デート・ア・リベリオン   副題『男なのに精霊に転生しました』   作:岸温

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リアル体調不良で更新が遅れました。申し訳ございません。

ようやく完治できたので、これから投稿ペースが戻るはずです。


それとピクシブ百科に載っている精霊のスペック(十香〜美九+反転十香までそれぞれのキャラのページに載ってます)に倣って、主人公のスペックを数値化してみました。



STR(力):92
CON(耐久力):100
SPI(霊力):118
AGI(敏捷性):86
INT(知力):134

四糸乃に力負けし、霊力は精霊の誰よりも劣る。耐久はあるにはあるが、敏捷も当たり前のように低い。



チートがなかったら魔導師に瞬殺されてるね!(笑)



掌の上の出来事

「ついに来たんだなあ……」

 

 

 周りには背の高い建物。その中でも一際高い建物の前に俺は立っている。

 どこにでもありそうな四角いオフィスビルのはずなのに、その建物から淀んだ空気をひしひしと感じる。圧倒的な威圧感と、かすかに薫る殺気のようなものが侵入しようとする者の足を地に張り付ける。

 入口の近くにある社名の掘られた石碑に目を向ける。大理石に金箔で掘られたそれには、小奇麗な書体でこう書いてある。

 

 

 

 

『DEUS EX MACHINA Industry』

 

 

 

 

 ええ、来てしまいましたよ。ラスボスたちのすむところに!

 折紙ちゃんとの対峙から約2週間後、折紙ちゃんに伝えた色々な布石が本社に伝達しているのを見計らって、俺はDEMインダストリー本社に殴り込みしに来た。

 多分2、3日もあれば戦闘記録映像含め全部伝わっているだろうけど、秋葉原とかその他日本の各地を旅行していたのでこれだけ日がまたいでしまった。

 金がないから行けるところは限られているけど、【消失移動(ロストワープ)】――まさかの<超克天魔(ルシフェル)>の初出応用技がコレ。内容は字の通り消失(ロスト)と現界を繰り返す瞬間移動術――があったので移動費が全くかからない。

 さすがに世界旅行までするのは自重したけど、沖縄から北海道まで47都道府県を全て観光するのに10日ばかりで済ませられるのはさすが【消失移動(ロストワープ)】と言ったところだろう。

 奥の細道とか出雲大社とか琵琶湖とか日本アルプスとかお台場とか時計台とか、とにかく色々見回って楽しい時間を過ごした。沖ノ鳥島に行って周り一面海を眺めるのも趣があったな。

 …………俺の旅行話はもういいか。話を戻そう。

 

 

 

 

 

 

「いるといいなあ。――――――――真那ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 今度の俺の目標は――崇宮真那だ。

 そのために俺は前回、折紙ちゃんに俺の目標が『(時崎狂三)』だと吹き込んだのだ。小さすぎる伏線だと思うかもしれないが、こういう積み重ねが人生において大事だったりする。今は精霊だけど。

 どうして真那ちゃんに会いに来たのかというと――士道くんのことと、真那ちゃんの寿命について伝えるためである。

 士道くんの実妹である真那ちゃんだが、本編の活躍はそんなになかったりする。3巻で登場してきょうぞうさんにやられて、6巻で琴理ちゃんその他を気絶させるまで意識がなかったし、他はエレンさんの部下のジェシカさんと2回戦ったくらいしか活躍していない。

 ――主人公と生き別れの兄妹という割に、作者から大した出番をもらっていない不遇のキャラ。精霊を差し置いて、俺の中で原作一不遇なキャラ扱いを受けているのが、真那ちゃんなのだ。

 しかし原作で大した活躍がないということは――――逆に原作より立ち位置を変えても原作の流れを壊しにくいキャラとも言える。

 だから俺は真那ちゃんに接触して、原作の流れを無視して士道くんと再会することに決めた。そのために真那ちゃんと接触しやすいよう『同じく時崎狂三を狙っている』というブラフを立てた。基本的に精霊が信頼に値しない存在である以上、共通の話題でも作らないと絶対信用されないと思う。

 

 

「じゃあ、やろうか」

 

 

 …………ここで空間震を起こし、真那ちゃんと接触して目的を果たそうとすれば、間違いなく原作崩壊は起こる。

 だけど――折紙ちゃんの両親の犠牲で、未来が滞りなく進んでいることが分かっている。

 だから、心配するようなことは何もないんだ。たとえ俺が原作に巻き込まれたとしても、未来が約束されているなら怖いものはない。

 

 

 

 

「イッツ・ショウ・タイム!!」

 

 

 

 

 自分の右手を基点にして、空間が軋む感触を覚える。

 直後、空間震警報がけたたましく鳴り響く。周囲の建物に反響して、警報は俺の体を震わせる。

 ――それはまるで、世界そのものが悲鳴を上げているように聞こえて。

 ――運命(原作)が壊れていくような感覚に襲われる。

 

 

 

 

 そして、あらゆるものを破壊する空間震は<超克天魔(ルシフェル)>によって収縮され、ぱあんと風船が割れるだけの些末な威力になる。

 結局何も壊れない。精霊になって俺ができることは、何かの規模を小さくすることだけ。

 変わりない空を仰ぎ見て、そんなことしかできない俺に本当に原作を壊すことができるのか、ふと不安になってしまうのだった。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 5分も経たず集結する<魔導師(ウィザード)>たち。本社目前なのだから当たり前だ。

 前回の天宮市の<魔導師>と違い今回はちゃんと俺への対策が取られ、<魔導師>たちは地表近くを飛んでいた。<リベリオン>の情報はきちんと本社に届いているようで安心する。

 だが俺の安心は目の前の事態に掻き消えることとなる。

 俺と対峙したのは、真那ちゃんでも、ましてやジェシカさんでもなく――――

 

 

 

 

「あなたが<リベリオン>ですか」

 

 

 

 

 透き通るようなプラチナブロンドの髪と、あらゆるものを見下す氷の眼差し。無表情でこちらを見据え、途方もない殺気を放っている傾国の美女。

 ――今すぐにでも貴方を殺してあげましょう。そんな幻聴が聞こえる。

 それは世界最強の<魔導師>。エレン・(ミラ)・メイザースだった。

 

 

「…………っ」

 

 

 正直に言おう。俺は完全に怖気付いている。

 この女の殺気は折紙ちゃんやケルベロスのそれとは比較にならない。目の前に立っているだけで俺の胃がキリキリ痛み、視線だけで心臓が握り潰されそうだ。……目の前の女は、生物としての次元が違う。

 

 

(これのどこが駄目イザースさんだよ……。さっすが世界最強だな)

 

 

 怖気づいていても始まらない。俺は全身の細胞を奮い立たせ、駄目イザースさんを見返す。

 心の中で「この人は駄目イザースさん。この人は駄目イザースさん。なんちゃって世界最強。魔力をゼロにしたらこの中で誰よりも雑魚なんだ」と恐怖を振り払いながら。

 

 

「その識別名を使ってくれてありがとう。俺が<リベリオン>だよ」

「そうですか。それで、あなたはどうして我が社に仕掛けてきているのでしょうか?」

「ああ、それは……」

 

 

 本来人類の敵であるはずの俺は、こういう時余裕そうに笑みでも浮かべていたらいいのだろうか。

 しかし俺は精霊であって精霊でない。今の俺は――人間の味方としてこいつらに近づいている。

 真那ちゃんに近づくため。こいつらに取り入るため。俺は申し訳なさそうな顔をして、<魔導師>たちを見上げる。

 

 

「…………『()び』のつもりなんだ」

「『詫び』? 精霊であるあなたが一体何を詫びると?」

「『ヴァイスホルン大空災』さ。あの時奪った<魔導師>30人の命を償いに来た」

「つまり、自ら投降しに来たというわけですか?」

 

 

 駄目イザースさんがそう言うのを皮切りに、他の<魔導師>からブーイングが殺到する。

 何が償いだ。精霊の言うことなんて信じられない。どうせ私たちを殺しに来たんだ。返り討ちにしよう。

 大抵がこんな言葉だ。精霊に対する敵意が手に取るように分かる。……ジェシカさんのヤジがうるさい。レイプとかファックとか言うんじゃねえ。

 これが人類の総意。友好的な態度を取る精霊ですらこれなのだ。いくら真那ちゃんが比較的優しくても、精霊への憎しみを抜きにして俺のことを信頼してくれるのか考える度に不安になる。

 ――――でもまあ、真那ちゃん以外に信用される必要はないわけで。

 

 

「いいや。投降ってのは少し違う。俺はお前たちに力を貸したいんだ」

「精霊の手助けなど必要ありません。<魔導師>30人分の働きをしたいとでも? その言い分にも虫唾が走りますね」

「ああ、力を貸すってのも少し違うな……。最悪の精霊<ナイトメア>をお前たちと協力して捕まえる――うん。つまりこういうことだ」

 

 

 駄目イザースさんが俺の首に剣を突きつけてくるのを気にすることなく、俺は俺の言い分を主張した。

 

 

 

 

 

 

「お前たちと一緒に<ナイトメア>を捕まえるから、<ナイトメア>の身柄と引き換えに俺のことを見逃して欲しいんだ。――――だからこれは、取り引きだよ」

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 駄目イザースさんの冷たい視線が俺の体を射抜く。他の<魔導師>たちも、俺が「取り引き」という言葉を使ったら、やはりといったように蔑んだ目を向けてくる。

 俺は息を吐いた。――次の瞬間、体が押しつぶされるような重圧が襲い掛かり、駄目イザースさんは構えていた剣を振りかぶり、俺に斬りかかった。

 俺は――――周りの魔力を完全にゼロにして、その剣を軽く受け止める。顕在装置(リアライザ)の恩恵を受けられなくなった駄目イザースさんは途端にひざをついた。

 他の<魔導師>は装備に重さを感じてはいるが、立ち続けている。……こうして見ると、やっぱり駄目イザースさんは駄目イザースさんなのだと納得した。

 

 

「くっ……」

「――――やろうと思えば、こんな組織片手間で潰せるんだよ? それに、空間震なんて起こさず人類に害のない生き方だってできるんだよ? でもそれは違うと思うんだ。力を持っているのに、人を殺したことを悪いと思っているのに、その罪に報いることができるのに何もしないのは………………やっぱりおかしいだろ」

「……謝罪している割には、随分強情なやり方ですね」

「現状ひざをついているお前が何を言う。誰も俺に勝てるやつなんていないんだよ。……だったら、好きに振る舞わせてもらうだけさ」

 

 

 今度は俺が駄目イザースさんを見下ろして、殺気に満ちた目を突きつけた。

 

 

「監視なんて好きにつけさせてやる。だからさっさとお前らのトップのところに案内しろ。話はそれからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ついに来たようだな……」

「――――そうですね」

 

 

 DEM社のMD(マネージング・ディレクター)室にて、白い髪の男と黒い髪の女が顔を突き合わせていた。

 白い男は部屋にある豪勢なイスに腰かけながら女を見据え、女は手に持ったコーヒーカップに口をつけながら、来客用のイスに座っている。

 

 

「機は必ず訪れる。その時に彼女を殺しにかかるよう、エレン・メイザースに指示を出しておいてください」

「いいのか? 彼女は君の――――」

「いいんですよ。だって………………」

 

 

 飲み終えたコーヒーカップをテーブルに置くと、女の姿は霧のように薄れていく。

 そして顔に被さった長髪の隙間から男を見返し、女は言う。

 

 

 

 

 

 

「だって<リベリオン>なんて精霊、本来の歴史では存在しないんですから」

 

 

 

 

 

 

 ――――女は消え、部屋には白い男だけ残される。そして突然入った通信の声が部屋をこだまする。

 

 

『<リベリオン>があなたに会いたいと言っています。どうしますか?』

「かまわないよ。通してくれないか」

『しかし、アイク……!』

「通していい、と言っているんだ」

『……了解しました』

 

 

 通信は短いやり取りで終わる。白い男――DEM社業務執行取締役(マネージング・ディレクター)、アイザック・ウェストコットはイスに背をもたれかける。

 

 

「さあ――歴史を繰り返そう。運命と相対しようじゃないか」

 

 

 しばらくの間、アイザックの口から微かな笑い声が漏れていた。

 ――――<リベリオン>と呼ばれる精霊は、自分の知らない事態が既に巻き起こっていると想像すらできなかった。

 

 

 

 

 




新しいキャラ登場? 正体については後々判明します。

そして遂に、ラスボスの本拠地にまで殴り込みをかけちゃいました。まあチート天使があれば問題ないですけどね。

チート天使の前では人類最強も形無し。真那ちゃんは次回から登場します。

ジェシカさんと相対させる案もありましたが、それだとジェシカさんが暴走して前の折紙ちゃんみたいにあしらわれて、結局エレンさんが止めにきますから、それなら最初からエレンさんでいいという風になりました。

伏線を回収した途端また伏線を張る。(主人公のキャラ含め)ややこしい作品ですが、楽しんでもらえると幸いです。

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