ナツがキスに動揺していると、いきなり左肩が熱くなった。
「あちちっ、肩が熱い!?」
「あれ!?オイラも熱いよ!?何で!?」
「あ、ナツのは使い魔のルーンが刻み込まれているんだけど、大丈夫?というかハッピーのは本当に何で!?」
「ああ、もう治まった。しかし、俺が熱いと思うなんてな。」
「どういう意味?」
「あ〜、熱かった〜。ナツは火の滅竜魔導師《ドラゴン・スレイヤー》で火が効かないんだよ。」
「「「滅竜魔導師《ドラゴン・スレイヤー》?」」」
ハルケギニア組が何の事か疑問に思っている中ハッピーは、
ハッピー「ナツ、火出して。」
と要求すると、ナツの手からいきなり火が出た。しかもかなりの高温で火のメイジであるキュルケやコルベールですら熱いと感じる程だった。
「きゃっ!?大変!!」
「早く水を!!」ハルケギニア組が慌ててタバサも急いで水の魔法を唱えようとしたが、ナツがその反応に驚いて火を消してしまった。
「いや、驚き過ぎだろ。」
「誰でも驚くわよ!!手火傷してない!?大丈夫!?」
「今のは何ですかな!?」
「…」
驚くハルケギニア組に対しナツ達は
「何って滅竜魔法だろ」
「魔法を知らないの?」
とあっさり答えた。
「魔法位知ってるわよ!もしかして先住魔法!?」
と聞いてもナツ達には何の事だかさっぱりである。
「使い魔の契約の様にここでも魔法は有るようですが、私達アースランドとここでは使う魔法が違うのでしょう。」
「アースランド?何ですかな?それは。」ハッピー「じゃあ、ここはエドラス!?」
「違いますよ、ここには魔力があるでしょう。」
「あの、エドラスとかアースランドって何?」
「その前にここが何処なのか教えてもらってもよろしいですか?」
「ここはハルケギニアのトリステイン王国の魔法学院です。」
「そうですか。私達はアースランドのフィオーレ王国というところから来ました。」
「フィオーレ王国ですか?聞いたこと無いですな。」
「私も…タバサは?」
「…(ふるふる)」
「そういやそんな名前の国だったな♪」
「いやいや、ナツ、自分の国の名前位覚えておこうよ…」
ナツが自分の国の名前を覚えていない事に誰もがあきれていた。
「おほんっ。とにかく私達はこのハルケギニアの常識から外れた場所から来たのです。だからこれからも色々とご迷惑をかける事になると思います。」
「ナツはそれでなくとも非常識だしね…」
そんなことを言われてもキュルケ達は「あ、そう…」としか言えなかった。
「では、そろそろ私が具現化していられる時間の限界ですのでごきげんよう。」
そう言ってメイビスは消えた。
「それでは、ミス・ツェルプストー、契約も済みましたので部屋に戻って下さい。」
「分かりました。ほら、アナタ達も来て。」
「おう。」
「あい。」
「じゃあ、また明日。」
ナツ達はキュルケの部屋に戻り、解散となった。
キュルケの部屋
「で、使い魔ってのは何をすればいいんだ?」
「基本的には特に何もしなくていいわ。困っている時に手伝ってくれればね。」
「そんなことでいいの?」
「楽だな〜」
「あ、でも強いて言うなら何時も一緒にいることかな?」
「分かった。」
「じゃあ、今日はもう自由時間ってことで…」
その瞬間、グゥー…大きな腹の虫が鳴いた。
「その前に食事にする?」
その声にナツ達は思い切り首を縦に降る。『といっても今はナツをギムリ達に会わせたくないのよね〜』
「じゃあ、食事を作ってもらいましょうか?」そう言ってキュルケは使用人の集まる厨房に顔を出すと、丁度一人のメイドと目があった。
「あの、ちょっといいかしら?」
「はいっ!(オドオド)」
「そんなにビビらないでよ…この子達に食事を作ってくれるかしら?」
「分かりました!只今!!」
このメイドの慌てぶりを見てナツ達は少しひいていた。
「キュルケ…何したんだ?」
「違うのよ!あの娘がメイジを怖がってるだけよ!私は何もしてないわ!」
「本当に〜?」
「ホントに本当よ!」
ハッピーの軽い冗談すら受け流せない程キュルケは動揺していた。キュルケとしてはナツにはヒドイ人間と思われたくはなかったのだ。
「じゃあ、また後でね!」
そう言ってキュルケはスタコラと走り去ってしまった。
Sideキュルケ
『あのメイドのせいでナツに嫌われたらどうするのよ!』キュルケはイライラしながらペリッソン達がいるであろう広場へと向かった。
「あ、ペリッソン、お願いがあるんだけど…」
「何だい、キュルケ。」『もしかしてとうとうキスやそれ以上の事を許してくれるのかな』そんな事を考えていたペリッソンは次の瞬間、気分が天から地へと落ちる事になる。
「別れて」
「うん、分か…って何で!?嫌に決まってるじゃないか!!」
あっさりと別れ話を切り出すキュルケに対し、流れで了解しかけたペリッソンは大声で反対する。
「なんでいきなり別れ話なんだ!!」
「だって、本当に好きな人が出来たからバイバイ」
広場にはペリッソン以外にもギムリなど何人かのキュルケのボーイフレンドがいたため、キュルケの周りに次々に人が現れた。
「ギムリ、スティックスどうしたんだ?」
「あ、ギムリ、スティックス、アナタ達にも別れて欲しいの。」
「「え〜!?」」
「何だと!!君は僕という者がありながら他の男にも手を出していたのか!!ふざけるな(怒)」
「今までの君なら好きな男が出来ても今まで通りに僕達と付き合っていただろう。君がその男の事が本当に好きなのなら、僕達は身を引こう。でも君がせめて誰の事が好きなのかだけでも話してくれないか?」
ペリッソンはただ怒鳴るだけだったが、ギムリは男前に身を引く発言をした。
「そんな事はどうでもいい!!それより他の男に手を出していた事を説明しろ!!」
「うるさいわね、ペリッソン!!ただ私の体が目当てだっただけでしょ!?ハッキリ言って、ギムリはまだ性格も良いし、別れ話をするのに罪悪感もあったけど、アナタには何の感情も湧かないわ。プライドは無駄に高いし、自慢話は長いし、狭量だし、自惚れが強いし、今回の事が無くてもすぐに別れるつもりだったわ!!」
厨房での一件もあり、イライラしていたキュルケはただでさえ狭量なペリッソンに対して暴言を吐いてしまった。尤もほとんど事実でキュルケとしてもペリッソンは顔がいくら良くても性格が受け入れられず自分より下の立場の人間をあからさまに見下した態度をとるペリッソンにはウンザリしていたのだ。
「何だと、いいだろう!!決闘だ!!」
「良いわよ、やってやるわ!でもアナタごときで私に勝てるかしら?」
ペリッソンは頭に血がのぼって決闘を言い出したが、元々自分より下の立場の人間には横暴な態度を取るが自分より強い人間には何も言えない性格の為、キュルケと自分との実力差を思い出すと言葉に詰まってしまった。
時は1時間程遡る
Sideナツ
「お待たせいたしました。」
メイドがナツの前に食事を運んできた。
「おー、旨そ〜!」
「あい」
ナツとハッピーは物凄い勢いで食事を平らげていく。そのメイドはその様子を見て驚くと同時にホッとした。
「お気に召されたようで何よりです。」
そう言って立ち去ろうとするメイドをナツが呼び止めた。
「おい」
「(ビクッ)な…何でしょうか?」
「何でさっきからそんなにビビってんだ?もしかしてキュルケがヒドイ事でもしたのか?」
「いえっ!!」
「じゃあそんなにビビんなよ。」
「そういう訳にはいきません。キュルケ様は貴族ですから。」
「貴族?」
「はい…私達平民が貴族に逆らったらどんな事をされるか…」
メイドはハルケギニアの常識を話したつもりだったがナツはあまり納得してなかった。
「少なくともキュルケやタバサは違うと思うけどなぁ」
「はあ、では仕事がまだ残ってますので失礼します。」
「あ、わりぃ、邪魔しちまったな。じゃあ、飯食い終わったら手伝うよ。」
「いえっ、お客様に手伝って頂くなんて…」
メイドはナツがキュルケの使い魔だとはまだ知らなかったが、貴族に関わっている人間だとは認識していたので遠慮する。しかし、話している間に、食べ終わって満腹になったナツは「遠慮すんなって!」と言うのでメイドも折れてしまい、
「分かりました。じゃあ、このケーキを運んでください。」
と承諾する事になった。この時運ぶ物が肉ならナツが食べてしまっていた事はここでは無視しておこう。 「じゃあ行くか、ハッピー。」
「あい」
「え、ネコが喋ってる〜!?」
「なんだ、今頃気付いたのか、鈍いな〜。」
「すいません!」
「別に怒ってる訳じゃねえよ。あ、そうだ、お前名前は?」
「シエスタと申します。」
「そっか、よろしくな、シエスタ♪」
「はい。」
ナツの馴れ馴れしさによってシエスタめ緊張がほぐれていった。そして三人?は広場へと向かっていった。
Sideキュルケ
キュルケの耳にナツの話し声が聞こえ、キュルケは狼狽えた。『なんでもう来ちゃうのよ、早く話を着けないと、今はもうナツだけなのに!』ギムリやペリッソン等からしてもその狼狽え方はあからさまであった。「さては、今の声が君の想い人かな、いやいや、下品な声だ。」
ペリッソンはここぞとばかりにキュルケをなじる。
「さて、では彼に君が今までどれだけの男と付き合ってきたかを教えてあげるとでもするかな〜」
ペリッソンはニヤニヤしながらそのような事を言い出す。
「お願い!それだけは止めて!!」
「いくら何でも卑劣だと思わないのか、ペリッソン!!」
「五月蝿い!!黙れ!!そうだな、キュルケ、土下座したまえ。」
キュルケはナツに嫌われたくない一心で涙を浮かべながら土下座しようとしたが、ギムリが押し留めた。 「キュルケ、そんな事をする必要ないよ。ペリッソン、君のその下劣な性根は僕が叩き直してあげよう。決闘だ!」
「嫌だね。これは僕とキュルケの問題だ。君はフラレたんだ。もう関係ないだろ?それとも何か?カッコいいところを見せてキュルケをもう一度振り向かせたいとか?」
ギムリは戸惑ってしまった。そういう部分がわずかとはいえあったのは事実であり、ここで決闘をすれば自分の名誉にも関わるからである。
「もういいわ、ありがとう、ギムリ」
そう言ってキュルケは今度こそ土下座しようとしたが、その瞬間、ナツが走ってきた。
「お前ら、なにしてやがんだ!!」
ペリッソンが最低でしたね。wikiでもあまり良いこと書かれていなかったので、徹底的に下衆にしました。ギムリは比較的良い奴にしてみました。次回、とうとうナツの初戦です。