クロスゲーム アナザー 〜あれから俺は〜   作:トナカイさん

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今回のオチは嫌われやすいオチです。
なのでダメな方はバックを進めます。


第四話夢のようじゃな……

「あと一人!あと一人!あと一人!」

 

あと一人抑えれば優勝だ。

俺は全ての力と想いを球に込めて腕を振り切った。

白球は赤石の構えるミットに入る、と思いきやカンと鋭い音が鳴り響き球は高く飛び跳ね無情にもレストスタンドに吸い込まれていった。

サヨナラ負けだ。

負けたんだ。俺達は。

赤石が近づいてきて言った。

 

「何故、サイン通り投げなかった!打たれたのはお前のせいだ」

 

いつのまにか隣に立っていた中西も俺を責めた。

 

「お前のせいだ!」

 

「俺に打たれたホームランを無駄にしやがって。期待はずれだったよ、お前には」

 

東もそう言ってきた。

 

「やっぱりエースは俺の方だったな……」

 

千田が調子に言ってそう言っているがなぜかまわりの奴らは頷いている。

 

ああ、そうか。これは……。

 

「夢か……」

 

ガバっと起き上がるとそこは宿舎で俺が寝泊まりしている部屋だった。

どうやら本当に寝てしまっていたらしい。

外を見るともう陽が暮れていた。

夕方まで爆睡していたみたいだ。

起きて下の階のラウンジに行くとそこには青葉がいた。

俺は青葉と大切な話をした。

 

 

時は進み俺達星秀学園は勝ち続けた。

準決勝で苦戦してセンターの三谷が負傷するというハプニングがあったが青葉が代役を務めたことによってなんとか勝てた。

そのおかげでいよいよ今日は……。

 

 

 

 

熱気あふれるここ、甲子園球場では毎年この時期になると暑い戦いが繰り広げられる。今日は特に暑い。なぜなら高校日本一を決める一戦である全国高校選手権大会決勝戦が行われているからだ。

決勝戦で対決するのは、高知県代表の明独義塾だ。

先攻は俺達星秀。

マウンドに登った明独義塾の投手(ピッチャー)を見る。

 

「かなりいい投手だよな。

変化球はどれも一級品。

直球も2年前よりもさらに速くなってんな……。

それにしてもまさか甲子園で戦うなんて、な」

 

俺はマウンドに登って投球練習をしている彼をみてそう呟く。

すると俺の隣に座る東がその投手を見ながら呟いた。

 

「あいつは直球(ストレート)はともかく変化球やコントロールはよかったからな。

甲子園に出てても不思議じゃねえ」

 

「あの時、直球がもう少し速ければ解散してたのは俺達、プレハブ組の方だったな……」

 

赤石がそういいながら彼の腕の振りや球種を観察する。

 

「弱点、変わってなければいいな」

 

中西がそう言って肉を食いながら呟いた。

ベンチで肉食うなよ。

 

「情報がほしいな。できるだけ球数を投げさせたいな」

 

「フハハハハ。星秀が誇る切り込み隊長の千田様にまっかせなさーい!」

 

千田がそう言いバッターボックスに向かったが俺達は彼を無視し相談をはじめた。

 

「三谷がなんとか出て、中西、東が長打を打つ。

そして俺やコウが走者を返す。このパターン以外奴から点を取るのは難しい」

 

「俺はともかく、東やコウなら普通に打てば点取れそうだけどな」

 

「ばーか、東とマトモに勝負なんかするわけないだろ!

コウにも昔打たれてんだ。甘いストレートは投げねぇよ……多分。

コウには遅い球、お前には内角、俺には低めの変化球をひっかけさせる……な」

 

「なるほど……」

 

俺達星秀の3年生はマウンドに登る()を見つめながらそう話していた。

 

「プレイボール!」

 

審判が試合の開始を告げるとマウンドにいるアイツは振りかぶって腕を大きく振った。

放たれた球は外角低めに決まった。

 

「ストライク!」

 

「初球は直球か……」

 

「ああ。昔より格段と速くなってんな……」

 

「140kmは出てんな」

 

前は完全に変化球派といったタイプだったが今は質のいい速球と変化球を両方投げれるオールラウンダーなタイプになっていた。

打ちにくい投手だ。

 

「確実に甲子園に行く為には5km上げろ……よけいな事を言っちまったかもな」

 

東が小さな声で呟いた。

 

「あん?」

 

「なんでもねぇよ……ほら次は中西、お前の番だ」

 

いつの間にか千田がアウトになっていた。

三谷はすでにストライク二つ取られて追い詰められていた。

戻ってきた自称切り込み隊長(笑)に声をかけた。

 

「ずいぶん早いな」

 

「うっせー。あんにゃろ!

全球外角に直球しか投げなかった。

変化球を待ってたのに……」

 

「大振りを辞めんか!

コンパクトなスイングにしろと何度も言っとるだろ」

 

前野監督が千田に言ってるが千田は言うことを聞かなかった。

 

「やれやれ……」

 

キンという打球音が聞こえ、バッターボックスの方を見ると中西がスイングをし終わった後だった。

飛んだ白球はライトスタンドに吸い込まれるように飛び込んだ。

二死で一点先制。

 

「今打ったのはどんな球だ?」

 

バッターサークルに向かう赤石に話しかけると赤石はこう言った。

 

「内角高めの直球だったな」

 

ということは赤石の予想は的中したわけだな。

となると東には……。

 

「ボール!四球!」

 

東には外角低めを攻めてカウントが不利になったら歩かせる。

昔、赤石が言っていた東の攻略法をアイツはやりやがった。

バッターサークルに入ると赤石に投げられる球をよく見た。

 

「東とはマトモな勝負はしないで次は赤石。

赤石を抑えるには……」

 

わぁー。

観客席から大きな歓声が上がった。

赤石が低めに投げられた変化球をライト前に弾き返したからだ。

 

これで二死一、二塁。

 

「続いての打者6番投手。樹多村君」

 

自分で自分をアナウンスしてからバッターボックスに入った。

 

過去の対戦では直球を多く投げられた。

だけど今日は……。

 

______ブン。

 

遅い球を空振りした。

今のはチェンジアップだ。

 

さすがは元星秀学園一軍メンバーだ。俺の弱点も、わかっているようだ。

2球目は外角低めに直球を投げてきた。

外れてボールになったが今日投げた直球の中で一番速かった。

3球目を投げてきたので見逃すと内角低めにチェンジアップが外れ、カウントはワンストライク、ツーボールとなった。

4球目。アイツは俺の顔を睨みつけてきた。

おや、あの顔は……。

 

『ストレート!』

 

いないはずの若葉の声が聞こえ、俺は反射的にバットを振っていた。

バットにボールが当たる独特な感触を手に感じ振り抜くと甲高い音が鳴り響き白球はセンター方向に高く飛んでいった。

白球はセンターの頭上よりかなり高い位置で失速し、そのまま応援席に入っていった。

スリーランホームラン。

一回表で4点を取った。

もしかして俺達、強いんじゃねえ?

 

ベンチに戻ると前野監督が呟いていた。

 

「夢のようじゃな……」

 

下位打線を抑えられ、試合は進み九回裏。

7回に失策や詰まったヒットで一点を返されて、現在スコアは4ー1。

この回を抑えれば優勝だ。

緊張の為かこの回からストライクが入らなくなって無死満塁のピンチになっている。

打席にはエースの神川。

 

_______キーン。

 

3球目だった。

高めに浮いた真っ直ぐを完璧にライト方向に打ち返され俺は久しぶりにホームランを打たれた。

負けたんだ。俺たちは。

 

「負けたんだ……」

 

そう言って体を動かすと柔らかい感触がした。

左隣を見ると何故か全裸の青葉がいた。

右隣にはあかねちゃんがやっぱり全裸で腕に抱きついていた。

 

ああ、わかった。

これは……。

 

 

 

「夢オチかよ⁉︎」

 

叫ぶと案の定、宿舎の布団の上にいた。

どうやら続けて夢を見ていたらしい。

 

2試合続けて打たれる夢とか勘弁してほしい。

正夢じゃないことを願う。

 

寝覚めは悪いが身体的には休めた。

明日には練習をできそうだ。

起き上がり下の階のラウンジに行くとそこには青葉がいた。

夢で見たシュチュエーションとほとんど同じだ。

青葉の側に近寄ると俺は青葉に声をかけた。

 

「ちょっと付き合え」

 

「はぁ?」

 

 

 

 




はい、というわけで夢オチでした。
夢の中でメッタ打ちにあったコウ。
懐かしの神川君も登場。
さて、果たしてただの夢なのか、それとも正夢なのか……いずれわかるでしょう。

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