僕と君と初恋予報   作:京勇樹

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エピローグ 未来へ

明久が入院して、約三カ月

 

雪は毎日、明久のリハビリの手伝いに来た

 

最初は明久の怪我が、自分のせいからという責任感からだった

 

だが、途中から自分が明久を意識していることに気づいた

 

そして、悟った

 

(ああ……私は、吉井のことが……好きなんだ……)

 

 

そして気づけば、明久からの告白に自分は答えていない

 

これは幾らなんでも、明久が可哀想かな

 

と雪は思った

 

時は過ぎて、退院当日

 

「退院、おめでとう!」

 

「いやぁ、明久が入院したって聞いた時は、肝が冷えたぜ」

 

「まったくじゃ」

 

「……無事で良かった」

 

病院出入り口で明久を出迎えてくれたのは、バイト先のひよりやクラスメイトの陽斗や秀吉達だった

 

「心配かけて、ごめんね」

 

明久は松葉杖を突きながら、全員に頭を下げた

 

「無事に退院できたのが、何よりも大事だぜ」

 

「ほれ、入院していた間のノートじゃ」

 

陽斗の言葉の後に、秀吉がカバンの中から数冊のノートを出して明久に手渡した

 

「ありがとう、秀吉。助かるよ」

 

明久は受け取ると、紙袋にノートを入れた

 

そして、友人達と話し合っていると

 

「ほどほどにしておけよ。吉井はまだ、万全じゃないんだ」

 

と声がした

 

全員が視線を向けた先に居たのは、太一と一緒に居る雪だった

 

「椎名さん、太一さん」

 

明久が視線を向けると、二人は一緒に近寄ってきて

 

「明久くん、退院おめでとう。主治医として、嬉しいよ」

 

「ありがとうございます」

 

太一はそう言いながら、明久に花束を手渡した

 

「それに、明久くんのおかげで、雪と話し合うことも出来たよ」

 

小声で太一がそう言うと、雪が明久に近寄り

 

「吉井のおかげで、父さんとちゃんと話せた。ありがとう」

 

と頭を下げた

 

「僕は少し背中を押しただけだよ。後は椎名さんが誠心誠意尽くしたからだよ」

 

と明久が言うが、雪は首を振って

 

「その一押しが無ければ、私はずっと父さんから逃げてた……だから、吉井のおかげだ」

 

と言った

 

「そっか……まあ、ちゃんと仲直りできて良かったよ」

 

明久がそう言うと、太一が雪の肩に手を置いて頷いた

 

すると、雪は深呼吸してから、真剣な表情で

 

「吉井、大事な話があるんだ」

 

と告げた

 

「うん……なにかな?」

 

明久が微笑みながら問い掛けると、雪は数回程口を閉じたり開いたりした

 

それを見て、太一は雪の肩に手を置いて

 

「頑張れ」

 

と小声で応援した

 

太一の言葉に雪は頷くと、一回深呼吸してから

 

「吉井……私は、吉井が好きなんだ!」

 

と告白した

 

雪の告白が予想外だったのか、ほとんどのメンバーは呆然とした様子で固まっていた

 

だが、告白された本人の明久と唯一の女性であるひよりだけは、至って普通だった

 

「ひ、ひよりさん。気づいてたんですか?」

 

陽斗が問い掛けると、ひよりはニコニコとしながら頷いて

 

「うん~……途中から、なんかソワソワしてたから、もしかしてってね」

 

と答えた

 

「これが、前の答えだ……遅くなって、すまない」

 

雪がそう言いながら頭を下げると、明久は一歩前に出て

 

「待ってたよ……椎名さん」

 

と言ってから、雪の肩を掴んで

 

「ようやく、答えてくれたね」

 

と呟いた

 

「吉井……」

 

「ずっと待ってたよ」

 

明久はそう言うと、雪の目を見つめながら

 

「僕は前に言ったけど、椎名さんのことが好きだよ」

 

と言った

 

「ああ……待たせてすまない」

 

明久の言葉に、雪は微笑みを浮かべながら明久を抱き締めた

 

その光景に、クラスメイト達は驚愕で声を上げた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

時は流れて、卒業式の日

 

明久は卒業してから、医師になることを目指して勉強に励んだ

 

そんな明久を雪は根気良く支えて、気づけば、クラスメイトだけでなく、学校全体から公認のカップルとして見られた

 

雪は明久を支えるために、看護士の資格を得ることを選んだ

 

そして、二人して医師系の大学に合格

 

一緒に通うことになっている

 

「長かったね……」

 

「ああ……」

 

明久の呟きを聞いて、雪は頷いた

 

実際問題、明久は医学はそれほど詳しくはなかった

 

だから明久は、太一に逐一教えてもらいながら、勉強に励んだ

 

それを見て、雪は太一の再婚相手の美香から看護士関係のことを教わった

 

そして気づけば、二人して医師系の大学に合格していた

 

「まだ、ここからだ……な、明久」

 

「うん……これからもよろしくね、雪」

 

二人で変わったの一つは、苗字呼びから名前呼びに変わった

 

そして、何よりも変わったのは、同棲生活を始めたことである

 

再婚したことにより、椎名家は美香や瑞恵の家具や荷物が運び込まれた

 

それにより、部屋が少なくなったので、雪が自発的に明久の家に引っ越してきたのである

 

最初、それに明久が太一に対していいのか問い掛けたが、太一は問題ないと許可したのだ

 

そして気づけば、明久と雪は同棲していて、二人で一緒に料理を作ったりしている

 

料理に関しては、明久の指南もあって、雪はかなり腕を上げた

 

それに関して、雪は

 

『本当に、明久には感謝してる』

 

と語っている

 

そして卒業式も終えて、二人は学校を校門から見上げながら

 

「たった一年なので、お互いのことを随分と把握したよね」

 

「ああ……吉井が意外と、勉強が苦手とかな」

 

雪のその言葉に、明久は苦笑いを浮かべた

 

実際、明久は勉強が苦手である

 

だが、この一年は頑張っており、友人達から

 

『まるっと、正反対になったな』

 

とのことだった

 

閑話休題

 

「さて、これからが長いよ」

 

「ああ……覚悟しているさ」

 

二人はそう言うと、手を握って

 

「それじゃあ」

 

「最初の一歩だ」

 

二人はそこで顔を見合わせると、頷きあって

 

「「せーの!」」

 

と、学校の敷地から出た

 

こうして、二人は互いを支えながら一歩踏み出したのだった




最終回です!

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