戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

はい、この話で八章が終了となるのですが……。八章……最終的に10話かかったかぁ……。まずいですね、これはまずいですよ。

九章から先だけ、妙に短くなってしまったらどうしましょう!?なんかここまでだいたいバランス良くいってるだけに……!

本当に短くなるようなら……何か対策を取らないとですねぇ~……。ま、とりあえずは……九章に入ってから考えましょう。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


相対してしまった二人(偶然)ですが何か?

(うう……さみぃなぁ……)

 

 完全に、数日前まで南国に居た反動だろう。日本に帰ってきて思い知らされる……冬が近づいている感じの雰囲気。今も地味に冷たい風が通り過ぎ、思わず背が丸くなってしまう。

 

 人間ってのは、我儘な生き物だよなぁ。夏は夏で、暑いと愚痴を垂れて……冬は冬でまたその逆……。四季がある日本に住んでいる以上は、仕方の無い事なのだろう。

 

 でもやっぱ……季節の移り変わりは、良いモンだとは思う。ってか、俺は冬は好きだし……寒いのさえなければの話だけど。なんつったって、冬は食い物が美味い!

 

 旬の食材を使うと、料理が一段と楽しいんだよな。俺にとって料理は義務感などでは無く、趣味の一部でもある。嗜好を凝らしてオリジナルなレシピとか、実を言えば日々開発中だったりする。

 

 冬は、そうさなぁ……やっぱ鍋が最高だ。手軽にできる上に、案外バリエーションも豊富。それでいて冷えた体を芯から温めるのがもう……たまらん。

 

(っと、んな事はあとあと……)

 

 そうだ、俺はとっとと用事を済ませねばならん。今日は日曜日……朝から完全にフリーなのだ。それで今俺が居るのは、レゾナンスである。

 

 いやぁ……意外とここって、便利であることに気が付いた。IS学園からも近場だし、こうしてふらっと立ち寄れば大抵なものは何でも揃う。

 

 今日は日用品等々を買いに来た。それでその後、家に帰るつもりだ。この間の数日間も合わせて、かなり長いこと家を空けてしまったからな……。

 

 親父は料理以外はちゃんとやってる……なんて言うが、俺と親父の『ちゃんとやってる』って感覚はかなり違う。確かに、中年男性が一人で暮らすには申し分ない。

 

 しかし!それだと俺が納得できんのだ!主夫歴?10年近くなるせいか、基本的に綺麗にしていないと落ち着かない。と言うか汚いのを綺麗にするのは、またそれはそれで楽しかったり。

 

(あ~……簪も連れてくりゃ良かったな)

 

 無論……家事を手伝わせようとか、そんなんじゃ無く……親父に紹介するためだ。そのうち連れてこいよ~……とか言われたし、今回はベストだったかもしれない。

 

 俺も毎週ごとに帰ってる訳じゃないからな……次はいつになるのやら。ま……今回は忘れていたと言う事にしておこう。親父だって、そう急かしはしまい。

 

 逆に、俺は簪の両親とかに顔を見せた方が良いのだろうか?……それってつまり、対暗部用暗部の本丸に向かわなければならんって事だよな……。

 

 うん、この件は考えなかった事にしよう!さて、そうすれば……本当に早く必要な物を買いに行かなくては。まず近い所から当たっていこう。ようやくして、せかせかと歩を進める俺であった。

**********

(これでよし……っと)

 

 俺は手元のメモ用紙の項目に、線を引いた。前に誰だかに言われたが、我ながらマメな事だ……。しかも未だに紙とペンて……アナログ派にも程がある。

 

 まぁでも、こうしておけば間違いも無い。そもそもメモをし忘れていたら最悪だが。一応は買い物袋の中身をチェックして、買い忘れが無いかの確認をした。

 

 どうやら、やはり問題は無いらしい。それじゃ、家路に着きますかね。そう思い顔を上げると、ある事に嫌でも気付いてしまう。

 

 やはりここは……カップルが多い。超巨大な娯楽施設なために、嫌でも……と言う事なのだろう。別に彼女が居ない状態でも僻んだりしなかったろうが、なんとなく気にはなるよな。

 

 レゾナンス……か。ここもかなりデートに使えそうな場所が多いんだよなぁ。……時間もあるし、少し下見くらいしてから行くか。ワンパターンにならぬようにするのも、男の甲斐性だろう。

 

 そうと決まれば……と意気込んだ俺だったが、なんだか小腹が空いて来てしまう。……先に、何か腹に入れておこう。そう思って周囲を見渡すと、コンビニが目についた。

 

 フライヤーのコーナーで、軽食でも買うか。油モンばっかりで、あまり好きではないのだけれど……わざわざ店に入って高い金払っても仕方が無い。

 

 ボリボリと頭を掻きながら、コンビニの中へと入っていく。するとレジでは、フードを被った長身の男が会計をしていた。何やら……大量の栄養調整食やらを買っているが、本当にそんな食うのか?

 

 ……人の事を言っても仕方が無いか、俺もこの男の後ろに並んで……って、んん!?そのまま素通りしようと思ったが、なんかコイツ……俺に似ているような……。

 

 もしやと思いながら、横からフードをじっと眺めていると……向こうも俺の視線が気になったらしい。少しだけフードの中身を見せながら、口を開いた。

 

「ん……貴様か、奇遇だな」

 

「おまっ……むぐっ!?」

 

「馬鹿が、声が大きいぞ」

 

「あ、あの~……お客様?」

 

「スマン、これで足りるな?つり銭もレシートもいらん」

 

 奇遇だなじゃねぇよ馬鹿野郎!レジで会計をしているのは、間違いなくソルであった。判別に時間がかかったのは、いつもと恰好が違ったからだ。

 

 今日のソルはコートで無く、ライダーズジャケットで……フードを被っているのは、どちらかと言えば『ファッションである』と認識させる出で立ちだ。

 

 思わず指をさしながら大声を出しそうになると、口元をパシン!と抑えられる。そのままソルは、レジへ万札を置き袋を抱えて俺をコンビニから押し出す。

 

「なんでテロリストが、コンビニで買い物してんだ!」

 

「悪いか?」

 

「悪……かねぇけど……。お前、それで良いのかよ!?」

 

「構わん。それより、こんな人数の前でテロリストなどと叫ぶと……貴様の方が不審がられるぞ」

 

 コンビニから出るなりそう言う俺に、ソルはあくまで冷静に返す。そして、ソルの指摘通りに……周りの人が俺を『何だコイツ』みたいな目で見ている……。

 

 いやいや、違うんですよ……コイツ本当にテロリストなんですよ!?俺の右手とか、見てくださいよ!ほらこの刺し傷!お巡りさん、コイツです!

 

「ではな」

 

「おう、またな!……じゃねぇよ馬鹿。このまま行かせるかっての!」

 

「……言っておくが、単に買い出しだぞ。特に何をするつもりも無い」

 

「アホか、自分の胸に手を当てて考えてみろや」

 

 せっせと踵を返して歩き出すソルの少し後ろをついて歩く。ソルは別に気にする様子も無く……ただどこかへ向かって歩を進める。

 

 ドライな事だよ……少しは後ろが気になっても良いんじゃないだろうか。いや、別に無視されたくないって言う事ではないが。

 

「……着いて来ても意味は無いぞ」

 

「あぁ?ジョウントで飛ぶんだろうが、知ってるよ。だからそれまで見届けるっつってんだよ」

 

「あの女……ジョウントの事まで……!」

 

 俺が『ジョウント』と言う単語を思わず出すと、ソルはオータムがペラペラ喋ったのだと勘違いしたらしい。濡れ衣乙。オータムさんマジドンマイっす。

 

 (勘違いだけど)よほど頭が痛いのか、ソルはハッキリと分かるくらいに肩を落とした。そして大きな溜息を吐くと、俺の方に振り返る。

 

「聞きたい事があるなら話してやる……。だからもう着いて来るな、鬱陶しいぞ」

 

「へっ、鬱陶しいは俺の基本スタンスだ!」

 

「貴様……。はぁ……まぁ良い。そこらのベンチで……」

 

「ホラホラ見なって!言った通りに双子じゃん!」

 

「ホントだ~……しかもダブルで超イケメン!」

 

 嘘だろ……おい!このタイミングで逆ナンって奴かよ!?こういっては何だが……頭の弱そうな女二人組が、俺達の行く手を封じた。

 

 まずい……ソルが邪魔な存在を殺める事を躊躇うはずが無い!俺は慌てて、少しだけ開いたソルとの距離を大股のダッシュで縮める。

 

「ねぇねぇ、今暇?ちょっと遊ばない?」

 

「ね、良いでしょ?大丈夫だって!財布にはしないから!」

 

「ゴメン、オレ達……ちょっと事情があってさ、離ればなれで住んでるんだ。ね?兄さん」

 

「!?!?……。 お、おぉ……おう。そうなんだよ、久々の再会だから……ちっと、兄弟水入らずっつーか……」

 

 俺は、夢でも見てるのだろうか?え……?ソル……?あのソルだよね、コイツ?いや、アイコンタクトを取ったときなんか『黙って合わせろ』って言いたげだったしそうしたが……。

 

 衝撃をで少しどもってしまう。てっきり俺は、ナイフでもチラつかせるんじゃと思っていたのに……。と、とにかくだ……穏便に済むならそれでいい。

 

「あ~……そっか~じゃあ仕方ないね」

 

「でも次見かけたら逃がさないからね~?バイバ~イ!」

 

 二人組のほうも、案外爽やかな物で……。手を振りながら俺達の横を通り過ぎていく。その背が小さくなったのを確認するように、ソルは再び歩き出した。

 

 そうして、始めに座ろうとしていたベンチに腰掛ける。そのまま黙って固形食糧を食い始めるが……無かった事にするつもりじゃあるまいな?俺は迷わず、さっきの事を質問した。

 

「お前……さっきのなんなん?」

 

「猫かぶりは、便利な物だぞ。さっきのような頭の悪い女に対しては……特にな」

 

 あぁ……なるほど、お前に取っちゃ必要な要素なのな……。それじゃあ俺は、もう何も言わないよ。ってか、ソルがあんな声色ってこたぁ……俺も出せるって事だよな?

 

 知らなんだ……。16年間この体で生きて来て、初めて気が付いたぜ……。……今度ちょっと、試してみよう。姉貴に対するドッキリなんかに使えるかもしれん。

 

「で、質問はそれだけか?」

 

「……お前、いつもそればっかりなのかよ?」

 

「そうだな、場合によってはサプリメントや栄養注射だが」

 

「マ、マジで言ってんのか……普通に飯食えよ……」

 

「必要性が感じられん、貴様らと違って味覚がある訳でも無いのでな」

 

「!?」

 

 サラリと、とんでもない事を言ってくれる。味覚が……ない?迂闊だった……サプリメントの時点で、なんとなく察する事が出来たろうに。

 

 言葉を失う俺に、ソルは下ら無さそうに鼻を鳴らした。そうして、今食している分をすべて口に運ぶと、中身が無くなってから口を開いた。

 

「言っておくが、同情などいらんぞ。別段、事故等で無くなったのとは違う」

 

「意図的……だと……!?んな馬鹿な事が……!」

 

「? 何を怒る。現に、こうして貴様とほぼ同じ体格となっているだろう」

 

「俺はそういう事を言ってるんじゃねぇ!」

 

 ふざけんな……食事ってのは、人間が生きていくうえで大事な要素の一つだぞ!?天道だって言っていた……『食とは、人が良くなると書く』……と。

 

 実際にそうだ……。食事一つで、人生観が変わる瞬間だってある。それなのに……その楽しみが初めから存在しないなどと、そんな事があって良いはずが無い!

 

「止めだ。貴様とオレでは、価値観という奴が違う」

 

「……それで、良いんだな?」

 

「必要と思った事など無い」

 

「……ヘッ、そうかい。だとすりゃテメェ……人生の大半損してるぜ」

 

「そうか、そいつは残念だ」

 

 ソルは、全く残念だと思った様子ではない。恐らくだが、単に俺の対応が面倒になったのだろう。袋をガザガサとまさぐると、新たな固形食糧を取りだし無言で貪った。

 

 ……俺の予想では、存在しないのは味覚だけではないはず。それを聞き出したとして、何になるのかと言われてしまえばそれまでだが、俺は続けて質問していた。

 

「他はどうなんだよ」

 

「……空腹感、満腹感もほとんど感じない。痛覚もほぼ無い。後は……エトセトラだ」

 

 そもそもの問題……空腹にすらなりゃしねぇのか。こいつにとって食事とは、決められた時間に決められた栄養素を摂取する……それだけのものらしい。

 

 『ほぼ』と言うのは、全く感じないとそれはそれで不便だからだろう。全く感じなければ、自分が腹が減っていることに完全に気づけないから……だな。

 

「お前……連中から逃げようとか、思わないのか?」

 

「…………。貴様は、レールの敷かれた人生を……どう考える」

 

「……それもまた……人生だ」

 

 定められた道を、定められた通りに生きる……つまらねぇ人生だとは思うが、それもまた一つの形だろう。誰が口を出せるものか……。

 

 俺の言葉に、ソルは確かに頷いた。俺が肯定的なのが、意外だったに違いない。少しだけ楽しそうに『フッ』と鼻を鳴らすと、こちらを向いて続けた。

 

「貴様を殺すという役割を与えられ、それをこなす。それがオレの人生だ」

 

「…………」

 

「オレはそれで満足している。後悔など……するはずもない。オレは、オレが決めてレールの上を歩くんだ」

 

「そうか……」

 

 こうもハッキリ言われてしまえば、そうやって呟くしか無かった。しかしこの言い方は、少し引っ掛かる部分も感じられる。

 

 俺を殺す事が生きる意味なら、もし……その目的を果たせば、こいつのその後はどうなるのだろうか?……終わりさえすれば、そこで生きる意味を見失った……なんて言うまいな。

 

「おい……一つだけ、約束しろ」

 

「…………」

 

「俺ぶっ殺したからって……死ぬんじゃねぇぞ」

 

「随分と、お人好しな事だな」

 

「うるせぇ。生きてさえすりゃ……色々ある。俺が言いてぇのは、それだけだ」

 

 こんな言い方をしたからって、死ぬつもりなんざ微塵もねぇが……。ただもし俺が負けたのに、俺に勝ったコイツがその途端に人生止めるとか、死んでも死にきれねぇっての。

 

 せっかく俺を倒して勝ち抜いた人生ならば、爺になるまで生きてもらわんと困る。例えこの野郎が敵だろうとなんだろうと……俺は、そう思う。

 

「……善処する」

 

「おいコラ、それは大抵守らねぇ時のセリフだろうが」

 

「食うか?」

 

「誤魔化すなよ……。まぁ、貰っとく」

 

 ソルは俺の言葉を完全に誤魔化しにかかる。それが関係しているのか、ソルは俺に固形食糧を差し出す。そもそも俺がコンビニに入ったのも、小腹が空いていたからだ。

 

 有難い話だが、敵な事を忘れてはいけない。俺は少し乱暴にソルの手から固形食糧を奪い取った。それを確認したかのように、ソルはまた自分の分を取り出す。

 

 しかし……どうしてこうなったんだったか……。休日に宿敵と肩を並べて軽食?ってのも妙なモンだ。問答無用で攻撃されても、可笑しくないんだよな……お互い。

 

「あ、つーか……どうすんだよこれ……」

 

「何がだ?」

 

「お互い啖呵を切っちまったろ」

 

「気にするな、出会ってしまったものは仕方がない」

 

 前回に会ったとき、次が決着だ……みたいな事を言ったのを思い出した。それがどうだ……この状況。この間の雰囲気と真逆のような感じじゃねーか。

 

 ソルは仕方がないと言うが、第一にお前がんな所で買い物しなかったら……。やはり、根本的には俺と同じ思考回路をしているのか?食い違うのは、価値観の違いのみだったり?

 

「まぁ構わんだろう。戦場でない限りはな」

 

「戦場離れりゃ、こうやって仲良しこよしかよ」

 

「貴様と仲良くしてるつもりはない」

 

 それもそうだ……俺だって仲良くしてるつもりはねーし。今回こうしているのは、いわゆる利害の一致という奴だろう。だとしたら……右の掌を貫いてくれた野郎と誰が仲良くなんか……。

 

 クソが……考えてたら古傷が疼く……。時々忘れそうになるが、この掌の分の借りもキッチリ返させてもらわなくては。別に同じ思いをさせようって事じゃねぇが。

 

「ってか、テメェらって他から盗まなくてもコア造れんじゃねぇの?」

 

「それを教えて何になる」

 

「ハッ……。俺らの第三フェーズってのは、シンクロだろ。もしかしたらテメェらの居場所も突き止められんじゃねぇかと思ってな」

 

 ナチュラルに質問をぶつけてみると、今度は答えてくれない。つまりは、組織としてのあれこれは答える気がねぇって事らしいな……。

 

 コア同士をシンクロさせる事が出来るんなら、逆探知的に使えると思ったんだが……。ヤレヤレとソルの様子を窺って見ると、何やら呟きながらペンを走らせていた。

 

 ……アナログ派な所まで、もろ被りかよ。じゃなくって、人の話も聞かずに何書いてんだコイツ?こっそり背後から覗いてみると、見ているだけで頭が痛くなりそうな数式の羅列だった。

 

「なぜ初歩的な部分を見失っていた……。……クターだけでなく、剣のほうにも……を……。そうすれば、シンクロさせ……のゼクターのパワーを剣に……」

 

 ……ダメだ。呟いてる内容が、断片的にしか聞こえねぇから一つも分からん。無駄だと判断した俺は、元の位置に座り直した。しかし……あの距離で気づかねぇとは、よほど集中してるのだろう。

 

「……よし。感謝するぞ、加賀美 真。おかげで、いい刺激となった」

 

「あっそ……そりゃよござんした」

 

「礼に、何か答えてやらんことも無いぞ」

 

「……テメェらの、最終的に目指してるとこ」

 

 さっきのは、ポロリと答えてくれればラッキー……程度のモンだったが、こっちはぜひ聞いておきたかった。俺の殺害は、あくまで目的を達するまでの過程だろう。

 

 とすれば、亡国機業の目的が不透明だ。今の所はテロ行為じみているだけで、何がしたいのかは見当もつかない。幹部クラスのコイツならば、何か知っているはずだろう。

 

「知らんな。どういう結末に行きつくかは、オレも聞かされていない」

 

「んだそりゃ、幹部が聞いて呆れるな」

 

「最後まで聞け。知らんが、どうやらオレが『最終フェーズ』に到達すれば……目的は完遂するそうだ」

 

「最終フェーズ……」

 

 俺達の能力の根幹は、ISを人為的に進化させる事だが……。その最終フェーズとやらに辿り着いたら、ガタックはいったいどうなるんだ……?

 

 少なくとも、原作における能力……クロックアップとハイパー化の習得は済ました訳で、これ以上の進化の果てに何が待ち受けているのだろう。

 

「それ、教えてよかったのか?」

 

「聞かれたところで、どうせお前は死ぬのだから同じ事だ」

 

「ヘッ!言ってろよ……また返り討ちにしてやらぁ」

 

「フッ……それならば、楽しみにしておこう」

 

 割と重要な事を教えてくれたソルにそう言えば、すぐさま俺を殺すという意味を込めた言葉を放つ。俺がそれに中指を立てながら反論すれば、ソルは立ち上がりながら口元を緩める。

 

 フードから顔を覗かせると、着いて来なくていいのかと言いたそうだ。だが……もうその必要はないだろう。ソルは、もう何もしない。奴が何もしないなら、俺が止める必要も無い。

 

「貴様との間には……」

 

「あん?」

 

「奇妙な事だ……。敵同士であり、標的と刺客でしかないと言うのに……何か、友情に近い物を感じている」

 

「……ああ、俺もだ。ソル、ひとつ教えといてやるよ。俺達みたいな関係を……『好敵手』って呼ぶんだぜ」

 

「……なるほどな、合点がいった。次は……戦場で会おう、我がライバル」

 

 そう言うソルの背は、何故だかワクワクしているように感じられた。別れのあいさつに返事をすると、ソルはフードを深く被りながら歩き出す。

 

 ソルは敵で、倒すべき相手だ。だけど……なんだろうか、悪くないと思えてしまう。仲間である一夏とはまた違う……敵とのライバル関係もまた一興……か。

 

「…………行くか」

 

 完全にソルの背が見えなくなったところで、俺もその場を離れた。どうなる事かと思ったが、結局のとこ奴と会えたのは良かったのかもしれない。

 

 だが……本当の本当に、次会った時こそが……俺達の宿命の終着点にしたいものだ。そのためには、また鍛え直しだな。俺は気持ちを一新させ、とりあえずは自宅への帰路へ着く。

 

 

 




ソルで始まりソルで終わる……そんな八章。

私の小説は、オリキャラのキャラ崩壊が著しいですね。まぁ主に真とソルですが……誰だお前って言われても仕方が無い。

でも以前のソルでも、プライベートはだいたいこんな感じだと言うイメージです。自分から騒ぎを起こすような事はしないと言うか、ドライと言うか。

服装はもっぱらフードがつてりゃなんでもありな感じ。ロングコートは大好きだけど、プライベートだと目立つから着ないのだとか。

さて……次回から、九章に突入します。例の如く、その章のプロローグ的な話になるかと思われます。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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