を持ちながら山を登っていく。ただひとり人間である俺も例外ではない。

 

俺とイッセーはバテながらもなんとか目的地である別荘にたどり着いたのだった。その後、動きやすい格好に各自着替えて、修行が開始された。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

はじめに、木場と木刀での打ち合いだ。俺はいつも通りのスタイルで木刀を振っていくが、木場も実戦で剣を使っていることもあるのか、なかなか当てられない。

 

「やるね、ハジメ君」

 

「まぁ、それなりに戦ってきたからな」

 

「そうだったね、じゃあ、まだまだ行くよ!」

 

それから、しばらく打ち合ったが実力は五分五分という試合内容だった。しかし、木場の剣さばきは凄まじかった。我流の戦い方である俺とは真逆だ。

 

 

 

 

 

その次は、朱乃さんが魔力のレクチャーをしてくれるそうなんだが、俺は魔法を一切使えないので、イッセーとアーシアのしていることをただ見てるだけになっている。

 

かといって、俺がここを抜け出そうとすると朱乃さんが腕をガッチリつかんできて、ここから逃がそうとしない。俺は結局2人が終わるまでここにとどまることになってしまった。

 

 

 

 

 

昼休憩を挟んで、午後の部に入ると小猫ちゃんとの組み手が待っていた。もちろん、こちらも相手に合わせて徒手空拳で闘うが、メタルをラウズさせて身体を硬質化させている。……そうでもしないとこっちの体がもたない。

 

「……えい」

 

「うわっ」

 

俺はそのバズーカみたいな正拳突きをなんとかかわし続けている。どうやったらあの小さな体であんな重い打撃を打てんだ?反撃しても、とんでもなく堅いのでダメージを与えられなかった。

 

「……打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんです」

 

……言われてることはなんとなくわかるが、さすがに生身のままでそうしても効果は無いよ、小猫ちゃん。

 

最終的には俺が攻撃をいなす訓練となってしまった。ビートかスクリューを使えばよかったかもなぁ……。

 

 

 

 

 

この日、最後のメニューは基礎(主に筋力)トレーニングだ。俺は簡単なおもりを背負ってこなしていくが、イッセーに関してはそこらへんの岩を部長が載せて行っている。やたらとイッセーに対して、部長は厳しく指導していると思った。

 

「あら?ハジメは余裕そうね。おもり増やしましょうか?」

 

……俺の気のせいだったようだ。

 

 

 

 

 

今日1日の修行を終えて、夕食をみんなでいただいた。イッセーはよほど腹が減っていたのか、料理の美味しさに感動しながらガツガツと食べていた。

 

「さて、イッセー。今日1日修行してみてどうだったかしら?」

 

食事が一段落ついたところで部長がイッセーに訊いた。

 

「俺が一番弱かったです」

 

「そうね、それは確実ね」

 

……ハッキリ断言する辺り部長らしい。

 

「朱乃、祐斗、小猫は実戦経験が豊富だから、感じをつかめば戦えるでしょう。もちろんハジメも例外じゃないわ。でも、あなたとアーシアは実戦経験が皆無に等しい。それでも2人の神器は貴重な戦力で、相手もそれは無視できないはずよ。だから自力で逃げられるぐらいの力は欲しいわ。もちろん、戦う術も教えるから覚悟なさい」

 

「了解っす」

 

「はい」

 

イッセーとアーシアが同時に返事をする。……こうして夕食の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

修行2日目の朝。筋肉痛の痛みで目が覚めた。さすがにあのメニューはつらかった。しかし、悪魔であるイッセー達は夜中にも修行があったようだ。

 

それで、今日はまず勉強会をしている。敵の幹部や魔王様の名前などを覚えるようにするのが基本らしいが、これまた人間の俺には意味の無い知識である。

 

次にアーシアが悪魔祓いについて授業をしてくれた。……それにしても、話の途中でこの子はお祈りをしてはダメージを食らってを繰り返していたのだが、狙ってやっているのか、天然なのかさっぱりわからない。そうしているうちに午前の勉強会は終わり、午後の部へと入っていった。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

俺達が山に籠ってから1週間は過ぎていた。ひたすら特訓漬けの毎日だから、全員確実に強くはなっている。俺はどうなんだろう?ただ、イッセーはそのことに気付けていない様子だ。

 

夜中、ふと目が覚めて起きるとリビングには朱乃さんが居た。

 

「あらあら、ハジメ君起きたのですか?」

 

「水飲みに起きただけですけどね」

 

「ふふっ、そうでしたか。せっかくですから何かお話ししませんか?」

 

「別に構いませんが……」

 

……何か話すことなんてあるかな?

 

「ところで、朱乃さんこそどうしてこんな時間に起きてたんですか?」

 

「?私もハジメ君と同じ理由ですけど」

 

『……ハジメはこんなんだから彼女ができないんだよなぁ~』

 

『全くです。その質問をする意味がわかりません』

 

(余計なお世話だ。俺も失敗したと思っている)

 

鍠と霧からツッコミを受けてしまった。

 

「あなたは今回のゲームにどうして参加しようと思ったんですか?」

 

「どうして……ですか」

 

「悪魔ではないハジメ君は参加しなくてもよかったはずなのに」

 

「……俺が人間であることとか関係なしに、ここにいるみんなは俺にとっての大切な仲間で、その日常を守りたいから俺はゲームに参加してみんなの力になりたい。そう思ったからです」

 

「でも、今回の相手はフェニックス。勝てる可能性は低いのです」

 

どうやら、「フェニックス」とはその名の通りでほとんど無敵らしいな。

 

「それでも俺には関係ありません。たとえ不死身だろうと、俺は勝ってみせます。勝ってみんなを守ってみせます」

 

「うふふっ、そんな真っ直ぐなところが私は好きですわ。それではおやすみなさい。ハジメ君」

 

ん?今なんて言った?

 

「ちょっ、朱乃さん?」

 

俺がそう言おうとした時にはもういなくなっていた。

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

次の日、はじめにイッセー対木場の模擬戦が始まった。どうやら、部長はイッセーが強くなっていることをイッセー自身に認識させるためにやらせたようだ。

 

「このゲームはイッセーがどれだけ戦えるかが鍵になり、あの一撃は私達の要になる」

 

そのように部長は言っていた。なによりもあいつに自信がついたことが一番大きい。イッセーの表情は前日に比べて、明るく前向きになっているように見えた。

 

 

 

 

 

 

その後も修行合宿は順調に進み、無事に終わった。

 

「ふぅ、10日ぶりの我が家だな。ただいま~」

 

誰もいない自宅にそう挨拶をして、無事帰ってきた。ふと、俺はテーブルに見知らぬ小包が置いてあることに気付いた。

 

「この大きさは……まさか!」

 

『ははっ、このタイミングで届くとはね。あの焼き鳥に見せてあげようよ』

 

それは遅れてやって来た『切り札』だった

 


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