微熱とサラマンダー   作:人造人間二号

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とうとうお気に入り100件です。嬉しいです。
なんと、平均評価5.00、お気に入り100件という記念すべきタイミングで投稿出来たのを奇跡的とすら思ってしまいます。さすがにUAはキリがいい数字とはいきませんでしたが。


大食いタバサ

結局、荒れ果てた教室で授業は出来ないという事になり、休講となった。

「しかし、ルイズの爆発にも困ったものだわ。」

「てゆうか、こっちの魔法って変わってるよね、失敗したら爆発するなんて。」

「いや、あれはルイズだけよ…」

「え?じゃあルイズが爆発の魔法をつかったんじゃねえのか?」

「確かに『火』の魔法に『爆炎』ていうのがあるけど、あれは『火』2つに『土』1つのトライアングル・スペルよ。」

「え、こっちの魔法は色んな属性を混ぜるのか?」

「ええ、そうよ。ここにいるタバサは『風』2つに『水』1つ合わせた『ジャベリン』や『アイス・ストーム』が得意よ。」

「でも同じ属性をいくつ合わせても同じだと思うけど…」

「同じ属性でも効果はあるわよ。例えば『火』1つでただの火の玉を打ち出す『ファイヤーボール』、『火』2つで相手に向かって動く『フレイムボール』とか。」

「へえ。しかし、『氷』の属性はねえのか。」

「こっちの魔法はエレメント・フォーと同じ4元素みたいだね。」

「「エレメント・フォー?」」

「うーん、話が長くなるからその話はまた今度にしようよ。とにかく、こっちの魔法とオイラ達の魔法じゃ属性の種類が違うってことだよ。」

「ふーん。」

「どんな属性があるの?」

キュルケ達は教室を出てから魔法談義になっていた。

一方、教室ではサイトが懸命に働いていた。

「何で俺がこんな事を…」

「うるさいわね…サッサと手を動かす!」

「何だよ。この『ゼロ』!!」

「何ですって!?」

ルイズのサイトに対する仕打ちにとうとう我慢出来なくなったサイトは思い切り暴言を吐いてしまった。

「『ゼロ』だから『ゼロ』と言ったんだ!お前がやった後始末を何で俺1人でやんなきゃいけないんだ!?せめてお前も手伝えよ!」

「うるさい、うるさい!」「そもそもお前が片付けるように言われたんだろうが!!」

「使い魔なんだから御主人様の言う通りにしていればいいのよ!」

その言葉に更にムカついたサイトはルイズに対する嫌味を歌にする事を思い付いた。

「『ゼロ』のルイズは魔法も出来なけりゃ胸も『ゼロ』〜♪使い魔がいなけりゃ着替える事も片付けも何にも出来ない困った子〜♪」

「アンタ、いい加減にしなさいよ(怒)!!平民のクセに!!アンタ、今『ゼロ』って言った5回食事抜き!!」

「汚いぞ!!」

「うるさいわね!じゃあ、片付けやっときなさいよ!!」

そう言ってルイズは教室から出ていってしまった。

「やってられっか!!」

サイトもあまりの仕打ちに教室から出ていってしまった(まあ、サイトには掃除をしなきゃいけない理由もないのだが)。

ルイズは部屋に戻ると1人泣いていた。

「私だって魔法を使えるようにいっぱい勉強してるのに何で出来ないのよ!使い魔にも馬鹿にされて!」

一方サイトは何処に行けばいいか迷っていた。

「腹減った〜」

すると正面からナツ達がやって来た。

「お、サイトじゃねえか。これから飯にするんだけど一緒にどうだ?」

「いいのか!?」

 

サイト達は貴族のいる食堂ではなく、厨房に着いた。何故厨房にしたかというとナツ達の居心地が良いだろうという配慮である。

「あ、今日は、ナツさん、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、今日はどのような御用件で?」

「貴女達には迷惑かもしれないけどこっちで皆で食事をしたいと思ってね」

「いえ、そんな迷惑なんて…」

「いいのよ、取り繕わなくて。今は私達が押しかけているんだから。でもナツはこっちの方が居心地が良いと思うし、私達はナツやハッピーの話を聞きたいしねまあ、この場ではあまり貴族とか気にしなくてもいいわよ。私もタバサもトリストインの貴族と違ってそういう身分にこだわらないから。」

シエスタは今までずっとトリストインで過ごして来て、貴族の平民に対する横暴な態度は見てきたが、身分を気にしない貴族なんて見た事がなかったので信じられなかった。

「本当に大丈夫だって、私の国ゲルマニアでは上手く稼げば誰でも貴族になれるような国だから身分なんてそこまで気にしないのよ。まあ、皇帝とかは別だけど」

「ではミス・タバサも?」

「私はガリアから来た。でも身分なんてどうでもいいと思ってる。それよりお腹空いた。」

流石にタバサの身分がどうでもいいという発言は問題だとは思ったが、身分よりお腹の空き具合を気にするタバサが腹を鳴らすと皆笑ってしまった。

「申し訳ありません!!私ったら貴族の方になんて失礼な事を…」

トリストインの基準では普通なら良ければ怒られる程度だが、最悪の場合打ち首も覚悟しなきゃいけない場面だが、キュルケやタバサは一切気にしていなかった。

「別にいい。それより食事。」

「はい、ただいま。」

そんなやり取りをした後、シエスタは食事を取りに厨房の奥に行った。

「キュルケもタバサも貴族なの?」

「ええ、そうよ。この学校に通ってるのは全員ね基本的にハルケギニアのメイジは皆貴族か王族なのよ。」

「え、そうなの?」

ハッピーとキュルケの会話に身分に関してもフリーダムなナツと、日本で育ったサイトはまるでついていけなかったが、ノリで何となく頷いていた。

「あの、食事が出来ましたよ。」

食事が来るとタバサは誰よりも目を輝かせていた。朝食が一番少なかったサイトよりも、朝食で一番多くの量を食べた筈のタバサのお腹が凄い勢いで鳴っていた。かなり不思議な光景だった。皆食事を始めたがタバサが一番凄い勢いで食べ始め(2番目はナツ)、あっという間に食べきってしまったが、その様はとても貴族のものとは思えなかった(口に付いた食べかすを食べながら)。

「おかわりある?ハシバミ草も。」

「はい、ただいま!」

厨房ではいつも噂になっていたのだ。『貴族に出す食事でいつも1人だけ全て食べきっているものがいる』と、そもそも貴族は好き嫌いが多い上に、出される食事の量も尋常ではないので、普通は残すものなのだ。だから、普段貴族を嫌っているマルトーのような平民も含めこの学院にいる平民全てがその貴族を好ましく思っていた(中には尊敬する者もいた)。その貴族がとうとう判明したのだ(ハシバミ草を好んでいる貴族はタバサしかおらず、ハシバミ草はよく残されていた)。シエスタはいてもたってもいられなくなり、厨房の方に知らせに行った。

「なにぃ!?あの貴族が来てるって!?」

「しかも、ソイツは俺達平民を見下さないってよ!」

「マジか!?」

「しかも、今回は敬語すら要らないってよ。」

「いくら何でもそれは駄目だろう!!」

辺りがにわかに騒がしくなった。

「一体、何事?」

「さあ?」

キュルケやサイトは急に厨房が騒がしくなったので困惑した。全く動じていないのはタバサとアースランド組である。すると、シエスタがおかわりを持ってきて説明してくれた。

「いつも貴族の皆様は食事を残すじゃないですか?でも1人だけ何が出ても残さない方がいらっしゃるというのが噂になっていたんですよ。特に料理を作っている人達なんかは食事を残されるのが大変傷付くようで…」

その言葉を聞いてキュルケは少し片身が狭く感じたので謝った。

「いつもごめんなさいね。残してしまって…」

「いえ、確かに毎食とんでもない量ですからね。」

「勿体ないね。」

「全くだ。」

「う…」

シエスタはフォローしたが(事実常人があの食事を毎回完食していたら、あっという間にBMI40いや、50を超えてしまうかも知れないので仕方ないが)、とんでもなく豪華な食事でもあるので勿体ないと思うのも仕方ない事だった。

「これからは出来るだけ完食するから、許してね。」

「いやいや、そんな事をしたらせっかくのプロポーションが崩れちゃいますから。」

「でも…」

そんな言い合いをしているとサイトが横で震えていた。

「そんなに残すなら、その分俺にヨコセー(怒)!何でルイズは朝食の残りをくれないんだ!朝の俺に出された食事よりそっちの方がずっと良かったぞ!アイツほとんど残してるクセに(怒)!!」

「サイトさん、落ち着いて下さい。貴族の方にそのような口を…」

「いいわよ、別に。私もそれは思ったし、まあトリストインの貴族によくある下らない見栄でしょ。だから、どんどん国力が落ちるのよ(呆)。私なんて平気でナツにもあげたけど。」

「あれ、旨かったな〜♪」

「アイさー。」

「だよな!」

サイトの怒りは中々収まらない。食べ物の怨みは怖いのだ。

「そういえばルイズはどうしたの?」

「俺ばっかに片付けやらせて、終いにはどっか行っちまったから、腹立って俺も止めちまった。」

「どうしょうもないね。」

「だな。」

しかし、キュルケは考えた。確かにルイズはトリストイン貴族の中でもワガママで見栄っ張りでプライドは手につけられないレベルだが、責任感だけはあるのだ。そのルイズが途中で出ていくなんて何かあったのではないだろうか。

「ねえ、サイト。アナタ、ルイズに何か言ったの?ルイズは確かにワガママで見栄っ張りだけど、教師の言いつけを途中ですっぽかしたりはしないと思うの。」

「大した事言ってねえよ。ただ腹立ったから『ゼロ』、『ゼロ』言いまくっただけだ!」

「「うわぁ…そりゃ、サイトも悪いや。」」

「まあ、鬱憤が溜まるのも分かるけどね。」

ナツとハッピーはサイトの非についても言ったが、確かにルイズのサイトに対する扱いが酷すぎた為、まあ仕方ないかとも思ってしまった。

「でもそれじゃ授業が出来ない…」

「あら、タバサには授業なんて必要ないでしょ?既に知っている事ばかりなんだから。」

「知らない事も出てくるかも知れない…」

「あら、真面目ねぇじゃあ、食べ終わったら私達で片付けましょ。」

「オイラ達も手伝うよ。」

「そうだな。ただ飯ばかりってのも悪いしな、シエスタも何かあったら手伝うぜ。」

皆で教室を片付ける事になった。

「じゃあ、皆食べ終わったみたいだし、そろそろ…」

「おかわり!」

全員がずっこけた。

「「「「まだ食べるの(んですか)!?」」」」

結局タバサは貴族用の食事の2倍程の量(約2㎏)を食べた。タバサのお腹はぽっこりと膨れていた。




今回はタバサの大食いネタです。進みは自分の予想よりも遥かに遅い位に遅いですね。本来ならもうデルフリンガーが出てくる位の予定でしたが(それでも遅い!)。
まあ、一話あたりの文字数の少なさやしょっちゅう話が脇道に逸れるのが原因ですが。
皆様、どうか長い目で見てやって下さい。

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