あれはドットメイジが弱いと書いたつもりはなく、ペリッソンが弱いと書いたつもりでした。
学園の生徒の大半はドットメイジですが、ペリッソンはその中でもダントツに弱く、ハルケギニアの10歳以上のメイジで彼より弱いメイジはいないでしょう。普通のドットメイジはファイヤーボールを同時に複数撃ったり出来ますし、スピードも毎時160キロメートル程ですが、ペリッソンは毎時120キロメートル程で一発ずつしか撃てません。しかもノーコン!ルイズが同学年にいなければ確実に虐められてます(しかもその事に本人は気付いていない)。
以上が前回ペリッソンをこき下ろした説明(言い訳)です。
失礼しました。
「そんなの認められる訳ないじゃない!」
今度のダリルは先程のメイジ失格クラスのペリッソンと違い、優秀なメイジでハルケギニア、特にトリステインのような異常なまでの魔法至上主義国にありながら、体も鍛え上げており、魔法もただ無闇に使うのではなく、状況に応じて工夫をして、火に特化しているものの、タバサを除けば唯一、実戦を経験している生徒である。ラインではあるが、総合的な強さならキュルケと遜色ないレベルで学生の中でも3位以内に入る実力の持ち主なのである。今度はキュルケも心配の方が勝り、タバサも止めるべきだと思い口出しする。 「大体、さっきペリッソンが負けたので決着したはずよ。アナタが出てくるのはお門違いでなくて?ダリル。」
「ここで決闘してもペリッソンの恥はそのまま…」
「しかし、このままでは観客も納得しないだろう。」すると、周りからダリルとの試合をするように声があがる。
「貴族が平民にやられっぱなしでいられるか!」「やっちまえ、ダリル!」
二人の関係を知る誰もがダリルはペリッソンの敵討ちの為にきたと思っていた。ダリルはキュルケに近づくとそっと耳打ちした。
「それにミスター・ペリッソンもこのままでは収まりがつかず、様々な報復行為がされるかも知れないぞ。」
そう、ダリルの本当の目的はペリッソンが報復行為に及ぶのを防ぐ為にここでをナツを倒し、ペリッソンにも納得いく形にしようと考えたのだ。
「確かにそうかも知れないけど…でもこんなの認められないわ。」
「いいじゃねーか、やろうぜ。」
渋るキュルケに対してナツは強気だが、誰の目から見ても蛮勇に思えた。「今度の相手はさっきのと違うのよ!ペリッソンの火の玉は当たっても軽い火傷ですむ位だったけど、ダリルのファイヤーボールは死んでもおかしくない威力なのよ!」
キュルケは涙声で訴えるが、ナツは聞き入れなかった。
「頼む、俺を信じてくれ」
この真剣なナツの表情を見て、キュルケは心動かされる。初めての本当の恋心と大切な人を信頼したい想いとで揺れ動いていた。
「大丈夫、ナツは負けないよ。」
結局、自分よりもナツの事を理解しているハッピーの言葉でキュルケはナツを信じてみる事にした。
「分かったわ…その代わり、絶対に勝って!!」
キュルケはナツを送り出す事にしたが、
「無謀」
とタバサには止められる。
「分かってる…けど、ナツを信じたいのよ!!」
結局ナツの戦いは誰にも止められなかった。
「ナツくん、まずは非礼を侘びよう。そして、改めて名乗りを挙げよう。我が二つ名は《灼熱》のダリルだ」
「そうか…俺はナツ・ドラグニルだ。」
「いくぞ!ファイヤーボール!」
ダリルはペリッソンなんかよりもずっと大きい30サント程の火の玉をいきなり撃ってきた。もっとも、これはただの様子見で先ずはナツがどれ位動けるのかを見ようとしたのだ。その上で殺さずに倒すには、どうしたらよいのかを検討しようとしたのだ。しかし、ナツはダリルやキュルケの予想しない行動に出た。なんとファイヤーボールに自ら突っ込んでいったのだ。
「いやー!!」
「馬鹿な…何故避けなかった…」
観客のほとんどが青ざめている中、ハッピーだけは平然としていた。我に帰ったダリルが水メイジを呼ぼうとした瞬間違和感に気付いた。いつまで経ってもナツが倒れないのだ。決定的な事はいきなりモグモグという食事音がしたことである。
「お♪この炎、まあまあ旨いな。」
誰もが驚きを隠せないでいた。そしてあっという間に火は消えてしまった。
「ナツに火は効かないよ」
「何が起こったの!?」
「?!?」
キュルケやタバサを含む誰もが目の前で起きた出来事を理解できずにいた。そして最も混乱しているのは対峙しているダリルだったが、戦場で立ち止まる事が死を意味している事を理解しているダリルはバックステップで距離を取りつつ、今度は先程と同じ大きさの火の玉を四つ同時に出した。
「フレイムボール!」
追尾機能もあるフレイムボールを複数出して違う方向から同時に命中させれば、今度こそダメージを与えられると考えたのだ。過去の経験から何かで防がれたり、避けられたりする事はあっても生身で火が効かない生物がいる事を信じられなかったのである。サラマンダーのような熱に強い生物にも火力を上げれば通用していた。しかし、目の前にいるナツ・ドラグニルは人間にも関わらずそれ以上の火力にも平然としていた。『馬鹿な!?ペリッソンの弱い火力のファイヤーボールならともかく、あの炎で平然としているなんて!?』因みにペリッソンのファイヤーボールは600度、少なくとも平然としていられる温度ではないが、ダリルのは一つ当たり温度は2300度、体積も1000倍程ありはっきりいって比べ物にならないエネルギー量を有している。(一般的な火のドットメイジは温度1300度、サイズは直径15サント前後の玉を二つ同時に撃ってくる)この攻撃が効かなかった以上、もう火の魔法では何のダメージを与えらるない事を理解する。キュルケ逹が茫然としている間も、ダリルは手足を止める訳にはいかなかった。今は止まっているが、ペリッソンとの戦いで機動力においてナツの方が上だということを理解していたからである。ナツから距離をとろうとしていると背中に何かがぶつかった。それは学園の壁であり、気が付くとナツとの距離を200メイルもとっていた。これはもう距離をとるなんて言える距離ではなく、逃亡を謀っていると言われても、文句の言えない距離であった。『確かにナツ・ドラグニルは得体が知れないが、幾らなんでもこれは下がりすぎだ。もっと近づかねば僕の攻撃も当てられない。』そう考えてダリルが一歩踏み出した瞬間、ナツが上半身を後ろに反らしたのが見えた。
「火竜の咆哮!」
いきなりナツの口から強力な炎が吐き出された。
ダリルは距離が充分あった為、動揺で硬直している時間をいれても回避出来たが、また接近を避けるような展開になってきた。
「こんな魔法、信じられない…ハッピー、説明して。」
「あい。ナツの魔法は滅竜魔法《ドラゴンスレイヤー》」
「滅竜魔法?」
「竜の肺は焔を吹き、竜の鱗は焔を溶かし、竜の爪は焔を纏う…自らの体を竜の体質へと変換させる太古の魔法《エンシェントスペル》」
「でも、ドラゴンが火を食べるなんて聞いた事ないわ!」
キュルケ逹はハッピーの説明を聞いても信じられない程の衝撃を受けていた。すると、今度はナツの足の裏から火が吹き出てミサイルのようにダリル目掛けて飛んでいった。
「火竜の劍角!」
「うわっ!」
こんなに一瞬で距離が潰されるとはダリルも創造していなかったが、なんとかナツの攻撃をかわして、既に詠唱を終えていた風魔法に残り僅かな精神力を全て注ぎ込んだ。
「ウインドブレイク!!」
もろに喰らったナツは6メイル程吹き飛んだがダリルはナツが自分よりも遥かに格上だと判断していた為に、これで勝ったなどとは考えずに肉弾戦による追い撃ちをかける為に飛び掛かったが、そこに火を纏ったナツの蹴りがもろに腹にめり込んだ。
「火竜の鍵爪」
「ぐはっ!」
ダリルの体が7メイル程吹き飛んで更に地面を転がっていく。あばらが4〜5本折れていた。対して起き上がってきたナツは全くダメージを受けていなかった。精神力もほとんど空で、万策尽きたダリルはもう一辺の勝機もない事を悟ったが、勝てないならば、ペリッソンに自分ですらナツに手も足も出ない事を見せつけ、ペリッソンがもうナツやキュルケに嫌がらせをする気を起こさせないようにするしかないと判断して、ペリッソンのいた場所に目を向けるといつの間にかいなくなっていた。ペリッソン「この役立たず!ダリル、何負けてんだ!!」ダリルとナツがペリッソンの声のした方向を見ると、シエスタの首に杖をあてて立っていた。
「動くなよ、このバケモン!ダリル、そいつはもう動けない。殺せ!」
ペリッソンは人質をとる事でナツの動きを封じ、ダリルにナツを殺すように命じたが、ダリルは一向に動こうとしない。
「何してる。早くしろ!!てめえの家を潰されてえのか!」
その言葉を聞いて、ダリルは苦汁の顔でナツに近づいていった。
「ヨシヨシ、それでいいんだ。」
すると周りからブーイングの嵐が起きた。
「ふざけるな!貴族の恥さらし」「お前の負けだ!」「潔くないぞ!」
そのブーイングにペリッソンが気をとられた瞬間、杖を誰かに弾きとばされた。そちらを振り向くと、タバサがいた。
「貴様!!」
ペリッソンが杖を拾おうとしたところ、立ち塞がるもう一人の影が見えた。
「キュルケ…」
「汚い事するのもいい加減にしなさい!!」
ペリッソンはキュルケに思いきり殴られ、気絶した。その様子を見てダリルは
「さあ、私の負けだ、降参するよ…」
ダリルはもうペリッソンがこの学園に居場所を無くしたのを悟り、自分がもうペリッソンに縛られる事もないのだとさっぱりした気持ちでいた。
「うわ〜、信じられない!!アイツ、ダリルにまで勝っちまった!!」「私の賭け金返せ〜」等様々な声があがる。そんな中、タバサはキッチリ金を回収しており、キュルケはナツと共に脱出していた。
学長室
「何なんじゃ、あれは!?」「私にもサッパリです!!」オスマンとコルベールはパニック状態になっており、秘書であるロングビルも言葉を失っていた。
「とにかく、すぐにミス・ツェルプストーと彼らを連れて来るんじゃ!!よいな!?ミスター・コルベール!」普段ならふざけてコッパゲールなどと呼ぶが、今日はそんな余裕も無かった。
ダリルにも少し見せ場を作りました。彼は魔法だけなら並みのラインメイジと同じ位です。ただ身体能力が高く、経験が豊富な為、総合的にかなり強くなりました。